第六戦隊と!   作:SEALs

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お待たせしました。
今回は少し変更、執筆中に思いついたので急遽変更に致しました。
新たなる災厄の前触れという形であり、ネタバレですが、今回は『超空の決戦』に出たある魔改造された兵器が登場します。因みにこの兵器は漫画版のみにしか出てこない超兵器、ある人物が持ってきた代物です。
あの人に掛かれば、またより凄いことになりますが。

では、いつも通り楽しめて頂ければ幸いです!どうぞ!



第66話:災厄の前触れ

柱島泊地

時刻1010

 

元帥が遠くから心配し、裏ではグランド・マザーたちが妙な動きをしている最中――我らの提督夫婦の様子に視点を移ることにしよう。

相変わらず日常である戦いを除いては、いつも通りに執務に伴い、簡単な任務を遂行という忙しい日々を今日も同じく過ごしていた。

ただ一つだけ変わったという点では……

 

《タイム・リンク》作戦のときと同じく元帥の命令により、艦隊の戦力強化という形で新しい仲間が二人が増えたということだった。

 

「二人ともこれが我が鎮守府の教室だ。今日は座学を教えている最中だ。二人とも楽しんでくれてるかい?」

 

「はい。とても楽しいです」

 

「は、はい…みんな楽しそうで面白いです」

 

提督たちの側にいた涼月と神鷹は言った。

 

「そうか。楽しんでくれたら幸いだ。取り敢えず今日は見学のみだから気楽で構わない。明日からはみんなと一緒に、初月と大鷹も居るから勉学を努めるようにな」

 

『は、はい。分かりました!!』

 

まさかこんな偶然が二度も起きるとは、驚いたな……と提督は心の中で呟いた。奇遇というか、偶然というべきなのか元帥の命令を受けて新しく着任して来た二人の艦娘がまさかあの観艦式襲撃事件に自分たちが助けた涼月と神鷹とは想像すらつかなかった。

こうした縁もあるが、新しい仲間が来ることに対して提督たちも大いに喜んだ。――特に心待ちにして着任したと同時にその喜びを隠せなかったのは初月と大鷹だった。前者は姉が、後者は妹が来たのだから当然だ。二人もまた今日から姉妹とともに過ごすのだから、これ以上に嬉しいことはない。

 

「また賑やかになったな、我が鎮守府は」

 

「はい。そうですね」

 

「えへへ。また楽しくなっちゃいそう」

 

昼前。賑やかな雰囲気を醸し出している教室を今日の秘書艦を務める青葉と衣笠とともに、提督は微笑ましく眺めていた。序でに衣笠は後に演習場に行くため、途中まで同行している。

彼らの意見に対して、同じように此方の風景を見るかのように外から見えるのどかな瀬戸内海――木霊する波音・葉鳴りの音、近くに通り掛かった鷺の鳴き声も、そうだねと同じように答えてくれた。

 

因みに今回は古鷹と加古による座学を見学、ここでの基礎・教訓を学んでいる。なおも余談だが、座学を担当する二人は眼鏡を、二人ともお洒落な要素はない実にシンプルな黒眼鏡を掛けていた。それが逆に良いアクセントとなり、さながら本物の教師を演じていた。

自分も時間があれば、某大正コソコソ噂話みたいに此方も面白い座学をしたいところ。だが、下手をしたら二人の口からもだが、ここにいる睦月たちも口から砂糖を吐き、コーヒーを頼み兼ねないため止めておかなければならない。それに――

 

「そうだな。お前も楽しみでしょうがないよな、タカ」

 

左肩に乗る自身に似た装備妖精であり、相棒ことにタカに言った。今まで通りでも良かったが、やはり名前をつけようと古鷹たちの提案が上がり、好きな架空戦記小説や物語からいくつか候補を考えて、様々な名前候補を立てて決めた結果――タカという名前に決めた。

名前の由来は実にシンプルであり、古鷹の『鷹』と、自身の名前である崇幸の『崇』という字は違えど、読み方は同じということもあり、我に返った提督は当たり障りのないこの名前に変更したとのこと。相棒も良かったが、改めて『タカ』という名前を名付けられた装備妖精は大いに喜んだ。

 

「それじゃ、改めて行こうか」

 

――さて、今回もまた明石と夕張が面白いものを工廠で披露してくれるため、こちらも急がなければいけない。果たして今回は一体どんな面白いものを披露してくれるのだろうかと思いつつ――ここは致し方ないが、古鷹と加古に『頑張れよ』とアイコンタクト。その視線が伝わり、彼の合図にニッコリと微笑みを返した古鷹と加古に見送られた提督たちは教室をあとにするのだった……

 

 

 

 

 

工廠・格納庫

演習場に行く衣笠を見送りながら、提督たちは工廠に入った。

ここも相変わらず、全ての声を遮断する音が堪えず鳴り響く。

職人技を兼ね備えて、数え切れないあらゆる種類の金属・資材が並べられ、工廠妖精たちが各々と金属を叩く音。叩いた金属を溶接、さらに形のない物に形を与えるという言葉どおりに鍛錬に成形して独特な作業に伴い、精密な加工作業を施す音を響かせる精密な金属部品加工を数値制御された工作機械を用して、各部品の自動交換、アルミのブロックを削る、繋ぎ合わせ作業などと言ったひとつひとつの領域ごとに行われる一連の作業に、様々な技能・工程・道具で金属加工を行う熟練の職人妖精たちが集う姿は――明治から伝わる美的感覚に配慮した細かな加工を手作業で行う作業光景もまた古き物作り日本を象徴する光景。此処ならではのこの慣れ浸しんだ日常的な光景を、工廠妖精たちに敬意を表しつつ、彼女たちの邪魔にならない様に移動する。

 

「ふふふ、いらっしゃい。みんな〜♪」

アーク溶接を一時中断し、防塵マスク装備を外した夕張。

今は普段着である制服ではなく、長袖、長ズボンの作業服などと言った作業服姿を纏っている。

 

「お待ちしていましたよ。提督♪」

 

同じく作業中だったのか、兵器のようなイラストが描かれた設計図・整備図を右手に、左手には工具箱を携わっていた明石は、待ってましたと言わんばかりに笑顔で出迎えた。

 

「ああ。よろしく頼むぞ」

 

「青葉も楽しみです!」

 

「よろしくお願いいたします!」と涼月。

 

「お、お願いいたします…」と神鷹。

 

さて、今回もまた新たに面白い物を披露してくれることやら――

 

「今回もまたすごいものですよ〜」

 

「私たちだけでなく、この新機体を開発する為に協力してくれた開発チームの主任さんのおかげなんですよ」

 

案内してくれた夕張・明石が自慢に披露した新兵器――外観は陸自のOH-1観測ヘリ、陸自は愛称を《ニンジャ》。機体のコールサインである《オメガ》も愛称として使われている機体である。

 

「そう。これがOH-1XA、ニンジャ・改!」

 

「もちろん。提督の装備妖精ことタカちゃんにもこの機をご用意しておりますから安心ください!」

 

しかも只の観測ヘリではなく、偵察も兼ねて、AH-64DやAH-1Zなどの傑作軍用ヘリとしても扱える純国産の攻撃ヘリとも言え、極秘に重ねて、テスト試験用として開発された偵察/攻撃ヘリコプターOH-1XA。名付けられた名称は《ニンジャ・改》。

これは陸自が制式採用したOH-1観測ヘリの強化戦闘型――次期攻撃ヘリコプター導入計画《AH-X》とも言われ、OH-1の重武装型については川崎重工業が提案していたが、日頃から自衛隊に感謝もなく、兵器開発などは無駄だからという身勝手な理由で却下、彼らの努力を蔑ろにした無知な政治家や官僚、財務省の役人らを含め、優柔不断かつ実用性を理解せず、AH-64D《アパッチ・ロングボウ》導入時でも数多くの問題を起こし、果ては賠償問題に発展させた防衛省のせいで振り回され、結局のところUH-Xの白紙化に伴い、消えたとされる幻となった悲劇の機体とも言われる。

 

「これは……」

 

提督は見ただけで理解した。通常の《ニンジャ》よりも凶悪な感じを纏わせ、両脇にある搭載しているエンジン――アフターバーナー付きのターボシャフトブースターは通常型よりも大型化され、スタブウイング(小翼)には、あらゆる兵装類を懸下して機外搭載するための取付部――ハードポイント(機外兵装ステーション)も大幅に拡張されており、そして機首下にはAH-64シリーズなどが装備している破壊力抜群のM230 30mmチェーンガンを備えていた。

実際には《ニンジャ》とは全く別と言ってもいい機体、かつて米軍が開発していた次世代偵察/攻撃ヘリコプターRAH-66《コマンチ》等を模倣した物だった。《アパッチ》シリーズより一回り小型な機体は総重量5トンに満たないが、高い航続距離と攻撃力を持ち、あらゆる種類の攻撃ヘリとして初めて本格的なステルス能力を兼ね備えていたが、2004年末に開発計画を中止しているが、この機体はその生き写しとも言えたのだ。

 

「……こいつは見事な機体だ」

 

「私たちの傑作はお気に召しましたか、提督」

 

提督が感想を述べていると、一人の男性が声を掛けた。

防衛技術研究本部第三研究開発チームに所属していた愚零主任が姿を現した。変わった名前だが、技術の腕前は確かであり、ここに勤めたいという熱心に見込んだ提督は採用した人物であり、《ニンジャ・改》の生みの親である。

 

「ああ。気に入ったよ。愚零主任」

 

「そうですか。開発者として嬉しい限りです。では、御説明に入りましょう。それに実機でのテストが今から楽しみですよ」

 

我が子を自慢する父親のように、愚零主任は自慢の一級品とも言える《ニンジャ・改》の説明をし始めた。

 

「ご存知の通り、自衛隊が使用しているあらゆる種類の航空機はアメリカなど海外で開発されたものが圧倒的に多いです。もちろんほとんどの機体が我が軍での運用に合わせた改修を施しています」

 

愚零の言葉に、確かに、と軽く頷いた提督。

 

「しかし、本機は純国産の攻撃ヘリです。機体の構造からエンジン、最新電子機器など全て我が国のものです」

 

「なるほど。こいつは米軍のコマンチ、アパッチシリーズなどを凌駕する性能を兼ね備えている様だな」

 

「その通りです。計画が中止された《コマンチ》は増槽タンクを2本を付ければ、最大航続距離2350キロをフェリー飛行出来ますが、本機は増槽タンク付きで3000キロの飛行が可能です」

 

「普通のOH-1は700キロ程度だが、こいつを遥かに凌駕しているな」

 

「はい。これはエンジン性能の強化による物です。さらにこのエンジンはターボジェットブースターを装備しています。水平飛行時の最大速度は時速600キロ以上を出すことが可能です」

 

「そんなにですか!?」と青葉。

 

「しかし、そんな速度ではローターが持たないんじゃ……」

 

提督たちの疑問に対して、愚零はそことなく答えた。

 

「その点は大丈夫です。アパッチシリーズと同様にループ機動に耐えられる強度を持つ複合材を使用しており、ヒンジレス・ハブ採用により操縦応答性が高く、これによりメインローターの機構が単純なため整備にも優れています。エンジン排気を推進力によるターボプロップ機構にしているから通常の攻撃ヘリの速度よりも速く、ターボプロップブースターによって、短時間でならばレシプロ戦闘機並みの速度を上げる際に耐えることが出来ます。因みに座席の配置はOH-1と同様にしております。前席は操縦士、後席は副操縦士兼射撃手です」

 

なるほど、と頷く提督と青葉に対し、涼月や神鷹はある疑問が浮かんだのか手を上げて質問をした。

 

「愚零主任にご質問ですが、素晴らしいのは分かります。しかし、いくらスピードが良くても観測ヘリならば武装は限られているはず。機銃を追加しても増槽タンクやミサイルなどと言ったAH-1Sの様に重武装にすれば、スピードも落ちて忽ち敵の対空砲火の餌食になり兼ねないと思っています」

 

「敵の対空砲火も加えて……ヘリはとても撃墜されやすく……深海棲艦の艦載機もですが、赤城さんや加賀さん、姉さんと私の艦載機……艦載機、この子たちにも捕捉されて……撃墜され兼ねないと……」

 

確かに二人の言い分も理解出来る。

ベトナム戦争のイメージも高いせいか、現代技術の進歩が進んである程度は改善されてもなおヘリコプターは敵機の攻撃には弱い。

以前の陸自のAH-1S《コブラ》が良い例だ。生みの親であるアメリカではAH-1を改装、エンジンや武装を強化した派生型AH-1Wを生み、さらにより活かしAH-64並みの性能を兼ね合わせた機体であるAH-1Zまで進化させた。

それにも関わらず、元帥が注意を促す前の陸自のAH-1Sは兵装の搭載量を増やしただけ。TOWミサイルの代わりとなるヘルファイアミサイル、空対空戦闘用のサンドワインダー及び、スティンガーミサイル等は搭載出来ない。自己防衛システムもアナログ状態などと酷い有様、まさに空飛ぶカモと言われる始末だった。ネットやスマホで調べたら分かるのに世界の兵器を知らないという無知さを表したのだ。

余談だが陸自にはある開催際で『痛コブラ』という機体が有ったが、陸自募集の宣伝も兼ねて披露されたが、これを見た頭の硬い陸自上層部は顔を真っ赤にして激怒に伴い、訳の分からぬ理由を述べて消し、搭乗員の士気を削ぐような事までも仕出かした。現在では予算も確保出来たので改装されて、漸く和製AH-1Zと言われるだけの性能になり、搭乗員の士気を鼓舞する為のノーズアートも許されるなど寛容されたぐらいだった。

元帥たちの苦労話、彼女たちの教えなどがある為、今でもそう言われても仕方ないのだろうが――しかし、二人の質問に対して、愚零主任はそっとなく答えた。

 

「なるほど。確かに元は偵察/攻撃ヘリであり、従来のOH-1は91式携帯地対空誘導弾4発という自衛用の限定的な空戦能力しかありませんでしたが、この《ニンジャ・改》は違います。機体装甲も23mm機関砲の直撃に耐え、その他の部分は12.7mm弾に耐えられ、そしてコックピット周辺は衝撃吸収構造が施され、生存性が高めらるなどAH-64やAH-1Z等と言った米軍の攻撃ヘリ並みの自己防衛システムも向上しております。武装はOH-1よりも強化されており、固定武装には30mm機関砲はアパッチシリーズと同様の外部動力式のチェーンガンです。最大1200発の弾薬が搭載出来ます。スタブウイングには短射程AAM及び、中射程AAMの他に、ハイドラ誘導ロケット弾ポッド、対地・対艦用のヘルファイアミサイルなども自由自在にカスタム装備が出来ます故に、《ニンジャ・改》はまさに怪物でもあります」

 

『………』

 

提督たちはあまりのオーバースペックを聞き、彼を敵に回したくないという言葉を失うほど驚愕した。

確かに異常な機体だが、敵は強大。これでもまだ不安な部分が多少はあるかもしれないが、今までの実戦経験を活かして、自身の技量で補えるだろうと提督は見抜いた。しかし――普通ならば開発中の兵器性能は実際よりも低く公表されるのだが通例だが……ここまでレシプロ機並みの速度・運動性を高めた高速攻撃ヘリを試験的に出すことは異例だが、取り敢えず今後の為ならばやり遂げるしかないし、それに自分が乗りこなせばならないな、と心の中で呟いた提督。

 

「ありがとう、愚零主任。聞いただけでも乗りたくなってきたな。烏滸がましいが、今からでも試せるか?」

 

「もちろん今からでも大丈夫ですよ。提督ならば直ぐに《ニンジャ・改》の戦闘能力を充分に引き出してくれますから楽しみですね」

 

「そうか、分かった。今回は対空及び、対艦装備を五分五分で頼む。地上発射式の標的ドローンと無人艇を出して訓練してみよう」

 

「分かりました。もちろん、今回はフル装備で行きましょう。時間がありませんから急いで準備しますね。貴方ならば素晴らしい働きをする英雄となるのですから」

 

「……? ああ。よろしく頼む」

 

最後の言葉が気になったが、気にすることはないだろう。

確かに時間は限られているからすぐさまに納得をした提督。

今日はこの機のテスト飛行の訓練を施せるな、と乗る前から速度と運動性能はこれまでの戦闘ヘリを大いに凌駕する、と考えただけでも楽しみで仕方なかったのだ。

 

「取り敢えず乗る準備をしよう。青葉はこの機体を撮影してくれ。記念になる日だからアルバムに保存しておきたい。あとでみんなと一緒に集まって集合写真も撮ろう。

涼月と神鷹は次の演習時間が来るまで好きに工廠見学をしていても良いぞ。あとで護身用の拳銃など一式装備も必要になるから倉庫を見ても構わないぞ」

 

「はい。おまかせください」

 

「分かりました、提督」

 

「あの……ダンケ。……いえ、ありがとう、ございます」

 

と青葉たちは返答をした。

 

「あと明石たちに訊きたいが、例の物の整備は終わったか?」

 

提督の問いに、明石たちは答えた。

 

「もう少しで終わりますよ。巡回任務に出しても大丈夫です!」

 

「それに照準器もバッチリなんだから!」

 

「そうか。それじゃよろしく頼む。もちろん武装も――」

 

その瞬間、遠くから悲鳴が炸裂した。

絶叫。誰かが言っていた二つの悲鳴。例えるならば時代劇によく言われる絹を裂くような悲鳴。そんな在り来たりな言葉を表した恐怖により空気が引き裂かれる不穏な咆哮が、必死に救いを求める悲しい声が施設内まで響き渡る。

 

「今の声、古鷹と加古か!?」

 

「司令官!行きましょう!」

 

「私も護衛します!」

 

「私も……が、頑張ります!」

 

「ああ、済まない。此処にも少しは武器は有るから好きなのを取れ!明石たちは非常事態警報を鳴らせ!同時に全員のスマホにもメッセージを送れ!コードレッド!演習に非ず!」

 

『わ、分かりました!!』

 

提督の号令一下。明石たちはすぐさま取り掛かった。

緊急事態発令に伴い、不安と恐怖に満ちた虚無の世界に誘おうとする警告音。感じ取った見えない恐怖。ただ恐怖の為に泊地全体を大波のように押し寄せるこの咆吼は、まるで美しい歌声を発して、船の乗組員を惑わせて、船を呑み込まんと遭難や難破に遭わせた漂流者たちをじわじわと喰い殺す海の怪物《セイレーン》の声そのものだった。

 

「嫌な音だな、全く」

 

蹴飛ばすように扉を開けて、誰よりも早く工廠から飛び出す提督。

近くの武器ケースから銃を持ち出し、セーフティを解除する。M4A1アサルトカービンに、SOPMODキットと呼ばれる、特殊作戦用に用意されたオプションパーツ一式を装着したM4 SOPMODⅡ。

なんてこった、俺がいながらも情けない。歯を噛み鳴らす音すら容赦なく掻き消すサイレンの音。あの観艦式襲撃時の悪夢を模するこの混乱の渦の中にあった泊地の正門まで突き進むのだった……

 

 

 

 

 

 

柱島近海

時刻1015

 

 

海面の波を切り、白い航跡を曳きながら悠々と駆け出していく一隻のクルーズ客船。船名は《ハドソン》。戦中にも関わらず、海の交通回路は盛んであり、今でも船旅を満喫する者たちは少なくない。

瀬戸内海の穏やかな波に揺られ、のんびりと船旅をするのではなく、ある目的を実行するために、ゆっくりと柱島泊地を目指している。

 

「ふふふ。まさにこの音は絶望へのカウントダウンね」

 

その舳先に一際目立つ一つの影が立ち、海上から碧空と海が溶け合う辺りに、浮かぶ海陸の柱島泊地を面白そうに眺めていた深海皇女。

吹き掛けていく爽やかな海の風を感じつつ、ここからでも鼓膜まで震わせる絶望という激しい雨に叩きつけ、あの泊地にいる人々を飲み込もうとするの為に用意された恐怖の交響曲を聴きながらと思うと、邪悪な笑みを抑えきれなかった。

 

「今回もまた楽しめそうね、ゴーストと、その御自慢の第六戦隊の方々とね。それに……今回は私の頼もしい騎士と仲間たちを連れて来たのだから楽しませて欲しいわね」

 

背後に佇む仲間たち、客船の持ち主や乗組員たちの姿を見渡し、再び泊地を眺めた。今回も楽しい宴の始まり。新たなる開戦とともにね、と。




愚零主任「皆さん、こんにちは。愚零です。今回はおまけという形で皆様にこれをご用意しています。私の自慢の《ニンジャ・改》のスペックです。現代風に一部は改装及び、言い直している部分もありますが、改めて楽しめていただければ幸いです。
私に掛かればこのくらいはお茶の子さいさいであります。どうなるかはお楽しみに。それではどうぞ」

純国産偵察/攻撃ヘリコプター
OH-1XA
愛称:《ニンジャ・改》
エンジン:TSP-M-M-12ターボシャフト/エンジン
アフターバーナー付きターボジェットブースター装備
全長(胴体):約12m
全幅(胴体):約1m
全高:約3.8m
ローター直径:約11.5m
自重:約2700kg
全備重量:約3700kg
最大速度:300km/h以上(ターボジェット使用時:約600km/h)
航続距離:約3000km(増槽搭載時)
最大上昇限度:約6000km(ターボジェット使用時:約9000m)
武装:M230 30mmチェーンガン(最大1200発)短射程AAM及び中射程AAM(空対空スティンガー及び、AIM-9サイドワインダー)
ハイドラ70mm誘導ロケット弾ポッド
このほか各種空対地・空対艦ミサイル装備可能
偵察装備:最新式SDS索敵サイト(カラー120倍ズームTVカメラ・赤外線・レーザー測距装置など)
乗組員:2名(前席:操縦士 後席:副操縦士兼射撃手)

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