ToLOVEる~守銭奴が住まう町で~ 作:ド・ケチ
「紀刻先輩、夏休みに何故他校に行くんですか?それも制服で」
彩南高校の前に呼び出された片羽は紀刻に質問した。
「私、宇宙人なんかとのやり取りもあるけど、他にも幽霊と妖怪とかの退治も仕事なのよ」
ギ・ブリーの変身能力と見た目から、妖怪と宇宙人を一緒にした可能性があるなと片羽は思って納得仕掛かったが、
「幽霊っているんですか?」
「いるわよ」
「ほう、それは是非見てみたいな」
「なら僕らも参加していいかな?」
2人の背後からいきなり現れた2つの気配。
「生徒会長に副会長ですか?ていうか、2人はなんで制服なんです?」
「学校で会長の悪巧みに加担しようとしたら、悪名高い風紀委員が制服姿だったから会長に電話して着けてきた」
「生徒会業務を悪巧みと言わない。それと僕の方は片羽君をつけてきたね」
こういった気配にはわりと敏感な片羽は気がつかなかった。そして更に気配に敏感な化け物退治の専門家は阿部に気がつかなかった。
「あんたストーカー?幽霊より気配無かったわよ」
内心の動揺を悟られないようにおどけながら半歩下がるが、
「制服で暴力沙汰を起こされたら困るからな。他人の振りよりも止めないとという使命感が勝った」
酷い言い様だった。
彩南の風紀委員と挨拶なんかを交わし、一向は彩南高校の旧校舎にやってきた。
「しかし妖怪に宇宙人ねぇ。いない理由はないし、自分達とは別種の人がいるのは気がついていたから、まあ納得だな」
「「「はぁ?」」」
一堂驚愕して副会長を見た。
「誰が何とは言えないけど、何か足りないんだよ。共感できないと言うか、魂が響かないと言うか。それと長く地球にいるせいなのか、段々地球人に近づいている奴もいるから完璧でもないし」
五感では説明できない何かが足りないと副会長はいう。
「あんた、後で誰が違うか教えなさいよ」
「却下。地球人でなかろうが彩西の生徒だ。差別はダメだろ」
「安全保障のためにも言いなさい」
「馴染む努力をしてる奴とかに、お前地球人じゃないだろバレてるぞと脅すのか?冗談じゃない。今後教えるとしたらカミングアウトしたか、誰かが変わったときだけだ。
あと、この事は誰にも言わないよ。魔女狩りは御免だ」
どちらの言い分もわかるが、片羽個人の心情では副会長寄りだ。そして信頼できると思った。それと
「変わったとはバルケ星人の事を言ってるんですか?竹永先生に化けてた事があるんですが」
「ああ、多分それ。宇宙人自体を知らなかったから、スルーしてたが。何かあったん?」
だとしたら有能過ぎないかこの人。片羽は軽く概要を説明する。
「それが本当なら宇宙人から宇宙人に化けたらわからないけど、地球人に化けた宇宙人は確実にバレるわけね」
目を瞑って一瞬だけ考え、
「いいわ。ただし、誰かが変わった時には直ぐに言いなさい」
「まあそっちは仕方がないな」
そうして一堂は歩いていき、2階に上がって少し進むと一斉に止まる。
「何かいるね」
生徒会長が止まる。
「といっても、ほとんど宇宙人だなこりゃ。そのバルケ星人と同じようなのばっかだし」
「あんた、同業者にならない?他のノウハウを知らなくてもその能力だけで主戦力よ」
「成りたい職はもう決まってるから諦めろ」
そんな雑談をする2人に緊張感はない。なお、ほとんどに当てはまらない例外についてはとりあえずスルーすることにした。
いきなり響く声に片羽や紀刻は警戒レベルを一気に上げるが、
「貴方達が出ていってくださいませんかね?」
副会長は変わらなかった。
「その返しはどうなんですか?」
「ここは私立高校の私有地だから勝手に住み着いたら不法侵入だ。だから出ていってもらわないとな。無理なら理由を教えて欲しい。どうすればいいか一緒に考えるから」
「いえ、そういう意味でなくて」
「知性がある、会話ができる。なら説得ですませれるなら最良だ」
グッと拳を握って力説した。
「調略とは渋いね」
ウンウン同意する会長だった。
「こういうののお約束として紀刻先輩のバトルシーンを期待したんですが」
この面子で1番後輩な片羽はイライラしている先輩を少しだけ見てその元凶を見やるが、
「最善の勝利は戦わずに勝つことだぞ」
「孫子ですか」
頭が良いのか悪いのか判断がつかない会話に軽い頭痛を片羽は覚えた。もっとも片羽のこの思考法は友人達からも批判の対象だったりもする。代表的なところで雛野昂音の兄の勇悟は片羽の基本的な思考法を『攻撃極振り』『どうせ守るならカウンター狙い』とかいったアンバランスぶりに危惧している。まあこの辺りの思考は多少意味合いが違うものの紀刻も似たり寄ったりだが。
「戦うのは紀刻さんにしかできないだろうけど、戦わないで矛を納めさせるのは他の誰かでもできそうだから、今後似たような騒動があったら参考になるだろうね」
唯一の3年としてか生徒会長としてか、副会長の方針を支持する。
「だから無理だって……」
ビシビシッ
足元から音が鳴る。
木造の床は大きく
「みんな無事……みたいね」
床が崩れるより早く離脱した紀刻は周囲を確認して安堵しようか呆れようか判断に迷った。
「みんな運動神経良すぎない?」
少々良いくらいなら確実に落ちていたのだろうが、全員無事で動揺しているものもいなかった。
「腐っているがいきなり崩れるとは思えない。崩されたかな?」
大穴を見ながら副会長は見解を述べた。
「じゃあ君ならどうするのかな?」
「相手が進ませたくないなら進めばいいでしょ?彼方に殺す気はないようだし。下手に怪我をさせて大事になったらこの建物そのものを学校は壊すだろうし、大した事は無理でしょ」
「そんなところだな」
「ですね」
会長の質問に副会長はスラスラ答えて妥当と判断する男2人。
「少し詳しく説明して」
おそらくこの中で最強の脳筋はわかっていなかった。
「本気で怪我させるなら天井落とせばいいじゃん。まあ火を放ってもいいかもしれないけど、してないでしょ」
「そういう意味でなら説得できそうですね」
「他の宇宙人を知らないからあんまり言えないけど、人とは姿が違いすぎるんだろうね。だから無人の旧校舎を宿にしてるんだと思うけど」
男3人の会話は認識が同じか確認しているだけであった。故に大前提を理解できない紀刻にはわからない。
「ごめんなさい、理解するのは諦めるわ」
「脳筋だなぁ」
副会長がため息混じりに呟いた。それを言うかと残りの男は顔に出て、対象の脳筋は頬をピクピク痙攣させていた。
「オレ達を殺す気ならもっと効率のいい手段がある。けど使ってないから殺す気はない。だけど近づけたくない。
此処まではOK?」
「バカにしてるの?」
「してる」
だから何故煽りますか?副会長と脳筋の会話を距離をとりながら2人は聞いていた。片羽も守金等の親しい相手にはそういうことをするが、阿部副会長と紀刻風紀委員の間にそのような親交はない。
「近づけたくないなら逃げればいいんだよ。それが逃げれないとなれば理由は少ない。じゃあその理由は何かになるんだが、殺してでも止めようとしてないから、
「なんでそんなのを提供しないといけないのよ?地球は地球人だけのものでいいわよ」
「まあそれはそれで立派な右側な意見だけどね。左寄りな意見としては地球のために働いてくれる宇宙人には寛容になっていいと思うよ。逆に地球を売るような売国奴は許さないけど」
「正しい右翼と左翼の会話を久しぶりに見た気がする」
副会長と風紀委員の会話に対して片羽はそんな感想を得た。
「思想的には限りなく左派に近い中道か左派の最右翼かその辺りなんだろうけどね。現状に合った左派かもしれないけど。
まあ法律を守って最初に話し合いで解決しようとするから、別段危険な思想ではないよ」
「権力持ったら粛清しそうなんですが」
「するとしても法律を作って皆を納得させた上でするだろうね。お前らも納得しただろ今さら文句を言うんじゃないと。
ただ、売国奴に対して容赦しないだろうが」
「外国とマスコミから嫌われる人間ですね」
「騙そうとかする人間にはそうだろうね。公正明大な人間に対して後ろ暗い人間は立場が悪いから。逆に何も悪い事をしないならこれ程頼りになる人間はなかなかいない」
「宇宙人を紀刻先輩に教えないのもそういった理由ですかねぇ。むしろ宇宙人は彼にカミングアウトしてある程度協力してもらった方がいい気もしますが……」
「君に友達の宇宙人がいるならそうしなさい。他の宇宙人には説明できる状況が思い浮かばないけど」
宇宙人の存在を秘匿する方針で、宇宙人の相談受付等は大っぴらにできない。なので彼に相談できるのは彼とそれなりにカミングアウトできるだけの信頼を得たもの限定となる。
「できない相談だよ」
ふわりと其処らへんにあった上履きや文房具等が浮かぶ。そして飛んで来る雑多な物を片羽や会長は回避し、紀刻は木刀で弾く。
「超能力とかそういった類いかな?」
暢気な台詞を生徒会長は呟いた。対して更に暢気に副会長は正解を述べる。
「透明人間とかその類いでしょ。宇宙人の気配がありますから」
なので受け止めるくらいは簡単にできたりする。
「副会長、貴方何者ですか?」
「私達と働かない?」
「片羽、お前らの先輩の地球人だ。そして紀刻、職業選択の自由によって却下だ」
片羽はここで深読みする。つまり自分達とは違うタイプの地球人がいるのかと。これはある意味正解である意味違うと気がつくのはだいぶ先の話である。
今度は動く骨格標本と人体模型。
「これも透明人間かい?」
会長の言葉に副会長は否定する。
「違いますよ。これは小人ですかね?沢山の小さな宇宙人が動かしてるみたいですよ。気配が沢山ありますし」
「あんた、本当に人間?」
その感知能力に本職の紀刻は唖然となる。
「あんたがそれ言うか」
確かに竹刀を振り回すと空気抵抗で燃えるというハチャメチャな女傑の台詞ではない。
「と、正体はバレてるんで全うに会話してくれませんかね?」
「副会長、それ話し合いというより脅しです」
片羽の友人達がこの台詞を聞いたら『お前が言うな』の合唱が聞こえただろうが、生憎と此所にはそんな人はいなかった。
そんな脅しの甲斐があったか、人体模型と骨格標本は逃げ去っていった。
愚かなヤツらめ
おとなしく出ていけばいいものを
ビュルビュルと巨大なイカの脚のような何かが壁を壊して飛び出す。壁の側にいた阿部は懐から取り出した金属の何かで弾く。
「グギャ⁉」
悲鳴があがった。出てきたのは巨大なイカのような1つ目の化け物。
「痛覚があるのか」
「というか、何を持ってたんですか?」
「万年筆」
ペン回しをしてる自然体な阿部に後輩は質問した。
「持っていても不自然でなく、攻撃力が高い」
「参考にします」
「しないでよ」
男子3人、こんな状況で緩んでいる。
「あんたら、今戦闘中なのよ!真面目にしなさいよ!」
そんな1人気張ってる紀刻を囮にして阿部は動く。
大きな瞳に寸止めで突き付けられるのは万年筆。
「速い⁉」
「いや、それよりも……」
「攻撃の気配が無かったわ」
誰よりも先に動いた阿部に片羽は驚き、2人は一周回って冷静になった。そして片羽も冷静になって紀刻に毒づく。
「無駄な話とかボケとかで緩んだところを速攻で潰すとか、たまに自分もやるから気が緩んで見えてもいいんではないでしょうか?」
「片羽君も大概だよね」
生徒会長は冷や汗を垂らしながら呟いた。同時に次に副会長がどう動くか注視する。
「さて、良いことを教えよう。仮にオレ達の誰かを傷つけたら、この旧校舎は壊されるよ。だから今まで追い返すだけにしてきたけど、もう無理だ。だから話し合わないかい?」
「副会長、だからそれ話し合いじゃなくて脅迫」
「降伏勧告じゃないかな?」
おそらく普段の片羽以上に容赦がない強制に、
「まだだ」
「失う訳にはいかない」
「クケケケケ」
背後からワラワラと多種多様な宇宙人がやって来た。
「挟み撃ちか」
片羽は阿部と目が合った。そしてスッと床に動いた視線で何を言いたいか把握した。
「マジですか」
呆れながらも大きく脚を振り上げ、
「ふん!」
気合いと共に振り落とされた脚が床を破壊し、宇宙人達を纏めて1階へ落とす。
「やるなぁ、片羽君」
「いい判断ね」
アイコンタクトに気がつかなかった2人は素直に片羽を褒めた。
「さて、降伏か継続か、どちらを選びますか?」
声は優しいけど目は本気だった。
「ほーん。リストラとは大変だなぁ。けど下手に噂が広まると肝試しにくる生徒も増えるだろうし、今やっている事を続けて怪しげな化け物がいると噂になったらより不味くないかな?」
「基本的に宇宙人は地球の文化や政治に対して不干渉が義務付けられてるわ。確か『未開惑星保護条約』というのがあって、地球人が宇宙に自由に出入りできるまではそういうスタンスが義務づけられてるらしいの。だから、彼らはバレたら銀河警察にしょっ引かれるわね。もっとも、私達の本部もただじゃおかないけど」
「知り合いの宇宙人から聞いた話と一致してます。なので宇宙人だとバレるような言動は本来ダメなはずなんですよね。あと、科学を発達させる知恵を与えるのもダメです」
一応専門家と知識だけは仕入れている片羽が副会長に説得する。
「じゃあこういう姿がいても不思議じゃない場所に送れればいい。例えば、お化け屋敷とか。コネを持ってない?」
「流石に
それは普通の人間なら雇わせれるコネがあるということか?恐ろしくて誰も突っ込まなかった。
「じゃあそういう事業を興すしかないのか。ボランティアでどうこうする範囲を越えてるなぁ。軌道に乗るのに何年もかかりそうだし、違う方向で考えるしかないか」
う~んと親身になって考える。
「ところで、そちらの宇宙人さんは何か良い案がありませんか?」
えっとこの場にいた地球人宇宙人が一斉に振り替える。
「気づいていたのね」
「どちら様で?」
「この学校の養護教諭をやっている御門よ」
そんな暢気な会話をする傍ら、
「誰か来たのには気がついてたけど、宇宙人とは思わなかった。見た目も普通だし」
「片羽君、誰か来てるとわかるのも普通じゃないからね」
「上司が聞いたら直ぐにスカウトに来るわよこれ」
そんな地球人を他所に、
「では御門先生には何か良い案があるのでしょうか?」
「君が言ったように、知り合いの宇宙人でお化け屋敷をやっている人がいるの」
「交渉とか任せて良いですかね?」
「いいわよ」
「それと今後こういった宇宙人と合った時用に連絡先を伺いたいんですが。ダメならそのお化け屋敷をやっている業者さんでもいいんですが」
「そうね。話がわかる地球人とのコネは私も必要だし、そっちの子達は悪用しそうだから君だけなら良いわよ」
そうして連絡先を交換する。
「ところで、宇宙人の病気も診れたりしますか?宇宙人を普通の病院に連れていって良いのか疑問なもので」
「それならうちに来なさい」
こうしてスラスラとコネを作っていく。
「副会長ってこういう人なんですか?」
「基本的なコミュ力は高いよ。敵には容赦しないけど、仲間をどんどん作っていって持ちつ持たれつを拡げていく人間だ」
そのコミュ力に少し引いていた。
「そういえば、宇宙人以外の者がいませんでした?違う気配があるのですが」
「そういえば、ほとんどって言ってたね」
今さらながら会長は思い出した。
「因みに、どんな気配よ」
「彩西には無かった気配」
紀刻が質問し、あっさり返す。
「ちょうどあんな感じ」
スッと指を指した先には着物姿の髪が長い少女がいた。
「初めまして、阿部誠司です」
「これはこれはご丁寧に。
私は400年前にこの地で死んだお静と言います♪」
「400年というと、戦国が終わったくらいかー。ひょっとして
「よくおわかりになりましたね!」
これに納得できない者が1人。なお、既に考える事を止めた
「先輩、飢饉はともかく人身御供の理由は何でですか?」
「服装だな」
村娘ならもっと質素な服で、髪飾りもないだろう、そういった理由からの判断である。
「納得しました。あと郷土資料にも精通してるんですね」
「文化祭のネタなんかに使えるからな。知ってて損はないぞ。というより、去年の演劇のネタがそれだったからけっこう詳しいぞ」
その後も和気藹々と会話する阿部誠司とお静だった。
「ねぇ、これが一般的な地球人なの?」
「流石にあそこまでコミュ力お化けはそうそういませんよ」
一緒にされないように会長が代表して御門先生に釘をさした。
今回の目的、御門先生とコネを作ること。出てくる回数に対して重要性があるキャラクターなので絡めない訳にはいかない。そのためイベントが1年近く前倒しになっている。まあ先輩キャラクターを使いたいので原作イベントは色々と前倒しにする予定。原作に対して積極的にデビルーク王の権力を片羽が利用しているので、そっち方面はかなり進展が早くても問題ない。そしてこの世界のホモ・サピエンスはつくづく恐ろしい。当たり前のように視線で会話したり。人間や地球人としないところの理由は何時になるやら。
なお、ここで阿部副会長が参加しないと狂戦士紀刻による虐殺現場となっていた。片羽は暴走する側なので更に悲惨な目に。こいつら思考が攻撃よりなのよね。
そして原作地球人?の村雨静さん。死因は書いてないので捏造です。そしてWikipediaさん調べによる飢饉が
そして郷土史も捏造して、昔はこの辺りが村だった事にすると、服装から神への供物とされたか巫女くらいになる。普通の村娘ならあんな服着てるはずがないと。よし、これなら念動力に言い訳たつな(適当)。
政治でいう右左に色々な基準はあれど、今回は自由と平等で自由を重視するのが右翼、平等を重視するのが左翼としている。個人的に、無政府主義が左派に分類されるのかが納得いかない。あれこそ究極的な自由主義なんだが。右翼左翼を保守と革新で分ける場合もあるから何とも言えない。が、例えば十年続いたルールを守るのと、十年以上前のルールに変更するのではどっちが保守かわからないのでこの区分に意味はないと思う。