ToLOVEる~守銭奴が住まう町で~   作:ド・ケチ

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1学期が終わったから夏休みです。7月後半を想定。


fragment4ー1 夏休み アルバイト

「夏だ!海だ!アルバイトだ!」

 バイトの鬼、守金の圧倒的テンションでお送りします夏休みの某1日。服装はトランクス型の海水パンツにTシャツという姿。Tシャツの柄は『海の家 大紅蓮地獄』。

 海の家の名前が寒すぎて肌から血が出るような地獄でいいのか?突っ込む者は誰もいなかった。

「ララさんを呼ぶのはわかるけど、なんであたしまで呼ぶのさ?」

 水着の上に同じTシャツをきた雛野がララを見ながら聞いた。

「保護者兼仲介料」

 前半だけで良いのに後半までつける。

「仲介料は折半でいいだろ」

「まあいいわ」

 一見太っ腹に見えてケチとは違う感じもするが、仲介料は雛野の2分の1、ララの2分の1でトータル1人分貰っている。そしてここで言質をとったため後の追及は意味をなさないし、だからといって最初から黙っているよりは後の険悪になるリスクが低いという長所がある。実にせこい。

「ところで、片羽君は?なんでいないの?」

 この面子が揃っていていないのは珍しい。

「法事があるとかで無理なそうだ」

 雛野は何かの企みか一瞬勘ぐったが、たまたま忙しかっただけのようだ。もっとも、法事自体が嘘の可能性もあるが。

「因みに近衛は……」

「あ、言わなくていい」

 海に呼ぶはずがない。理由はそれこそ言わなくていいだろう。

 

 

 

fragment  夏休み(Summer vacation) アルバイト(working)

 

「焼きそば2つ!」

「かき氷イチゴ」

「こっちはメロンに練乳」

「ラーメンくださーい」

 看板娘と化したウエイトレス2人に殺到する注文。そして、

「金金金金!」

 目を¥にして(よだれ)を滴ながら人外の速度で料理を作る人にお見せできない守金。適材適所の配置といえばそれまでだが。

「おや?デビルークさんに雛野さんじゃないか?」

 2人は驚いた。確かに2人は彼をよく知っているが、彼が雛野を知っているとは思わなかった。

「……生徒会長」

 雛野がポツリと呟いた。

「そうだよ。君たちがいるって事は、守金君もいるよね。片羽君はわからないけど」

「ホージでこれないんだって」

 よくわからないが、聞いたままをララは答えた。

「それは残念」

 ちっとも残念そうに見えないのは、きっと社交辞令だからだろう。

「会長、自分だけ話すくらいなら先に注文させてくださいよ」

「そうよ。私達もお腹減ってるのよ」

「オレビールな」

「冗談でも止めい、未成年」

 会長の後ろからガヤガヤやってくるのは男女合わせて4名。見た目こそ普通の範疇だが、どいつもこいつもただそこにいるだけで周囲を圧倒する雰囲気を醸し出している。

「知ってる者もいるかもしれないけど、一応紹介しておこう」

「いや、生徒会執行部なんてそんなに知名度ないでしょ」

 会長の言葉を止めるのは、この中でも一際存在感の強い男。標準より高めの身長に引き締まった体つき、生徒会には詳しくなくてもこの人間だけは雛野は知っていた。

「阿部誠司(せいじ)さん?」

「おや?雛野昂音さんはオレを知っていたか。ああ、礼治から聞いたか?」

 雛野が聞いた情報源は片羽で、学校で2番目に凄い人にあげていた。因みに1番は会長。

「そんなところです。

 けど、どうしてあたしの名前を知ってるんですか?」

 ストーカーの言葉を飲み込んで質問した。

「文化祭の時に会長の問いかけに呼応してただろ。将来有望とみて、全員ピックアップしている。だからデビルークさんは知らない。本当、なんで知ってんですか?ストーカー?」

 スラスラ名前を出したのはさっき会長が名前を言ったからだ。そしてこっちは飲み込まない。

「どうすればそうなるんだよ⁉」

「まあ詳しい話は後にして注文とってくれ」

 ストーカー容疑を会長にかけるだけかけて副会長は当初の予定を進めた。

「オレはカレーうどんと唐揚げ」

 これは副会長の阿部が。

「カレーとカツ丼5杯ずつ、飲み物の代わりにラーメン3杯で」

 これは書記の小柄な少女が。

「私はかき氷の時雨とブルーハワイ、練乳なしで。あとソーダ1本」

 会計で背の高い眼鏡の少女が

「ビールで」

 庶務の筋肉質な少年が

「「「それは止めい!」」」

 全力で突っ込まれた。

「君たち、人の金だからって注文し過ぎじゃないかな?」

「「「「賭けに負けるお前(あんた)(君)(会長)が悪い」」」」

 全員の声が揃った。

「みんな仲いいね!」

「あー。うちの3バカと同じ乗りかー」

 守金、片羽、近衛のボケとツッコミがコロコロ変わる毒舌合戦を基準に考えれば、仲がいいともいえる。

「というより、カードゲームでアイコンタクトで全ての手札を教えあってる四人にどう対抗しろと」

 彼らもアイコンタクトで会話が成立する人達だった。流石に片羽でもそんな事はしないなと雛野はドン引きしていたが。

「いいえ、そこまで深く会話できるのは副会長と会計だけですよ。残りの人には単純な指示は出してましたが」

 庶務が訂正する。まあそれでも十分な脅威だが。そして副会長は答える。

「1年間の絆がなせる業です。つまり、会長とは絆がありませんでした」

「副会長との絆なんて御免ですけどね。むしろ、なんで他の人とはできないのかしら?」

 そこを悩むところなのか雛野は疑問だった。

「ところで、皆さんはどうしてこられたんですか?」

 ララに他の注文を任せながら雛野は聞いた。

「親睦会だよ。もうすぐ生徒会は解散だからね」

「オレとしては会長から巻き上げれて親睦会は満足だ」

「どうして君は僕にだけ毒舌なのかな?」

「けど私も会長に一泡吹かせて満足だわね」

「わたしも」

「そこは全員一致だぞ」

「人を虐めて楽しいか⁉」

「「「「うん」」」」

 ガックリ項垂れる会長だった。

 

 




 生徒会における会長の立場、弄られキャラ。そして実は会長より濃い面々が揃っている生徒会。小柄の大食い少女(3年)とか、アル中筋肉(3年)とか。残念ながら本編では活躍できない上に、3年は卒業が近づいて空気になる。
 まああと1回は3年活躍シーンがある予定。

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