ToLOVEる~守銭奴が住まう町で~   作:ド・ケチ

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 番外編という名のオリ主原作置いてけぼりストーリー。もう主人公生徒会長でいいんじゃないかなと思ったり思わなかったり。


番外編 3 体育祭

「選手、宣誓!」

 生徒会会長阿部誠司が声を上げる。

 今日は体育祭。文化祭ほどではないが学校を上げての大行事だが生徒主体で飾り付けや事前の準備等をしてきた。チーム分けはまだされていない事が不安といえば不安だがクラス単位で分かれる事は知らされているし所詮は体育祭、他の学校のそれや創作物のそれとは大した違いはないだろう。

 素直な1年はそう思っていた。素直でない片羽でさえ (一言多い)そうそう変な事はできないと思っていた。

「我々1、2年生一堂は!」

 待て、そこは選手じゃないのか?予行練習では普通だったのに、いきなり雲行きが怪しくなった。

「正々堂々力の限り戦い、3年生を快く追い出す事を誓います!」

 なんじゃそりゃ!?

 1年生の動揺を他所に、3年生は紅白帽を赤にひっくり返し、

「「「掛かってこいや!!!」」」

 今までの穏やかな雰囲気から一転、闘気が()ぜた。

 これが彩西高校の体育祭、1年と2年の全てのクラスが同じ白組で3年が全て赤組という異質すぎるチーム分け。そして部外者観戦禁止であり、その内容に箝口令がしかれる異常な戦いがここに開かれる。

 

番外編3 体育祭 (Sports festival)

 

 

 

「要約するとだな」

 1年生、及び前回の体育祭以降に転校してきた2年生に白組団長の生徒会会長は説明する。

「文化祭で3年はこの学校を1年、2年に託した。託されたオレたちは自分達で生徒会長を選び、3年がいなくてもやっていける事を証明しなければいけない。

 それに体育会系のクラブでもよく聞くだろ、卒業前の日の1年2年対3年の紅白戦を。あんなノリだ」

 説明の内容に成る程と思うものの、それをサプライズ的にこのタイミングで言う理由が不明である。

「因みサプライズは恒例行事で、オレも去年巻き込まれた。だから来年も捲き込め」

『来客の皆様にお願いがあります』

 放送が流れる。

「あっ⁉昂音だ!」

 ララが気づく。

『この勝負形式は来年以降も1年生に対するドッキリとして使い回しますので、皆様内密にお願いいたします。

 それと生徒会長にもの申します』

 そして

「体育祭実行委員にだけは最初から教えて下さい!宣誓の後にあんちょこ見るようにって、何考えてるんですか⁉」

 マイクを通さない彼女の魂の叫びに声を立てずに笑う会長だった。

 守金、片羽、他多数の友人は悟った。会長に侵食されていると。

 

 さて、ここらで体育祭のレギュレーションを説明しよう。

 まず個人種目、100メートル走や障害物走などだが、3年は全種目全員参加、1年2年は半数づつ参加で最低1種目に参加が義務付けられている。

 続いて団体戦、これはABCの3種目あり、1年生全員対3年全員(ただし以後の『全員』という単語は『男子全員』『女子全員』『男女全員』の3種類の何れかとする)、或いは2年全員対3年全員が戦う綱引きや棒倒しのA種目、3年の点数を2倍として各学年選抜チームで戦うリレー等のB種目、そして1年2年選抜連合チーム対3年選抜チームによるC種目の3つがある。

 はっきり言ってスタミナ的に3年不利なレギュレーションだが、そこはこの (変人だらけの)学校だからといおうか、そんな不利をものともしない。あと千夜さん、その言い方だと貴方も変人の1人と認めてますよ。 (アーアー) (きこえない、) (きこえなーい)

 

「いやいやいやいや、なんであの先輩ララさんより速いの⁉明らかに個人100メートルや障害物走で1位とった時よりも速いじゃん!」

「ララもリレーのアンカーで2年を引き離しているのに、3年には抜かれるって、あの先輩は実は宇宙人とかなのか?」

「地球人なんだよな、恐ろしい事に。流石陸上のエース」

 片羽と守金の会話に種族判別機こと生徒会長阿部誠司が交ざる。

「紀刻も非常識な程に速いんだけどねぇ。やっぱり求道だろうなぁ、あれ。『私は先頭を走る、誰にも前を走らせない、お前らは私の背中を見ろ』的な」

 そして発砲音と共にゴールした。女子選抜400メートル×6人リレー、1位は3年、2位は1年。だいぶ遅れて2年がゴールする。

「ごめん負けちゃった!」

 帰ってきたララはハハハと呑気そうに笑っているものの、なんとなく悔しそうに感じたのは多分守金の気のせいではない。

「相手が悪かったとしか言いようがない。あれには誰も勝てないだろ」

「そうだねぇ。途中で2年の脳筋は諦めてたし、それに比べれば全力を出しただけマシともいえる」

 慰める守金と軽く紀刻を睨む阿部生徒会長。とまあそんなやり取りだが、

「次はオレ達(2年男子)の出番だな。逆転してくる」

 そして出陣する。

「2年男子対3年男子だけでやると、2年男子が勝てるんじゃないか?」

 守金はそんな疑問を投げる。因みに今のところ2年男子は団体戦で3年に負けていない。1年2年男子連合でもそうだ。

「あり得ないと言い切れないんだよな」

 そもそもここまで競っているのは3年が異常に強いのもある。しかしそれ以上に2年男子が頑張っている点があげられる。2年女子はほぼ互角、1年生は全く勝てていない。

「というか、来年俺たちは今の2年が成長したメンバーと戦うんだよな」

「勝てる未来が全く思い浮かばないし、仮に勝てたとしても再来年の1年2年に勝てる気がしない」

 来年を想像した守金に否定できない片羽だった。

 そんな事を話している間に試合は進んゆき、白組はまた逆転をした。

 そしてシーソーゲームを繰り返しながら最終種目を迎える事となる。

 最終種目を前にして白組団長でもある生徒会会長は全選手を纏めて演説する。

「さて皆は宣誓の内容を覚えているか?」

 インパクトが強すぎて3年に対する宣戦布告以外を忘れているものが大勢いるなか、

「3年を快く追い出す事です」

 1年で気を張ってた者の1人、やはり生徒会役員の燕子花悦也庶務が答えた。

「そうだ。つまりこれから、まあまだ少し居るんだが、3年は居なくなる。3学期は自由登校だから、あと1月半だな」

 そして大きく一息入れ、

「そこからは3年はいない。オレたち1、2年で色んな事を乗り越えないといけない。それを見せつける為の体育祭だ」

 幾人かは気がつく。

「体育祭の準備に3年は一切関わらせていない。何故なら、1、2年でやり遂げたと知らしめねばいけないから。

 そして3年がいなくても進まなければいけない。先輩達が3年で築き上げたもの以上を築き上げれると信じさせなければならない。

 先輩達から受け継いだ物に自分達が加えて後輩に託す、そして少しずつより良い未来を手繰り寄せる、それは人間の歴史だ。そしてこの学校の歴史だ」

 息を飲む仲間達にだからと付け加える。

「勝つとか負けるとか別段どちらでもいい」

 ズルっと何人かずっこけたが、

「勝ったところで相手に認められなければ意味はないし、負けたところで相手が認めてくれればそれでいい」

 極論、この体育祭の目的はこの一点である。

「でだ、仮に負けました、しかしオレ達は頑張りました、先輩達は認めてくれました。それでオレ達は自分達自信で納得するのか?3年生を超えたと、去年の3年に勝った今年の3年を超えれると信じれるのか?

 ああ、返答はいらない。きっと皆否だと思っているはずだから」

 だから、次にいう言葉はわかっているよな?生徒会会長阿部誠司の目による会話に全員が応える。

「「「勝つぞ!!!」」」

 

 最終種目、唯一のC種目で男女混合種目でまある騎馬戦。平均すると1年は各クラス2騎ずつで騎手は男女1名ずつとだけ決まっていた。本来なら事前に騎馬を組んで練習するし、1年D組もそうなのだが、

「ララちーごめん、騎手代わってくれない?」

「え?どうして?」

 ララでなくても普通ならそう聞き返すだろう。特に彼女は楽しみにしていたのだから。

「陸上部の先輩にね、ギャフンと言わせたいのよ」

 顔と声で笑いながら、それでも目だけは本気で燃え上がっていた。

「うん!いいよ!頑張って!」

 陸上部の少女は先輩を睨み付ける。それを受けて赤組は陸上部最速の少女が出る事になった。

 そしてこのやり取りは他の場所でも起こる。

 兄に勝ちたい、姉を超えたい、先輩に見せつけたい、そんな思いの1年が次々に騎手となる。

 そしてそんなノリを知っている2年は最初からこのタイミングで騎手を決める。俺がいく私がでる、お前がいけ、あんたに任せた、言葉はいらない。

 これはいわば敗者復活戦。今まで負けて不満が残る生徒による、最後の勝つチャンス。そしてそのチャンスを与えるのも3年の責務だ。俺がでよう、私の出番ね、お前が出るべきだ、貴方が呼ばれてるわね。やはり言葉はいらない。

 そして騎手騎馬全ての編成が終わり、戦士たちは戦場に立つ。

 この騎馬戦は大将を倒せば勝ち、倒されれば負けというルールだ。白組大将は当然生徒会会長阿部誠司、対する赤組大将は前生徒会会長大居天汰。特に説明する必要もないが、現生徒会会長対前生徒会会長が基本的に大将となるのは伝統といってよい。例外として、2人の性別が違うときにどちらかが副会長に大将の座を渡す事があるくらいだ。

 試合開始まで両軍大将を中心とした横1列で整列する。なお、この横1列なら配置は自由。そしてこの勝負だけ法螺貝の音が開戦を告げる。 (多分、文化祭のあれだ。)

 最初はどう動く?2、3騎1組で遊撃を仕掛けながら様子を見るか。それとも大将を一気に狙うのか。この学校をよく知らない保護者達が固唾を飲んで見守る。

 この学校のノリを知っているなら予想される手段は2つまで絞られる。陣形など知るかと横1列となって全体で攻める結果としての並列陣か、大将が先頭になって一塊になって突撃する結果としての偃月陣か。

 そしてこの騎馬(敗者復活)戦の意義を考えた場合、予測される動きは1つだ。自分の正面に位置する自分が越えるべき、或いは立ち塞がるべき敵に大将以外全力で突撃する。

 まずは横1列、そしてクラスの垣根を超えた白組女子陸上部の騎馬と赤組元女子陸上部の騎馬が突出し1番槍を狙う。

 そして次々と他の騎馬もぶつかる。とある兄弟或いは姉妹とその友人達で固められた騎馬が、部活や委員会の先輩後輩で激突する。

 両の大将は動かない。

 2人の決着はチームの決着であり、各々の決着はつかない。

 故に待つ。信じて待つ。

 越えてくれると、立ちはだかってくれると。

 宿敵を落として隙になった騎馬は別の隙になった騎馬に突撃をする。どんどんと騎馬は減っていく。そして最後に宿敵を落として各々の決着がつくとようやく大将が突撃をしかける。

 最後に起きる事象は大将同士の激突と攻防。騎馬は強い衝撃にも騎馬は崩れず大将同士の攻防が始まる。

 まずこの段階でおかしい。体格は白の大将こそ上だが、白組の騎馬である生徒会現男子メンバーに対して赤組の元生徒会メンバープラスアルファの赤組の騎馬の方が上だ。そして身体能力は赤の大将が上。本来なら拮抗するはずがない。

 しかし互角。

「いけ会長!」

「負けんな阿部!」

「頑張って下さい!」

「越えていけ!」

 応援を受け攻防は加熱する。そして天秤は徐々に傾いていく。白の大将の攻撃の手数が徐々に増え、赤の大将は防戦に回る。

 3年の大将は理解する。改めて理解する。

 敵味方含めた強化と異能の否定、それが彼の覇道であり、どういった熱望から流れたものか。そして魂が不足している彼が何故覇道を使えるか。

 ああ、だから満足した、この学校は彼等に任せて大丈夫だ。

 だから

「ナメるな!」

 だからといって負けていい理由はない。

』とか『次代の神』とか世界に対して成すべき事はあるが、知ったことか。

 例え来年の彼らが今の自分達を越えていようと、この1年のアドバンテージを抜かれて良いはずがない。後輩が先輩を抜くのが使命なら、先輩が後輩の壁として聳え立ち続けるのもまた使命だ。

「僕たちの3年間をナメるな!」

 ここに天秤は釣り合う。

 越える事が/越えさせない事が、使命だと後輩の/先輩の意地でもって全力でぶつかる。

「「ウオオオオオオオ!!!!」」

 雄叫びをあげながら戦う。そして、

 決着はついた。

 毅然と立つ白組の騎馬と騎手。

 騎馬が崩れ、仰向けに倒れた白組の大将。その天に突き上げられた右手には赤のハチマキが握られていた。

『白組の勝利です』

 ぶぉお~~~~!

「「「ウオオオオオオオ!!!」」」

 




 こんな体育祭のチーム分け、母校にもなかった。提案したらやりかねないけど。まあ彼奴らは彼奴らで雨天中断時にリバース原人とか寸劇とかパフォーマンスをしてたが。しかし創作物の体育祭で雨天中止になってパフォーマンスで盛り上げるってどうなんだろ?ゲームだったら分岐でありかもしれんが。
 そしてこいつら、球技大会もそうだが学校行事で求道や覇道を使うな。なお、暴発なので制御不能。
 因みに騎馬戦は軽く流して終わらせる予定だったのに、興が乗って偃月で新旧会長同士の決闘だけ加えて終わろうと変わって、そして並列陣擬きで突撃になった。どうしてこうなった?

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