第六戦隊と!   作:SEALs

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お待たせしました。
今回はファンタジーな甘い話です。
なお私の好きなロボットアニメ作品のロボットが登場しますのでお楽しみくださいませ。

では改めて、いつも通りの予告に伴い、楽しめて頂ければ幸いです!

どうぞ!



第37話:ふわふわファンタジア

「今日も良い天気だし、秘書の日だから嬉しいよ〜♡」

 

提督の傍で、加古は肩を寄せた。

花畑から漂う花独特の良い香り、太陽の陽気な心地よい温かさ、そして提督から伝わる優しい温もりが嬉しくて仔猫のように甘えている。

 

「ああ、そうだな。加古」

 

彼女と肩を寄せ合う提督も、この世界の片隅に、この柱島泊地の風光明媚な景色を楽しんでいる。

 

むろん、ふたりだけでなく――

 

「えへへ。司令官〜、加古お姉ちゃん〜♪」

 

卯月は、元気よくシャボン玉を楽しんでいた。

彼女が作ったシャボン玉は、ゆるりと溶け込むように蒼く透き通る蒼海に似た蒼空とともに、所々には白いちぎれ雲が自由気ままに、水を得た魚たちのように誰にも邪魔されることなく静かに浮遊している。

まさに今日は、地中海の風景に似た絶好の晴天日でもだな、と、提督はシャボン玉が浮かぶ空を見上げて呟いた。

 

「司令官、加古お姉ちゃんも一緒にシャボン玉しようぴょん♪」

 

卯月が、手を振っていたのを見たふたりは微笑して、手を振り返し――

 

「俺もシャボン玉を楽しもうかな、童心に帰ることも大切だからな」

 

提督は、独特のデザイン――キャリコM950の形状にしたバブルガンを持って来た。

 

「あたしもしようかな〜♡」

 

加古はバブルガンと一緒に持って来た針金で作った枠を、シャボン液を多く染み込ませるため、枠に毛糸などを巻き付けている。

なお、ひとつだけ大きなリング状の枠が、人が入れるぐらいの大きさもある。

 

 

提督はバブルガンを持ち、加古は定番のストローを持ってシャボン玉を作った。

空気中で作られる泡の群れは、空を飛んで当てもない旅をする旅人のように気ままなものだな、と思う風景でもあった。

 

「見て見て、司令官。すごいの出来たぴょん」

 

卯月が言った。

ふたりはそのシャボン玉を見ると、泡のなかに花が入っていた。シャボン玉のなかに小さなシャボン玉があるものは見たことあるが、こういうものは初めてだった。

 

「俺もやってみるか」

 

「あたしもやってみるね♪」

 

提督と加古も早速同じように近くに咲いている花を見つけて、シャボン玉のなかに入れた。

すると――卯月が見せたシャボン玉のように花を包んだ不思議な泡は、空に高く舞って行った。

 

「う〜……なんだか眠くなってきたぴょん」

 

遊び疲れ、程よい日光のせいで卯月はふらめいた。

直後、転びそうになった彼女は、どうにか転ばないようにしたが、間に合わず転んでしまった。

 

「う〜痛いぴょん」

 

「おいおい。大丈夫か、卯月……あれ?」

 

「大丈夫……ぴょん?」

 

加古が倒れた卯月を起こしたが、視線が違う方向に向いていたため、卯月も目を移した。

 

「提督が……」

 

「うーちゃんの作ったシャボン玉のなかに……」

 

『入っている(ぴょん)』

 

「おぉ……」

 

提督がシャボン玉に入ってしまったのだ。

卯月が手に持っていた手製の巨大な枠、シャボン玉液が含んでいたため、転んだショックで提督はシャボン玉のなかに入ってしまった。

 

「およ?」

 

提督は、不思議なこともあるんだな、と思っていた瞬間、そよ風の影響で飛ばされてしまった。

 

「提督が飛んだ!」

 

「大変だぴょん!」

 

空高く浮遊する彼を見た、加古と卯月は慌てた。

 

「提督を追い掛けるぞ!」

 

「うーちゃんも行くぴょん!」

 

「分かった。あたしの背中に乗りな。落ちるなよ!」

 

「ぴょん!」

 

加古は、深呼吸をして落ち着いて、と言い聞かせ、卯月とともに提督を追いかけるのだった。

 

 

「おお、本当に飛んでいるな」

 

提督は、風をナビにして、翼を得た鳥のように自由に飛んでいた。

このまま、どこまで飛んで行くのだろうか、と思ったときだった。

 

「あれ、くっしーと叢雲、霞たちが野球しているな」

 

提督は視線を移すと、久島と、彼の艦娘たちが休日を利用して、野球をしていた。

みんな楽しそうに遊んでいるな、と提督は見ていた。

彼が呟いたのか、また偶然に気づいたのか、全員が試合を止めて空を見上げていた。

自分たちは、夢でも見ているのかな、と思いつつ、見ているような顔をしている娘たちが多かった。

 

「あっ、また風が吹いて……」

 

提督が言うと、また風にまかせて、目的のない旅に出る旅人のように飛んで行った一方――

 

「スポーツドリンクで体力回復したけど……」

 

「なかなか追い付かないぴょん」

 

水分補給をしながら加古と卯月もまた、提督を追い掛けるのであった。

 

 

「今度は、どこだろうな」

 

風に流された提督が見た場所は、漫画やイラストなどでよく見る三角屋根に煙突付きの小さな別荘だ。

その暖炉付きの別荘の持ち主は、招待した友人たちとともに、茶席で用意された紅茶と茶菓子を嗜みながら、ティータイムを満喫している姿も見えた。

 

「あれは元帥の別荘だな。元帥と、しんちゃんと阿賀野たちだな」

 

呟く提督に気がついたのだろうか。

一同もまた、久島たちと同じく『なんだろう?』と空を見上げていた。

 

「優雅で良いな」

 

述べるのも束の間、彼女たちに見送られるように、提督もまた気まぐれな風に流されて行く。

 

「もう少しで追い付くかな」

 

「ぴょん!」

 

彼を追いかけて、加古と卯月も、元帥の別荘を通り過ぎて行く。

 

 

夕刻。

夕日が浮かぶ海を背景に、記念写真を撮ろうとするとある一同。

 

「もう少し寄り添ってください」

 

デジカメを持つ菱島昌人が言った。

 

「こうしよう、木曾」

 

「そうだな、郡司」

 

郡司と木曾が寄り添っていると、ふたりは何かに気づいたのか、空を見上げた。

昌人もまた、見上げた空を背景に携えていたデジカメのシャッターを押した。

郡司と木曾も、昌人が撮影したものを一緒に確認した。

 

『これは……!?』

 

声を揃えて見ると、シャボン玉のなかに入った提督の姿を捉えたことにビックリした。

提督は、郡司たちと振り返ると、彼が入ったシャボン玉は海に入っていた直後――

 

「提督〜〜〜!!!」

 

「ぴょ〜〜〜ん!!!」

 

全力で走る加古と、彼女の背中から落ちないようにしがみつく卯月を見た郡司たちは、彼女たちと衝突しないように避けた。

 

『ようやく追いついた(ぴょん)!!』

 

追いついたと思いきや――

 

「加古さん、卯月ちゃん……下!下!」

 

昌人が言った。

彼の言う通り、加古と卯月はゆっくりと足下に視線を移すと、真下は海だった。

足の踏み場もなく、空中に数秒ほど浮いた直後――

 

『うわあああ〜〜〜!!!(ぴょ〜〜〜ん!!!)』

 

ふたりは、海に落ちて行った……

 

 

提督は、海のなかを泳いでいた。

通る最中、クリスマスツリーに似たサンゴが見えた。

いくつもの光源体が発光して、海のクリスマスツリーも神秘的な美しさだな、と眺めていた。

同時に海のなかでも自分を包んでいるこのシャボン玉は、割れることがなかった。

普通は壊れるのに不思議なシャボン玉だな、と呟きながら移動した。

 

「おや?」

 

提督は、目の前に光る洞窟を見つけて入って行った。

そのなかには、深海棲艦たちが経営する海底レストランだった。

提督は『俺は竜宮城でも来たのか』と冗談を言いつつ、風景を楽しんで行く。

 

今かと食事が来るのを楽しむ戦艦水鬼と戦艦棲姫と、厨房ではレ級が、エビ炒飯を作っていた。

食事を楽しみ、多忙な彼女たちの邪魔にならないように提督は、そっと静かに去って行った。

 

 

「水中でも息が出来たから良いけど……」

 

「司令官、どこにいるか分からないぴょん」

 

その頃、提督を探す加古と卯月は、提督が先ほど通ったこのクリスマスツリーのような丸い玉の付いたサンゴ礁で立ち止まっていた。

ふたりも不思議なことに、水中でも息も出来れば、喋ることも出来たことに驚いた。

それは良いが、提督はどこにいる分からずじまいだったのが悩みの種だったとき――

 

「うん?」

 

加古の肩を、トントンと優しく叩く者がいた。

振り返ると、正体は深海重巡洋艦のネ級だった。

ネ級は、手に持っていた光る玉の付いたサンゴを加古と卯月に手渡した。

 

「これを懐中電灯の代わりに?」

 

「はい、その通りです。使ってください」

 

「そっか、ありがとう!」

 

「ありがとうぴょん♪」

 

ふたりは、これを貰い、ネ級と別れた。

手を振っていた彼女たちに、ネ級も小さく手を振り返し見送った。

 

 

海中を浮遊する提督は、目の前に光源体を目にした。

 

「あれは、加古と卯月だ。お〜い!」

 

提督は声を出して、手を振った。

 

「あっ……提督、発見〜♡」

 

「見つけたぴょん♪」

 

彼に気づいた加古と卯月は、ようやく再会出来た喜びを表すように、お互いの手を繋いだのも束の間――

 

『うん???』

 

提督たちの近く、その足下にあった大きな貝――オオシャコガイが開き、貝のなかからたくさんの泡が現れて、提督たちは海面に流されてしまった。

 

「ヲ?(……誰かいたような気がしただけど、気のせいかな?)」

 

この貝のなかで寝ぼけて起きたヲ級のおかげとは、彼らは知ることはなかった。

 

「ともあれ、無事に……」

 

「提督と再会〜♡」

 

「出来たぴょん!」

 

提督たちは、シャボン玉のなかで一緒にいた。

先ほどの影響で、加古たちは一緒にこのなかに入ったのだろうか。無事に再会出来たのも束の間。

一難去って、また一難と言うことわざのように、その出来事が起きたのだった。

 

「提督、あれ……」

 

加古が指を指した方向から、高速物体が飛んできた。

外観は猛禽類だが、小型戦闘機にも酷似していた。

直後、その姿に提督は思い出した。

 

「不味い。コンドルだ」

 

「デストロン最強戦士だから……」

 

「まずいぴょん!」

 

提督たちが言った。

ロボットアニメ『トランスフォーマー』シリーズに登場する、デストロンの一員――サンドウェーブが収納するカセットロンのひとりであり、最強とも言われる空中偵察・スパイ活動を主な任務にするコンドル型のカセットロンである。

コンドルは金切り声を上げながら、提督たちが入っているシャボン玉を周回していた。

物珍しそうに見ていたコンドルがくちばしを使って突いた。そのときだった。

 

『あっ!!!』

 

コンドルのくちばしにより、シャボン玉は割れてしまったのだった。

 

「こら、コンドル!」

 

提督が怒ったときにはコンドルは、すでにどこかに飛んで消えていた。

 

「提督、やばいよ。やばいよ!」

 

「うーちゃんたち、このまま……」

 

『きっと落ちてしまう!(ぴょん!)』

 

抱きつく二人を見た提督は装着しているエグゾスーツ・カスタムで、何とか飛ぼうとしたが――

 

『ほわあああああーーー!!!』

 

提督は結局数秒しか飛べず、加古と卯月もろとも海にまた落ちてしまうのだった……

 

 

一方その頃――

 

『提督(司令官)加古、卯月ちゃん〜!!!』

 

三日月の光に照らされた夜空の柱島泊地。

夜になっても提督たちが帰ってこないと、心配した古鷹・青葉・衣笠、そして彼女たちと一緒に睦月たちも探しに来たのだ。

所どころ、配置された街路灯を頼りにしながら、探していると――

 

「あっ、いたよ!」

 

古鷹が、木陰で寝ている提督たちを見つけた。

三人とも、リズムの良い寝息を立てながら気持ちよく寄り添って眠っていた。

 

「提督、起きてください」と古鷹。

 

『加古、起きて〜』と青葉と衣笠。

 

『卯月ちゃん、起きる時間にゃし〜』と睦月たち。

 

それぞれ、ユサユサと肩を揺らしながら、提督たちを起こした。

眼を擦りながら、提督たちは起きた。

 

「あれ……?」

 

「あたしと卯月、提督の入ったシャボン玉を追いかけて……」

 

「一緒に色んなとこに行ったぴょん……」

 

しかし、提督たちは鮮明に覚えているが、あの光る玉のサンゴがなかった。

三人でこうして木陰で寝ていたとなれば、今までのことは、全て夢であったことを認識しか出来なかった。

 

同じ夢を見るなんて、不思議だな、と思ったとき――

同時に、ぐうっ、とお腹の虫が鳴り、提督たちは顔を見合わせて笑い合った。

 

「それじゃ、そろそろ我が家に帰ろう」

 

『はい、提督(司令官)〜♡ ♡ ♡ ♡』と古鷹たち。

 

『はい(うん)。司令官!』と睦月たち。

 

提督は立ち上がり、帰る支度を整えた。

 

「今日は不思議な夢だったけど、あたしにとって提督がいる毎日が夢のように嬉しいよ♡」

 

「俺も加古たちがいる毎日が夢のようで嬉しいよ」

 

照れる提督に、加古は右頬にキスを付けた。

 

「夜も良い夢、見させてね♡ もちろん……あたしだけじゃなくて、古鷹たちにもな♪」

 

ニカッ、と微笑む加古を見て、提督は頷いた。

 

「ああ。もちろんだ」

 

提督は、加古をお姫様抱っこで抱えながら、今日の不思議な夢に感謝しつつ、古鷹・睦月たちと一緒に鎮守府に帰るのだった。

 

しかし、提督たちがいた木陰の近くには、ネ級からもらった光る玉の付いたサンゴが落ちていたのだった……

 




今回は不思議なシャボン玉回に伴い、夢オチかなと思わせる回でした。
因みにシャボン玉は、春の季語としても唄われ、ポルトガル語の『シャボン(sabão)』から来たことを調べて初めて知りました。

今回ゲスト出演した、カセットロンのなかでもお気に入りなので登場させました。
某艦これMAD動画などでは、コンボイ司令官やメガトロン様たちのいる鎮守府ありますから不思議ではないです。
余談ですが、『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』で破壊大帝メガトロン様に歯向かったニューリーダー病のアレ(スタスク)を、コンドルはガダルカナル島に投棄したようです。
後に反旗をしたスタスクをデストロンに復帰させるメガトロン様、理想の上司です。

なおコンボイ司令官が崖から落ちた時の『ほあああああ!』という叫びは公式でもネタにされています。
私は、コンドルに中枢部を破壊された時のコンボイ司令官の叫び声も印象強いです。

では、今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

それでは、第38話まで…… До свидания((響ふうに)

「大変だ、司令官は中枢部を」

「みんな下がれ!はやく!」

「ほわあああああ!」

また、コンドルのデイリー任務が達成したな。

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