煉獄ステージの建物内。俺は遠くからオルタと式の戦いを見ることにした。もちろん俺だけじゃなく、楓子とジャンヌ、白雪もだ。
「さて、オルタはわかるけど、式はどんな戦いをするんだ」
オルタside
煉獄ステージね、私と1番相性のいいステージじゃない。あの女はどうくるのかしら。
「へえ、それがお前のアバターか」
「そういうあんたのアバターは?」
「自己紹介がまだだったな。俺はブラッドバニー。そうだなぁ……ブラッドって呼んでもらおうかな」
「ダークアヴェンジャー。ダークよ」
アバターの色は赤。なら遠距離かしら?とりあえず距離をとろう。私は一度距離を取り、相手の出方を見た。
「一旦離れたか……。いい判断だ。だが………………その程度の距離じゃ離れたことにはならないぜ?」
「っ!?」
結構離れたはずなのに!?一瞬で目の前に!?
私は咄嗟に腰から剣を取り出し、あいつの攻撃を防ぐ。剣とナイフがぶつかり合い、私は剣に炎を纏わせる。これなら手は燃え移るはず!
「ふっ……」
あいつはナイフを私の剣から一度離すと、今度は炎を斬りつける。すると、私の剣に纏っていた炎が一瞬で消えた。
「な、なんで?」
「さあ?なんでだろうな?」
「くっ!この!!」
旗を振りかざすと、あいつはジャンプして避ける。そのまま宙を舞って、私の背後に着地する。私は後ろを振り向きながら炎を飛ばす。けど、さっきと同じようにあいつはナイフで炎を斬りつけると、また炎が消えた。
「なんなのよもう!!」
「そうカッカするな。わかるのもわからなくなるぞ?」
「うっさいわね!!あんたのその力がわかんないからムカついてるのよ!!」
「そりゃそうか……。今まで俺の力を見破ったやつは1人もいないからな」
「は、はあ?」
「特別に教えてやるよ」
あいつはナイフを下におろすと、私に能力について話してきた。
「俺の目はね、物の死が見えるんだよ。例えそれが水や炎だったとしてもな」
「な、なんなのよそれ!」
「この目……アビリティの名前は……『直死の魔眼』。どんなものでも死を見ることができて、どんなものも殺すことができる」
こ、こんなバカげた能力を持つリンカーがいたなんて……。
「だから……生きているのなら、神様だって殺してみせる」
だったら……一気に決めにいくしか……ない!!
「やあああ!!!」
剣に炎を纏わせて、それを辺りに振りかざし、炎を飛ばす。
「物の死が見えるんでしょ。だったらここから脱出することもできるよね!」
私はジャンプして、屋根のヒビの入ったところを刺した。すると、屋根は崩れ始めて瓦礫が落ちてくる。私はすぐに脱出できるけど、あいつは炎を消さないと出れない。瓦礫に埋まったところを狙って必殺技でトドメを刺す。これが私の作戦。
「まずは脱出ね」
私は建物から脱出すると、さっきまでいた建物内が崩れていく。そこを狙って決める!!
「ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン!!」
最強の技を使って、瓦礫を炎で燃やし尽くす。いくら物の死が見えても、これを避けることは不可能ね。
「おおー、あんなものまともにくらったら終わりだな」
「っ!?」
な、なんで?あいつは瓦礫の中にいたはずじゃ!?
「な、なんであんたがここに!!」
「決まってるだろ?逃げてきたんだよ」
「に、逃げ道なんかなかったはずよ!!」
「もう忘れたのか?俺はあの炎の死をみて、炎を殺したんだよ。そしたら建物が崩れてきたから脱出したんだ」
そんな……まさかあの一瞬で……。こいつ……強すぎる……。
「さて、お前もなかなか強かったが、俺の方が一枚上手だったみたいだ」
負けを認めるしかなさそうね……。
「ここがお前の死だな」
そう言ってこいつは私の胸のあたりをナイフで斬りつけると、私のHPは一瞬で消し飛んだ。まさか……一撃必殺が使えるリンカーがいるなんてね……。
オルタside out
奨真side
現実世界に戻ってきた俺たちは、とりあえず飲み物を口に運ぶ。コーヒーを飲み終えると、俺は式に聞く。
「見てたけど、あれはもう一撃必殺に近いな」
「直死の魔眼って……か、空の境界に出てきましたよね!!」
「ああ、そうだぞ。どうやらフィクションが現実になってしまったみたいなんだ」
「フィクションが現実になるなんて……そんなことがありえるの?」
「実際に俺がなってるからありえるんだろ」
そういえば能力を見破ったものはいないって言ってたな。なら、王たちも見破れてないということか?それともまだ式の存在を知らないのか?
「なあ式。お前は七王と会ったことはあるのか?」
「七王?あーあいつらか。白の王はここにいるから、白を抜くと……黒以外は会ってるかな。無制限フィールドで」
会ったことはあるんだな。なら、王でも見破ったやつはいなかったってことになるな。
「さて、そろそろいこうぜ。日が暮れてしまう」
「そうですね」
「ここは俺が奢るよ。今日楽しませてもらったお礼だ」
式が俺たちの分も奢ってくれて、店の外に出た。式は俺たちとは帰る方向が違うから、店の前で別れることになる。
「あ、そうだ。…………ほらよ」
式は指を俺の方に弾くと、俺のニューロリンカーに式の連絡先が送られてきた。
「何か用があったらそこに連絡してくれ」
「あ、ああ」
式はそう言うと、帰る方向に歩いていった。俺たちも帰るために歩き始めた。
「あいつ……桁違いだわ」
「オルタでも歯が立たなかったからな」
「悔しい……何もできなかったなんて……悔しすぎる」
「オルタさん……」
「絶対にあの女に勝ってやる!ギャフンと言わせてやるわ!!」
「あ、オルタ!!」
ジャンヌは声をかけるが、オルタはそのまま帰っていった。しばらく歩くと、白雪とも別れ、そのまま家についた。俺は部屋に入ってベッドに寝転がると、楓子が部屋に入ってきた。
「ねえ、奨真君。もしかしてだけど……式って……」
「ああ…………あいつは……両儀式は……王じゃないけど……
加速世界最強のリンカーに近いかもな」