第六戦隊と!   作:SEALs

32 / 83
お待たせしました。
イベントや事情により、遅れて申し訳ありません。
次のイベント、第二期イベントも楽しみですね。

今回は不吉な予兆とも言えるサブタイトルと伴い……
とある人物の名前も明らかになりますので、お楽しみを。

いつも通り、楽しめて頂ければ幸いです!

どうぞ!


第32話:災厄の女王

 

時刻 1700

大洗鎮守府埠頭

 

夕暮れの一時、ほんのり淡い色が軍港を黄昏に染める。

大洗鎮守府は元々は海保、現在の沿岸警備隊支部のひとつでもあった。

深海棲艦出現後は海軍の指揮下と入り、現在は艦隊指揮を担う鎮守府として国防を支えている。

なお且つ、百里基地との共同作戦も可能とする重要拠点のひとつでもある。

無事に本土に帰投した提督、エンジニア提督は、親友提督と会話を交わしていた。

 

「ありがとう。しんちゃん。俺たちのために工廠ドックと入渠ドックを貸与してくれて」

 

「次に会うときは、必ず御礼はするからな」

 

「なに、俺たちは戦友だろう。困ったときは御互い様だ」

 

ふたりは、親友提督に礼を言った。

彼らの言葉に、親友提督は愛想笑いを浮かべた。

 

「今日は、久々に揃ったからゆっくりしてくれ。護衛艦の応急修理や補給は、明日までには終えるから安心しな」

 

帰投直後―――

エンジニア提督の護衛艦《むらさめ》は、すぐさま工廠ドッグに入れられて修復作業に移っている。

修復作業は整備士や工廠妖精たちが務める。

親友提督の護衛艦《あたご》とともに、提督の護衛艦《あしたか》も燃料・弾薬補給を行うため、護衛艦用工廠ドックで入船している。

負傷した乗組員たちは、海軍運営の病院に緊急搬送されており、最悪の事態を回避することに成功した。

同じく入渠施設まで緊急搬送した叢雲・霞たちも、今は落ち着いており、傷や疲れを癒すために彼女たちは湯治に専念している。

獅子奮迅の如く、装甲艦を撃沈した古鷹たちとともに、救援に駆け付けた阿賀野たちも然り。

 

「ありがとう。ただし、問題は奴らだな……」

 

提督は顎を撫でて、連行される捕虜たちを見た。

敵乗組員たちは上陸直後、元帥及び、大本営直属警備部隊『近衛兵』部隊に、全員引き渡した。

彼らの背後関係を知るために尋問が待っている所以に妥当な扱いは受け入れられない。

以前はテロリストたちを『人権』と言うもので守られていたが、外患誘致罪に伴い、共謀罪、スパイ防止法などが成立した今は、死刑及び、無期懲役である。

無期懲役でも妥当な扱いは受け入れられないが。

可愛そうとは思わない。因果応報。寧ろ当然の報いである。

戦中にテロ行為や国家反逆などは、万死に値する。

近年でも反日政党も同じように、今上天皇や首相を打倒するなどと外患誘致罪など平然と行うが、現在では提督たちのように愛国主義者たちのおかげで衰退した。

 

「今回の件で第三勢力が現れなければ良いが……」

 

提督は顎を撫でた。

 

「深海棲艦と手を組もうとかもあり得そうだな」

 

エンジニア提督が言った。

 

「架空戦記のような展開だけど、ないとも限らないからな」

 

親友提督も同意見を述べた。

 

「そうだな。あの大東亜戦争より、日本は日露戦争の調停を申し出たアメリカ、彼らが長年練り上げた対日計画“オレンジ計画”に気づくべきだった。

もしも、日露戦争が終結した瞬間から、対米戦争の戦略を確保して、練り上げていたならば、もう少し有利な大東亜戦争に進めることが出来たように気を付けないとな」

 

提督は、他にも述べた。

史実でアメリカが勝利した大きな要因のひとつである、ドイツの至近に持った巨大な橋頭堡―――すなわちイギリスを開戦早々に攻略し、その持てる先進技術と戦争遂行のノウハウを確保する。

そして、同時に日本とドイツが真に連携しうる陸の回廊を建造し、艦隊を動かして、アメリカを叩くに足りるだけの兵力と石油を確保する基本戦略に伴い―――航空主兵となり、空を覆う長距離戦略爆撃機の大編隊を貫徹する戦略が必要だったなど、日露戦争の感覚を捨てて、新たな卓越した個性も受け入れるべきだった。

 

また同じく日露戦争終結後、自国の工業力を向上させるため、アジア、アフリカ、太平洋諸国の独立を助けつつ、商業圏を広げる政策過程で勃発してきた欧米諸国相手の紛争で実戦の場数を視察する一方、相手が使った戦術、兵器も貪欲に吸収する。

売れる商品を作るため、科学技術の振興を奨励し、他国のものでも有望となれば取り入れることを躊躇わない。

惜しくも1900年代に至って、蒸気動力に続く交通革命となった飛行機については、アメリカのライト兄弟が飛行した37時間後に、日本の二宮忠八が動力飛行に成功した飛行機《玉虫型飛行器》、その機体はライト兄弟のものより堅牢且つ、優れたものであったことを公開し、これを楯に取って共同特許に持ち込んでいれば、新たな航空技術も生み出すことも出来たとともに、武部鷹雄中将が航空兵力を泰斗しようと、築き上げた長距離戦略爆撃機や戦闘機を中心とした帝国空軍が誕生したかもしれない。

 

“賢者は歴史を学び、愚者は経験で学ぶ”

 

まさにこの言葉通りなのかもしれない、と提督は呟いた。

 

「ともかく、今後も黒木首相や元帥はむろん、同じ志を持つ仲間たちなどとともに、今後の対策を立てなければならないな。

こういう出来事を野放しにすると、今後の影響にも支障になり兼ねない」

 

「そうだな、提督」

 

「ああ、そのとおりだな」

 

提督の言葉に、彼らも顔を見合わせては頷いた。

今後の課題に伴い、まだ不安定とも言える戦いに備えなければならないな、と言う意味深も込めて―――

 

『提督(司令官)〜♡♡♡♡』

 

提督たちの会話が終えた頃、嬉々しい笑みを浮かべた古鷹たちが手を振る姿が見えた。

彼女たちに続き、阿賀野も同じく、入居済みで傷を完治した叢雲・霞は微笑みして待っていた。

 

「続きは食後にしたいが、元帥にも報告しなければならない。ここでのお土産も用意しないとな」と提督。

 

「おう。元帥のためにいろいろ用意しているよ。それらが済み次第は……」と親友提督。

 

「今日の疲れを癒そう。もちろん、俺たちの嫁とともに」とエンジニア提督。

 

提督たちは、フムン、それもそうだな、と再度顔を見合わせて頷いた。

提督は古鷹たちと、親友提督は阿賀野と、そしてエンジニア提督は叢雲・霞とともに今日の夕食を楽しみにしていた。

 

「因みに今日の夕食はなんだ、しんちゃん?」

 

提督は、親友提督に問いかけた。

 

「久々だから楽しみだな、しんちゃんの料理」

 

エンジニア提督は、子どものように楽しげな笑みを浮かべた。

 

「今日は通販で良いスッポンと、江田島産の新鮮な牡蠣が届いたから、これらを使ったフルコースを振る舞おう」

 

『そうか……今日は嫁たちとの夜戦もスゴいことになりそうだな』

 

「ああ、夜に備えて頑張ろうな。ふたりの部屋もそれぞれ用意している」

 

『……ありがとう』

 

ふたつの食材に伴い、フルコースを聞いた瞬間、察知した提督・エンジニア提督は声を揃えて、親友提督は自分たちに意気込みを入れて、各々の夜戦に備えるのだった―――

 

 

 

時刻 不明

場所 不明

 

 

「……どうやら助かったようね」

 

AC-130機長こと、ジーン少佐は海上を浮遊していた。

水平線の彼方から放たれた、謎の紅き光線に機体ごと押し包まれ、そして空中爆破する寸前に部下たちとともに脱出しようとしたが、上手く機体から脱出できたのは自分と―――

 

「少佐、御無事で……」

 

「私だけね、脱出できたのは」

 

「ついてないな、今日は」

 

大西明宏大尉と、但馬たか子少佐、そしてフィリップ・サルムサ軍曹だけだった。

ジーンは、僚機のAC-130搭乗員たちは脱出する前に、機体と運命を共にしたと悟った。

脱出した直後、突風や衝撃波などのせいで、この黒い空間に呑み込まれて彼らと意識を失い、気付いたときにはこの海上に浮遊していたのだ。

ジーンたちは周囲を見渡したが、装甲艦はむろん、あの忌々しい護衛艦や艦娘たちの影や形も見えなければ、黒い空間も見当たらない。

見えるのは泳げば辿り着ける陸地だけ、あとは不気味なほどゆっとりとうねっている蒼海だけだった。

 

温暖な気候だが、自分たちがいるこの海域は八丈島海域よりも蒸し暑く感じた。

それに空気はおろか、鼻元を抑えたいほど硫黄独特の異臭がした。

ジーンたちは両眼を凝らして見たが、紫色をした山並み、それも酷く形状がバラバラの山並みだった。

 

「双眼鏡貸して!」

 

「ハッ!」

 

但馬は、ジーンに双眼鏡を渡した。

ジーンは双眼鏡で覗き見すると、それらの山並みはうっすらと黒煙を吐いていた活火山が並んでいたのである。

 

「こんな景色が地球上にどこにあるの……」

 

ジーンは、絶句した。

 

「いったい、ここは本当にどこなのでしょうか?」

 

肩を並べた但馬少佐が言った。

 

「分からないわ」

 

ジーンは呟いた。

 

「こんな景色は、私の記憶や亡命手帳にはない。だが、嫌な予感がする」

 

大西が言うと、サルムサが張り詰めた声で報告した。

 

「ジーン少佐!装甲艦や友軍機からなどとも連絡が取れません。無線に異常はないのですが、どことも連絡が出来ません!」

 

そのとき、海面で何かが動いていることに気づいた、ジーンたちはそっちを見た。

何頭かのイルカの群れが瞳に映り、ジャンプしながら遊泳していた。

これだけながらよく見かける光景だ。飛行機乗りながら同期から聞いたが、イルカは船乗りたちに愛されてきた『船の守り神』として慕われてきた。

 

しかし、何かがおかしい。

そのイルカたちは想像を遥かに超えるほど、恐ろしく巨大だった。

外観は小型の鯨《ツチクジラ》に似ているが、前者よりも長い胸鰭、そしてナイフのような小さな牙が植え付けられた巨大な顎と頭部が特徴的だった。

その“イルカ”の群れに追われた魚が水面にジャンプした。

その魚もマグロ並みの大きさ、イルカほどの大きさかもしれないが、全身を甲冑で覆われている。

 

「ジーン少佐、あれを!」

 

但馬が叫んだとき、ジーンも見た。

甲冑を着込んだ魚が着水した瞬間、水面を裂けてすさまじい水しぶきとともに巨大な蛇の頭部が突如出現し、そいつを咥えながら伸び上がったのである。

長くすらりとした胴体に、櫂のような鰭が見える。

イギリスのネス湖及び、各海域などで目撃されるUMAの姿をしていた。

イルカのような生物たちは反転して、逃げて行った。

 

「なんてことなの!」

 

但馬は叫んだ。

 

「あいつらは中生代の水中爬虫類ですよ!ジュラ紀か、白亜紀かは知りませんが、イルカみたいなのはイクチオサウルスで、首が長いのはプレシオサウルスです!」

 

イクチオサウルスは中生代・ジュラ紀に棲息していた水棲爬虫類、通称『魚竜』と呼ばれている。

プレシオサウルスも前者と同じくジュラ紀に棲息していたが、種類は首長竜である。

その瞬間、ジーンは、自分たちはとんでもない世界にタイムトリップしてしまった、と悟ったときだった。

 

甲冑魚を平らげたプレシオサウルスは、ジーンたちに気づいた。

ナイフに似た牙をチラつかせた瞬間、サルムサに喰らい付いた。

 

「ぎゃあああ、助けてーーー!」

 

生餌にされたまま、血肉を咀嚼する音が聞こえた。

悲鳴を上げる彼を助けようと大西は拳銃を取り出したが、その大西にも何者かに海中に引きずり込まれた。

ようやく姿を現したのは、別個体のプレシオサウルス、彼を海中に引きずり込み捕食したのだった。

 

「お願い話し合いましょう。お願い―――」

 

生物相手に話し合いが出来る、と言う戯言を信じた但馬の言葉を遮るようにサルムサを食い殺したプレシオサウルスは頭部から噛み付いた。

獲物を奪われて悔しがる別個体は、おこぼれを貰おうと、両脚に噛みついて貪った。

但馬は上半身と、下半身を引き千切られて絶命した。

 

生餌にされた仲間たちを見たジーンは、恐怖のあまり言葉を失った。

本当に数億年の時空を超えて、現代から中生代の海にタイムスリップしたのである。

それがあの黒い空間の悪意あるいたずらなのか、アクシデントなのか分からない。

しかし、どうも前者のであるような気がした。

彼女は双眸を閉じて、抵抗を止めて、口が裂けるほど開けたプレシオサウルスの生餌となる覚悟を決めたのだった。

 

 

 

時刻1730

八丈島 某海岸地帯

 

タイム・リンク作戦終了から、数時間後―――

八丈島でも観光場所としても数多くの有名な海岸、某所で提督たちが知らない出来事が起きていた。

 

「……ここは、どこだ?」

 

目が覚めた老人は呟いた。

あの海戦にて、装甲艦は撃沈直後、無事に部下たちとともに脱出して最後の抵抗として、反撃したものの―――提督が乗艦する護衛艦《あしたか》による威嚇射撃により、至近弾を受けた脱出艇から振り落とされたところまでは覚えている。

 

どれぐらい気を失っていたのか分からない。

こうして気がついたときは、夕刻の海岸地帯にいた。

周囲を見渡すと、自身と同じように気絶した部下たちが深い眠りから目が覚めたことにも気がついた。

 

「……くそ、忌々しいあの人殺しどもめ」

 

老人は痛みに耐えながら、ゆっくりと両手両膝を砂浜が混じった地面について、ペッ、と唾を吐き捨てた。

特に脇腹が痛む。もしかしたら脇骨がひとつ、ふたつ折れているかもしれない。

しかし命がある所以に、また復讐する機会があると思えれば、大したことない、と考えた。

 

どうにか立ち上がろうとしたとき、老人や部下たちは人影に気づいた。

 

「大丈夫か、爺さん?」

 

聞き覚えのある声を耳にした。

 

「おお、若いの。助けに来てくれたのか!?」

 

老人の瞳に映ったのは、自分たちを助けてくれたあのイケメン提督だった。

 

「ああ、もちろん。あんたらに用があってな」

 

老人は安堵の笑みを浮かべた瞬間、イケメン提督は思いっきり彼の腹に目掛けて蹴りを見舞った。

老人は苦痛の喘ぎを洩らして、堪らず前のめりになった直後、地面に倒れた。

老人だけでなく、彼の部下たちも謎の兵士たちが携えた自動小銃による銃床攻撃及び、蹴りなどを加えて地面へ倒れさせた。

 

「いったい、どういうことだ!?」

 

老人はむろん、部下たちも理解出来なかった。

味方だったのにも関わらず、どうしてこのような暴力を受けなければならないのか、と呟いた。

 

「どういうことだ?ある御方の御命令のため……お前ら屑を用済みのために殺しに来たってことさ」

 

「……用済みだと何故だ。どうして我々を殺す!?」

 

「馬鹿だな。最初っからお前たちは消耗品。つまりボロボロになった使い捨て雑巾と同じように処分されるために骨の髄まで利用させたってこと。分かるか、ボケ老人ども?」

 

イケメン提督は嘲笑した表情を浮かべながら、不毛な口調で老人たちに真実を教えた。

 

「装甲艦と一緒に死んでくれたら楽だったのに、俺たちに手を焼かせんじゃねよー!」

 

苛立ちを抑えられず、イケメン提督はもう一度、老人に蹴りを喰らわせて黙らせた。

 

「……全く。『グランド・マザー』様の前で余り醜態を見せないでくれ」

 

「ああ、すまない。親父」

 

イケメン提督に注意を促した人物―――外見は七三分けの髪型に伴い、黒いセルフレームのメガネ、服装はスーツで固めている典型的な『お役人』と言っても良い彼の父親は、やれやれ、と短く首を振った。

 

「生存者は、見つかったの?旗中忠雄(はたなか ただお)参謀長」

 

物腰柔らかい口調を発した女性は、イケメン提督の父親こと旗中忠雄に問い掛けた。

 

「はい、グランド・マザー。装甲艦の生存者たちを見つけました」

 

「そうか、ご苦労」

 

旗中忠雄と、イケメン提督改め、旗中井仁(はたなか いじん)は一歩後ろに下がった。

老人たちの目の前には『グランド・マザー』と呼ばれる謎の女性が姿を現した。

外見は幼さもあり、妖艶な美貌を持つ短髪の美女だ。

容姿端麗且つ、大和撫子そのものでもあった。

彼女の服装は、イタリアの国家憲兵『カラビニエリ』と、ナチスの『武装親衛隊』などを組み合わせたような黒い制服に伴い、赤い稲妻を模した赤い側章付きズボン、外套を纏っている。

これらにそぐわない顎紐の装飾、そして袖口や襟には百合の刺繍も施されていた。

 

「そいつを起こせ」

 

グランド・マザーの命令を聞いた両脇にいた護衛兵、パワードスーツに身を纏った重装甲兵士たちが老人を起こさせる。

なお彼が倒れないように、それぞれが支えている。

 

「こいつ等で全員か?」

 

グランド・マザーは、彼に訊ねた。

 

「ああ、脱出したのは俺たちだけだ」

 

老人は、弱々しく答えた。

負傷のせいで答えるのが精いっぱいだったが―――

 

「部下たちに治療を……」

 

老人は、拘束されている部下たちに視線を移した。

 

「部下たちのことを心配しているのか?」

 

彼の要求に応えようとしたのか、グランド・マザーが一歩後ろへと下がった。

拘束されている老人の部下たちをひと目見ると、彼女の命令を受けて待機していた井仁に視線を移したときだ。

グランド・マザーは、素早く拳銃を引き抜くと、躊躇うことなく旗中井仁に向けて発砲した。

 

「ぐあああ、なぜだ。グランド・マザー……」

 

銃傷を負った旗中井仁は、悶え苦しみながら彼女を見た。

 

「お前は連帯責任者として死ね。お前のような使えない男は用済みの消耗品同然だ。このボロ雑巾とともにな……」

 

グランド・マザーとともに―――

 

「使えない子どもは『死刑』にしても良いのだよ。悪く思わないでくれ」

 

旗中忠雄も、冷酷な言葉を掛けた。

 

「イケメン台無し……」

 

この言葉を聞いた旗中井仁は、やがて大量出血により死亡した。

 

「この世界には我ら女性たち、使える男性奴隷で充分だ。使えない奴隷は死あるのみ」

 

彼女は、老人の喉元を掴んで宣言した。

全てを告げたグランド・マザーは、老人をゴミのように手放すと―――

 

「殺せ」

 

シンプル且つ、無慈悲な言葉で命じた。

 

「弾を無駄にするな」

 

彼女の命令通り、傍にいた重装甲兵士たちは、老人たちの部下たちを携えていた自動小銃ではなく、足元にいるアリを悪ガキが面白がって殺すように踏み殺した。

パワードスーツのおかげで従来の脚力を誇るため、ふたりの重装甲兵士に踏みつけられた部下たちの頭部は、血肉に混じった脳漿が飛び散った。

まるで、いとも簡単にスイカのように砕け散った光景でもあった。

老人に対しては、ひとりの女性兵士が携えていた自動小銃の銃床を顔面に喰らわせた。

女性は倒れ込む彼に跨ると、力いっぱい拳で何度も殴る、殴る、殴ると言う拷問を味あわせた。

老人は、最後に見た光景は何度も自分を嬲り殺す女性兵士を見て、薄れゆく記憶を見て、呟いた。

 

自分たちは、とんでもない過ちを犯してしまった、と確信めいた言葉とともに―――

 




今回は仏黄な予兆とも言える、嵐の前夜とも言える場面で終了しました。
後々にこれを機にどういう展開になるかは、しばしお待ちを。

AC-130のパイロットたちの元ネタは『超空の艦隊』の一場面、米空母《ジョン・C・ステニス》が中生代にタイムスリップした場面をモチーフにしました。
因みに捕食されなかった代わりに、異次元空間で唯一の生存者を除いて全員消滅しています。しかも主人公たちに鹵獲された挙げ句、終戦のきっかけにもなっています。

イケメン提督父親の名前ネタは、海底軍艦(映画版)のとある人物です。
最後に言ったイケメン提督こと、旗中井仁の最後の台詞は『トランスフォーマーアニメイテッド』のスタスクです。
ある意味、イケメン提督はアニメイテッド版のスタスクを意識しているかなと……
同じスタスクでも、私は『マイクロン伝説』のスタスクが一番好きです。

提督も真名はあります所以に、後々に明らかになりますのでしばしお待ちを。
サブである親友と、エンジニア提督も然り。
コードネームと思っていただけたら幸いです。

なおパワードスーツは、提督が装着しているエグゾスーツ・カスタムとは違います。
後々に明らかになりますのでしばしお待ち下しませ。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
次回はいよいよ……

???「いよいよ私の出番ですね、提督」

とある娘が登場しますので、お楽しみを。
この娘とともに、提督と古鷹たちの鎮守府がまた賑やかに……
それでは、第33話まで…… До свидания((響ふうに)

???「では、お茶をお持ちしま、う、うわあ!あ、あわあああ、あああああ〜!」

えっ、熱い!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。