第六戦隊と!   作:SEALs

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お待たせしました。
今回は予告どおり視点を変えて、アメリカでの銃撃戦になります故に、某有名な場所で悲劇が襲い掛かります。元ネタでも同じようなことが起きましたので、どういう展開なのかは本編を読めば分かります。

いつも通り楽しめて頂ければ幸いです!
それでは、どうぞ!


第76話:カルフォルニアの災厄

 

サンフランシスコ市警(SFPD)所属 SWAT

X-day 時刻0935

カルフォルニア州 サンフランシスコ

ゴールデン・ゲード・ブリッジ

ジョン・ライアン

 

「俺たちは中央から行く。ジェフリーは右へ、ジョンは左から行け!」

 

現場の指揮を執りつつ、完全防備したサンフランシスコ市警所属のSWAT部隊の一員であるジョン・ライアンは疾駆して行く。

彼らと共に行動するのは、後方支援として動員した州兵、現場にいた警官たちによる合同部隊だ。

凄惨な現場には悲鳴と我先に逃げ惑う人々に対して、警察官及び、一部の合同部隊は避難勧告を促せる。叫びまとう避難民たちの背を、彼らによって作られた波を掻き分けて、次には路上に散らばった各一般車の群れ――ドライブや買い物を楽しんでいた車の主たちに置き去りれた様々な軽自動車。戦時中でも人々の日常生活を潤してくれる食料や日用品を満載した大型トラックなどを盾として利用しながら、銃撃。前進。制圧を繰り返して行く。

各隊員たちの両手にはHK416、SIG MCX、MP7、DP-12が携われており、路上には彼らの突破口をこじ開けるため、駆け付けたであろう州軍のLAV-25歩兵戦闘車が25mm機関砲、同軸のM240機関銃が火を噴き、そして配備されたMDタレットの30mm機関砲が小刻みに撃ち続ける。

上空には応援に駆け付けたEC653ヘリ(H135の軍用モデル)が上空に展開。コックピット横に両脇に備えた外装式ベンチには腰を掛けながら、Mk14 EBRを構えていた2人の狙撃手が引き金を引いて、標的の排除のために狙撃を敢行する。

 

「こんな事があり得るのだろうか。あのドラマの舞台が銃撃戦の舞台になるとは……」

 

援護射撃真っ只中、名も知らぬ戦友が言った。

同時に、言われなくても気持ちは分かるさ、戦友、と呟いていた。

今でも有名なネット番組の会員になれば気軽に観られるが、かつて自分たちの両親、または其のまた両親たちが楽しく観ていたであろう、あの某人気ドラマ――確か内容は、父と3人姉妹と其の親類にまつわるドタバタコメディでありながらも、同時に家族や友人の大切さ、愛の大切さなどを語ってくれた、世界的海外ドラマを思い出すほど、ドラマの舞台となったこのサンフランシスコ――其のドラマのOPに伴い、特に西海岸の象徴とも言える、ゴールデン・ゲード・ブリッジ。

もう一つの顔として、サンフランシスコは海軍基地も近く、かつてはWWⅠ、WWⅡ、冷戦時代最中でも乾ドックは当時最大最大。

造船と修理を兼ね備えており、米海軍の中間拠点、基地再編の一環としても支え続けてきた、海軍造船所(海軍工廠)としても有名だった。

戦時中の今では緊急時として、太平洋とゴールデンゲート海峡で接続したサンフランシスコ湾内には、太平洋海域をカバーする第7艦隊、第3艦隊の集結場所としても使われている。

無論、誰も“万が一”などと考えたくない事態が起きた場合、多大な混乱と経済的損失はどうあっても避けられない故に、其の国に築かれてきた象徴、経済、文脈に傷を負わせるだけでも、世界的への経済、政治的、心理的ダメージは計り知れないほど影響力は高い。

此れらによって生み出された災厄はさらに広がり、大きな混乱、犠牲を生み兼ねないからだ。

 

「くたばれ、戦争愛好戦指導主義の美帝人どもがああああ!」

 

「正義の勝利はオリンピアにあり!我々は神に代わって制裁を食らわしているだけよ!」

 

「我々は攻撃しているのではない、魂の解放しているのだ!」

 

相手がまだ一般人ならば穏やかに対処出来たが、残念ながらそうでもない。憎悪を込めた罵声を除けば、全員可愛い顔をしている。

其の相手は清掃員の制服及び、一部は何をトチ狂っているのか、何かのアニメや漫画など

のキャラクターのコスプレを纏い、各銃の弾倉が幾つも入るタクティカル・ベストを羽織り、AK-12、AR-57 PDW、AUG A3、MAULの各種銃器を両手に、しかも手慣れた手つきで操り、銃口をこちらに向けてくるなんて、こんな事が起きるとは誰が想像した、と言いたくなるのも無理はない。

奴らの目的は単なる小規模なテロなのか、果ては本格的な侵略軍なのかは分かり兼ねない。何方にしろこのサンディエゴに何をしようが、この銃撃戦により、“”こと、自分たちの司令官として指揮を執る

大将は橋周辺に集結している艦船、特に最新鋭空母ジェラルド・R・フォード級空母《ドリス・ミラー》率いる空母戦闘群などには、事が終わるまで橋を通過せず待機させろ、と命じている。

 

「夢ならば、どれだけ良いやら……」

 

エイプリルフールの日はとっくに過ぎているし、これが本当に夢ならばどれだけカオスやら。起きて誰かに話したら笑って済まされるかもしれない。だが、夢ではなく紛れも無い現実である、しかも悪夢と言っても過言ではないが。ドットサイトで捉えた敵兵を確認。HK416の素早く引き金を引いた。頭を射抜かれた敵兵は、糸を切られた操り人形よろしく、アッと短い悲鳴を上げてその場に崩れ落ちる。

黒いコンクリート路上に激突した敵兵の頭から、真紅の液体が黒色から真っ赤に染めていく中、何処からともなく現れた国籍不明の戦車が、不気味な音を軋ませて躍り込む。

 

「戦車だと!? 奴ら戦車まで用意しておいたのか!」

 

敵戦車が姿を現した。と思うと、思わず口走ったまま絶句した。

姿形が予想外だったからだ。現れた戦車は、より頑丈そうな中央の胴体部分に6本の脚を持ち、背中には二基のミサイルランチャーを背負い、口部にはガトリング砲と思わしき重武装を振りかざした、見るからに摩訶不思議な戦車、いや、戦車と甲殻類、節足生物が合体したかのようなサイボーグと言っても良いだろう。

オリンピアの兵士たちが民間企業を装った大型トラクターの中に身を潜めた状態で、米軍や警官たちが押し寄せたと見た瞬間、姿を現したのだ。さらに勢いづいたテロリストたちが、猛烈な攻撃を仕掛ける。

機関砲とは異なる轟音が響いた。甲高い飛翔音を上げて飛来したロケット弾は、凄まじい破砕音を張り上げて、LAV-25の正面装甲を激突、操縦席を跳ね回る徹甲弾に刻まれて、力ずくで貫通して破壊した敵戦車は新たな獲物を求めて、警察車輌などに標的を定めた。

狂気すら孕んだテロリストたちの猛攻に、戦線は混迷の一途を辿る。

正面から受けて立つ横綱相撲だろうが、何だろうと、相手の弱みを突く以外にない、という勢いで攻撃を仕掛けてきた。

 

かつて自分たちの曾祖父たちが、ノルマンディー上陸作戦やバルジ作戦時のドイツ進撃において、米陸軍戦車隊はかの有名なドイツの主力戦車ティーガーⅠやティーガーⅡ、パンターなどに性能面で劣り、幾度となく苦杯を嘗めさせられた。その時の、まるで自分たちの曾祖父たちが味わった恐怖の思念が、そっくり再現された形となるとは予想がつかなかった。

活気付いたテロリストたちに対して、執念を込めて叫んだ兵士がいた。

 

「友軍は何をしているんだ!海軍は近くに空母だっているだろう、なぜ、早く支援してくれないのだ!」

 

目障りなうるさい蠅どもめ、次はお前たちを黙らせてやる、と、その姿に苛立ったものか、砲塔を旋回し狙いを定めて襲い掛かった。

 

「くそっ!」

 

不味い、やられる!と思い、地面に伏せる。頭を抱えて機銃掃射の瞬間を待つジョンたちだが、体を吹き飛ばす砲撃は、何時までたっても撃たれることはなかった。

不審に思い、恐る恐る顔を覗かせると、真っ赤な炎を吹いて撃破された敵戦車の姿と慌てふためくテロリストたちが映った。その黒煙を突き抜けて、見慣れた武骨な重武装の攻撃ヘリAH-64E《アパッチ・ガーディアン》が、機体の星が煌めかせて上昇した。

兵士たちの顔に、みるみる笑顔が広がった。

 

「友軍だ。陸軍のアパッチ・ガーディアンだ!助かったぞ!」

 

興奮し絶叫した兵士、嬉しさのあまりに手を振る兵士たち。

友軍が操る陸軍のAH-64E《アパッチ・ガーディアン》は、列機と協力しつつ、残りの敵に襲い掛かった。

AH-64E《アパッチ・ガーディアン》が放った、ヘルファイアの直撃を食らった敵戦車は擱座し、紅蓮の炎に包まれていた。

濛々と黒煙を上げつつ、猛火に包まれて、小爆発を起こした姿を見たのか、もはや敵わない、と悟り、生き残っていたテロリストたちもゆっくりと足元に武器を置いて、もう戦わない、降伏するという仕草を取り、その場に膝をついた。一人だけ抵抗しようと試みたが、すかさず狙撃されて、その場にゆっくりと倒れた。此れで事をなき終えたのか、と思いきや――

 

《空母は間もなく橋を通過する》

 

ジェラルド・R・フォード級空母《ドリス・ミラー》が橋を通過しようとした瞬間、このタイミングを合わせたかのように、湾内及び、橋の下に停泊していた3隻のコンテナ貨物船から射出された物体、数発のミサイルが、ゴウッという大音響とともに、強い慣性がまっしぐらに襲い掛かってきた。が艦船に突っ込んでくる作戦よりは、遥かに常識的な発想だ。

 

《排除しろ!》

 

《ちくしょう!間に合わない!》

 

少なくともこの攻撃が自分たちに目掛けて突っ込むとなら、得物を捨ててでも泡を食って逃げるものだったが、少数はCIWSなどが撃ち落とすも、いかせん数が多いゆえに全てを撃ち落とすのは困難だった。

狙いを定めた数発のミサイルが橋に突っ込むと、橋梁から明らかに発砲による閃光とは打って違い、眼も眩むほどの火花が散り、鉄同士による打ち合わせたような火花が、同時に押し寄せてくる爆発と爆風の余波が襲ってきた。

 

しまった!と、は咄嗟に身構えるが、押し寄せる衝撃に吹き飛ばされてしまい、不幸中の幸いなのか、主人に置き去りにされた軽トラックに積まれていた布団や毛布などがクッションの代わりとなったおかげで命拾いをした。起き上がった直後、一難去ってまた一難。今度は切断された橋が崩壊し始めた。

爆発の被害を受けたのか、友軍のヘリがバランスを崩して墜落し、更には橋に展開していた兵士や警官たち、乗り込んでいた車輌の操縦士たちも愛車を放棄したり、その場で拘束されたテロリストも我先に逃げ始めた。

 

「急げ、逃げろ!」

 

「崩壊するぞ!ちくしょう!」

 

逃げ遅れた兵士たちの泣き言は、無論崩壊の轟音で掻き消された。

悲鳴、落ちまいと抵抗するも必死にもがく者たちも、落下現象、次々と押し寄せる車輌の雪崩により抗えずに、コンクリート破片と車輌、鉄骨造などが様々なものが入り混じった人工の雪崩に巻き込まれ、『助けてくれ!』と悲鳴を上げながら、見えない腕に引っ張れるように、真っ先に数人の兵士や警官たちが落ちていく姿を眼にする。

 

くそったれ、落ちてたまるか、何となく嫌な予感はしていたが。と、思ったが、破壊されたコンクリート部分から露出していた鉄骨に、手を伸ばして掴んだ。あと少しで落ちるところだったが、助かった。と、ほっと一息。と思いきや、同じく落ちてくる一人の戦友を眼にした。落ちていく様に、ええい、間に合ってくれ!という勢いで、地獄へと落ち掛けた身体の左腕を掴み、引き止める。

彼の掴んだ腕を離さない、落ちまいと精一杯に抗い続けると、火事場の馬鹿力が最後を言い、漸く引き上げることが出来て一安心した。

助かったな、戦友、と、お互い息を切らしながら、生きていることを実感した。だが、この様に喜ばしい状況とは言えない、日本語で確か不幸中の幸いと言えば良いのか、という複雑な心境だった。

 

「二人とも、大丈夫か? マジでやりやがった……」

 

「……空母が。この先どうなるのだよ……」

 

駆け寄った戦友たちが口を開くのがやっとだった。この地獄の光景に、言葉を表すのがやっとだったと言った方が正しいだろう。

最重要課題ともいえる護るべき空母《ドリス・ミラー》は、炎と黒煙に吹き上げていた。沈没は免れたものの、肝心の飛行甲板が爆破され落下してきた橋の、大小入り混じったコンクリート破片の豪雨を見舞い、前部飛行甲板に直撃。甲板にいた将兵たちがよろける程の損傷を被り、大爆発を起こり、数十人の命を奪い去った。もしも兵装や艦載機などが満載ならば、と思うと、まだ助かっただけでも不幸中の幸いの幸いだったのかもしれない。とはいうものの、数カ所に捲り上がった損傷部分から火災が発生し、鉄骨造すら剥き出しの状態に伴い、空母としての最大限である飛行甲板が使用不能になり、同時に戦闘能力を奪われたというほど、想像を充分に足る損害だった。

 

攻撃を仕掛けたらコンテナ貨物船は橋の崩壊の巻き添えにより沈没。残りの船は逃げ場を失い、護衛艦が撃沈したものの、ゴールデン・ゲート・ブリッジを含めて、近くの街には静寂が戻りつつあったが、この被害の後は計り知れないものだった。

港湾地区から海軍基地からは炎が遡り、黒煙がいたるところから立ちのぼり、シンボルでもあるゴールデン・ゲイト・ブリッジは破壊されて捻じ曲がり、最後には空母が中破するという始末。

オリンピアの読み通り、この心理作戦は、アメリカの精神性を、彼らが誇るアメリカのテクノロジー、そしてプライドすらも打ち砕かれたものに等しかったと言っても過言ではなかった……




今回はアメリカのシンボルでもあるゴールデン・ゲート・ブリッジでの銃撃戦に伴い、この象徴が破壊されて、アメリカに精神的打撃を与える回であり、これにより台湾支援も途絶える展開回になりました。
橋の破壊、其の元ネタは田中光二先生の作品『海底戦艦イ800』であります。
此方の場合は、大和率いる連合艦隊での殴り込みを行い、ゴールデン・ゲート・ブリッジを含めて、重要拠点などを空爆、沿岸部を砲撃、そして海戦を行い、物理的・心理的にダメージを与えました。
奇策とも言えますが、此れでも実行した連合艦隊も驚きですが、それでも和平交渉を考えないのがアメリカらしいですが(汗)

では、長々となり兼ねないので次回予告です。
次回はまたまた視点を変えて、今度は大西洋に展開するフランス率いるNATO艦隊にも悲劇が襲い掛かります。もしかしたら長くなり兼ねないので前編・後編と分けるかもしれませんので、しばしお待ちを。

それでは、第77話まで…… До свидания(響ふうに)

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