ToLOVEる~守銭奴が住まう町で~ 作:ド・ケチ
ドンドン パン!
ドンドン パン!
ドンドン パン!
音楽に合わせた足踏み足踏み手拍子。それは開会式と同じテンションだった。
守金曰くアホの菌に感染した1年が多いのか、全体的には開会式以上のテンションだった。
スタミナのない片羽は同調するテンションまで上がらず、朝とは逆に良い感じに感染してる雛野はより大きな音を出そうと力一杯踏み叩いている。
「こいつら絶対おかしい」
そうぼやきながらも同調だけはする守金だった。
そして良い感じにトリップしたところで
鳴り響く法螺貝と共に音楽は消え、足踏みは止まる。
「者共、主らは勇ましく戦えたか?
平凡に自分らしくと小さな殻に囚われることなく、全力で今と戦えたか?
2度と来ないこの青春で戦えたか?
1年は勝手がわからず苦戦したかもしれない。ならば来年に励め。
次のない3年は全てを出しきれたか?」
マイクを使って会長は演説するも、
「何馬鹿なこと言ってんだ⁉」
「そんなんで俺らの代表か馬鹿野郎!」
「寝言は寝て言えクソ会長!」
意図した失言に罵声が飛ぶ。
「そうだ。この質問は愚問だな。何故なら誰よりもこの学校を好きな3年が、この一世一大最後の青春祭りに全力を出さない訳がない。そうだろ?」
「「「そうだそうだ!!!」」」
開会式の時もそうだが、彼らは打ち合わせをしていない。それでも異口同音、ぶれる事無く唱和する。
「さて、2年の諸君。君たちは来年度からこの彩西高校の最上級生としてリーダーシップをとる立場にある。当然、文化祭もだ。私たち卒業生が羨ましがる文化祭にしてくれ。もし、情けない文化祭をしようものなら」
「嘲笑う」
「馬鹿にする」
「文化祭ジャックする」
3年から次々に声が上がる。対して、
「馬鹿にすんな!」
「素晴らしい文化祭に泣いて悔しがれ!」
「俺らだって彩西の一員だ!」
2年が全力で気勢を揚げる。繰り返すが、打ち合わせはやってない。
「それで結構2年生!2学期には生徒会選挙は解散し、君たちが主体をとる。無様な姿を見せるなよ!」
「たりめぇだ!」
「2年をナメるな!」
「絶対に負けねよ!」
反骨心溢れる2年だった。
「そして1年。これが彩西高校だ。彩西高校の文化だ。文化祭だ。その魂を彩西に染め上げろ!来年できる後輩に、彩西がなんたるか教えてやれ!」
「はい!」
「了解!」
「やってやらー!」
幾人か既に魂が染め上げられた者が声をあげた。その中に雛野が混ざっていたことを付け加える。
「よし」
その一言を合図に法螺貝が響く。
「これにて、第49回、彩西高校文化祭を」
マイクを使わず生の声で、しかしマイクよりも大きな声で宣言する。
「終了する!」
ぶぉお~お~
ぶぉぶぉぶぉお~お~
番外編1-結
「いやー、何て言うか、盛り上がったねぇ」
「俺的には雛野が叫ぶとは思わなかったんだよな」
「俺は疲れたから帰りたい」
1年
「片羽はスタミナ無さすぎだよ」
「それに関しては雛野の方がおかしい。バンドでヘロヘロな状態でなんであんなに元気になるんだよ?」
「どうでもいいから帰ろうや」
バテきった片羽に会話をする気力はない。
一方で
「昂音は最後元気だったね!」
「いやー、空気に当てられたぽくて
閉会式のテンションは何処えやら、恥ずかしそうにララと会話する。
「あ、みんなでこれから打ち上げに行こうと思ってるんだけど、君たちは参加しない?」
「いくいく」
「私も!」
阿部の提案に即効で決める女性陣。
「いいけど何処に行く?」
「金が勿体ない」
「明日は休みだし無茶するかー」
男性陣は乗り気、普通、否定気味と三者三様だった。
「なあ阿部よ、守金は此方で金を出さないと食事でさえ行かないでバイトしにいくぞ」
「バイトは無理でしょ。兄ちゃんからの話だと、文化祭の準備から終了、つまり後片付けまでの間のバイトは特別な許可がいったはずだよ」
片羽によるドけちの説明に対して大して動じない阿部だった。
2人はちらっと守金の顔を見ると、固まっていた。
「よくその規則を知ってたな」
「兄ちゃんから聞いた。生徒会の方から、守金君は良くも悪くも監視対象らしいからって、釘刺された」
「あの生徒会副会長だよな」
「そうだよ」
切れ者の生徒会長、その後継。ただし次の生徒会長になれるかどうかはわからない。
「という訳で、守金君を連れてくるには1人百円程度多目に払わないといけないけど、どうかな?」
「何処かの誰かと違って文化祭の準備に活躍したから問題ないよ」
「まあそんくらいならいいよ」
「後で百円分こき使うからな」
なんやかんや受け入れられた。
「有り難く
「何か凄い気持ちがこもってるけど」
土下座する守金に雛野は引いていた。
「で、何処に行くんだ?」
「今の予定だと焼き肉食べ放題」
「ふうー。食った食った」
「店潰れないといいな」
片羽は先ず守金を見て、そして店を見ながら悲しい気持ちになった。食べ放題でこのケチが食べない訳もなく、皆の想像以上に食べていた。そこまでは予測通りなのだが、
「お前の事ならブラックリストに載らない程度に抑えると思ったのだが」
「手加減はしたぞ」
あれでか?一同冷や汗をかく。
「これから二次会に参加する人は?」
気を取り直して阿部が音頭をとる。
「会場はー?」
「カラオケはどうかな。確か川上君がバイトしてたよね」
「ちと聞いてみるわ」
「あたしは行くよ」
「私も!」
雛野、ララ、参加決定。
「片羽の歌には興味がひかれるのんだが、どうなんだ?」
「歌には自信がある」
さて、どっちだ?
雛野と守金は考える。絵に自信のある片羽画伯の恐怖を知る身として、歌い手としての実力はどうなのか。料理が美味しいから絵だけが例外なのか、それとも料理だけが例外で歌も酷いのか。或いは普通なのか。
因みにここにいない近衛は女性店員をナンパしてクラスメイトから簀巻きにされて川に流された。
それと千夜さん、なんでマイクやスピーカーなんかが爆発するんですかね?おまけに停電って。
?1「勝つ気があるのか⁉」
守金「勝つ気あるの?」
ララ「勝てるの?」
片羽「勝つぞ」
近衛「人間の姿を残したままの化け物だ」
ララ「あなた誰?」
片羽「それを主人公補正という」
片羽「2位じゃダメなんですよ」
雛野「ピンチじゃん」
守金「ここからが本番だ」
?2「お前も同罪だ」
近衛「違う!」
次回
閉会式無くして文化祭は終わらない。創作物含め、順位付けしない文化祭でこれほど盛り上がるのは珍しいが、現実で母校の文化祭の開会式が一部創作物の派手な文化祭よりはっちゃけているからなー。
けど、母校の閉会式、こんなにカルトじゃなかったよ?しかし母校の文化祭が進化していったら、今頃このくらいになってるかもしれない。退化は考えたくない。
そして片羽画伯は音痴です。画力と歌唱力が同等の逸材です。これで何故か料理はできる不思議。
大概の宇宙人相手に、歌って耳を潰しながらお絵描きを見せると精神破壊で大概は勝てる。その後ララの料理を口に突っ込めば完璧。本人は自分の才能に気がついてないので狙ってやることはないが。
なお、1学期終了。