第六戦隊と!   作:SEALs

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お待たせしました。
いろいろあって遅れながらで申し訳ありません。
イベントをやりながらでしたので、少しずつ執筆していました。
欧米海域から、フィリピン・ルソン島とは驚きました。
予想では『東の太陽 西の鷲』や『幻の超戦艦を追え! 』のように、ソ連海域やウクライナ海域などに行くのかと思いました。今回は予想外なことに海風ちゃんビスマルクさんたちなどバンバン来て、後々にどうなるやら……

では改めて、今回も甘々話、主役は加古になります。

それでは、本編開始です。

どうぞ!


第64話:夜の甘々散髪

柱島泊地 執務室

X-day

時刻 1800

 

はいはい、みんな。おはこんばんは。加古だよ〜♪

あれから提督と古鷹が起きるまで、あたしたちが見張りを務め、ふたりが起きた後は、みんなで交代ずつ提督ニウムの再補給をしつつ、あたしたちみんなで執務をこなし、夕方には睦月たちと警戒任務艦隊を編成、警備・哨戒任務も終えて、無事に夜まで何事もなく、こうして提督とみんなで過ごす良い夜を迎えることが出来たよ。

 

まぁ、あたしなりのお楽しみはこれからなんだよね〜♡

 

「それじゃあ、始めるよ〜♡」

 

 

 

それは数分前のことであった。

執務室ではいつもながら提督は、自身の執務机に向かって、次に必要な作戦計画表内容及び、大規模作戦に必要な艦隊編成表が記載された機密文書に加え、各任務や遠征による事後報告書などとの睨めっこ。時折視線を移しては、パソコンのキーボードをカタカタと打ち鳴らしながら、マウスを操作していく。いつも通りの多忙な作業だが、赤城の言葉を借りれば『上々ね』というくらい執務をこなしている。

それに明石や家具職人たちが丹精込めて造ってくれた新しい執務机。古鷹たちで決めてコツコツと貯めていた家具コインを奮発して、購入した秘書艦と提督の机も座り心地の良い椅子は抜群なもので実に執務作業も捗るものだ。

 

ただ、その側にいた加古も同じく執務に専念していたが……

 

「……加古。さっきからずっと俺に見惚れるのは構わないが、どうしたんだ?」

 

提督は問いかけた。

 

「んっ〜。なんか気がつかない内に髪伸びたかな〜って思ってさ」

 

加古は言った。確かに加古の言うとおり、前髪は簾状態とまではいかないが、やや伸びており、後ろ髪も同じような有り様だった。基本的にスカルフェイスマスクを被るからさほど気には止めなかったし、いざ素顔を晒すと気づかないことはあるものだ。何よりもここ暫く忙しかったことに加えて、深海棲艦と何処ぞの正規軍被りのテロリスト集団ことオリンピアのおかげで、理髪店に行って髪を切る暇もなかったな、と自身の髪を触りながらそう実感した提督。

基本的にこの時間帯での床屋は夕方以降には閉店時間を迎えている。仮に今の時間帯にまで空いている店があったとしても、わざわざ今からVTOLやヘリを飛ばしてまで急行するのもなんだかな。かと言って、このまま伸ばし続けたら、ファンタジー世界にいる美男子キャラのような長髪になり兼ねない……、とそう思うだけで苦笑いする光景が頭に浮かんだ。

 

「自分でも気づかなかったが、確かに伸びてきたな」

 

提督のその言葉を待っていました、とばかりに、ニコッとした加古。

 

「じゃあ、あたしが髪切ってあげようか?」

 

意外なひと言。況してやひとりの妻である加古に散髪して貰えるとは予想外だった展開であり、嬉しい誤算だった。同じくケッコンカッコカリをしているとはいえ、そういう特技を持っているとは知らなかったのは不覚だな、と内心に呟いた提督。彼女の言葉に……

 

「……ああ。御言葉に甘えて頼もうか」

 

「よっし。じゃあ、決まりだね!今からぱっぱと準備するよ〜♪」

 

 

 

 

 

 

そして、現在に至るという訳だ。

よし。俺も準備万端。デジャブな台詞だが、今回はただの散髪。今は切り落とした髪が衣服につかないよう黒色の散髪ケープを全身をすっぽりと覆い、加古が用意してくれた椅子に座っているまま待機中。なお床下には切った髪を纏めて捨てやすいように、古新聞が数枚ほど敷かれている。こういった漫画やアニメなどのような藪から棒な展開はあるものだな。こういう事は『事実は小説より奇なり』と言うべきなのか、と考えていたのも束の間――

 

「それじゃあ、始めるよ〜♡」

 

自分の部屋から持ってきたヘアカット一式セットを開き、その中から様々な種類の理髪用ハサミと櫛などを披露――加古曰く『某密林サイトなどで購入した自慢なもの』とのことだ。同時にスマホを取り出し、理容店の雰囲気を醸し出すために彼女のお気に入りの洋楽を流した。この音楽でよりいつもの執務室が一転、理髪店に早変わりしたようだった。

 

「それではお客様、今日はどんな髪型に致しますか?なんちゃって♡」と笑みを浮かべた加古。

 

「ああ、そうだな……短めでお願い致します」と提督が言った。

 

「はいはい♪ それじゃあ、まずは髪を少し濡らすからな〜」

 

シュッシュと霧吹きで水を掛けて、程よく髪を濡らしていく。

そう言いながら、加古は櫛を使って、提督の頭を優しく撫でるように髪を梳かしつつ――

 

「それじゃあ、切るから大人しくな」

 

カラスの濡れ羽色にほど近い真っ直ぐに整えた彼の髪を、加古の透き通るようにほっそりとした白い指、白魚のような指で軽く湿った髪と髪の間を掻き分けて挟み、右手に持つハサミで――シャキシャキシャキッと軽やかな音を鳴らしながら切り始めた。

 

「〜♪ これは楽しいくらい切り概があるな」

 

鼻歌を歌い、髪を切ることに嬉々しながら言った加古。

 

「………」

 

その彼女に頭部を弄られ、くすぐったい感覚を覚えるが、気持ち良いものだな。と、前から後頭部にかけて、自分で触れる時は気にすることはないが、誰かに髪を触られると気持ち良いものだし、人の手には不思議な力が宿っているのかもしれない、と提督は呟いた。

しなやかな指の動きで髪を宙に掴むような感覚。髪を優しく手に挟んでは毛先からリズミカルに合わせて、耳の近く、シャキシャキシャキと鼓膜の振動に合わせて小気味よく響くハサミの音。前髪を切ると、指先からは鉄の匂いに混じり、女性独特の優しい匂いが漂った。

 

「……髪切るの上手いな、加古。どうやって学んだんだ?」

 

提督は訊ねた。

 

「あたしなりの独学。時間があるときにネットや動画、本で見たり調べたり、明石と夕張に頼んでヘアマネキンをいくつか造って貰って、密かにそれを使って練習したりしたんだ」

 

「そうか。それでここまで上手くなったのか。……で、その間に誰かの髪を切ったりしたのか?」

 

「ううん。提督が初めてだよ。まさかここまで上達するとは自分でも思わなかったもんだから」

 

「えっ、俺が初めてなのか」

 

「……うん。だって上手くなったら、最初に髪を切りたかった一番の相手は提督って決めていたんだ♡ 昔提督が言っていた『自分なりの生き方を見つけろ』って。その言葉を思い出して、あたしなりに一歩踏み出してみたんだ、今では確かな手応えを感じているほど嬉しくてさ」

 

えへへ、とはにかみながら加古は言った。

 

「そうか」

 

笑顔の眩しい彼女に対し、提督は微笑した。

 

意外な秘密を、特技を持っていたこと。

 

加古なりの愛情を伝えていること。

 

そして何よりこうして自分の身を、加古に委ねていくことが嬉しかったのだから当然だった。

 

「再開するよ、提督」

 

再び髪が切り落とされる音が鳴り響いた。

日常生活にありふれた理髪店さながらの光景。在り来たりなカット、ブラッシング、カットを繰り返し――時々髪止め用のヘアピンで固定して調整しながら、この手慣れた手つきがある作業は、本当に安心して思わず眠りの中、夢の世界へと誘い兼ねないほど上手いものだ。それに撫でられる感触が癖にもなる。

 

「少しだけ前髪をすくったり、眉毛も整えるから眼を閉じててな」

 

加古の言うとおりに眼を閉じる提督。

瞳を閉じる彼の前に立ち、じいっと見つめる加古は、提督の前髪をすくい静かに黙々と切り始めた。切り過ぎると前髪が立ち兼ねないから慎重に切っていく彼女の姿は見えないが音で分かる。だからこそ身をまかせられるからこの安心感が伝わる。

早く眼を開けて自分の髪型を見たいな、と言うもどかしい気持ちを抑えて待つ。その方が楽しみであり、ほんの数秒、数分が長く感じると言う錯覚は慣れているが、この和やかな時間帯は時が止まったかのような空間にいるようだ。

 

「よし! かっこよく整えたよ。うん、よりかっこ良くなったよ。だけど、まだそのままな。切った髪を刷毛ではらうから」

 

ケースから刷毛を取り出し、顔についた細かい髪の毛を払い落とす感覚が伝わる。

このモフモフ感がくすぐったさに伴い、サッサッと手で撫でられる刷毛の感覚が頭の神経にも優しく響き、日頃から溜まっていた疲れも取れるくらいに癒され、気分も良くなるほど心地よいものだった。

 

「は〜い。それじゃあ、眼を開けても良いよ♡」

 

加古の言葉を耳にした提督は、ゆっくりと眼を開いた。

 

「こんな感じだけど、どうかな?」

 

手にした三面鏡を開いた彼女は、提督に見せた。

 

「おぉ……なかなか良いな、この髪型は」

 

プロの業前というべきだろうか。前から横、そして後頭部にかけて綺麗に整えられていた自身の髪型を見て正直な感想を述べた提督。

風通しの良いように

 

なるほど。この日の夜、この日のために切ってくれたことに伴い、初めての散髪が自分である事に嬉しさが増した。そして、今度また髪が伸びてきたら加古に頼むかと決心した。

 

「今回はこんな感じで短めに切ったけど、次にまた切るときは、さらに腕を磨いておくから楽しみにしてて。今よりもかっこいい髪型にしてあげるからさ!」

 

「ああ。楽しみにしているぞ」

 

互いに微笑み合い、ふと吹き掛けた風が優しく包むように嬉しさが増した。

 

「それじゃあ、最後に細かい髪の毛を落とすからドライヤーを掛けるから、悪いけどもう一度だけ眼を閉じてて」

 

うっかりなところも稀にあるが、そこがまた可愛い。と提督は思いつつ、もう一度眼を閉じる。その間、加古は愛用のドライヤーを用意。フラグを差し込み、そしてスイッチを入れる。ブォーンと快適な音を立てながら、風力及び、風の温度を確かめるため手のひらに風を浴びで適度な温かさに調整する。

こんな感じで良いかな、と言う表情を見せ、提督の前髪から弄っていく。髪を掻き分け、優しく撫でつつ、程よい温かい風が透きとおり髪の中に隠れたものを落としていく。さらによくする為に仕上げていく段取りは、まるでマッサージをされているかのように不思議なほど癒し効果もあるのか気分に伴い、血行も良くなりポカポカと頭が熱くなり、そして仕事の疲れが溜まって硬くなった頭の凝りもほぐされていく。モシャモシャと後頭部にかけて隠れていた切った髪の毛を払い落とすまでと……

 

「はい。終わったよ、提督お疲れ様〜♡」

 

「ああ、ありがとう。加古」

 

薄っすらと双眸を開けた提督は、加古に礼を言った。

 

「ふふっ、どういたしまして。でも……」

 

そう言いながら片付けをぱっぱと終えた彼女は、何かを言いたいように耳元で囁いた。

 

「でも?」

 

「もう一つ、愛しいあたしの旦那様には特別大サービス。痛かったら言ってね♡」

 

うふっと笑い、提督の前に立った加古はかがみ、彼の軍服――その詰襟のホックを外して首筋をツーっと指でなぞるように撫でてから唇を当てた。チュッと柔らかな唇の感触が伝わり、少し強めに吸われたり子猫のように優しく甘く噛み付いた。

 

「はい、終わったよ〜♡」

 

――数分後。甘噛みを終えた彼女が離れると、提督の白い肌にはくっきりと赤いキスマークが浮かび上がっていた。

 

「これでしばらくはあたしのものだよ、提督♡」

 

「ああ。そのようだな」

 

「古鷹たちが戻ってくるまで、こうしていような〜♡」

 

「分かった。困ったお姫様だな。もう少しだけだぞ」

 

耳元で囁いた加古に対して、それに答えるかのように彼女を抱えていた提督は眼を閉じて優しく、両腕に力を込めて、そしてしっかりと抱き締めた。

 

もう少し、もう少しだけと言いながらも結局は古鷹たちが執務室に帰ってくるまでイチャつく二人だったのだ。

 




前回に続き、今回も甘々話に伴い、こういった加古も良いんじゃないかと思う回になりました。そういった妄想でもありますが。
好きな娘から耳かきもですが、こうして散髪もされたら良いな〜という思いもあり、ASMRなどでもたまに聴いたりしますから仕方ないねぇ♂(兄貴ふうに)

加古の魅力もですが、古鷹たち第六戦隊好きが増えてくれたら良いな〜という思いで今回も書きましたので、そう思って頂ければ幸いですです。

次回は元帥視点、少しだけ嵐の前の静けさの回になります。
彼女なりの思い、他国では当たり前の軍事活動、某嶋田首相みたいに頭を抱えて胃薬や栄養ドリンクどころか下手をしたら自慢の髪が全て抜け兼ねないたような話に加え、柱島で火の粉が降り掛かる段階になるかと思います。予定ですが、多少なり変更がありましたら御理解いただけると幸いです。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
早めですが、皆さん良いお年を。来年も本作品をよろしくお願いいたします。

それでは、第65話まで…… До свидания(響ふうに)

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