ToLOVEる~守銭奴が住まう町で~   作:ド・ケチ

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番外編 2-破 球技大会 準決勝

 準決勝第1試合、

チーム【生徒会長】

チーム【バスケ部精鋭】

 

 前評判通りの2強がついにぶつかる。

 

「で、何でオレが解説せにゃならんのだ?」

 特設の解説席で生徒会副会長、阿部誠司がぼやいた。

「知名度と能力を併せ持った人達がほとんどこの試合に出てるんで、他にいないんですよ」

 放送部の2年生新谷(あらたに)恒美(つねみ)が理由を述べた。 (なお男の娘)親はどうしてこの名前にしたんですかね? (カープファンかもね。) (そんな名前の選手が) (いたし。)

 

 以降会話だけなので台本形式

 

阿部「じゃあ次の試合と決勝の解説は大居選手か片羽選手だな」

 (なんで) (俺やねん。)

新谷「そこはバスケ部元部長ではないんですか?」

阿部「解説に向いてるのは片羽選手の方だよ。というより、今大会のベストメンバーに入るだろあの1年は」

新谷「そこまで言いますか?」

阿部「言う。大概の人間なら大居選手と片羽選手はまず間違いなくメンバーに入れる。それくらいずば抜けている。ただし2人の相性は悪そうだが」

新谷「2人とも1試合も出ていませんが」

阿部「準決と3決か決勝、この2試合だけで2人を評価するには十分だろ、体育の授業の話を聞く範囲では。

 それ以上が出てもオレは驚かんぞ」

新谷「そうですか。では、それ以外の注目選手は誰でしょうか?」

阿部「やはり上がるのはバスケ部の元部長の大庭選手だな。

 技術はやや劣るが、上背、パワー、スタミナそれぞれがずば抜けている。スタミナ不足らしい片羽選手がバテてきてからが本領発揮の期間だ。

 もう1つ可能性もあるが」

新谷「成る程成る程。では反対に、生徒会長チームでキーマンになるのは誰でしょうか?」

阿部「高さはないが、パワーとスタミナで対抗できそうなのは1年守金選手だな。ここが何れだけ抑えれるかが2番目の勝負の分かれ目だろう」

新谷「2番目ですか?」

阿部「そう、2番目。お互いの切り札で差がつきすぎるなら、その切り札だけで勝負がつく。会長有利だと思うが、そこである程度食い付けたらバスケ部側にチャンスがあるだろうね。そこで大庭選手がどれだけ守金選手を突き放せるかになってくる」

新谷「さてここで試合が開始します。先ずはバスケ部チームのボールからスタート、切り札の片羽にボールがなんじゃこりゃ⁉」

阿部「先ずは挨拶代わりの超ロングレンジスリーポイント。自陣ゴール下から相手ゴールへ直接入れる冗談みたいな遠距離攻撃だ」

新谷「自陣で守りを固めていたチーム【生徒会長】にはなす術がありませんでした。しかし何処かの漫画のようなシュートが挨拶代わりですか?」

阿部「そうだよ。だって体育の授業でやっていてクラスメイトの守金選手が知らない訳はないんだし」

新谷「それでは何故フリーにしたのでしょうか?」

阿部「だから挨拶代わりだよ。そして返答がくるぞ 、ほら。会長にボールが渡った」

新谷「こっちもなんでやねん⁉」

阿部「高い弾道の超ロングレンジスリーポイント。緑に近いのはこっちだな。そして挨拶も終わって、さあここからが試合開始だ」

新谷「じゃあこの試合は遠距離砲の撃ち合いですか?」

阿部「ならないだろうね」

新谷「へ?」

阿部「というよりも、なったら会長が勝つよ」

新谷「というのは?」

阿部「スタミナとボールの滞空時間がキモだ。超ロングレンジスリーポイント……長いから略さないか?」

新谷「じゃあスーパー(S)ロング()レンジ(R)でSLR砲でどうですか?」

阿部「じゃあそれで。

 SLR砲の撃ち合いだと通常のバスケと逆で自陣ゴール下で攻めて相手ゴール下で守る事になる。そして守りと攻めの切り替え時間は通常より時間がかかる」

新谷「フムフム」

阿部「シュートを射ってから守りに入るまでの時間はボールの高い会長の方は気にしなくてもいいが、片羽のは弾道が低い分相手の攻めが早くなる。要は会長は攻撃防御両方参加できるが、片羽は両立できない。その差が大きくなる。加えてスタミナで片羽は勝てない」

新谷「チーム【生徒会長】、オールコートであたっています。SLR砲を警戒するなら当然でしょうか?」

阿部「加えて他の技能も高いからな、あの2人は。カバーとかを考えたらこうなるのは必然。

 そしてマッチアップは予想通り生徒会長大居選手対片羽選手、バスケ部元部長大庭選手対守金選手、となると動かすのは第3局かな?」

新谷「というのは?」

阿部「片羽選手は封殺される、元部長は動かされる側、試合を作れるのはバスケ部の現部長、保伽(ほとぎ)(れん)選手あたりが妥当になるんだが……」

新谷「解説がおっしゃる通り保伽選手にボールが渡った!」

阿部「マッチアップは博士か」

新谷「九十九選手の事ですね。しかし頭脳戦特化のイメージで運動能力が高いとは思わないんですが」

阿部「確かに学年首席をとれる学力はあれど、身体能力は低い。けど、運動神経は抜群なパターンだ」

新谷「矛盾してませんか?」

阿部「そうでもないぞ。野球のバッターなら、当たるけど飛ばないというパターンが代表だろ。加えて九十九選手の場合は読みが鋭いタイプ。まあフルスイングでもろくに飛ばないんだが、真芯で当てるのは上手い。ノーコン速球だと読めないから三振を取りやすいそうだが」

新谷「それはなんと言いますか」

阿部「逆にゲームメイクは上手いはずだぞ。だからこそ、そろそろ動く!」

新谷「保伽選手、抜いたー!」

阿部「いや」

新谷「遠山だ!ボールを奪ったー!」

阿部「止めれないから、わざと抜かせて誰かに捕らせればいい。それをできるのが九十九選手だ」

新谷「貴方達も予選でやってましたよね⁉

阿部「ちょっと違うよ」

新谷「っと、ここから速攻!バスケ部1年遠山からパスが副部長、田中に渡ってシュート!決まった!」

阿部「少し荒いパスだったが田中選手にとっては許容範囲みたいだな。やはりバスケ部同士、どの程度まで無茶振りに付き合えるかわかっているようだ」

新谷「ところで、【下克上】と九十九選手との守備の違いは何ですか」

阿部「うちらのはあくまでも打ち合わせを含めた連係プレー、九十九先輩のは即興だ。どちらが厄介かは言うまでもないだろ」

 (その代わり、)(誰もができる点が)(厄介過ぎるんですが。)

新谷「さて、再びバスケ部精鋭チームのボールからですが、どう動くと思われますか?」

阿部「オレならもう2、3回は保伽に任せるだろうけど、ここも相性が悪いからと他の選手に任せると場当たり的な攻撃になるだろう。その場合、九十九選手の独壇場になりそうなんだよな」

新谷「やはり保伽選手と九十九選手のマッチアップだ!」

阿部「今度は抜かずにパスを田中にカットさせるか?」

新谷「ああっと⁉解説の発言通り田中選手パスカット!ここは攻めずにいったん遠山選手にパスを回す!」

阿部「九十九選手にパス、フリーの空間に弾いてそのままシュートかな?」

新谷「おおっと!解説の予言的中!九十九選手がトスを上げるように弾いたボールを田中選手そのままダンク!」

阿部「このパターンが生徒会長チームのゆっくりな攻撃パターンの基本になる。というより、体育の授業はこんな感じらしい。

 九十九選手にとってはボールを持たせるととられかねないから、誰かのパスを弾くように回すのが1番安全だろう。そして彼にパスを回さずとも、囮には十分だ」

新谷「ということは生徒会長チーム有利ですか?」

阿部「穴はどちらにもあるから一概にはいえない。そろそろあの男がキレるころだ」

新谷「大庭選手にボールが渡りましたよ?なんでですか?」

阿部「困った時のキャプテン頼り。今年のバスケ部はそうやって戦ってきた。まあ、それが完璧なら全国で良いとこに行けただろうが」

新谷「しかし相手は守金選手ですが」

阿部「この場合は元部長の方が技量的に上だから、慣れないうちは問題ない。後半は難しそうだが」

新谷「おお!大庭選手守金選手を抜き去ったと思ったらそのままパス!そしてリターンをもらうとドリブルでかけ上がる!」

阿部「適当にパス回してたな。次同じ事をやると九十九選手が邪魔しそうだ」

新谷「田中選手ヘルプに入るもここでゴール下から外へパス⁉バスケ部1年青野選手にボールが渡った!」

阿部「リバウンドでは元部長のいる【バスケ部精鋭】が有利だからな。そこそこ期待できる青野のスリーポイント狙いは悪くない」

「決まった!これで1点差!」

「言いたかないが、前半戦はチーム【生徒会長】が優位に進みそうだな。点数比は5対4くらいか」

前半終了

 

新谷「前半終了のスコアは32対27でチーム【生徒会長】がリードしてます。だいたい予測通りでしたね」

阿部「後半勝負に仕掛けた奴とそれに乗ってやった奴がいたからな。思ったほど点が入らなかったのも予定通りか」

新谷「他の試合結果を見て点数を言いましょう。前半だけで一試合分の点が入ってますよ」

阿部「あの2チームの得点調べてから言え。明らかにスローペースだ」

新谷「しかし、誰の狙いですか?」

阿部「後半勝負にしたかったのは片羽選手。前半は要所要所でしか動かず、露骨にスタミナを温存していた。

 一方の大居選手は先輩の威厳か強者の余裕か、ほとんど動いてない。アレでいてスタミナあるからバテるとは思わないから、前半は手札を見せず、真っ向から片羽を破るつもりだろ」

 

 

新谷「さあ後半戦始まりました。両チームとも前半とメンバーの入れ換えはなし、先ずはチーム【生徒会長】のボールから。大居選手にボールが渡る。そしてこれを止めるのは片羽選手……少し……いえ、かなり遠く無いですか?」

阿部「遠いな。だが片羽選手は極限集中(ゾーン)に入っているんだろう。というか、自在に入れるのかもしれんが。

 極限集中(ゾーン)でならSLR砲にギリギリ届くとみたんだろ」

新谷「射ちますかね?」

阿部「性格的に射つだろうね。多分、フェイント噛ました後に」

新谷「大居選手、ドリブルしながら左右に小刻みに揺れてドリブルで仕掛ける。おおっと!急加速からのフェイントで片羽選手バランスを崩した!そして大居選手は無理に抜かずにSLR砲を放つ!しかしブロックだ!片羽選手間一髪ブロックできた!」

阿部「大居選手のアンクルブレイクだ。予想されてたからか、極限集中(ゾーン)だからか、どうやら不発に終わたがね。

 それを嵌まったかのように体勢を崩したように見せた片羽選手の作戦勝ちだな」

新谷「弾かれたボールは大庭選手がそのままドリブルからのレイアップで32対29、スリー1本まで追い付いた!」

阿部「次、大居選手はもう1回SLR砲を狙うな」

新谷「それはどういう意味でしょうか?」

阿部「生徒会長、かなり負けず嫌いなんだよ。普段ニコニコと()かしているところがあるような人だけど、勝負になると人が変わる。まあ常にニコニコ状態だから顔にはでないが。だから次、SLRを狙うぞ。ほら」

新谷「おおっと、大居選手にボールが渡った!そして流れる様にシュートを放つ!片羽選手遅れて飛ぶも届かない!

 これはどういう意味なんですか?」

阿部「フェイントの逆だよ。シュートにいかなそうな雰囲気をだしたままシュートをすると反応が遅れる。次からは効かないだろうし、性格を熟知してたら予測はされただろうが」

新谷「そしてチーム【バスケ部精鋭】片羽選手にボールが渡っ……いきなりSLR砲を射った!」

阿部「大居選手のミスだな。片羽選手、フェイントとか上手いから、逆に射たないふりもまた上手みたいだ。さっきのお返しといったところだな」

新谷「そしてここでメンバーチェンジ!チーム【生徒会】は九十九選手がベンチに帰り、生徒会庶務の郷田選手がでて来ました」

阿部「守りの一手だろう。少し早いが多分、片羽選手封じの一手だ。それと攻撃のリズムを変える意味もある」

新谷「郷田選手はどのような選手なのでしょうか?」

阿部「ムキムキな筋肉からわかると思うが、運動能力に特化した選手だ。その分頭に問題はあるが、高校生活やスポーツに使う分には問題ない。生徒会活動も十分にこなしている」

 (それは貴方の理想が) (高いだけ。)

新谷「それは貴方の理想が高いだけのような……その郷田選手にボールが渡る!落ち着いてますね。保伽選手が九十九選手に引き続いてマンツーマンで対峙します」

阿部「ドリブルで時間を稼げるのが九十九選手との1番の違いだが。しかし両利きがここで役に立っている」

新谷「右対右の方が左対右よりもボールを奪い易いですからね。それと大居選手以外はみな攻め上がってますね。ってこいつもSLR砲かっ⁉」

阿部「これは入らないからアリウープだな」

新谷「守金選手ダンク!37対32!」

阿部「九十九選手との違いはもう1つ、筋力を活かしたロングパスだ。そして九十九選手と攻め方が違い過ぎるから、修正に手間取りそうだな。いっそのこと組み合わせを変えてもいいんだが……どうするかね?」

新谷「さて、攻守切り替えて片羽選手にボールが渡ります。対してこれはダブルチーム?!」

阿部「スリーだけ警戒、パス回しからの中は仕方がない、そういう陣形だな。SLR砲を除くとスリーで7割程度が期待できるのがバスケ部1、2年コンビの2人だから、多分そこは抑えるだろ」

新谷「どこから7割が出ました?」

阿部「全部スリーポイントでリバウンドを全てとられた時と、全てツーポイントで全て決めた時、どちらが効率が良いかという話。リバウンドがいいなら多少低くてもプラスにはなるが、前半戦のシュート成功率を省みるにそのくらいは必要だ」

新谷「しかし片羽選手、左右に高速で切り返すも進めません」

阿部「フリーの選手がフォローに行くのが普通なのだが……ああ、フリーなのは3年の是藤(これとう)選手か」

新谷「確かバレー部の元部長でしたよね?長身でブロックが得意な選手でしたか?」

阿部「そうだよ。予選でも何本もブロックを決めている。他にもジャンプ力は凄いからリバウンドも優秀だ。

 逆にセオリーとか少し弱い。これがもう1人の3年、山中選手ならサッカー部での経験で直ぐにフォローにいったかもしれないが」

新谷「ここで8秒ルール!攻守切り替わります。そしてここでメンバーチェンジですか?」

阿部「1年守金選手に変わって3年九十九選手?」

新谷「これの意味は」

阿部「他の誰にもわからない理由があるのだろ。例えば、九十九の作戦をマネージャーに預け、守金選手に読ませてから試合に戻すとか」

新谷「その手がありますか」

阿部「しかし荒れそうだな」

新谷「それはどういう意味でしょうか?」

阿部「片羽の様子がおかしい」

 (おかしかったら) (笑おう。) (はっはっはー)

自分でボケましますか。

 (あまりに真面目な) (空気が長すぎて。)

新谷「それはともかく試合再開です。郷田選手のパスが大居選手に渡……らない⁉片羽選手何処から出てきた⁉そしてそのままシュート!37対35!」

阿部「だいたいフリースローラインから出てきたぞ。あの動きだと多分、コート全面何処にでも間に合ったんじゃないか?」

新谷「いやいや、あり得ませんよ!速すぎます!極限集中(ゾーン)でも有り得ませんよ!」

阿部「極限集中(ゾーン)に火事場のクソ力でも無理だろうな。となると、会長が言ってたアレの事かな?」

新谷「アレとは?」

阿部「確か【求道(くどう)】だったか」

  (なにそれ?)本人は知らない模様。 (というか、理性が) (吹き飛んでます。) (教えて貰えるの) (だいぶ先だし。)

新谷「クドウですか?それはどのようなモノなのでしょうか?」

阿部「伝聞だから詳しくは知らないぞ」

新谷「構いませんよ。明らかに極限集中(ゾーン)では説明できませんので」

阿部「といっても個人的には極限集中(ゾーン)の上の状況としか知らんがな。どうすればなれるのか条件とかよく知らないし。わかっているのは自分の理想に自分を近づける、それこそ常識とか自然科学とか全てを無視して体現できるとしか。【大欲界 守銭道】もこれに分類されるそうだが、詳しくは会長に聞け。他は知らん」

新谷「弱点や対策はあるのでしょうか?」

阿部「オレに教えたのは会長だぞ。対策はあるのだろうな。ああ、それで守金選手を外したのか」

新谷「ここで【生徒会】チーム、タイムをとります」

阿部「キーマンは守金選手、誰を外すかで作戦もわかりそうだが……」

新谷「押せ押せの【バスケ部精鋭】チームですがどうなのでしょうか?」

阿部「片羽選手が軽い暴走状態だからな。片羽選手に回せとしか作戦の立てようがない。問題は片羽選手が機能しない時なんだが……」

新谷「あり得ますか?」

阿部「少なくとも【大欲界 守銭道】なら自分や片羽選手、あと会長なんかでも防げるくらい欠点がでかいんだ。片羽のも何らかの欠点がある可能性もあるし、それを会長も知っている可能性もあるんだよな」

新谷「試合再開!メンバーチェンジ、郷田選手がベンチに戻って守金選手が入ります」

阿部「さて、どうくるか」

新谷「守金選手からボールがコートに入れられる。通る?」

阿部「普通の高校生の守備力でさえカットできそうだが……何らかの弱点に引っ掛かったのか?」

新谷「弱点ですか?」

阿部「例えば守金ならここで小銭を落としたら試合そっちのけで飛んでくるぞ。多分、大居選手を完璧に封じれる代わりに他は何もできないとかそんなところか?」

新谷「では試合の行方は……」

阿部「攻撃力不足で終了だな」

 

 

 

《center》試合結果

59-45

【生徒会】チームの勝利

 

 

 




タグにクロスオーバーを付けるべきかいなか。というよりも、球技大会で求道を使うなよと言いたい。大欲界守銭道を主人公は使ってないのに。

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