ToLOVEる~守銭奴が住まう町で~ 作:ド・ケチ
「ちわー」
夏休みのある1日、リュックサックを背負った片羽、雛野、ララの3名が山の中のテントの前にきた。テントに何故か表札があって、そこには守金と書かれている。
「聞いてはいたけど、本当にそうなんだ」
偶々ついてきた阿部が口をあんぐり開けて呟いた。なお、彼は特に荷物を持っていない。
「ところで、なんでリュックに詰め込める量限定なのさ?」
今回の『守金ん
「限られた条件でどう楽しむかがミソなのに、
やり過ぎるとキャンプが単なるバーベキューになる。それはそれで楽しいだろうが、今回は主旨はキャンプなのでこんなルールを付けた。まあ、ララがいなければ特に付ける必要はなかっただろうが。蛇足だが、最初の食事はバーベキューだったりする。
「ところで、僕も来て良かったの?荷物ないけど」
「流石に泊まれとは言わないが、適度に楽しんでくれればいいよ」
そんなセリフを言いながら片羽の眼は光ってた。何を狙っているんだと普段の雛野なら突っ込むのであろうが、彼女も同じ目をしていた。
「もしかして地雷を踏んだかな?」
1人戦々恐々していたが、それは当たりだと解るのに時間はかからなかった。
「御免帰して!お家に帰して!」
「何を言ってる?まだバーベキューは始まったばかりだ」
「そうそう。気にせずにたーんとお食べ」
逃げ出そうとする阿部を片羽と雛野はガッチリつかんで離さず、
「じゃあララさんは美味しそうに焼けた肉を阿部君の口に入れて」
「じゃあレイジ。あ~ん」
一部男性陣、特に近衛なんかは泣いて喜びそうなシチュエーションだが、
「いやそれカエルのモガ⁉⁉」
口の中に突っ込まれた瞬間、片羽が無理やり顎を動かし、タイミングを見計らって雛野が鼻を摘まんで無理やり飲み込ませる。
「じゃあ次は蛇いっとくか?」
「蝉も食べてみなよ」
2人がお薦めするのは守金の主食の採りたて天然のタンパク源。主に爬虫類と虫になっております。カエルは爬虫類とは違うけど。
守金の弁当を片羽が作っているのは、こんな食材を弁当にして学校に持ってこられたらたまったものじゃないのも理由である。なお、ララは気にせずに美味しい美味しいと食べている。
「トカゲも美味しかったよ!」
「俺的にはカブトムシがお薦めだが」
「本当だー!美味しいね!」
素直に美味しく食べれる2人と、食に関しては比較的常識人な3人では住む世界が違うのだろう。
「て、なんで2人は守金君がとって来た物を食べないの⁉なんで僕にだけ食べさせるの⁉」
至極単純な疑問だが、
「「持ってきた肉を食べるから」」
至極単純な理由で返された。
「それに魚は食べてるぞ」
「あたしは鳥もたべてるわ」
「普通!それ普通の食材だから!」
鳥(鳩)を普通に入れていいかどうかは置いておいて、比較的マトモな食材なのは否定できない。
「残念ながら俺は阿部に肉を譲るつもりはない」
「あたしも人に分ける肉は持ってきてないわ」
「君たちも十分ケチだよね!」
「調味料を持ってきたのは俺だぞ。塩は守金のだが」
「あたし焼き肉のタレを持ってきた」
「それは有難いけどやっぱりケチだよ!」
「文句を言わずに食え」
「た~んと召し上がれ。ララさんよろしく」
「あ~ん」
「お家に帰してー!」
~ 30分後~
一通りげてものを阿部に食べさせた2人は自分達もげてものを食べ始める。なお、この段階になってから2人は阿部に肉を譲りだしたが、もはや彼に気力はない。
「これの欠点は栄養価が高くて美味しいことなんだよな」
「見た目じゃなくて?」
「不味ければ、身体に悪ければ断れるんだよ」
渋い顔をしながら2人は会話しつつも目を瞑って食べる。
「虫はカロリー高いから蛇ちょうだい」
「じゃあ蝉の幼虫はもらう」
なんだかんだ言いながらも、付き合いの長い2人はげてものに慣れている。
阿部に無理やり食わせたのは、嫌がる友人をジェットコースターに乗せたとかお化け屋敷に入れたとか、2人にとってはその程度のノリである。白くなってグッタリしている阿部も、苦手なアトラクションの後の人に被るものがある。
なお、近衛も同じような目にあったのでここに来ることはない。多分阿部も2度と来ないであろう。
因みにこの後逃げ帰った阿部を除き、面々は山で食べられる野草なんかを探したり、川で魚を捕まえたり、食べられる虫や植物を採取(片羽、雛野は虫を採取していないが)サバイバルに励み、最後は花火で締めたとさ。
カエルの肉食べたけど、鶏みたいでオイシカッタヨ。他はまだないけど。
そして阿部。レギュラーキャラクター(不幸枠)昇進なるか?けど、不幸枠は他に候補がいるんだよな。