第六戦隊と!   作:SEALs

42 / 83
С Новым годом(あけましておめでとうございます)、同志諸君! 今年も本作をして宜しくお願いいたします。

新年早々ですが、最新話を投稿することにしました。
今年も本作品ともども、宜しくお願いいたします。

新年の挨拶は、ここまでにして……
予告通り、新たな不吉な前兆が始まります。
果たして、どういう展開なのかは本編にてお楽しみくださいませ。
また今回で提督の名前が分かりますので、こちらも。

では、改めて今年初の最新話です。
いつも通り、楽しめて頂ければ幸いです!どうぞ!


第42話:ブラックパレード 前編

横須賀軍司令部

時刻1300

 

「今日は君たちが主役の日、我が国も久々の観艦式だから皆の者、気合いを入れるように!」

 

『はっ!元帥閣下!!!』

 

元帥が告げた瞬間、提督や古鷹たち、各鎮守府に所属する艦娘たちは敬礼した。その一糸乱れない端麗な敬礼に伴い、全員が胸を張り、誰しもが誇り高い眼差しになっていた。

それもそのはず。今日は各鎮守府所属の提督や艦娘たちとともに、合同観艦式を披露する特別な日でもあるのだ。

各提督たちは先代の帝国海軍の意志、各国共通として今でも伝統として海軍士官たちが担う海の紳士、シーマンシップの誇り、そして共に歩み、支え続けた各提督たちの絆を結んだ古鷹たち率いる艦娘たちこと各提督夫婦たちが主役となる観艦式は、明治、大正、昭和の帝国海軍時代はむろん、現在まで受け継がれている海軍の記念行事なのだから胸が熱くなるのだ。

因みに観艦式の起源は、1341年、英仏との間で勃発した百年戦争の最中に、イングランドの王、エドワード3世が出撃の際、自軍艦隊の威容を観閲したことが始まりと言われている。

そして観艦式の様式は、1897年(明治30年)、イギリスのビクトリア女王即位60年祝賀の際に挙行されたものが基となっており、今でも現在各国が守り続けている様式でもある。

 

今回の観艦式は、1936年に退位した英国王エドワード8世に代わって新国王となったジョージ6世の戴冠式を記念し、英国スピットヘッド沖で1937年5月20日に行われた国際観艦式が再来したように、米英などの代表艦船や艦娘たちが参加するため、元帥もまた嬉しくて堪らないのだ。

 

「各自指定された時間を忘れずに。では、解散だ」

 

元帥の言葉を聞き、提督や艦娘たちは解散した。

 

「じゃあ、俺たちも時間まで見直すか」

 

『はい。提督(司令官)♡ ♡ ♡ ♡』

 

古鷹たちとともに参加するのは――

 

「五月雨も、初月も日頃の練習通りに頑張れば良いからな」

 

「はい。五月雨、頑張りますね」

 

「初めてだけど、僕も嬉しいな」

 

「一緒に頑張ろうね。初月ちゃん!」

 

「ああ、頑張ろう!」

 

五月雨も初月も嬉々した。

余談だが、古鷹たちと五月雨は艦時代に、1940年(昭和15年)10月11日、横浜沖で行われた大日本帝国海軍最後の観艦式『紀元二千六百年特別観艦式』では、共に参加したことがある。

初月は戦中時に進水したため、艦時代での観艦式参加は出来なかったのだ。今回の観艦式参加は初めてだが、緊張感や不安などなく、寧ろ参加出来ることに対して嬉しさのだ。

 

「よし、ふたりとも良い娘だ」

 

提督は、自分の娘たちのようにふたりを撫でた。

五月雨と初月は、温かい手で優しく撫でられて嬉しくなった。

これを見た古鷹たちは、私たちも撫でて、と、指を咥えていた。

微笑した提督は、古鷹たちを抱き締めて撫でていたときだ。

 

「すまない。提督……ううん、柘植崇幸、君に連絡することがある。すぐに来てくれたまえ」

 

元帥が言った。

彼女が、提督の本名を言うのは緊急時だと言うことだ。

 

「……分かりました」

 

それを悟った提督こと柘植崇幸は、古鷹たちとともに、元帥の話を聞くのだった……

 

 

「一難去ってまた一難か……」

 

「……まぁ、そうなるな」

 

提督がそう呟くと、元帥も同じように重い口を開いた。

いつも通りスカルフェイスマスクを被っているにも関わらず、ひんやりとした空気が額に当たった。

提督だけでなく、元帥に呼ばれた浅羽や久島、郡司以下各提督、古鷹たちも同じように感じていた。

 

元帥が口にした発言、緊急事態とも言える内容が分かったのだ。

この出来事の発端は、ハルナたちを元の世界に戻す特殊作戦『タイム・リンク作戦』からだった。

極秘作戦にも関わらず、老人率いるプロ市民たちが何者かにより貸与された甲鉄艦で沿岸警備隊を強襲に伴い、国籍及び、所属不明のAC-130ガンシップの攻撃も加わり、久島艦隊にも損傷を行なった。

しかし、提督や古鷹たちの迎撃により老人たちの甲鉄艦とAC-130部隊を殲滅し、無事ハルナたちを黒い空間までエスコートすることが出来たまでは良かったが、事件はここまで終わることはなかった。

 

小笠原諸島海域近くにある無人島を偶然哨戒任務に当たっていた1隻の潜水艦、第2潜水隊群に所属するそうりゅう型潜水艦《ずいりゅう》が現場から米海軍はおろか、各国が保有する潜水艦とは違い、古代日本やエジプトの石棺を思わせる形状をした潜水艦隊が浮上していた。

浮上して確認しようとした副長に対し、《ずいりゅう》艦長は不安を感じ、潜望鏡を上げ、潜水したたまま確認した。

数分後、石棺型潜水艦乗組員たちと思しき人物たちが乗艦、それからすぐさま潜行したのだった。

艦長は、数名の乗組員たちを上陸させ、調査すると老人たちだけでなく、元帥が更迭した旗中井仁提督が死体となっていたと言う。

後に、《ずいりゅう》艦長の報告を聞いた元帥たちは、すぐさま調査部隊を派遣して調査する形になったと言うことは、提督は聞いてはいたが、何しろ軍機が厳しいために詳しいことは一部しか知らない。

 

「以前聞いた情報で、新たな進歩はあったのですか?」

 

「ああ。我々が調査していると新たな展開が出たんだ。しかも意外な情報保有者がいてな。香取、鹿島、映像を」

 

「はい。元帥」

 

「はい。元帥さん」

 

提督の問いに、元帥が答えた。

そして論より証拠を見せるため、彼女の側にいたふたりの秘書艦娘、香取型練習巡洋艦1番艦の香取、その姉妹艦の鹿島に命じた。

 

「元帥閣下及び、提督たちが実行した作戦『タイム・リンク作戦』を裏で我々の合同作戦を妨害した今は亡き首謀者たちに関して、極めて興味深い情報が新たに入手しました。それについて、ご説明したいと思います」

 

「正確に言えば、由々しき情報です」

 

香取の言葉を繋ぐように、鹿島が補足した。

提督は、途方もない情報だろうな、と、判断した。

香取が手元のリモコンスイッチを操作すると、テーブルの向こうの壁に上からプロジェクト・スクリーンが降りてきた。

彼女がさらにスイッチを動かすと、ビデオ映像が流れた。

プロジェクトされた映像、最初に映し出されたのは、病院のベッドに横たわる女性が映っていた。

女性は、膝あるいは床に届くような丈の長い衣、洋服の一式形であるガウンを着用していた。が、顔から両腕には医療用包帯が巻かれ、さながら透明人間のような姿だった。

提督たちは、ホラー映画か、某笑顔動画で有名になった包帯剣士のコスプレをしたコスプレイヤーか、と呟いた。

 

「この女性は、あの『タイム・リンク作戦』で甲鉄艦を操艦していた老人たちを援護していた国籍不明機、元よりAC-130部隊指揮官を務めていた唯一の生き残りであるパイロット、ジーン少佐です」

 

香取の説明を耳にした提督たちは理解した。

 

「我々が調査をしていた最中、伊豆半島海域沖合20マイルのところを救命具に縋っているところを発見しました。

全力で捜索をしたのですが、確認が出来たのは彼女だけです。

しかも救助されたときは意識不明でありました。一旦はUS-2救難機ですぐさま本土の病院に収容したところ、辛うじて意識を取り戻したのですが……」

 

彼女の言葉を繋げるように、鹿島が言った。

 

「これは私たちが元帥さんの尋問班とともに、ジーン少佐を尋問したときの記憶でありますが……ともかく軍医さんの所見では最低3日間以上は漂流していたと見られ、日焼けと脱水症状がひどく、意識の混濁もあり、私たちが尋問出来るよう回復するまで数時間は掛かりました」

 

映像の端から、元帥派の尋問官とふたりの護衛兵がフレームインした直後、護衛兵はベッドの傍らに鎮座した。

万一に備え、抵抗したジーンを取り抑えるためである。

カメラがズームアップして、包帯だらけ、僅かに露出した蒼碧の双眸と乾いた唇だけしか見えないジーンの顔をとらえた。

 

誰しもが、よくサメに喰われなかったな、と内心に呟いた。

伊豆半島海域には、人を襲うヨシキリザメやシュモクザメが遊泳しているが、稀にホオジロザメがおり、過去にダイバーたちなどが襲われ、犠牲になったことも珍しくない。

史実では、原爆輸送作戦を終えた米重巡《インディアナポリス》が帰投中に伊58に雷撃されて撃沈後、漂流した乗組員たちはサメの群れに襲われた記録も残っている。

多くは衰弱や負傷して死亡した者たちが多く、特に後者から出た血の臭いに敏感なサメたちが襲いに来たのだ。

これを知った米軍はサメ避け用の薬を開発したほどでもある。

ともかく、ジーンは漂流していたのにサメたちの餌食にならなかっただけでも悪運に強い女性パイロットだ。しかし――

 

他の搭乗員たちも見つかっても良いのに、死体すら発見されていないのは何故か?

 

提督の問いに答えるかのように、香取の声が画面に響いた。

 

「ジーン少佐、聞こえますか?……私は横須賀鎮守府所属海軍情報部の香取です。あなたは、どうやって小笠原諸島から伊豆半島海域まで漂流していたのですか? 」

 

彼女の問いに、ジーンはゆっくりと頷き、そして答え始めた。

 

「……我々は機体から脱出した後、あの黒い空間に巻き込まれ、とんでもない場所に飛ばされてしまったんだ」

 

ジーンの呟きを高性能マイクが拾った。

 

「私の機体にいた仲間は全員……古代の海に飛ばされたんだ。……恐竜、いや、海に棲む爬虫類たちのうようよしている海だ。……ものすごく暑く、陸上では火山が噴火していた……私は仲間たちとともにいたが……」

 

「……いたが、どうしました?」

 

香取が問いかけた。

 

「私の目の前で次々と餌食になりました。プレシオサウルスという首の長い爬虫類たちに襲われ、最後に私が餌食になろうとしたところまでは覚えていますが、それ以降の記憶、なぜあの海域で漂流していたかは分かりません」

 

映像がそこで終わった。

映像を見ていた者たちは顔を見合わせたが、浅羽だけは、隣にいた提督に囁いた。

 

「あいつ漂流し過ぎて、お腹空いているから見えない幻影に惑わされたんじゃない?」

 

否定的な浅羽の言葉に、提督は苦笑いした。

浅羽は基本的には超常現象は信じておらず、自身の目で見ない限りは信じない主義である。浅羽と同じように、一部の者たちも、狂人の戯言か、と、思う者たちもいたが……

 

「私は狂人の戯言とは思わないな」

 

元帥が硬い口調で言った。

 

「医師団の所見でも意識の混濁はあったが、精神は正常とのことだ。なお、彼女の衣服には現在では特定出来ない水棲動物のDNAが付着していた。恐らくは嘘は言っておるまい。

ハルナたちは無事に帰れたと言うことは確かであり、ジーンたちの場合は何かしらのトラブル、時空の歪みで中生代に行った可能性が大きいと言うことだ」

 

「実は我々はこう推測しています。あくまでもひとつの仮説ですが」

 

香取が言った。

 

「あの黒い空間は一種のタイムゲート、人工的な産物だと私たちは考えています。これを作ったクリエイター(創造者)がいたかもしれません。このクリエイターは、ゲイト・キーパーとも言えます所以、当然なにかしらの意思や感情を持ち、一時的とは言え、黒い空間が開いていたものの、私たちに対し好意的に見たのではないでしょうか。

言い換えると、ジーン少佐たちはそうではない。寧ろ悪意を持っていたのかもしれません。

だからこそ、ハルナさんたちは元の世界に、ジーン少佐たちは中生代にトリップしたのかもしれません。

悪い言い方では悪用者がいた場合の見せしめ、そのことを知らせるためにわざわざジーン少佐だけを生き延びさせて送り返したかもしれませんね。今はもう消えたため推測でしかできませんが」

 

自分たちの頭がおかしくなったのでは、と思い、全員が呻いた。

しかし、元帥は冷静に口を開いた。

 

「そして、二度目の尋問で新たな情報を入手した。全員、心して聞く様に。鹿島、次の映像を」

 

「はい。元帥さん」

 

鹿島が操作すると、新たな映像が映し出された。

 

「では……元帥の考案した極秘作戦情報や内容を如何に知り、首謀者やテロリストたちに甲鉄艦を提供した者たちについて教えてくださいね?」

 

鹿島の問いに、ジーンは口を開いた。

 

「……私たちは《グランド・マザー》の天命を受け賜わり、使い捨てである旗中提督や老人たちを騙し、奴らから作戦情報などを知り、我々の力をデモストレーションしました」

 

「あなたの言うグランド・マザーとは、いったい何者なのですか?」

 

「グランド・マザーは、『オリンピア』の創設者であり、我らの指導者、そして偉大なる女王様でもあるのだ。テロリストではない。

先ほども言ったが、偉大なるグランド・マザーは、このだらけた男どものせいで長年続き、男どものせいで起きた戦争で、無辜の女性や子どもたちが虐げれた暗黒の歴史及び、この傲慢な男性指導者や其奴らに媚びる女性ども、そして暴力で艦娘たちなどを支配する男性提督たち全員の殺害に伴い、我々の楽園、女性だけの楽園を築くために艦娘や女性たちを解放して、深海棲艦たちとともに新たな秩序、平和な新世界を築きあげるためです。ふふふ……」

 

不敵な笑みを浮かべたジーンの言葉を聞いただけで、息を呑んだ者、顔を見合わせた者、そして騒めいた者たちがいた。

しかし、提督と、一部の者たちは怪訝な顔を浮かべたのだった……

同時に、新たな戦いの幕開けかもしれない、と、悟った瞬間でもあったのだった……

 

 

提督たちが会議をしていた頃、周囲警戒として軍や警察関係者による市街地や軍港なども立ち入り検査はむろん、対テロ対策も行なっていた。

 

戦中でも本土が攻撃されない、と言う安全神話などない。

史実では連戦連勝時に浮かれていた日本に対し、ルーズベルト大統領は打開策として、日本本土空襲を提案した。

ハルゼー提督指揮下の米海軍機動部隊が太平洋を横断して日本列島(本州)東方海域に到達後、ジミー・ドーリットル中佐が指揮するB-25双発爆撃機部隊が日本本土初の空襲、これにより不要なMI作戦が始まり、暗号を米軍に解読された挙げ句、待ち伏せ攻撃を受けた日本海軍はミッドウェー海戦で敗れた。

しかも民間人までミッドウェー海戦が始まることも知ることもだが、重巡洋艦《加古》の艦長、高橋雄次大佐も自分の息子からもそれが始まることを聞いた際は驚きを隠せなかったと言われている。

彼だけでなく、他の艦長や士官たちなども高橋艦長と同じく、どこから情報が漏洩したのか、なぜ民間人や家族全員が知っているんだと驚愕したに違いない。

もしも情報戦の重要性を理解し、軍機を徹底的に施していれば、MI作戦なども違った結果になっていたかもしれない。

元帥率いる良識派たちも、これらを認識して、今回展開した警備部隊及び、軍機などは徹底的に非公開にしている。

 

観艦式と言えど、警戒態勢は怠らず、いつでも深海棲艦を迎撃出来るようにスタンバイしていることは忘れていない。

上空には戦闘機や早期警戒機部隊、市街地には対空部隊や警戒部隊、歩兵部隊、そして海上には護衛艦群が巡回している。

今回はT-600《タイタン》多脚戦車と、主砲や誘導ミサイルを装備したモバイルタレットミサイルなども配備されている。

なおも観艦式や市街地警備に対し、『侵略行為を正当化している』に伴い、未だに負の遺産、開戦と同時に放棄された憲法9条をこよなく心酔する職務放棄且つ、早めの長期有給好きの左翼議員たち、彼らを崇拝する自称『平和主義』を掲げているプロ市民団体やマスコミ連中などは訳の分からぬ抗議したが、黒木首相たちが論破したため、大人しく黙り込んだのだった。

 

しかし、誰もが楽しむにしていた提督たちが予想したように、この観艦式が新たな恐怖の始まり、実行者たちが刻々と行動していたことも知らずに……

 

「さあ……ワルツを楽しみなさい。差別国家に落ちぶれたアジア後進国家よ」

 

彼女、グランド・マザーの魔の作戦が始まろうとしていた……

 




今回は嵐の前触れ、新たなる戦いの始まりとも言うべき予兆です。
超空の艦隊や第二次宇宙戦争 マルス1939などの架空戦記ネタを取り上げています。新年から読む架空戦記は面白いです。
あと、友人とプレイしたCoDシリーズに登場した兵器も少々ですね。

次回からは架空戦記及び、銃撃戦になるかなと……
ここでも計画兵器・架空戦記特有の兵器も登場させようかなと思います。一部は好きな他作品ネタも少々ですが。

では、次回からはこの観艦式が悪夢に早変わり、そして新たなる戦いの始まりでもあります。天空の富嶽に似ている? 此方はまた違った展開ですのでお愛想を。敵が深海棲艦との軍事同盟は無論ですが。

おほほほほ(おばけギャルソンふうに)

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。次回もお楽しみくださいませ。

では新たなる展開となる、第43話まで…… До свидания((響ふうに)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。