ToLOVEる~守銭奴が住まう町で~ 作:ド・ケチ
「突然ですが、転校生の紹介をします」
やってきた先生がいきなりそんな事を宣った。守金、片羽、雛野らがいる1年
何かに気がついた守金は片羽を睨み、彼はニヤニヤと肯定してみせた。どういう手品だ⁉声にならない叫びを上げる。この書の力、侮るな。守金に目だけで答えて、胸から取り出した
誰がくるか知っている雛野は何やってんのよこいつらと白い目で見てたが。なお、彼女も無言の会話は理解していた。
「では入って来なさい」
「ハーイ‼」
そして入ってきたのは守金が予測した人、
「やっほ 長太‼」
ララ・サタリン・デビルーク。
「私も学校来ちゃったよーっ♥」
「来ちゃったじゃねぇ っ!」
ハラハラ
「飯にしようぜ」
「準備万端だなおい」
「おいしそーっ‼」
「美味しいわよ」
屋上で弁当箱四人前を取り出した片羽。飯に釣られた守金と、守金に付きまとうララ、そして彼女のサポートの雛野が続く。
「まあわかっているとは思うが、俺と雛野で守金とララさんをくっつける様に動いてた」
「わざわざ目の前で言うか?わかっているとはいえ」
弁当箱を突っつきながら守金がぼやく。
「まあ当初は面白半分でやってたんだが、計算違いがあってな、ろくでもない事が起こった」
「珍しいな。お前が計算違いとは」
「計算違いはララさんが王女だった事だ」
「それが計算違いなのか?」
一堂首を傾げる。
「単なる上流階級と一番上では違うところがある」
それの何処に違いがあるのかわからない。
「もしもの時はストッパーに他のデビルーク星人を巻き込もうとしたんだが、王より上がいない。つまりストッパーがいないわけだ」
実際は王妃がいるが、その辺りの事は片羽にはわからない。
「現状、王の機嫌を損ねると止める人がいない」
とまあ、此処まではザスティンとの会話から想定できた事で、
「個人的にザスティンさんと連絡を取り合っててな」
「何時の間に」
雛野もそう思う。なお、ララはおいしいおいしいと弁当を食べている。他の者も箸を動かしている。止まっているのは片羽のみ。
「何で君たちはそんなに呑気なのかな?」
つまり現状はそこまで悪い。
「最悪王が自ら大群率いて地球を滅ぼすとか可能性的にあったんだぞっ!説得に行かないといけない可能性もあったんだっ!王と連絡できる手段を急いで確保するに決まってるだろ!王のなり人為り知らないんだから最悪考えろ!」
ララはパパなら軍隊なんて率いないで1人でするんだろうなと思っていたが。それでも地球人2人は慌ててない。
「それでも貴方なら勝てそうな気がするんだけど」
それは雛野の本音であり、守金も頷いて同意するところだった。
「無理だからな」
「日本人の無理は信用ならないという海外の常識だぞ」
「ここは日本でそんな常識はないよ。そして本当に無理だからな」
「またまた~。そんな事を言いつつできるんでしょ?」
「宇宙船に放射性物質を詰め込んで地球に落とすだけで簡単に地球が滅びるんだが。ララさんを人質にして籠城したところで、日本以外に落として資源不足にしたら終わりだろ。それだと生き残っても負けだわな」
茶化すような2人を完膚なきまでに叩き潰せるような悪どい作戦を言ってみたが、そんな作戦を考えるのは多分彼だけであろう。
「という訳で戦ったら負ける。だから戦わない」
策士系の特徴として、基本的には勝ってから戦かう事を信条とする。
「幸いそんな事が無いけど、今度は別の問題が入ってきた」
きっとろくでもないことだ。二人は息を飲んで続きを傾注して聞く。
「ザスティンさん経由で知り得た情報を伝えると、デビルーク王は婚約者候補として守金を認めた」
「それはろくでも無いこと?」
「ろくでもないだろうが!」
守金と雛野で意見が別れた。
「此処までなら余裕があるんだけどな。守金にも失礼にならない程度に破談させる手もあった」
「あったのかよ⁉」
「あの時負ければ良かったんだよ」
あっさりとした答えだが、これはおかしい。守金を勝たせたのは片羽の一言である。
「守金には悪いが、別の理由で却下したけどな。そっちは言えない」
普通は納得しないが片羽をよく知る2人は納得した。本気で隠すならこんな思わせ振りをするはずがないからだ。
「ともかく、守金が婚約者候補になったが、他の婚約者候補がララさんを奪おうとしている。そしてもし守り切れなかったら地球を滅ぼすと」
だいぶ意訳だが概ねこの通りである。加えるなら、意図的に情報を抜いている。
「つまり、守金の意思云々以前にやってくる婚約者候補からララを守り抜かないといけない、ってこと?」
雛野が話を纏める。雛野としては彼方の親も仲間に引き込めたと喜ぶべきで、
「よって俺は守金とララさんをくっつける作戦から距離をおく」
「「今さら⁉」」
驚愕の地球人2人。まあ、確かに今さらな事ではある。
「むしろこのタイミングだからだな」
『質問なんですが、何故転入までさせてくれたのでしょうか?ララ様が王族と知り得たタイミングで無視して良かったのでは?』
「王族だと知る前から調整してたからな」
「何故だろう、調整っていう言葉が脅迫に聞こえたぞ」
「あたしは
「だから守金、そこだけは協力して貰うぞ。ぶっちゃけ地球を壊されたら金儲けどころの話じゃないしな」
「わかったよ」
「ララさんも本気で地球滞在を願うなら守金に嫌われない程度のアプローチを仕掛けろよ。もう協力はしないが」
「わかったよ!」
そして水筒からお茶を入れて一息ついて、
「ではここから本題に入る」
「「ここから本題⁉」」
ララを守らなければならないのが結論と思ってた2人は驚愕を抑えれなかった。
「今までのが急ぎの話か?半分は既に決まった事だし、半分は言わなくてもやることだろ。なら、本来は後で良かったんだよ」
ララを守るのは言われなくともやることだとしている事に二人は反論しなかった。そしてこれから言う話には前提として状況を知らないといけない。
「この状況で一番危険なのが雛野。理由はわかるな?」
「ララさんの側に一番長くいるからよね」
「そうだ。そして次に俺だ」
「そこは俺じゃないのか?」
守金のいうことはもっともなのだが、
「他の候補者に対しての通知で、守金はザスティンさんに真っ向勝負で勝った事と、軍師的な現地人の情報を匂わせた。雛野の危険は減るし、分散される」
「何でまた自分を餌に」
「女子を危険にさらして後ろで安全にこそこそする野郎は死んでいい」
単に男としてのプライドだった。
「他にもトータルの危険を減少できるとか理由はある」
考え過ぎなくらい考えている。
「最悪は二正面作戦、俺と雛野に対して同時に仕掛けてくること。とは言うものの、予測できた最悪なんかたかが知れてる。
だからこっちはこっちで何とかするし、雛野は何かあったら守金を利用しろ」
「そこは言い方を変えてくれ」
「お金を餌にこきつかえ」
「大して変わっていない!」
「じゃあ何て言えばいいんだよ?」
「普通に助けを呼ぶとか、協力を要請するとか、色々あるだろ」
「お金を払って助けて貰うのをそう言っていいのか?要請は合ってるだろうが」
「只で駆けつけて宇宙人から慰謝料貰うわっ!」
「ああ、そっちから貰うのか。てっきり雛野から貰うと思ってたぞ」
「思うなっ!人を何だと思っているんだっ⁉」
「【大欲界 守銭道】」
真面目な会話からいきなり始まった漫才に、
「2人とも仲いいね」
何処か場違いな感想を漏らすララだった。
キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン♪
放課後
「うーん、終わったーー‼」
ララは大きく背伸びをして守金に抱きつこうとした時、既に彼はいなかった。
「あれ?長太は?」
「バイトよ。何時も放課後は一直線なのよ」
「ふ~ん。片羽も?」
答えてた雛野も言われて気がつく。
「多分、男どうしでしか言えない話をしてるんでしょ」
歩いていては間に合わない。故に彼等は走る。
しかし何もしないのは勿体ない。故に彼等は話す。
「わざわざ付いてくるということは女子には、というよりはララに話せない事でも話してくれるのか」
「流石わかってらっしゃる」
夕日を背にして語り合う2人。歩いていれば青春のワンシーンなのだが、制服でジョギングなのはどう考えればいいのか?
「考えたのは2つだな。1つはララさんは親が敷いたレールの上を生きていた。だからたまには脱線して青春を謳歌してもいいやと考えた」
「もう1つは?」
「ネグレクト」
子を愛せない親が子供を無視するという虐待。
「言動が王族らしくないからな。きちんと帝王学を学んで親の愛情を受けた子供ではないと考えた。自分を政治の道具として割りきれとまでは言わないが、それでも自分の言動に責任を持たないといけない。あれはそういった教育を受けてないだろ」
此方の推測は外れだが。
「とまあ、地球で過ごす意味はあるとみた。それに協力してもいいと思ったし、実際そこまでは協力した」
「それで俺を出汁にして、計画が完了したから作戦を終了した訳か。
成る程、これ以上は俺のレールをお前が決める、つまりララの親と同じになるからか」
つまり片羽には最初からくっつけるつもりなんて欠片もなかった。
「あたりまえだ。ふざけるな、自分の道は自分で決めさせろ。運命は自分で切り開いて捩じ伏せろ。お前が振る方にいくか、ララさんの狙いが叶うか、それは2人で決めろ。外野は口出しすんな」
今まで口出ししてきた男とは思えない変貌だった。
「確かに人によっては進めない道、誰かの協力がなければ見えない道、色々あるが最後に決めるのは自分でないといけない。例えそれが奈落に続く道でもな」
「きっと奈落に向かって全力ダイブを、自殺志望でもないのに笑って受け入れれるのはお前くらいだよ。そして他人が奈落に向かって周囲が必死こいて止めようとしても、お前は笑顔で手を振るう人間だろ」
友人に対する評価としては守金は酷い事を言ったが、
「流石に笑顔はない。騙されているならともかく、送り出すのは事実だろうけどな」
当の片羽本人は概ね認めざるにはいられない。
「王族には王族の責務があるだろ。お前なら当然そこまで考えていてそういう結論になるんだよな?」
一般論としては守金は正しい。愛とか自由とか、そんな事で国を捨てて駆け落ちする
「そのせいで国が滅びても下の奴らに文句を言う筋合いはない。次代の王にとって国はその程度の価値しか見出だせなかったし、そういう風に教えられたのだからな。国か教育のどっちが悪いにしろ、ララさんのせいじゃない」
「それは極論だろ」
「普段は仰いで税金払って、いざ気に入らなくなったら革命を起こせる国民にどれだけ価値がある?少なくともどんな国民か知らなければやってられないし、それを知るのも教育だろ。王が助けたくない国民なら逃げて当然。
だから帝王学を知らないって言ったのはそこだ。
「逆になんでそこまでわかるんだよ?」
「きちんと論理立てて王の視線で考えればわからないか?」
「わかんねぇーよ!」
そこまで考えられる人間は極少数だろう。
「もうお前が全部なんとかすればいい気がしてきた」
「無理だって知ってるだろ」
その一言が片羽の
「何時だってお前は全てを助けたかった。同時に、今ではお前は誰だって助けたくなかった」
矛盾した発言は当人達にとって矛盾ではない。
「他人に幸せになって貰いたい癖に、他人の幸せに嫉妬して狂いそうになる。それがお前だ」
それが賢すぎる
「国全体の幸せを考える立場なら、きっと国民全てに嫉妬して、俺は何時か暴君になる。そしてそれを止めれる奴はいない。無理だよ、俺がなんかの代表になるのは」
「そうだな。だから地球にいろよ。狂ったら殴ってでも止めてやるから」
「そこは頼りにしてるさ、親友」
「当たり前だ、親友」
片羽「くか~~~」
??「な、何を言っている?」
雛野「寝かしときな」
守金「そのうち起きるだろ」
片羽「くか~~~」
ペケ『それで済ませて宜しいのでしょうか?』
ララ「長太すごーい‼」
片羽「くか~~~」
ペケ『セコいですね』
守金「【
片羽「くか~~~」
【日常を壊す宇宙人を赦すな】
ララ「片羽!起きて‼」
片羽「巫山戯んなッ‼」
次回
これはラブコメですか?いいえ、作者が自問自答しています。
そんな原作5+6話の前半。
そんな野郎どもの会話の一方でララは体験入部ではっちゃけて雛野が原作リトさんのように巻き込まれてた。なお、原作とほぼ同じという理由で書いていない。
とりあえず、五エンが全く手をつけてないので次はfragmentで。