ToLOVEる~守銭奴が住まう町で~ 作:ド・ケチ
「おいしー このスープ」
片羽家の食卓で何故かララは食事をし、味噌汁に満悦だった。
「時にララさんや。何故婚約者の守金の家でなくここで食事をしているんですかね?」
食事を作って装ってまでしてようやく今さらな疑問だった。
『守金様を知ってらっしゃる貴方様がそれを仰いますか?』
「その一言で納得できてしまう守金のドケチっプリが恨めしい!」
守金の家を知っているから言える。
『むしろあんな場所で1人で
「なんたってテントだからな。山の中で1人暮らしという。
夏場で1日2日ならキャンプ道具持って遊びに行っているけど、長期間棲むのは無理だ」
テントに表札を付けるほどの撤退ぶりだ。流石にそこで住めとまでは言えない。
だからといって片羽の家で過ごすのはあまりよろしくない。浮気だなんだ言われて慰謝料をとる為に奮闘する守金を想像する片羽だった。それが守金の狙いだろう。
ピ ン ポーン♪
「少し早いな」
何でわかったのか
「誰か呼んでたの?」
「そ。頼りになる援軍」
そして2人で玄関に着いた。ララは食事を続行してもよかったのだが、誰が来たか気になったようだ。
「ヤッホー」
「ヤッホー!」
来訪者の挨拶を真似するララ。片手を上げる動作つきでだ。
「君がララさんだね?」
「そうだよ!」
「あたしゃ雛野だよ。雛野昂音」
「悪意を持ってピヨ子と呼んでやるとキレるぞ」
何故か割り込む片羽。悪意を持った悪口はキレても当然だと思うのだが。
「そう呼ぶのはあんたがキレた時だけよ」
「よろしくピヨ子!」
「止 め な」
……自分で振っといて視線で殺す魔王をチョイスする千夜さんの鬼畜さに脱帽です。
ともかく、眼力にやられたらララはコクコク頷いた。
「ちなみに守金の幼馴染でもある」
『何処が援軍なのでしょうか?』
「幼馴染の幸せを願って何がいけないのかな?
かな~?」
絶対に願ってない顔だ。
「本音を漏らすと、幼馴染だという理由で守銭奴のストッパーを任されるのは嫌だから、もっと適任者、例えば恋人とかに回したいというところだ。自分の恋の為にも」
「中学からは片羽君がストッパーしてくれるからだいぶ楽になったけどね。何で時たま2人揃って暴走すんのよ?」
「楽しいからに決まってるだろ」
とまあこういった理由で守銭奴の幼馴染はララ側についた。なお、ララも一緒になって暴走しそうだということは伏せておく。
「ついでだから飯食ってけ」
「何が狙い?」
「狙いというほどでも。2人で飯食うよりも3人の方が言い訳がたつ」
浮気を疑われる事に対して。
「地球の食べ物っておいしいんだね!」
「料理人の腕が良いのよ」
「ありがとよ」
ちなみに守金に金を積んでも美味しい料理は作れない。基本はできるのでそこそこの料理は作れるのだが、善くも悪くもレシピ通りにしか作れない。まあ大概の場合はレシピ通りに作れれば十分なので、この場合経験則でレシピ以上を作れる片羽が凄いのである。
3人は野郎の手料理を食べつつ雑談、主に守金について華を咲かせた。
「食事も終わったところで、雛野の家に行ってもらう」
「どうして?」
「俺といて守金に浮気を疑われたくないからだ」
電話で既に話は通してある。
「宜しくね、ララさん」
「宜しく 昂音‼」
「じゃあ送ってくぞ」
「いったい一石何鳥を狙ってるのよ?」
有無を言わせず付いていくという、片羽の策の一環に対して何処まで考えているのか聞かずにはいられなかった。
「狙えるだけ。今回は運が良ければこれで終わり」
「あんた、自分の運がどれだけ悪いか知っててそれを言うのかな?」
3年間の付き合いで知った片羽の考え方と運の悪さ
戦慄する雛野だが、片羽は何時も通りの何も考えてなさそうな顔でしっかり考えてた。そして考えた通りになるように誘導していく。彼は2人を送って行く。途中開けた川沿いで呼び止められる。
「ララ様っ」
やっぱり悪運を引き付けたと雛野は片羽を白い目で見る。片羽からすれば面倒事が早く終わって万々歳なのだが。
「ザスティン‼」
鎧姿のマントをした銀髪の男がいた。何故か現在進行形で犬に噛まれているが。
「あんた、これを予測してたの?」
「大筋ではな。犬と格好は想定外だが」
下っ端がダメならそこそこのお偉いさんがくる。お偉いさんに
「フフ……全く苦労しましたよ。
警官に捕まるは犬に追いかけられるは道に迷うわ……」
「そんな格好をしていて捕まらないと思っているセンスを疑うわ。警官は頑張ったよ。犬はどうでもいいけど」
「他のも見て思ったが、揃いも揃って基本的に考えが自分本位なんだよ、コイツら。郷に入ったなら郷に従え。犬はどうでもいいけど」
愚痴る男に対して率直な感想を述べる地球人2人だった。
「これだから発展途上惑星は……」
「締める?」
「手加減はしない」
地球をバカにされて2人のコメカミに青筋が浮かんだ。
「しかし‼それもここまで‼さァ私と共にデビルーク星に帰りましょう。ララ様‼」
「それがそういう訳にもいかないんだよな」
ここで
「どういう意味だ地球人」
「ララさんが俺の親友にプロポーズしてな。俺としても親友には幸せになってほしくて
「そうよ。私この星に住む長太の事好きになったの‼だから長太と結婚して地球に暮らす‼」
さて、どうでるか?片羽は考える。強行策か一旦戻るか?それならもっと上の人間が出てくる。逆にそれ以外の手段がとれる場合はザスティンをどうにかすればいい。
「成る程、そういう事ですか」
何か考えてるザスティンに片羽はデビルーク星に対して警戒心を
「部下からの報告で気になってはいたのです。ララ様を助けようとした地球人がいると」
「わかったら帰ってパパに伝えて!
私は帰らないしお見合いする気もないって‼」
「いいえ、そうはいきません」
そりゃそうだと地球人2人はわかっている。此処までは予測できていた。できていなかったとすれば、
「このザスティン、デビルーク王の命によりララ様を連れ戻しに来た身」
「「ぶっ⁉」」
想定外に地球人2人が吹き出す。
「ララさんって王族だったのか⁉」
上流階級だとは確認したがそれほどとは思っていなかった。
「聞いてないわよ。まぁ、あんたのリアクションで知らなかったのは理解したけどさぁ」
ぶっちゃけ宇宙人の上流階級が地球と一緒とは限らないし、地球であっても国によって形が違うから詳しく聞かなかったが、これは片羽のミスである。星の名を関している以上、王の意思は星全体を動かせると見ていい。これは下手を打つと地球が滅ぶ。もしもの時にデビルークの違う人の力を借りる予備の案がパーになった。
ただララにとっては幸運で、片羽はララが王族だと知っていたら無理やりでも星に返すように動いていた。そしてこのタイミングで今さら戻せない。
「
こうなったら守金を高値で買ってもらうしかない。地球の運命は守金
「守金ー!お金の匂いだよ!」
「お・か・ね!」
ズバーンと
「説明しよう!守金長太はお金好きで、金儲けのチャンスだと叫べば大急でやってくるぞ‼He162戦闘機より、ずっとはやい‼」
……何故マニアックにマニアックを重ねたものをチョイスした?
「音速を超えられるはずがないだろ⁉」
「え?超えれないの?」
因みにHe162はサラマンダーと呼ばれ、音速を超えない第1世代ジェット戦闘機に分類される。さっきのセリフ、ルビを入れて表記するなら『
片羽はそのネタをやりたかっただけという。
「百万とか懸かってたら出来そうだけどなぁ。音速」
「人をなんだと思っているんだ?」
「【大欲界 守銭道】」
「それ呼ぶのお前だけだろ!」
何故呼び出したらこの2人は漫才をするのだろうか?
「あたしも呼んでるよ」
雛野の言葉に裏切られた様な顔をする守金。
「他にも呼んでる奴がいるけど、知りたいか?」
「いいや、いい」
知りたくないという意味で。
「とりあえず状況を説明するんで少し待ってください」
そして端的に状況を説明する。
「彼処にいるザスティンさんがララさんの婚約者である守金の実力を知りたいんだと」
「オレにメリットがないじゃないか!何処に金の匂いがあるんだよ⁉」
婚約者には突っ込まないんだな。思ったがそこはスルーして会話を続ける。
「じゃあ、ザスティンさんの剣をかけて勝負とかはどうですか?一方的なデメリットだけを呑ませようとする野蛮な人じゃないですよね?結構な身分のお偉いさんがそんな野蛮な事ができるわけないし。普通のセンスがあれば負けた時のデメリットがあるべきでしょう」
発展途上惑星と言われた事に腹をたてている模様。
「野蛮なことをするんじゃないの?文明が発達すると心が貧しくなるみたいだし」
更に挑発を加える雛野。
「そこまで言うなら良いでしょう。私は剣を賭けましょう」
目に妖しい光を灯してニヤリと笑う守銭奴、策士、魔女の3人。たかが発展途上惑星の地球人と舐めているザスティンには気がつかない。まあ宇宙広しといえども、守金のようなお金が絡むとパワーアップする生き物が他にいるとも思えないから仕方がないのかもしれないが。
「やるぞー!」
「貴様の実力を見せてもらう」
そう言ってザスティンは構えた。
「じゃあララさん、合図を頼む」
「長太!頑張れ‼」
ドゴン
声援と同時に飛び出した守金が拳を振るう。同時に破裂する爆音。雛野は質問する。
「あの音ってなんなのさ」
「多分、
拳の速度が音速に至ったが故の爆音。片羽はぼやく。
「金がかかったら音速超えたじゃないか」
ドゴン
両の拳から繰り返される爆撃をザスティンはかわす。それだけの攻撃なら反動で守金の腕もダメージを受けそうなものだが、
「凄い!長太頑張れ‼」
デビルークNo.1の剣士と呼ばれるザスティンを追い詰める守金を応援するララ。が、相手が誰かよく知らない地球人はザスティンの動きに注目する。
「凄いわね、ザスティンっていう人。守金の攻撃を凌いでいる」
「大振りだからな。ある程度の実力があれば軌跡を予測できるから不可能ではない。まあ地球人にはほとんどいないだろうが」
『私は長太様の実力に驚きなのですが』
「「【大欲界 守銭道】だし」」
親友と幼馴染の意見は一致している。故にそこは驚くべきではない。が、雛野の経験則や片羽がとってきたデータからすると、守金はそろそろバテる。
「ザスティンさんって何者だ?」
『デビルーク王室親衛隊長にしてデビルークNo.1の剣士です。今は専らララ様の護衛ですが』
「じゃあその剣を貰うって別の意味があるな」
ここで知った情報から片羽は更なる燃料を投下する。
「勝ったら剣以外にも貰えるものがあるぞ」
「ゴフ⁉」
守金の拳はザスティンのみぞおちを捉え、突き飛ばした。壊れた鎧が溶けているのに気がついた片羽は頬を痙攣させていたが。
「そこまで!」
勝負を止める。
「ザスティンさん、これが守金、俺の親友です。彼になら託して良いでしょう?」
「ええ。私の負けです。彼になら託せます」
そうしてザスティンは改めて守金の方を向く、
「どうかこの剣に賭けて、ララ様をお守り下さい」
「……どういう事だ?片羽」
剣以外の変な物に対して知っているであろう、ニタニタ笑っている親友に質問した。
「冷静に考えろよ。護衛から武器を譲り受けるという事は、
婚約者兼ボディーガードを頑張れ!良かったな、役割も貰えて。
あと、凄いけど売れないだろうなぁ、この剣」
見事、一銭にもならなかった。
「じゃあ長太、改めてよろしくね‼」
抱きついてくるララを無視して叫ぶ。
「お前絶対にオレの敵だろ!」
「今さら何を言っている?俺は何時だって楽しい方の味方だぞ」
先生「転校生の紹介をします」
片羽「ネグレクト」
雛野「おいしいわよ」
守金「どういう手品だ⁉」
ララ「やっほー‼長太!」
守金「わかんねぇーよ!」
雛野「いまさら⁉」
片羽「この書の力、侮るな」
ララ「あれ?長太は?」
ペケ『無視して良かったのでは?』
守金「当たり前だ、親友」
片羽「エロい話ではない」
雛野「それはろくでも無いこと?」
守金「宇宙人から慰謝料貰うわっ!」
次回
原作3話相当。原作2話?守金に隙がなくてララが学校にいく要素がなかったので発生しなかった。仮に行ったところで原作のようにはならないけど。
人物設計初伝②
雛野 昂音
守金の幼馴染。普通にラブコメさせるなら彼女とララと守金の三角関係になるのだが、普通の感性を持っているなら守金に対してドン引きする。ドン引きしても幼馴染だからという理由で小中共に守金のコントロールと後始末を任されていた。中学の途中から片羽が守金
今後はララ等宇宙人を加えた多人数の後始末に回る破目になる予定。片羽の予定以上に。
書いてて思う、彼女が一番不幸や。
ララ・サタリン・デビルーク
本来であれば今回の内容部分でリトに対して恋に恋している状態になる。つまり、此処までは打算で動いていた。今回の話でも特に好感度を稼いでいないので、引き続き打算で動いていく。そこが原作と大きく違うところ。
原作物語同様にララの内面をわかった振りしてザスティンを説得できた可能性はあるが、守金はあんなキャラクター、片羽は絶対に言えない(別れ話により守金から慰謝料とられる事を危惧して)、雛野はまだララを知らないと、言える人がいない。可能性としては雛野がララを一番理解できそうな気もする。
ところで、完全な蛇足なのだが、ララは1日目、何処に泊まったのだろうか?原作で描写がない。
ルビだけ伏せるとかできないもんかねぇ。できたらバーサーカーに■■■としゃべらしてルビで反転させてネタバレ喋らすとかできたんだけど。
「今のところこれが精一杯。これに!とかを組み合わせるしかないかな?」
《》と|が干渉するせいで普通にやると上手くいかない。