今日は硫黄島の戦い、硫黄島が玉砕した日であります。
最後まで祖国のために戦い抜いた英霊たちのために黙祷を捧げましょう。
では、予告通り準備段階となります。
果たしてどんな展開になるかは本編を読んでみてのお楽しみを。灰田さんクオリティがありますので驚く方々も多いと思います。
いつも通り楽しめて頂ければ幸いです!
それでは、どうぞ!
首相官邸前
X-day 時刻0845
提督たちはいったん柱島泊地を離れ、東京に向かうことになった。
まさか自分が灰田に選ばれた存在とはいえ、今までにはない緊張感は拭えなかったものだ。そもそも今回の出来事を含めれば、ことの重要性、彼の代理人として選ばれただけではあるが。
VTOL輸送機からの空路を終えた提督一同が辿り着くと、すぐに首相が差し回したであろう護送車部隊が迎えに来てくれた。
いずれにしろ、此処から霞ヶ関まではそう遠くはない。
首相官邸の玄関前にはMP7短機関銃を両手に携えた護衛兵たちが迎えに出て、会議室まで案内してくれた。
其処には黒木首相のほか、松平官房長官、中岡防衛省長官、新庄危機管理室統括官、五島安全保障担当補佐官たちが顔を揃えていた。
むろん、元帥を含めて、戦友の郡司たちというお馴染みのメンバーも参加していた。
此れは国家安全保障会議会議の完全なメンバーたちではなく、各閣僚と、統幕議長、陸海空幕僚長、官房スタッフなどが加わる。
これは非公式の会合であり、謂わば首相の心証形成のための会議である。
「首相、元帥。お呼びに預かり参上しました」
提督は敬礼した。首相や元帥は軍の最高司令官だから当然だ。
御苦労様、と言わんばかりに、元帥はいつも通りに冷静な顔を合わせて敬礼で返した一方、黒木首相はゆっくりと頷いたものの、其の顔には疲労の色が濃かった。
最大与党であり、民自党総裁の黒木大二郎は年齢は55歳と若く、任期は2年目である。底なしの不況と自信喪失に喘いでいた日本を大胆な構造改革、官僚システムの民営化、そして元帥とともに軍の改革などによって立て直したほどの強者でもあった。
際どい綱渡りの連続だったが、デフレ・インフレも押さえ込み、減税改革などをしたおかげで日本経済を活性化させ、失われた数十年間余りに及ぶ不況から抜け出し、悲願でもある憲法改正、国防の義務なども一息ついたところと言える。だが、新たなる敵の出現の脅威に晒され、国内でのテロ攻撃なども頭が痛かった。
そこに前触れなく、今回の件が持ち込まれたのである。
「ふむ。柘植崇幸くんか、 まあ座りたまえ」
黒木の正面に座らされた。
「またとんでもないことが起きたものだな。元帥の話だと、君がこの一連のキーパーソンと言うことだが……」
「私にもよく分かり兼ねません。此れは望んだわけではないのに、そうなったようであります」
「ふむ。まあここで君の話を否定するつもりはない。責任を追及するつもりもないから、気楽にしてくれたまえ。私はただ事実だけを把握したい。
これまでに起きたことからして、その未来人が君たちを助けて、後に君の前に現れて、我々に戦力強化をしてくれるという約束をしてくれたというのだね?」
「そういう事になります、黒木首相」
提督は頷いた。
政治家にとって最も必要な資質は、物事の本質を見抜くことだ。
元帥と同じく、黒木はその資質は備えている政治家だ。
「あと3分で分かります」
提督は、緊張感のあまりゴクリと唾を飲み込んだ。
その長い時間が過ぎると、再び壁際に靄が湧き始め、やがて人の姿となった。昨日と同じように灰色尽くめの姿である。
「紹介します。彼が昨日お伝えした灰田です。我々とは異なった世界から来た未来人です。彼は私を含めて我々を助ける為に来ました」
「黒木首相に元帥たちですね、それに国家安全保障会議会議の皆さんもいらっしゃいますね」
灰田が、全てを見通すかのように言った。
提督や古鷹たちを除いて、初めて彼を見た黒木首相たちは驚きはしたものの、別段とショックは受けなかった。
明らかに異次元の壁を超えて現れたものだが、何処か何とも言えない親しみを漂わせていたからである。
もう一つの日本、別次元の日本からやって来た日本人だと言われても違和感がない。そう受け取られるべく、ある種のテレパシーを送っているのかもしれない。
「多分皆さんには信じがたいでしょうが、私の所属する文明は途方もない力を持っているというので……おそらく貴方がたの眼からすれば魔法のように見えるでしょう」
灰田は言った。
「その前に質問があるが、君は何故我々を助けようとするんだ?」
「何故ならば、私もまた日本人だからですよ」
黒木首相の問いに、灰田はあっさりと断言した。
「それでは早速失礼ながら、あなた方の戦争は”じり貧”ですな。私は、それを助けたいと思っているのです。
このままでは先の大戦、かつての大東亜戦争のような状況が再びやってきます。東京や大阪のような石造建築の都会でさえ灰燼に帰してしまい兼ねない故に、下手をすれば焼き尽くされ、後には何も残らないでしょう。
我々の世界は、別世界の日本とはいえ、今の日本がその様な状況に陥ることに耐えられません。
その為に私が送り込まれました。つまり善意で、貴方がた、というより全ての日本人を助けようとしているのです」
「ふむ……」
元帥は吐息をつくように言葉を洩らした。
「君の言うことは信じよう。具体的にはどの様な策があるのかね?」
「信じて頂き大いに結構ですとも。それでは早速ですが、説明に入ろうと思います」
灰田は昨日の計画を話した。
黒木首相たちからすれば、まさに天佑神助と考えても良く、一部の者たちからは奇跡だと思われても良いだろう。
事前に打ち合わせをした際に提督は訊ねたが、灰田曰く『単に科学的事象に過ぎません。ただ我々の文明はあまりに進んでいるので、あなた方には奇跡のように見えるだけです』とのことだ。
ともかく提督と古鷹たちに話してくれた、昨日のスケジュールを話し終えた灰田はさらに告げた。
「改修スケジュールとして、各鎮守府に配備されている護衛空母娘たちの艤装や艦載機の改造は基地に分散させて行います。
これは私の世界のエンジニアたちを呼んでの作業なので、一切人目に付かないようにする必要があるので、霧のバリアで覆ってその中で作業をするので近づかないようにしてください。
その間の対策を兼ねて、戦力強化として、貴方がたに空母戦闘群をプレゼントもしましょう。大きさも性能も《キティホーク》級空母を、これを4隻与えましょう。
敢えて原子力空母にしなかったのは、貴方がたには空母《暁天》がある事に加えて、オリンピア空母戦闘群は通常動力型空母だからです。互角ではありますが、此れらを遥かに凌駕します。
空母の護衛艦は、そちらの護衛艦、そして艦娘たちで充分でしょう。
この改装に加えて、そして空母戦闘群は3日と掛かりません。全て私にお任せくださればの話ですが」
『たった3日間だと!?』
黒木首相、元帥や提督たちが言葉を失ったのも無理はない。
空母《暁天》には劣るものの、《キティホーク》級と言えば、かつて米海軍が制式採用していた最後の通常動力型空母であり、後継艦である、ニミッツ級空母が就役する2008年までは、第7艦隊の中核を担っていた空母でもある。
《キティホーク》級の満載排水量は8万1000トンという、あの大東亜戦争で活躍した《赤城》の3倍はあり、《大和》の大きさを凌駕する。アングルドデッキを装備しているので、飛行甲板の面積が広く、幅も《赤城》の2倍はある。
全長323.9メートルを誇り、90メートルのカタパルトを持ち、255キロの速度で、35トンの艦載機95キロを射出する能力を兼ね備えており、出力28万馬力、速力35ノットという、これだけは、米軍が持っていた《エセックス》級空母と変わらない。
他にも、二つのAN/SPS-48E 3次元捜索レーダーに伴い、その他にも対空捜索用・対水上捜索用レーダーを兼ね備えている。
また防御用にはCIWSに加えて、ESSM 8連装発射機、シースパロー 8連装発射機、そしてRAM 21連装発射機を持っており、艦尾にはSDTDSという、水上艦魚雷防御システムを備えている。
これは当時の冷戦時代の仮想敵国でもあった、ソ連海軍の潜水艦が持つ追跡追尾型魚雷を備えたことによるものである。
乗組員は約5600人、そのうち航空団の兵員は約2000人である。
主力戦闘機は50機が飛行団に加えて、他に早期警戒機5機。電子戦機5機。対潜哨戒機8機。兵站支援機4機。対潜ヘリ8機で、CVW--5飛行団を形成している。
「しかし乗組員の問題がある。航空要員の養成も大変だ。そんな事をやっている時間はないと思うが……」
中岡防衛省長官が指摘した。
因みに中岡はタカ派の改憲論者であり、日本は集団的自衛権は元より、交戦権も回復すべきだと主張して国益を第一と考えている人物だ。改憲前でも防衛省のトップに据えるところの大胆さは、黒木首相ならではの大胆さであり、大方の支持を得たから出来たことだ。
「その点は御心配ありません。乗組員などはクローン乗組員たちを乗せて送ります。艦長から水兵たちまで全て複製ですが、顔は微妙に変えてあり、全ての職掌は教え込んでおります。
航空機のパイロットにしても然りで、陸海空のパイロットたちにも劣らない最高の者たちです。ですから、貴方がたの為すべきことは、艦長ほか幹部クラスなどとの面会をして懇親を深めて、意思疎通を図ることです。つまり指揮系統に入ることです。
彼らは首相や元帥、貴方がたの指揮下に入るわけですから」
一同は、元からあった空母《暁天》に加えて、4隻の《キティホーク》級の空母戦闘群が指揮下に入ると思うと、身体が震えた。
此れはアジアでも最強の海軍力を手に入れたことになるからである。
「それで、その空母は何時どうやって此方に持ち込むのかね?」
松平官房長官が性急に訊ねた。
松平は豪腕かつリベラルな政治家として知られており、過去の呪縛に捕らわれずに進もう、というのが口癖である。
「今から3日後の早朝に、横須賀の夏島埠頭に4隻を横付けさせます。
幹部クラスなどは早速乗り込んで、幹部たちと面会し、相互理解を深め合ってください。
元帥、統幕長たちなのも何も心配することはありません。直ぐに彼らを手足のように動かせるようになるはずです。
ところで4隻もいるのですから、名前は必要ですよね。何か良い案はありませんか?」
灰田の問い掛けに、多くの者たちが腕を組んで考え込む最中
「難しく考え込まずに、在り来りのようですが、やはり我が海軍と同じように旧海軍の空母名の名前を付けた方が良いかと思います。なおかつ区別する為に仮名文字で良いかと」
提督が鼓舞するように言った。
「すなわち、アカギ、カガ、ショウカク、ズイカクです」
「異論がなければ、それに決めたらどうですか?」
灰田が微笑した。
「一番艦《アカギ》、二番艦《カガ》、三番艦《ショウカク》、四番艦《ズイカク》としたらどうでしょう」
土橋統幕長は念を押した。身体の震えを抑え切れなかった。
オリンピアがもしこの事を知ったら、どう考えるだろう。同じく青くなって震え上がるだろうか。
しかし事態は、そう簡単ではなかったのである。
「そして、さらに密かにもう一つ提案があります。かつて米軍が制式採用していた最強のステルス戦闘機F-22《ラプター》も3個飛行中隊を付けたいと思います。
此れは九州の新田原に配備します、総計60機。いざという時に使えます」
《ラプター》と言えば、第5代戦闘機の中でも最強の戦闘機と言われた機体だ。
現在でも近代化改装されて、完全なステルス機能を持ち、敵を先攻して殲滅出来る故に、アフターバーナーなしに超音速で飛行、そして信じ難いほどの仰角で飛行することが可能である。
但し値段の方は、1機400億円という途轍もなく途方もない価格ではあったが、当初は防衛省は此れを期待して購入しようとしたが、アメリカが売ってくれなかった。理由はスパイ防止法がなかった当時の防衛省の機密漏洩から、某航空幕僚長の対米発言などが影響を受けたからである、と言われている。
「そんな事までしてもらって、良いのかね?」
黒木首相の言葉に対して、灰田は平然と答えた。
「先ほども申し上げたように、私たちの世界の力すれば何でもないことです。此れらの兵器をコピーする事などは簡単なのです。
それでは3日後の午後6時に、夏島埠頭でお会いすることにします」
そう言うと、灰田はすうっと幽霊のように消えた。
「……もし彼の言うことが本当ならば、我々は国家消滅の危機から救われる」
夢から覚めたような顔を浮かべつつ、黒田首相は呟いた。
今回はいきなりですが、空母戦闘群やF-22戦闘機を貸与する回となりました。
元ネタは『超日中大戦』で灰田さんが、米国から見捨てられた日本に貸与したキティホーク級空母4隻とともに、最強のステルス戦闘機《ラプター》を用意しました。
灰田「なお艦載機に関しましては原作ではF/A-18ですが、リアルさを追求してF-35に変更しています。これでもまだまだ軽い支援ですので今後もお楽しみを」
灰田さんの兵器は他にも数多くありますので、今作品もどれだけ出せるかお楽しみくださいませ。艦これも架空戦記コラボしてくれたら、灰田さんとかゲスト出演してくれると思うんですよね。しかもイベントクリアがスムーズにもなりますが。
灰田「実装されると従来よりも強力な艦上戦闘機『烈風』、遠距離戦闘機『閃光』に、迎撃戦闘機『震電』及び『天弓』……そして四発重爆『天嶽』、六発重爆『富嶽』が生産可能になり、資源が大幅に増強されますが」
実装されたら基地航空隊だけでも深海連合艦隊を壊滅状態にさせることが出来ます。何しろVT信管を無効にする塗装がされていますし、其れを何百機も用意しましたから。
これでもまだまだ序の口です。多次元世界ではもっと驚かされる超兵器が貸与されますが。因みに初期の灰田さんは超兵器を貸与しませんが、代わりに別次元の日本に連れて行ってくれます。そこで日本を救うための戦いを自衛隊がします。初期も初期で面白いのでおすすめしますよ。
灰田「長々しくなりますから、そろそろ予告に移りましょうか」
では、次回は灰田さんが用意する兵器が登場します。
先ずはこれらの視察ですので軽く分かって頂ければ幸いです。
灰田「またゆっくり更新かつ、新作計画中でもありますので遅くなりますが、楽しめて頂ければ幸いです。それでは次回までДо свидания」
それでは、第82話まで…… До свидания(響ふうに)