今回はサブタイトル通り、分かる人には分かるネタとともに、相棒はオリジナル妖精であります。
いつも通り、最後まで楽しめて頂ければ幸いです!
では、本編であります。
どうぞ!
X-day
時刻 1130時
柱島泊地鎮守府内・工廠
出撃を終えた古鷹たちは各自兵装の手入れをしていた。
出撃前はもちろん、作戦完了後には各自兵装の手入れ(整備)は重要である。
明石や夕張も手伝い、古鷹たちは順調に行っていた。
提督も同じく自分の得物、特にお気に入りの銃のクリーニングをしていた。
各部品を分解して、火薬の汚れなどを落としている。
また愛銃のクリーニングが終われば、次は軍刀の手入れをしなくてはならない。
汚れを落とし、それが落ちたのを確認した提督は精密機械の如く、元通りの愛銃に戻した。
次に軍刀の手入れも真心を込めて、手入れすることは忘れない。
清潔に保つことは大切であり、それが自分の命を、大切な古鷹たちや仲間たちを守るのだから当然である。
「よし………」
先端から根元まで手入れをした軍刀を、傍に置いていた鞘にゆっくりと納めた。
元帥から賜りし軍刀だから大切にしており、鍛練には必ずこの刀でなければならないのだ。
「提督、こちらの兵装のお手入れも終わりました」
古鷹に続き、加古・青葉・衣笠も同じく『終わったよ』と報告をした。
「主砲や魚雷発射管はもちろん、各水上・対空電探も大丈夫か?」
「はい、もちろん大丈夫です!♡」
「命を守るための電探だからな、みんな大切に扱ってくれて嬉しいよ」
『もちろん提督(司令官)がプレゼントしてくれた兵装ですもの!♡♡♡♡』
「ありがとう、みんな////」
提督は電探を大切にする。
理由は命中率を高めるだけでなく、敵艦よりも早く見つけるためでもある。
そもそも日本海軍は電子兵器で大幅に米軍に遅れを取ったが、これはそのようなものを馬鹿にする風潮があったからである。
せっかく八木秀次博士が開発した理想的なアンテナこと《八木アンテナ》を発明したのにも関わらずに、これを評価しなかった。
この開発技術はイギリスに持ち出されて、イギリスはレーダー先進国になった。
あのヨーロッパ最大の空中戦『バトル・オブ・ブリテン』ではドイツ空軍の空襲を防ぎ、少数だった英国空軍を勝利へと導きだしたのもレーダーである。
日本海軍はレーダーのことを電探と呼んだ。
しかし武士道に反すると言い、『卑怯者が使う兵器である』と言い放った無能な日本海軍上層部や提督たちもいるのである。
これはまさに明治時代の頭であり、そのような頭脳を持って世界一の先進国家である米国に立ち向かおうとしたのは、無謀の限りである。
そしてレーダーに散々やられてようやく電子兵器の威力に目覚め、急遽開発に着手したが、実用できたのは敗戦近くだった。
因みにニミッツ提督の回顧録にも、日本軍の七不思議のひとつとして取り上げている。
だからこそ古鷹たちや皆には電探を装備させ、先手必勝はもちろん、渦巻きによる被害を防ぎ、何よりも愛する古鷹たちや皆の命を護りたいと言うことだけである。
一部は今でも古典と言うよりは、不要論を唱える化石思考の提督もいるが大抵痛い目に遭っている、索敵時に各海域奥地にいる敵主力艦隊撃滅に手を焼いているのは言うまでもない。
「そろそろ古鷹たちの水上機も整備が終わっているころだろうな」
電探に伴い、もうひとつ大切なことは偵察機による索敵である。
日本軍は偵察機を出し惜しみしていたのに対し、米軍はレーダーと共に積極的に偵察機による偵察も大切にした。
零式観測機や零式水上偵察機、紫雲、艦上偵察機《彩雲》等も充分な数で揃えているため、どうしても整備には時間が掛かるが、待つのも重要である。
『お待たせ、みんなの水上機整備が終わったよ!』
「お疲れ様。明石、夕張!」
明石・夕張ペアの報告に、提督はニッコリと答えて労いの言葉を掛ける。
「少々時間が掛かりましたが、ばっちり整備しました!」
「腕によりを賭けて整備したからね!」
ふたりはウインクをし、自信満々で答えた。
古鷹たちは明石たちに『ありがとう』と言い、各愛機を手にした。
子どもが誕生日プレゼントを貰ったように、嬉しそうに微笑む古鷹たちを見て提督も微笑んだ。
「すまないな、赤城たちの艦載機もあるのにも拘らず、古鷹たちの水上機まで整備してくれて」
「いいえ、やり甲斐のあることですから!」
「私たちの開発した水上機を大切にしてくれているから、尚更よ」
「そうか、ありがとう」
提督はクールに答えた。
だが、昔よりは自然に笑うことが増えたのは良いことだなと内心に呟いた。
「それから新しい水上機も開発したところよ」
「見に来ますか?」
「本当に早いな、二人とも」
「提督が計画的に備蓄したボーキサイトと、大量の鋼材などがたくさんありましたから」
「極秘に開発しましたと言っても、まだ1機しかありませんが」
「それでも充分だ、最初は試験運動が大切だ。また改良してから計画的にみんなの分を増やしていけば大丈夫だ」
「では、特別開発室に行きましょう」
提督は、明石たちの言葉に頷いた。
「提督、どこに?」
古鷹が尋ねた。
「特別開発室だ、すぐに済むから先に昼食を済ませておいても構わない」
「外で待っていますから気を遣わないで下さい♡」
「あたしら水上機の試験飛行しておくからさ♡」
「青葉たちも待っていますから、司令官♡」
「私たちは大丈夫だよ♡」
「分かった、みんなで食事は大切だからな」
提督が微笑むと、古鷹たちも微笑んだ。
「待ってる間、エスコンごっこしよう!」と加古。
「青葉、トップガンごっこが良いです!」と青葉。
「衣笠さん、ソニックウィングスごっこが良いな!」と衣笠。
「あはは…… 提督、待っていますね♡」
加古・青葉・衣笠の提案に苦笑いするも、こういうごっこ遊びも悪くないと古鷹は微笑んだ。
「それじゃあ、待っていてくれ////」
「はい♡ いってらっしゃい♡」
「相変わらずラブラブね、このこの」
「お前は飲み屋のオヤジか」
「あはは、確かに似ているわね」
夕張の他愛のないからかいに伴い、苦笑いする明石とともに特別開発室へと移動した。
特別開発室
各艤装の兵器・装備の設計図が壁一面に張られており、ある意味『極秘』と言っても良いだろう。
誰もが見たら、FPSやTPSなどに出てくる武器・改造屋とも思えるが。
「これが新型水上機よ、可愛いわよ」
「此奴はスゴイな、異形の水上機だな」
「本来ならば艦上戦闘機ですが、新型艦上戦闘機開発時に廃棄すると聞いて元帥が1機だけですが、私たちのためにサンプルとしてくれた原型機を元に開発してみました」
「あはは、元帥も太っ腹だな」
元帥は日本海軍では珍しく女性である。
過去の日本海軍と米海軍の失態を起こさないよう、徹底的に指導している。
何度も言うが、米英海軍は信賞必罰に厳しいのは有名である。
真珠湾攻撃が発生した際、太平洋艦隊司令長官兼合衆国艦隊司令長官のハズバンド・E・キンメル大将も敗北の責任により更迭され、チェスター・W・ニミッツが後任の太平洋艦隊司令長官となり、キンメルは苦労したのは有名である。
また歴戦の『海賊フレッチャー』ことフランク・J・フレッチャー大将は、ガダルカナル・ツラギ進攻を指揮し、同月末には第二次ソロモン海戦を戦う最中に、艦載機の消耗を恐れて空母《サラトガ》を後退させたと言うだけで更迭された。
なお現代でもヘマをしただけでも、すぐさま更迭されるのは当たり前である。
しかし日本海軍の場合は逆であり、現代社会でもこれが受け継いでいる。
ミッドウェー海戦で空母4隻を損失したのにも関わらず、南雲忠一少将以下、彼らの幹部たちを更迭することなく、そのまま据えさせたのだから驚きである。
南雲は『ミッドウェーの仇が取りたい』という訴えに対して、大本営や海軍省、軍令部も連合艦隊司令部も受け入れたのである。
もしもこの時に戦死を免れ、航空兵力主義の山口多門少将か、連合軍から恐れられていた小沢冶三郎中将に代わっていたのであれば、違う結果になっていただろう。
正確とはいかないが、少なくとも第二次ソロモン海戦、南太平洋海戦でも良くて勝利、悪くて引き分けに持ち堪えることができたのではないかと思われる。
元帥の場合も米英海軍のように適材適所はもちろんのこと、作戦失敗時は信賞必罰に、必要となれば更迭はするが、また日本海軍のように庇うときもある。
要するに彼女の場合は日米両軍の良いところを取り分けて、飴と鞭を上手く使い分けているということだ。
現状に戻る。
「まさか震電を水上機として開発、いや、改装するとはな……」
日本海軍が敗戦間際に試作した局地戦闘機《震電》は、独特な機体、エンテ型が特徴的である。
「武装もしているのか、コイツには?」
「一応30mm機関砲を装備していますが、必要ならば20mm機関砲に変更しますよ」
「なるほど、大幅にカスタムも可能なのか?」
「私なりに腕によりを掛けますよ?」
明石が頷くと、この続きを夕張が繋ぐように説明をした。
「名称は明石と私で、これを試作水上偵察機《震電改二》と名付けたわ。
補助落下増槽でもある主フロートはいざというときのために緊急時には切り離しも可能よ。
また補助フロートは飛行時には主翼内に引き込むこともできるから、その時の巡航速度は480キロも出るようにしたわよ!」
「通常の《震電》よりも高速となっているな」
「私たちの傑作だから、大切に使ってくださいね♪」
「ああ、古鷹たちで大切に……うん?」
提督はある事に気が付いた。
この《震電改二》のパイロットだろうか、どことなく自分に似ていた。
しかもいま着ている服装と同じでもある。
「あれ、この装備妖精…… 俺みたいに顔を覆面で隠しているな」
「本当… 提督そっくりな妖精さんですね」
「見ただけでも強そうな妖精ね、この子は……」
「歴戦の勇士だな。今日からも宜しくな、相棒」
提督の問いに答えるかのように装備妖精は、俺に任せなと拳を胸に当てていた。
「二人ともありがとう、こいつはお礼の間宮スイーツ券だ」
提督は胸ポケットから二枚の間宮スイーツ券を渡した。
「提督、ありがとう♪」
「ありがとうございます、また何か開発したい装備などがありましたらお任せください♪」
「ああ、ありがとう」
提督はニッコリとし、新たに加わった新装備《震電改二》を明石たちと試験運用することにした。
「明石さんたちのおかげで順調だね」
古鷹は空を見上げ、自身の愛機である零式偵察水上機を見て呟いた。
「本当、私たちの頼れる存在だからね♪」
衣笠も古鷹と同じく空を見上げ、自分の愛機である零式水上観測機が飛んでいる姿を見て呟いた。
「青葉、ほら格闘戦だ」
「負けませんよ、インド人を右に!」
加古と青葉は楽しくしていたのを見て、二人は微笑んだ。
なお加古たちが今やっているのは『トップガンごっこ』であり、何故か専用BGM『Danger Zone』が流れているのは気にしてはいけない。
「ただいま、楽しそうだな」
「提督。おかえりなさい♡」
「提督、おかえり♡」
加古・青葉も提督が帰ってきたことに気づき、愛機を乳脳するため、横に伸ばした両腕を滑走路に見立てて着陸させ、駆け寄った。
「提督、おかえり〜♡」
「司令官、お帰りなさい♡」
愛する提督が戻ると古鷹たちは駆け寄り、提督はおしくらまんじゅう状態になった。
提督はニッコリとして、古鷹たちの頭を優しく撫でた。
「今日からみんなに新しい仲間を紹介するぞ!」
「新しい仲間ですか、楽しみです!」
古鷹たちはワクワクした。
「明石、夕張」
「はい。では紹介しますね!」
「それじゃあ、上空を見上げてください!」
明石・夕張の合図に伴い、上空に異形の水上機が古鷹たちの前に現われた。
「古鷹たちの新たな偵察の目となる、試作水上機《震電改二》だ」
『《震電改二》????』
「秘かに明石たちが開発していたから知らないのも無理はない、それに古鷹たちを喜ばせたくて秘密にしていたんだ」
『提督(司令官)ったら……』
「意地悪して悪かった、でも古鷹たちに一番に装備させたくてな」
提督は微笑むと、古鷹たちはニッコリと微笑み返した。
『じゃあ、許してあげる♡♡♡♡』
「了解、指揮官!」
冗談混じり合いながらしていると、《震電改二》から『着陸許可を』という通信が来た。
英語で話しているので、同じく英語で返答した。
日本語だと空気による影響を受けてノイズが聞き取りにくいため、現代のパイロットたちでは英語で返答することが常識になっている。
また無線機も常備していることを忘れない、手信号だといざ戦闘時には見る暇がない。
史実ではわざと無線機を蹴飛ばして壊し、誤魔化すパイロットもいたほど無線機の威力を軽視していた。元より信頼性が低いとも説があるが。
「お疲れ、相棒」
近くに着陸した《震電改二》を拾い上げると、古鷹たちの前に持って来た。
「試作機だから1機しかないが、みんなで交代ずつ使ってくれ」
『はい、提督(司令官)!♡♡♡♡』
「喜んで何よりだ////」
古鷹たちは嬉しそうに《震電改二》を受け取ると、順番ずつ提督の両頬にキスをした。
なお装備妖精も同じく、すぐに古鷹たちと仲良くなった。
新たな頼もしい仲間が加わり、提督・古鷹たちのより絆が強くなったのだ。
おまけ
場所は代わって、ハワイ・オアフ島――
「This is Zuiun(これは瑞雲です)」
「では、みんな一緒に!」
英語で水上爆撃機《瑞雲》を紹介しているのは、日向型2番艦・日向である。
全員に声を掛けたのは彼女の姉で、伊勢型1番艦・伊勢である。
元帥艦隊に所属しており、久方ぶりに休暇を楽しんでいた最中に、その雰囲気を壊すかのように突如と現われた深海棲艦たちを撃退して、ハワイ住民たちからは『命の恩人たち』『神様の使い』と言われている。
なお一部からは伊勢が《カメハメハ》で、日向が《ペレ》と呼ばれている。
前者はハワイ諸島を初めて統一して1810年にハワイ王国を建国し、初代国王となった人物であり、伊勢が装備している艤装―― 彼女が左手に持つ飛行甲板(本来は槍だが)が平和を象徴し、その掲げた右手はハワイの繁栄を表しているからだ。
一方、日向の方はハワイ神話に登場するハワイに伝わる火山の女神だ。
ハワイの神々の中ではもっとも有名とされ、炎、稲妻、ダンスなどを司る。
またポリネシア神話に連なる神々の中で、ペレは特にハワイで広く信仰されたのだ。
彼女が持つ瑞雲が最大の爆発を誇るキラウエア火山の如く、深海棲艦を一網打尽にしたからこの名前が付けられた。
『This is Zuiun(これは瑞雲です)』
ハワイ住民が言った。
「うん♪ いいんじゃない?」
「まあ、そうなるな」
もはや、瑞雲教教祖様と化しているのは気にしてはいけない。
今回は前書きに書いた通り、オリジナル装備と妖精に伴い、隠しネタとして日向師匠たちのハワイで瑞雲教の指導でもあります。
まず《震電改二》の元ネタは、松本零士作品の代表作の一つこと戦場まんがシリーズので一編『クロノグラフの墓石』に登場した試作水上機『震電改Ⅱ』を元にしています。
ただし元ネタは『Ⅱ』ですが、漢字統一として『ニ』にしており、スペックはそのままですが、本編では外された武装もオリジナルで搭載可能にしています。
なお妖精は珍しく男性妖精として、提督に似たオリジナル妖精です。
劇場版『艦これ』で加古に似た装備妖精たちが登場していましたから面白いかなと思い登場させました。
なお最後の師匠たちの元ネタは、架空戦記『荒鷲の大戦』で旧式となった伊勢型戦艦《伊勢》と《日向》はアメリカの魔の手から免れ、日本のおかげで独立したハワイ王国に売却され、ハワイ海軍の戦艦《カメハメハ》《ペレ》と名付けられています。
そして今日は加古の進水日です。つ花束
加古、お誕生日おめでとう!
ぱんぱかぱ〜ん←クラッカー炸裂音
加古「ありがとう、提督♪」ギュッ
古鷹・青葉・衣笠『ハラショー(地声)』パチパチ
積もり話もいろいろありますが、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
加古「それじゃあ、次回もあたしら六戦隊の魅力とともに、シュガーテロも楽しんでくれよ♪」
それでは第8話まで……
作者・古鷹たち『До свидания((響ふうに)』