第六戦隊と!   作:SEALs

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お待たせしました。
では予告通り、市街戦編が始まります。
市街戦という地獄を、提督夫婦と元帥たちはどう乗り越えるか……

それでは、気分を改めて……

いつも通り、楽しめて頂ければ幸いです!どうぞ!


第45話:Death From Above《空からの死》

「――とく!提督!」

 

誰かに身体を揺さ振られた提督は、ゆっくりと両眼を開ける。

提督の視界はぼやけ気味に伴い、全身に軽い痛みが走るが、次第に回復していき、自分がまだ生きていることを実感した。

 

「……古鷹か。元帥たちは無事か?」

 

「みんな無事です。私たちも大丈夫ですよ」

 

「……そうか、それは良かった」

 

漸く自然回復した彼は、機内を見渡し、隣にいた古鷹、そして後ろにいる元帥たちを確認し、奇跡的に無傷とともに、全員無事に生きていることを喜んだ。

 

「しかし、先ほど屋上に不時着したはずだが……」

 

「はい。不時着時のショックのせいでコントロール装置が壊れてしまいましたので……」

 

古鷹の言葉を聞き、彼は気絶する寸前を思い出した。

敵の攻撃を受けて、古鷹と一緒に操縦した《白鳳》は、どうにか機体を制御しつつ、屋上まで上手く不時着したが、運悪く着地によるショックのせいで制御不能となり、コントロールを失った機体はそのまま屋上から落ち、そしてガラス屋根に突入、大型ショッピングモール内に不時着したことも思い出した。

 

「まだ、ブラックホーク・ダウンなどのような地獄じゃないから、不幸中の幸いだから良いが……」

 

と、言った直後――彼らの目の前、ショッピングモール内に侵入した国籍不明の垂直離着陸機が、《白鳳》よりもスマートな双発VTOL機が舞い降りると、歩兵部隊を降下させ、機首や機体両側面に装備された機銃を、モール内にいた民間人たちを躊躇うことなく射殺した。

同じく降下した歩兵部隊も自身が携えている得物を使って、逃げ惑う民間人たちを容赦なく射殺していく。

 

「奴ら、民間人を躊躇いもなく撃っている!」

 

元帥が言った瞬間、こちらに気づいたふたりの敵兵が、提督たちがいる《白鵬》のコックピットに飛び掛かる。が、損傷した機体はもはや堪えきれなくなり、モール1階まで落ちていく。

幸いにも2階だから良かったが、この災厄を打破するように――

 

「提督!これを!」

 

傍にいた古鷹が手渡してくれたH&K USP自動拳銃を受け取り、携えた自動小銃を今にでも発砲しようとした男性兵士に銃口を向けた提督は躊躇することなく引き金を引き、.45ACP弾を叩き込む。

数発の銃弾を浴びた敵兵は、呆気なく倒れたことを確認した彼は、傍で古鷹を取り押さえようとした女性兵士を射殺した。

 

「全員出て、武器を取るんだ!」

 

提督の言葉を聞き、古鷹は死んだ女性兵士からARX-160を、元帥たちは《白鳳》の機内にある銃器を拝借して機体から飛び出した。

降下したばかりと思しき女性兵士たちがいたが、提督たちは素早く撃ち倒した。また新たに落とした敵の武器を拾い上げ、空かさず民間人を射殺していた敵兵をまた撃ち倒した。

彼が拝借した武器は、ベルギーの有名な老舗銃器メーカー、ファブリックナショナル社が米特殊部隊向けに開発、高い汎用性などを兼ね備えた高性能突撃銃SCAR-Hだ。

米軍の特殊部隊などが制式採用され、しかも強力な7.62mm弾を使用、なおかつM4などのように様々なアタッチメントも状況に応じて変えることも出来るという優れたものでもある。

しかも運が良いことに、敵検知機能を備えた最新鋭の光学技術『ファインダー』というサイトが装着され、これで敵味方を識別し、友軍誤射を未然に防いでくれる。

同時にM67破片手榴弾やM84閃光手榴弾、ナイフなども拝借した。

古鷹たちも同じく敵兵の遺体から物資を拝借した。艤装が無き今は、日頃の陸戦訓練などを思い出して戦うしかない。道中、今の武器が弾切れになったら死亡した味方や敵の武器を拾うか、敵兵に紛れて降下し散らばっている敵の弾薬箱や補給物資などを見つけて補給するしかない。運が良ければ、防衛用に配備したタレットや自動機銃、敵の重火器などを見つけられるかもしれない。

提督たちは、オリンピアは甲鉄艦や潜水艦、空中航空母艦、飛行艇、そして最新式小火器などとあらゆる種類の兵器を、ここまで気前のいい装備を保有するテロ組織はおろか、かつて世界の覇者という野望を企てていた中国軍や韓国軍、北朝鮮軍か、またはアフリカ南部に存在した国家・ローデシア共和国の軍及び傭兵部隊の装備でも模倣しているのか、と自問自答したぐらいだった。

ともかくオリンピアの降下猟兵部隊を撃退しつつ、今の状況を打開、そして久島や浅羽たちの無事も確認しなければならない。

 

「上がれ。2階だ!」

 

提督の号令一下、恐怖に負けて自分たちの指揮官を失い、パニック状態に陥って逃げる兵士たちにも躊躇うことなく射殺した。

 

「クリア!」

 

「オールクリア!」

 

敵兵を沈黙させ、モール2階から直接市街地に行けるルートを確保。

休息室から外に出ようと、足を踏もうとしたが、微かに部屋中から伝わる振動とともに、耳障りなローター音が響き渡った。

 

「みんな、隠れろ」

 

提督や古鷹たちは遮蔽物に身を寄せ、じっと息を潜める。

窓の外から見えたのは、かつて中国が存在していた頃、ヨーロッパのユーロコプター社とアグスタウェストランド社が作業協力して得た技術を活かし、中国初の本格的な戦闘ヘリとして、中国軍からは『霹靂火』と言う愛称で親しまれたWZ-10《キメラ》が姿を現した。

メディアの前で姿を披露した際は、米軍のAH-64《アパッチ》のライバル機とも言われ、一部からは『チャイニーズ・アパッチ』と呼ばれたこともあったが、実際にはバッタ物に過ぎず、戦場や訓練でも故障することが多く、稼働率の低さなども含め、全ての性能に於いて《アパッチ》には敵わなかったのだ。

ドイツ軍のPAH-2《ティーガー》などを含めた欧州各国の攻撃ヘリを模造しただけの劣化兵器、旧式の攻撃ヘリとしては否めないが、スティンガー歩兵用携行地対空ミサイルがない今は、地上部隊にとって敵の航空攻撃は脅威そのものであるため、モール内にある遮蔽物に隠れてやり過ごすしかない。相手がサーモスキャンしていなければ、こちらが見つかる可能性はまずない。

提督の読み通り、案の定、敵の攻撃ヘリは、こちらに気付くことなく、通り過ぎて行った。

 

「行くぞ」

 

通り過ぎた攻撃ヘリを見送り、提督たちは前進した。

 

「奴らめ、ここを占拠か、手当たり次第に破壊の限りを尽くす気だな」

 

提督が言った。

彼らがモールを抜けた先には、有名なレストランやファーストフード店などが並ぶ。人々の暮らし、人々の営みが築かれる街はのどかで、休日は今日の観艦式並みに人々の笑い声が響き渡るほど、明るい街並みが似合うのだが――今は破壊と殺戮の嵐、人々の悲鳴が蔓延るなどに覆い尽くされた灼熱地獄に変貌した。

 

「今は出来る限り、奴らを倒しながら生き残った仲間たちと合流して駆逐するしかない。今はそれだけだ!」

 

元帥が言った。直後、別部隊の無線機通信を傍受した。

 

《オーバーロードよりハンター2-1、敵降下部隊に続き、海上から深海棲艦までも攻めてきやがった!大至急、航空支援を頼む!》

 

《こちらオーバーロード、航空部隊は制空権奪回及び、敵空中艦隊や深海棲艦たちの駆逐で手一杯だ。増援のリーパー及び、ウォートホグが来るまで各部隊はそれまで堪えてくれ》

 

ハンター2-1と名乗る部隊は『了解』と言いつつ、自分たちで突破すると伝えると、オーバーロード――警備部隊司令部は『健闘を祈る』と言い残し、通信を終えた。

 

「なぜ奴らが、深海棲艦までもが!?」

 

「あくまで推測だが、オリンピアはかつての特亜のように利害関係の一致か、我が国にいた馬鹿な左派連中などと同じく憎き日本を滅ぼしたいという理由で、どうやら彼女たちと軍事同盟を結び、これを機に日本に大打撃を与えるつもりだな」

 

オリンピアに続き、深海棲艦が現れて沿岸地区を攻撃する情報を耳にした一同。どちらにせよ利害一致のために軍事同盟を結んだ可能性があると、元帥は推測した。この推測が正しければ、今後の戦いに大いに影響を与え兼ねないが、今はここを突破しなければならない。

 

《オーバーロードより各部隊へ、敵の巨大飛行艇が兵士とともに、見たこともない巨大兵器を投入している。各隊は警戒及び注意しろ!》

 

《こちらバジャー1、BTRを含む敵軽装甲車輌部隊投入を確認!》

 

新たに耳にした情報。あの巨大飛行艇から見たこともない巨大兵器や敵装甲車部隊が出現したなど、あらゆる場所から不安を掻き立てる空襲報と、展開している警備部隊の通信内容が各所で鳴り渡る。

大気を震わせるサイレンが心を掘り起こし、沸き立たせる不安を押し殺して、提督たちは前進した。路地には顔も名前も知らない住民たちが溢れていた。民間人を誤射しないように気をつけなければ、と、提督たちは言い聞かせた。

だが、次々と降下して来るオリンピアの兵士たちはお構いなく、自分たちの敵である警備兵を、民間人ごと射殺していく。

同じようにこの状況に乗じて略奪行為を平然と行なう薬物中毒者たちなどが協力し合っている姿もいた。

そのため両者は、こちらに気づかなく様子もなく、ひたすらに無敵を誇る宇宙の侵略者たちを気取りながら、虐殺や略奪行為を楽しむ。

突破口の確保に伴い、提督たちはそんな侵略者や略奪者たちには慈悲など必要ない、と見て、狙いを定めた。

 

――みんなであの車を狙う。

 

――了解!

 

提督は手信号で合図、古鷹たちも返答し、攻撃を開始した。

彼が先にSCAR-Hを撃ち、古鷹はARX-160を、加古はMTAR-X2を、青葉はUMP45を、衣笠はM14 EBRを合わせて一斉射撃。標的は複数のオリンピア女性兵士たちが、盾として利用している軽自動車に数発の銃弾を浴びせる。直後、被弾し続けたため、車体は炎上、やがてガソリンに引火し、その場にいた兵士たちは慌てて逃げようとした。が、時すでに遅く、車輌の爆発に巻き込まれて死亡した。運良く逃れて負傷した者たちもいたが、提督夫婦による射撃で殲滅される運命だった。

 

「流石、古鷹さんたちだ。僕も負けられないな!」

 

「うん。五月雨も!」

 

初月はSRM 1216散弾銃、五月雨はB23R機関拳銃を撃ち、火力支援を務める。また偶然にも五月雨が倒そうとした敵兵の横にあったひと際目立つ赤いドラム缶に命中したが、これもまた功を奏したのか、その場にいた敵兵と、複数の敵兵たちを巻き込んで倒したのだ。

 

「あれ、私……敵兵を狙ったのに」

 

「えっ?そうだったのか?」

 

なお、一番驚いたのは五月雨本人だったが、初月も同じく驚いた。

 

「ならば、私もな」

 

「もちろんです、元帥閣下!」

 

「はい、おまかせください!」

 

元帥は、Atlas45自動拳銃で応戦、精密射撃を繰り出す。

香取はM27 IAR分隊支援火器を構え、通常マガジンから、ベータ C-MAG(100発用)を装填し、コッキング、そして制圧射撃を加えた。

鹿島はM16A4の銃身下に備え付けられたM320グレネードランチャーをお見舞いした。対人用として効果抜群の40mmグレネード弾の炸裂により、オリンピアの兵士たちだけでなく、木製バットとAK-47を携えた略奪者たちにも襲い掛かる。着弾による炸裂音、飛び散る金属破片に彼らはなす術なく沈黙した。

オリンピアの降下部隊は、何処からともなく姿を現しては、米軍を苦戦させたソマリア民兵組織並みか、と、問い掛けるほど多かった。

下手をすれば、人命軽視の人海戦術を好むソ連や中国、北朝鮮軍を連想させるが。

 

「クリア。少し休憩しよう。みんな息が上がっている」と元帥。

 

「では、あの店に行きましょう。元帥」と提督。

 

敵沈黙を確認した一同は、ほっと胸を撫で下ろした。

束の間の休息に伴い、敵機による攻撃と敵兵に狙撃されないように、近くのファーストフード店に入った。

店頭には笑顔で来客を出迎えてくれる有名な立像に、無人化しても足を踏み入れれば、ファミリーを歓迎する音楽が店内に鳴り響いた。

戦闘は束の間の休息、終われば移動するを繰り返していたから、店内で休憩をするだけでも気持ちが和らいだ。

SCAR-Hを構えながら警戒する提督は、冷めても良いからテーブルの上に食べ物があれば良かったのに、と、内心で呟いた。

彼はハンバーガーやフライドチキンのことを考えただけでも、口のなかで唾が湧くのを覚えた。行くとたいがいバーガーBOXを注文した。

またチキンBOXをお土産として買っては、古鷹たちはもちろん、鎮守府のみんなと一緒に食べたりなど思い出ある店でもあった。

深海棲艦出現の当時は、通商破壊行為により、思うように食材などの物資が不足した際には、国内にある店舗が多く閉鎖された。一時の不況のなかで経営して生き残った店は、東京などと言った大都市にあり、スマイルセットなどをメニューに加えられるほど利益のある店だけだった。日本だけでなく、アメリカや他国も同じような状況だとも言われているが、今は戦況が優勢となり、南西海域などのシーレーンも回復し、あらゆる店舗も経営出来るほど、少しずつ落ち着きを取り戻している。

 

「これらも貰っておこう」

 

食べ物の代わりに、銃器類などが置いてあるテーブルがあったが気にしないでおこうと、一同は頭の隅に置いた。

おそらくは警備隊か、降下したオリンピア軍の置き忘れ物なのかは不明だが、それらをありがたく拝借しただけでも儲けものだったとき――

 

「……キッチンから何か音がしたな」と提督。

 

「……ああ。私も見に行こう」と元帥。

 

小声で囁いたふたりは物音を立てないように、キッチンに足を踏み入れた。物音の正体を確認するため、ふたりは顔をチラッと覗かせた。すると、小腹がすいていたのか、キッチンの冷蔵庫を漁っている敵兵がいた。

しかもテーブル、その上には持ち帰り用として紙に包まれたハンバーガーやフライドチキン・ポテトセットが幾つも置いてあった。

背後にいた提督と元帥には気付かず、今もなお飲み物を漁っている敵兵に対し、提督は『おい!』と声を掛けた。

 

「おのれ!」

 

オレンジジュースを片手に慌てふためいた敵兵は、傍に置いていたイスラエル製のTAR-21を掴んだが――

 

『無銭飲食だ!』

 

ふたりは躊躇うことなく、銃弾を叩き込んだ。

オレンジジュースパックが弾け飛び、敵兵はキッチンに倒れた。

ほかに敵兵及び、味方、民間人がいるか、と、二階も確認したが、結局のところこの女性兵のみがキッチンを漁っていただけだった。

あとは銃を握ったまま、相打ちという形で死亡した警備隊員と、オリンピア軍の敵兵の遺体などが少数いただけだった。

 

間に合わなかったか、と、提督は苦々しい顔で呟いた。

両眼を見開いたままの遺体に近づいた提督は、そっと手をかざし、せめて彼らの魂が安らぎあらんことを、と敬意を込めて瞼を落とした。元帥も傍にいた遺体も同じく、安らかに眠ってくれ、と手をかざしたのだった。

 

「……キミの気持ちは分かっている。彼らのためにも生きて戦い抜かねばならないことをな」

 

「分かっています」

 

今は古鷹たちとともに生き残ることが義務であり、死に逝った彼らのためにも絶対に、と、誓った。

 

それが今の自分たちの任務なのだから。




今回は激しい市街地での銃撃戦とともに、私の好きな銃器やCoDシリーズの小ネタなどを参考にしました。
米本土に襲撃したロシア軍やキューバPMC、アフリカなどの市街戦もまるでスズメバチの巣窟に伴い、あの中で行なう恐怖の銃撃は、映画『スターリングラード』や『ヒトラー 最期の12日間』なども思い出しますね。また『ブラックホークダウン』も市街地でのあの戦闘場面もまた恐怖感が増して怖かったですが。

架空戦記でも市街地での戦闘も、本当に読み進めると、その場にいる感じもしますね。特異かもしれませんが。

次回もまた銃撃戦が続きます所以、柘植提督の戦友、久島提督たちと合流して、オリンピア軍の秘密兵器に立ち向かいますので、次回もお楽しみくださいませ。

また余談ですが、久々に活動報告も更新しました(昨日ですが)
時間は掛かりますが、興味のある方々は楽しみに待っていてくださいね。

では、第46話まで…… До свидания((響ふうに

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