第六戦隊と!   作:SEALs

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お待たせしました。
毎度ながらの備長告知で申し訳ありません。
艦これ6周年記念日とともに、今日から令和という新しい時代になるなどおめでたい事が続いて良いですね。

それでは、今回は前回の続きに伴い、事情により、前編・後編に分けますが、いつも通り楽しめて頂ければ幸いです。

では、気分を改めて……

いつも通り、楽しめて頂ければ幸いです!どうぞ!


第46話:黒鉄の巨魔 前編

短い休息を終え、息を整えた提督一同は店を出た。

店内にいても、外に出ても街に響き渡る銃声や悲鳴、爆発音は決して止むことはなく、それらは敵味方が入り乱れて区別出来ない。若しくは先ほどと同じように火事場泥棒集団かもしれない。

 

――楽だったのは昨日まで……か。

 

見えない死の恐怖が、ほんの一瞬の油断が命を奪いかねない状況を見て、提督は独り言、ネイビーシールズのモットーを呟いた。

別の市街地や沿岸部などで今まさに、ドンッと強い衝撃と轟音が提督たちの鼓膜まで響き渡った。今回の観艦式に参加した艨艟の群れか、果ては航空機なのかは未確認なため、一同には分からなかった。

敵味方がところどころ交戦している最中――不幸中の幸いなことは、自分たちの頭上から敵味方の様々な航空機が墜落していないことだ。

怪しい雲行きから降り注ぐ冷たい雨に打たれることも嫌だが、頭上から墜落機で死亡するのは勘弁願いたいと思いつつ、前進し続ける。

市街戦という地獄を見て、薄気味悪い笑みを浮かべ、この地獄を楽しんでいる悪趣味な死神たちが耳元で囁いているように思えた。

だが、ここは戦場だ、運は自分で切り開く。死の恐怖に侵されず、それを乗り越えた者こそが生き残ることが出来るのだ。

 

「この先に味方がいるかもしれないが……ふたりの通信機に反応は?」

 

元帥の問いに、香取たちは重い口を開けて答えた。

 

「……残念ながら、回線が混雑しています。情報が錯乱して完全な航空や緊急部隊による充分な支援にまだ時間が掛かるそうです」

 

「……聞こえても途切れています。幸い分かっているのはハンター2-1やバジャー部隊率いる警備部隊と、海上で奮闘している私や各鎮守府の提督さんたちの護衛艦、ふるたか型護衛艦筆頭の多国籍護衛艦隊などがまだ生存しています」

 

「そっか。ならば、まだ希望が残されているな」

 

先ほど聞こえた通信機も途切れ跡切れになっているという報告だが、彼女はまだ希望があると、提督たちを励ました。

 

――さすが、元帥だ。俺もまだまだ敵わないな。

 

提督がそう呟くと、近場で銃撃戦を知らせる音が聞こえた。

ロシア軍が持つAKシリーズが発する独特な銃声、それに混じって西欧製の銃火器の銃声が鳴り響いており、オリンピア軍の兵士たちが誰かを攻撃しているという知らせでもある。

 

「生存者がいるな!急ぐぞ!」

 

「ああ、ここで見捨てるわけにもいかない!」

 

提督たちは、銃声が聞こえた方向に進んで行ったのだった。

今度こそ、生存者たちを助けるために――

 

 

「オリンピア軍に釘付けされているわ!」

 

ドアを盾にして、シグ社のアメリカ法人シグザウエル社が発表した民間、及び法執行機関向けの自動小銃、SIG556 SWATで応戦しつつ、現状を報告する叢雲。

 

「司令官、早くしなさいよ!」

 

彼女とともに応戦する霞は、世界各国の軍や法執行機関の特殊部隊で導入しているH&K社製のMP7A1短機関銃(PDW)を携えていた。

 

「やってる、あと少しだけで起動出来る!」

 

建物内に立て篭り、応戦するふたりの嫁に叱られながらも久島は偶然見つけた1台の陸上型無人機――基地警備や空港用などに配備されているM134《ミニガン》とグレネードランチャーが装備されたCLAWを起動している。しかし、幾らプログラミングされても起動しないと、久島は焦りつつも起動することに努めていたが――

 

「動きなさいよ、この馬鹿!」

 

堪り兼ねた叢雲が軽く蹴りつけた瞬時、特有な起動音を鳴り響かせ、CLAWが起き上がる。

 

「やっぱり、この手に限るわね!」

 

「さすが、むらちゃん。これで武器システム作動したぜ!」

 

どうよ、と言わんばかりの叢雲はウインクした。

そんな彼女を見た久島は戦いの最中を忘れてうっとりとした。

 

「司令官、叢雲。グレネード!」

 

束の間、ドアを破壊しようとするオリンピア軍に気づいた霞が注意を促すと、ふたりは素早くドアから離れた。直後、久島たちを護っていたドアは脆くもガラスのように砕け散る。よくも手こずらせたな、と、ブラッドショット迷彩に似た赤色の都市型迷彩のユニフォームを着用したオリンピア女性部隊がライフルなどを構え、入ろうとした瞬間――

 

「皆、下がれ!」

 

彼女たちは、眼の前にいたCLAWに驚愕した。

そんな彼女たちに躊躇うことなく、束ねられた六本の銃座が回転を始めた刹那、オレンジ色の火焔を唸らすM134《ミニガン》。

その猛威を浴びた敵兵たちは文字通り蜂の巣にされ、迫り来る死神の恐怖から逃れることは出来なかった。

 

「こいつで突破口を開くぞ!」

 

敵兵を一掃したCLAWは、ゆっくりと前進する。

獣の咆哮に似た銃声が唸る度に敵兵を蹴散らして勇ましく進んで行く鋼鉄の猛牛を見て、久島たちも同じく前進する。

店に次々と侵入してくる敵兵部隊に対し、会員登録者以外は出ていって貰うぞ、と、呟いた久島は、かつて中国軍が存在していた頃に制式採用していたブルバップ式突撃銃、95式歩槍の後継銃――25式歩槍を構え、装着されたホロサイトを覗き見して引き金を引いた。

突撃銃ながらもまるで短機関銃並みの高レートかつ、そこそこの軽い反動という癖のないのがウリだ。ただし、低威力は否めないため、フルメタルジャケット弾という強装弾を装填している。

店内に押し寄せて来たも敵兵たちは、久島たちの攻撃を浴び、短い悲鳴を上げて倒れる。その兵士たちを見て、急いで別部隊が遮蔽物に隠れながら応戦する。が、壁や障害物の貫通性能を誇る強装弾により、遮蔽物を貫き通し隠れた敵兵を射殺する。

ひとりひとりと倒していき、弾切れ寸前を知らせる曳光弾に気づき、撃ち切ったと同時に――

 

「マガジン交換!」

 

彼は叫び、素早く遮蔽物に隠れて得物に新しい弾倉を交換する。

 

「カバーは私たちに!」

 

「まかせなさい!」

 

阿吽の呼吸。装填中の久島を見て、叢雲と霞はカバーする。

ふたりの援護射撃に感謝しつつ素早く装填、コッキングレバーを引き、薬室に装弾し終えた彼も再び彼女たちとともに撃ち続ける。

なお、久島は左手首に嵌めている端末機を操作、前進するCLAWに攻撃目標指示を送る。新たな指令を受けた鋼鉄の猛牛は、彼の端末機から発した青い光源に照らされた複数の敵兵に狙いを定め、M134《ミニガン》よりも強力な対人火器、40mmグレネードランチャーから高性能炸薬榴弾を撃ち放った。

放物線上を描いた榴弾が敵兵のど真ん中に着弾。それに伴い、耳を聾する爆発音と爆風、そして衝撃が発生し、敵兵らを薙ぎ払った。

この攻撃に敵は恐怖し、人数では圧倒的に上回っているにも 関わらず退却へと移った。

 

「よし!今だ、押し返すぞ!」

 

久島たちが携える各々の得物と、強力な武器を小刻みな連射音を上げて投射するCLAWの前に、オリンピア軍の兵士たちは次々と倒れた矢先、ひと筋の希望の灯火を連想させるようにモールの出口が見えた。

 

――あと少しで、出られぞ。

 

と、安心した瞬間――先導を指揮していたCLAWが突如として爆発。炎と黒煙が立ち昇り破壊された姿に、久島たちは唖然となった。

敵のグレネードランチャー、またはRPG-7など対戦車火器による攻撃で破壊されたのか、と、彼らは予想したが、実際には遥かに上回る襲撃者が怪音を鳴り響かせて、その姿を現した。

 

「敵の無人攻撃ヘリだ!」

 

「敵があんなものも持っているなんて聞いてないわよ!」

 

「本当にもう最悪も良いところね!」

 

久島の言葉を聞き、叢雲と霞は思わず愚痴を零した。

彼らの瞳に映る鋼鉄の怪鳥、かつて米軍が開発した初の全天候型に伴い、静粛性を兼ね備えたステルス攻撃ヘリ――RAH-66《コマンチ》に酷似しており、それをMQ-8B《ファイアスカウト》のように遠隔操作可能な無人攻撃ヘリに改装されていた。

黒く光る機首下部には20mm機関砲、両翼下にはAGM-114L《ロングボウ・ヘルファイア》対戦車誘導ミサイルとハイドラ70mmロケット弾が備え付けられていた。

 

「敵のRPGか、SMAWランチャーなどはないか!?」

 

「あったら苦労しないわよ!あるとしたら、どこにあるのよ!」

 

「知らないわよ。なければ探すしかないわ!」

 

久島たちは対戦車火器及び、対空携行ミサイルを探そうとするも無人ヘリや敵兵部隊が妨害、遮蔽物を盾に移動しながら、敵兵の死体を確認したが――

 

――誰ひとり、持っていない!!!

 

最悪なことに、誰ひとりも持っていなかった。

よく考えてみれば、そもそもFPSゲームのように、都合よく店内に転がっているわけではない。

不幸だ、と、呟きながらも手持ちの小火器を持ってヘリの撃墜を試みるが、小銃弾や拳銃弾如きで鋼鉄の怪鳥を撃ち落とせるはずもない。銃撃の閃光は激しく瞬くも、放った銃弾はむなしく無人攻撃ヘリの装甲を叩き、甲高い金属音を鳴らして弾き返されるだけだった。勢い付いた敵兵がこれ以上増えれば、厄介なことになるのは間違いない。

 

「こうなれば……ここにあるモップ、柱時計、コショウを使ってでも!」

 

『ダイナマイト刑事じゃないから無理でしょ!!』

 

夫婦漫才を交わしていると――

 

《久島提督、その場にいろ!》

 

通信機に誰かの声が入る。聞き覚えのある声、元帥の声を聞いた久島たちは言われた通りにした。

直後、空気を切り裂くようなターボファンエンジン音が響き渡った。彼らの身体中に響き、耳鳴りまでするほど野獣の唸り声のような銃声が響き渡ることに気づいた彼らがふと外の様子を見たときは、敵兵らは大量に降り注ぐ銃弾の雨に飲み込まれた。

彼女たちの悲鳴は聞こえない。それよりも爆音と銃声が上回ったからだ。繰り返される唸りなる銃声、絶え間ない銃弾の雨を浴び、ボロ雑巾のように吹き飛ばされる敵の死体は見る影も形すらないほど悲惨なものと化した。災厄は終わらず、華麗な戦乙女たちを護っていた無人攻撃ヘリは頭上に大穴を開けられた機体は制御不能と化し、グルグルと回転しながら、どこかに向かって高度を下げていく。やがて力尽きた機体は煙と炎を吹き出し、不愉快な甲高い高音を上げながら、地面に落ちていった。

 

『うわ……えげつねぇな(ないわね)……』

 

彼らの言葉に反応したのか、墜落した無人攻撃ヘリが爆発した。

 

『アーメン、と……』

 

十字を切る久島たちを見て――

 

「大丈夫か、久島提督?」

 

「……なに、やっているんだ。くっしー?」

 

元帥に続き、忘れもしない戦友、提督の声を聞いた彼らは、ハッと我に返ったのだった。

 

「見りゃ分かるだろ?あんなえげつねぇ光景見たらしたくなるよ、全く……」

 

久島は『やれやれ』と、言わんばかりに答えた。

頭を抱えている彼に対し、提督は『その気持ちは察するよ』と、ポンポン、と肩を軽く叩いた。

 

「たまたま運が良かったさ。それに……」

 

すると、提督の傍にいた青葉の手には、何かの遠隔操作端末のようなものを持っている。

 

「A-10ドローンの遠隔操作タブレットと、俺の妻、青葉の操作技術のおかげで、奴らを一掃出来たんだから結果オーライじゃないか」

 

「はいです!」

 

彼女が持つのは、A-10ドローン専用の遠隔操作タブレット。

このタブレットが操作する無人攻撃機は、米軍機の中でも高い人気を集め、湾岸戦争や対テロ戦など数多くの戦場を駆け巡り、逸話も残した有名な傑作地上攻撃機――A-10《サンダーボルトⅡ》。

これを無人攻撃機化《UCAV》に伴い、タブレットによる遠隔操作が出来るように改装した代物だ。

同じ日米に配備されている無人攻撃機MQ-9《リーパー》や《アヴェンジャー》などよりも敵の対空砲火に打たれ強く、なおかつ強力な一撃で敵車輌を容易く破壊するGAU-8機関砲、多種類の空対地ミサイルや誘導爆弾などの搭載兵装も多いという優れた点などがあり、再び鋼鉄の狩人は甦ったのだ。

 

「……老兵は死なずか」と久島。

 

「ああ。確かに老兵であるが……俺たちにとっては天使でもあるからな。A-10は」と提督。

 

提督たちがそう呟くと、遥か空の向こうから灰色の飛行物体が急接近したのに気づいた。A-10だ。灰色単色の機体は敵に見つからないように彩度を抑えたロービジ迷彩に統一されている。

灰色の翼を持つ鋼鉄の狩人は、敵から見れば黄泉の国から来た死神そのものだが、提督たちからは白銀の天使たちだった。

任務を終えたその無人攻撃機は、提督たちの真上を通過していった。

 

「では――」

 

A-10を見送り、口を開いた元帥。

 

「奴らを駆逐するため、派手に暴れようか」

 

「もちろん、派手に暴れますよ。元帥閣下」

 

提督が言ったと、全員が頷いた。

小さいものの、確かな反撃の狼煙。誰もがそう思っていた。

その勇戦し続ける夫に対し、古鷹たちが快活な笑顔を浮かべていたのだった。

 

 

《……ふむ。興味深い奴らがいるな》

 

ある人物がモニターを見て、呟いた。

この映像は、米軍や各同盟国で運用され、主に市街地や野戦における近距離偵察を得意とするRQ-11《レイブン》小型無人偵察機が搭載しているカメラから、リアルタイムで送られている。

ワタリガラスが捉えているのは、徒歩で移動する提督たちの姿だった。

 

《邪魔な男、特にマスク男を始末すれば、私の昇進も間違いなしね》

 

女性は呟き、モニターを操作した。

次に映し出された映像には、自分の足元にいる友軍部隊。

彼女たちに囲まれているのは、ふたりの少女が映し出された。

ひとりはセミロングの銀髪の持ち主は大人の雰囲気を漂わせ、もうひとりは色の薄い金髪が特徴を持つ可憐な持ち主だった。

今は抵抗し逃げられないように両腕はタイラップで拘束、銃口を突きつけ、そして生意気な口を黙らせるために猿ぐつわをしている。

 

《それに……我がグランド・マザーに贈る献上品は多い方がいい。ふふふ》

 

女性は命じた。奴らをおびき寄せるために罠を仕掛けろ、と。

部下たちは嫌な顔をした。要は自分たちはデコイ、囮として扱われるからだ。

 

《もしも成功したら、私が一晩中愛してあげるわよ》

 

『はい。喜んで!!!』

 

それを聞いた部下たちは嬉々し、人質を利用して、標的である提督たちが目指そうとする場所に先回りした。

囮作戦という嫌な任務だが、褒美があれば喜んで任務を遂行する。もしも拒否すれば、あの攻城兵器に踏み潰され兼ねないからだ。

古代ローマ時代に活躍した攻城兵器を模倣させ、その攻城兵器の前ではあらゆる戦車などの攻撃を無効にし、全ての陸上兵器を破壊することが出来る。

 

ただし、弱点もあった。

頑丈を誇る攻城兵器の割りには、この巨大な車体を支える二対の履帯が脆弱であり、幾度も修理をしなければならない。が、戦闘中はそんな猶予な時間がない。この弱点を克服するため、後部に装備した巨大タイヤが移動の役割を果たしてくれる。仮に敵の攻撃を受けて、二対の履帯が破壊されても、このタイヤで路上走行が可能である。

また、装甲の強度は万全であり、それを適切な位置に大きくて頑丈なボルトで固定されており、守りは鉄壁とも言える。

何らかの方法で敵に装甲板を剥がさなければ、難攻不落の動く要塞は負けることはない、と、操縦席に座る女性と、彼女の部下たちは自信を持ち、捕獲作戦を開始した。

 

《これは神の裁き、日本と言う異教徒へ下した、我が偉大なる力を持つ《グランド・マザー》のご決断なのよ!》

 

その顔に宿っていたのは、狂気と言う名の笑顔だった。




今回もまた私の好きなCoDシリーズの小ネタなどを入れました。
登場銃器や兵器はMW3やBo2を、最後だけのA-10ドローンは、Ghostsに登場した無人攻撃機という豪華に盛り込みました。
実際にA-10は無人機化計画はありましたが、事情により、この計画は見送りになったようですね。あったら、見てみたいですし、日本にも配備されたら良いのにな、と思いました。

最後に提督が言ったあの台詞は、映画『プライベート・ライアン』のオマージュをしています。終盤の戦闘に救援に来たP-51に対し、ミラー大尉が『天使が来てくれた』という言葉を言っていましたから、現代ならばA-10かなと思い描きました。

また最後に登場したふたりの人質は、私の好きな艦娘です。
春イベントにドロップしたら良いな、と願うばかりです。
今回は架空戦記の様に、IF作戦、第二次真珠湾攻撃作戦計画の再現らしいですね。
そして敵秘密兵器の正体は、徐々に詳細が明らかになりましたが、その姿は次回に明らかになりますので、しばしお待ちを。
同時に、提督のエグゾスーツ・カスタムに搭載されているある兵装が活躍しますので、次回もお楽しみに。

では、第47話まで…… До свидания((響ふうに

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