今回は五月雨ちゃんの着任回です。
なお少しですが、変更に伴い、親友提督とエンジニア提督の真名も分かりますのでお楽しみください。
今後、ふたりはこの名前になりますのでよろしくお願いいたします。
今年で、艦これ五周年記念日と言うおめでたい年でもあります所以に、次の六周年記念日も楽しみです。
それでは、本編にいきますよ〜(山雲ふうに)
柱島泊地
執務室
「白露型6番艦、五月雨です。よろしくお願いします!」
五月雨は、提督の鎮守府に所属している扶桑たちの前で自己紹介した。
提督たちは、彼女に『よろしく』と全員温かく拍手喝采で迎えた。
余談だが、提督は今、スカルフェイスマスクを外している。
元帥との会談や初対面の娘との会話のときは、常に外すことを忘れない。
提督は、元帥に依頼されたことを思い出した。
回想―――
『……と言う理由で、キミに五月雨を着任させることが決まった』
『なるほど、そう言う訳ですか。まさか、我々が戦っていた海域で見つかるとは……』
元帥の説明、元より五月雨が着任する理由を聞いた提督は頷いた。
彼女の提督、イケメン提督こと旗中井仁中将が死亡したのだ。
しかも発見場所は驚くべきことに、提督たちがハルナたちを元の世界に戻るための黒い空間が出現した近くの島である八丈島の某海岸地帯で死体として発見されたのだ。
そして行方不明となった連中、謎の装甲艦に乗艦して提督たちを襲撃したあの老人率いるデモ隊も同じく、彼とともに死体、元より何者かによって無惨に殺された死体として見つかったのだ。
『旗中井仁中将は、更迭に伴い、私が激戦地に送り込んだのだが、『タイム・リンク作戦』が実行される前日では、香取たちの報告と、ここに届いた書類上では戦闘中行方不明なのに何者かが改竄したか、または戦闘中に行方不明を乗じて何者かの助けを借りて激戦地を抜け出したかは海軍調査部隊が現在調査に当たっている』
残念なことに目撃者はおらず、現在は捜査中とのことだ。
深海棲艦ならば、よほど好戦的なもの以外は、残虐な殺しをする者はいない。
第三者による他殺ならば話は別だが、提督たちにも今後、聞き取り調査、または緊急会議がまた行なわれるかな、と提督は脳裏をよぎった。
『荒氏の前触れでもない限りは大丈夫だと良いのだが、今後の捜査に期待するしかないな……』
彼女は顎を撫でた。
提督は、郡司が執務室まで手短に教えてくれた情報を思い出した。
郡司にとっては情報戦及び、情報収集などはお手の物。
旗中井仁中将の評価は、決して良い評価はなかった。
鎮守府に所属している艦娘たちに対しても評価に伴い、改二実装及び、性能が良い艦娘たちは優遇しているが、改二になっていない、特に駆逐艦の娘たちには冷遇していたらしい。
彼にとって『駆逐艦=雑魚』であると同時に、強いものには媚びへつらうが、自身より弱いもの、とりわけ駆逐艦の娘たちに対して、言葉の暴力や躾と言う名の精神的に追い詰めると言ういじめが大好きという陰湿な性格でもあった。
旗中の憲兵たちも同じく、彼女たちに深い傷を与えた。
助けることもなければ、見て見ぬ振りは当たり前でもあったのだ。
この横暴な態度を知った元帥および、郡司・木曾率いる特務艦隊が彼女たちを保護するために潜入調査により、この実態が明らかになったのだった。
そして全員無事保護することに成功したが、それでも彼女たちの心に深い傷を残したのは変わりなかったことは否定出来ない。
『彼のような陰湿且つ、古典的なブラック鎮守府は潰すことも出来た所以に、我々の保護下にもある。
信頼出来るカウンセラーや自立支援などもあらゆる手当てを行なっているが、由々しき問題は数多くある。
元気のある娘は、キミや郡司を含め、親友提督こと『浅羽慎太郎(あさば しんいちろう)』中将、エンジニア提督こと『久島龍広(くしま たつひろ)』中将など、信頼できる所以に、彼女たちを笑顔にする鎮守府に預けられることは大歓迎だ』
『郡司や浅羽中将、久島中将にも話したのですか?』
提督の言葉に、元帥は頷いた。
『ああ、もちろん彼らにも話したさ。私や良識派たちとともに、着任順も兼ねてね。
郡司はロシア語が流暢だし、敵艦救助と言う功績があるからロシア艦娘と第六駆逐隊メンバー、浅羽中将には駆逐艦の娘たちを着任させた。
彼と阿賀野たちは、子ども好きな所以に、水雷戦隊屋としては成績優秀だからね。
そして久島中将の艦隊には足柄がいるから、妙高たちと、機動部隊及び、航空支援のために雲龍型姉妹を着任させたのさ』
「今後の戦力増強も兼ねてですか?」
「まあ、そういうことになるな。新しい電探や艦載機に伴い、今後の友軍艦隊編成として試験的に各鎮守府と連携や交流もできるし、双方にとっても得にもなるからね」
「なるほど。今後のためも兼ねてですね」
「今後の重要課題でもあるからね。浅羽と久島、郡司などと言った優秀な提督たちから始めて、次のステップとして進んで行きたい」
郡司はむろん、浅羽慎太郎、久島龍広の名前を出すことは重要なことであり、普段はふたつ目の名である『○○提督』は、外部の人間に知られないようにコードネームとして使われている。
提督たちを含めて、ほかの提督たちの個人情報を知るのは、元帥や彼女の良識派たちであり、一部の政治家のみと言う軍の機密事項に相当するのも然り。
海軍に属する軍人の家族は秘密組織に属していることは知らされているものの、任務内容は公表できず、また彼らの任務の詳細については知らされていない。
かつてのMI作戦の失敗のひとつとも言われる緘口令を徹底的に行っている。
情報戦を不得手とする旧軍は、最後まで自分たちの暗号が解読されていないことを豪語したが、実際には米軍には全ての作戦内容まで解読されていることを終戦まで知らなかったような事態は避けたい。
今回は軍事作戦ではないが、普段から支援を提供してくれる恩もあり、義もある。
だからこそ、提督は断る理由など、何ひとつもなかった。
『分かりました、元帥。私にお任せください』
『うむ、よろしく頼むぞ。成功を祈っているぞ』
そして、現在に戻る―――
元帥から渡された一度は目を通したが、古鷹たちともに、郡司たちと協同作戦だが、上手くいくかなと提督は呟く。
「それでは、五月雨の自己紹介も終えたところで鎮守府案内及び、明日のスケジュールを読んでおくように」
「はい、分かりました」
提督が言うと、五月雨は頷いた。
「それから、川内と睦月たちはすまないが、鎮守府内部などを案内してくれ。
俺は古鷹たちと次の作戦内容や遠征報告などを聞かなければならない。それらが済み次第は休憩しても構わないから」
「うん、分かった。提督!」
「睦月たちに任せるにゃし!」
「ありがとう。それとこれを渡しておくから好きなものを食べなさい」
提督は五月雨たちに、ある物を人数分ほど手渡した。
「あ、間宮券だ!」
「ああ、間宮さんと伊良湖の食事やアイスなどもあるが、ここでしかないオリジナル料理やスイーツもあるから楽しむと良い」
提督は、五月雨の頭を優しく撫でた。
「ふえっ、提督?」
「今日からここが新しい家であり、家族だ。まだ慣れないことが多いかもしれない。何かあったら俺や古鷹たち、みんなに心置き無く頼りなさい」
―――提督の手、優しくて温かいな
五月雨は、両頬を少し赤く染めた。
前の鎮守府ではこうしたこと、旗中提督にも頭を撫でられることはなかった。
彼の初期艦として共に歩み、鎮守府及び、艦隊を大きくしたものの、旗中だけは提督として大きく成長することはなかったことを悔やみ続けていた。
自身が海域でMVPを取っても、遠征で大成功したとしても褒められることすらもなかった。
言われたことは『ご苦労』と言う、労いもなければ、感謝の気持ちすらもないひと言だけ。
海域攻略失敗はおろか、演習で敗北しただけでもヒステリックになっては罵られたこともあった。
旗中提督との良い思い出なんて、ひとつもなかった。
だからこそ、新しい居場所でも希望は望まなかった。
だけどここに来て、まだ微かではあるが、確かなものを五月雨は感じた。
この優しい笑顔と温もりは、本物だと感じた。
そう感じると、不安も解れた彼女は自然と笑みを浮かべた。
「はい、提督。ありがとうございます」
「よし、私から以上だ。今日はゆっくりと自由に過ごすと良い。明日はお楽しみがあるから楽しみに待ってなさい」
「はい、提督!」
元気の良い返事に伴い、笑みを浮かべた五月雨は自分の荷物カバンを持ち、川内・睦月たちとともに執務室から退室した。
「では、我々も作戦を練ろうか」
『はい、提督(司令官)♡ ♡ ♡ ♡』
「それじゃあ、俺にいい考えが―――」
提督たちもとある作戦を話し始めようとしたが―――
「あ、あわあああ、あああああ〜〜〜!」
廊下から五月雨の声が聞こえたので、どうしたんだ、と思い、提督・古鷹たちなどが確認すると―――
ギャグ漫画のように、見事に転んでいた五月雨の姿がいた。
『あと、五月雨はよく転んだりするドジっ娘だから上手く支えてくれ』
もうひとつ言っていた元帥の言葉は、本当だったな、と提督は内心に呟いたのだった……
(……大丈夫かな、明日の行事は)
今回はややシリアスと伴い、五月雨ちゃん着任回でもありました。
なおふたりの名前の由来は、ネタがあります。
浅羽中将は『戦海のテティス』の主人公の名前から。
久島中将は『ミスター味っ子』の久島料理人を参考にしています。
提督にもありますが、まだ先のお楽しみにととっていますのでお楽しみくださいませ。
次回もこの続き、ほのぼの作戦を開始します。
どんな作戦かは、次回のお楽しみに。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
それでは、第35話まで…… До свидания((響ふうに)