第六戦隊と!   作:SEALs

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引き続き、後編です。
なお、UA10000突破に伴い、皆さんの応援で『第六戦隊と!』は、無事に第30話まで順調に進めることが出来ました。
これからも応援よろしくお願いいたします!

それでは、改めて赤城たちの開幕航空に続き、古鷹たちの砲撃戦をお楽しみください。

では、本編であります。どうぞ!


第30話:碧海にて、斯く戦えり 後編

「司令官、着弾観測用意できました!」

 

青葉が言った。

着弾観測用として、相棒こと黒き搭乗妖精が操る《震電改二》が上空を旋回していた。

彼は、いつでも準備完了、と両翼を左右に揺らして合図を送っていた。

「提督、例の砲弾も装填完了、いつでも撃てます!」

 

古鷹の言葉を聞き、秘策を見せるときが来た、と提督は悟った。

 

「古鷹たちは敵艦最上部こと艦橋を狙え。扶桑・山城・鳥海は、私とともに援護射撃を行え!」

 

『はい、提督(司令官)!!!!』

 

提督の指示に従って、古鷹たちに続き、扶桑・山城・鳥海の主砲塔が旋回する。

弾薬庫から、放たれる例の砲弾が装填される。

艤装妖精たちが装薬を高速運用して尾栓を閉じて、水圧ランマーが働き、砲弾と装薬を収めたレールが折れ曲がって、各主砲に装填される。

重々しい音を響かせて、尾栓が閉鎖され、古鷹たちの主砲塔がゆっくりと動いて、彼方にいる難攻不落の装甲艦を指向した。

老人たちは、この不沈艦を相変わらず打ち破れるのか、と両腕を組みながら高みの見物で、提督・古鷹たちを不毛した。

前者に対して、提督・古鷹たちは射撃観測所で観測された彼我のデータは、射撃盤から各主砲塔に伝達された。

古鷹たちは顔を見合わせて、頷きかけた。

そして双眸を落として、短い一呼吸、そして漲る闘志を懸命に冷静化させる。

 

数秒後―――かっと眼を見開いた。

 

『撃ち方始め、撃てーーー!!!』

 

提督・古鷹たち両者の唇が、同語で同一の命令が噴出した。

途端に各主砲に装填された装薬が撃発し、《あしたか》からも同時に撃発された。

古鷹たちの20cm連装砲の斉射とともに、提督の指揮艦《あしたか》のRGM-84《ハープーン》4連装発射筒から、1発ずつオレンジ色の閃光が噴出した。

 

『よく狙って、撃てぇーーー!』

 

耳を聾する轟音が、またしても轟いた。

鳥海も20cm連装砲を撃ち放ち、扶桑・山城は41cm連装砲を咆哮された。

空気を切り裂いて飛んだ例の砲弾や徹甲弾及び《ハープーン》は、空中にすれ違い、海上にそびえ立つ装甲艦に向けて殺到した。

 

先に弾着したのは《あしたか》の撃ち放った《ハープーン》、次に扶桑・山城・鳥海の砲弾だった。

この世の終わりとも言える轟音を伴って、装甲艦は一瞬、炎に包まれたが無傷だった。

 

「この愚か者めが、そんなへなちょこミサイルと砲弾で沈むような装甲艦ではあるまい!」

 

報復の気持ちを込めて、必殺の40インチ主砲を撃ちのめしてやれ、と命令を発したときである。

 

古鷹たちが装填して撃ち放った、例の砲弾が弾着した。

砲弾先端部に仕込まれた瞬発信管が作動して、装甲艦のバルジに燃え盛る山火事のように瞬時に広がった。

 

「なんだ、この砲弾は!?」

 

老人は狼狽したときだった。

古鷹たちが放った各1発ずつの例の砲弾が突き刺さり、装甲艦の艦橋に凄まじい衝撃波とともに、炎の大蛇が纏わるように火焔が再び押し寄せる。

艦橋に続き、主砲の開口部上部に直撃弾となって、砲弾内部に仕込まれた焼夷弾子が炸裂した。

装甲艦の各主砲塔にも火焔が襲い掛かり、瞬く間に砲塔そのものが射撃及び、使用不可能となった。

同時にいくつかの開口部分にも燃える油脂が流れ込み、内部火災が相次いで発生した。

 

「司令官、敵艦は黒煙を上げています!」と青葉。

 

「相手は狼狽しているから効果抜群です!」と古鷹。

 

「よっしゃ!提督の言うとおりの結果になった!」と加古。

 

「衣笠さんたちの三式弾ならば、当然ね!」と衣笠。

 

「ああ、鉄がダメならば炎で溶かすのに限るからな!」

 

提督の狙い、彼の立てた策士に見事に引っ掛かったのである。

アレこと、古鷹たちが撃ち放った例の砲弾とは、対地・対空用に使用する三式弾である。

史実ではガダルカナル諸島の飛行場砲撃及び、敵機迎撃にも戦果を上げた三式弾は威力を発揮したと同時に、米軍兵士たちに恐怖と悪夢を植え付けたとも言われている。

定かではないが、この三式弾で対艦攻撃を行い、敵艦の艦橋から艦体を火達磨にした記録もある。

かつての戦艦や装甲空母級が備えた強靭さを誇る重装甲ならば、炎に弱いと、提督は読み、砲戦用の通常弾から臨機応変に、この三式弾による攻撃に切り替えたのだ。

 

「なんて危険で恐ろしい兵器だ!消火班急げ!さっさと鎮火しろ!」

 

「ボス。消火してもし切れません!予想以上に炎の速度が艦内に伝わっています!」

 

「なんだと!?」

 

「助けてくれ!もう嫌だ!」

 

「さっさと消さんか、コラッ!」

 

三式弾と、提督の罠に嵌まったことも知らずに、老人たちは狼狽するばかりだった。

所詮は素人同然且つ、非武装相手にしか勝てない烏合の衆とも言える反戦平和集団だった。

日頃は日本に敵対、または国家転覆を企てるなどもするが、いざとなれば自衛隊と米軍に助けを求めて泣きを見るのが落ちであることを披露しているものだった。

指揮も的確ではなく、行き当たりばかり。

なお且つ、士気崩壊《モラルブレイク》寸前に浸食された状態が加速して状況把握も出来ないまま、装甲艦内部では火災に伴って、灼熱地獄が酷くなっていた。

なにしろ防御重視のために密室状態且つ、火の回りが速い。

また、不燃物処理を怠っていたために可燃物にも燃え移り、消火活動に精一杯だった。

 

しかし、灼熱地獄だけでは終わることはなかった……

 

「古鷹たちは、私とともに砲撃を続行せよ!」

 

『はい、提督(司令官)!!!!』

 

提督の号令に、古鷹たちの砲撃は続く。

主砲が各1門ずつ、咆哮した。

吹き出した黒煙のなかから、オレンジ色の発射炎が閃いて、放たれた砲弾が飛び渡る。

同時に、《あしたか》前部に装備したMk 45 5インチ砲が旋回して狙いを定める。

 

「撃ち方、始め!」

 

「撃てぇ!」

 

提督の言葉に続き、砲術長が裂帛の叫びを上げた。

燃え盛る装甲艦に向けて、轟然と咆哮した。

空中に灼熱させながら、数千メートルにまで駆け上がり、次いでに猛烈な加速を与えられて、目標まで駆け下がり、ついに砲弾は着弾した。

現代の護衛艦は、コンピューターで入力された目標までの距離及び、速度も正確無比だから外すことはない。

なお且つ、連射速度も速く、飽和攻撃には持ってこいである。

 

「扶桑たちも砲撃続行!距離は短く敵艦手前の海面を狙って撃て!」

 

提督の新たな命令を聞き、扶桑たちは各主砲を調整して水平射撃に切り替えた。

 

「山城、鳥海さん、撃つわよ!」

 

「はい、扶桑姉様!」

 

「はい、おまかせください!」

 

お互いの意思相通をするように―――

 

『主砲一斉射、撃てぇぇぇーーー!!!』

 

主砲一斉射。彼女たちの言葉の引き金に応えるように咆哮した。

彼女たちの真下、海面が槌で打たれたように圧迫された。

射程距離をやや短くされた砲弾が、滑空を終えると、彼女たちの砲弾は狙い通り、装甲艦の手前に落下して、海中に潜航した。

砲弾は意思を持つ鋼鉄の人喰い鮫の群れと化し、巨大な獲物であるシロナガスクジラに似た装甲艦の腹に鋼鉄の歯で獲物を噛み付くように猛烈な勢いを増して、襲い掛かった。

その衝撃により、装甲艦のバルジに命中し、たちまち艦腹に直撃弾を受けて炸裂した。

艦橋部分は灼熱地獄、艦内部には海水が流れ込み、浸水速度も先ほどの炎よりも速く艦内部に伝わった。

ダメコンチームが応急処置を施しても意味がない、なにしろ手の打ちようもない。

水線下にも隔壁が設けられているが、海水による圧力は凄まじく、最初の隔壁がいったん破壊されると、玉突き式に破られてしまうからだ。

不沈艦と言われた装甲艦の強靭な装甲は次第に溶け始めて、敵の攻撃を受けやすくなった。

無敵を誇っていた装甲艦は脆くも、炎上する古城のように崩れ去ろうとしていた。

 

しかし、老人たちにとっては悪魔が、提督たちにとっては天使たちを思わせる救援がやって来た。

 

「提督、友軍機です!」

 

古鷹が言った。

 

「分かった。繋いでくれ!」

 

《……こちら、SCAR3-1。提督、すまない。エンジニア提督たちの危機を知って来たが、事情により援護が遅れてしまって!》

 

提督・古鷹たちの頭上を通過したのは、F-35《ライトニングⅡ》部隊だった。

エンジニア提督たちの危機を知り、元帥の命を受けて駆けつけてくれたのだ。

 

《気にすることはない、赤城!彼らとともに、止めを刺してくれ!》

 

「分かりました!加賀さん、大鷹さん、龍鳳さん!」

 

『はい!!!』

 

赤城たちは、再び矢を上空に向けて射った。

提督の命令にSCAR3-1と、赤城たち第二次攻撃隊の双方は攻撃態勢を取り、急降下して突撃をした。

SCAR3-1率いるF-35《ライトニングⅡ》は、両翼下に搭載したAMG-84《ハープーン》を発射した。

同時に別方向から《彗星一二型》や《流星改》部隊が、500キロ爆弾及び800キロ爆弾を投弾した。

もはや崩れ去る古城を思わせる装甲艦は一瞬陥没して、次いで海底火山を思わせる、量感のある爆焔が盛り上がる。

装甲艦が兼ね備えた装甲やバルジはひしゃげ、断末魔を上げた怪物のように溢れ出た炎とともに、めくるめく閃光が膨れ上がり、ついに耐え切られなく艦体は大爆発を起こした。

黒煙に包まれながら、老人たちが操っていた装甲艦はあっけなく爆沈したのだったが……

 

「司令官、黒煙のなかから!」

 

青葉が張りつめた声で叫んだ。

提督は双眼鏡を取り出して、黒煙を確認した。

黒煙のなかから漁船並みの大きさに等しい、白色に纏った小型脱出艇が浮上してきた。

 

「全艦砲撃用意!」

 

提督の号令に、古鷹たち全員が砲撃体勢を取る。

平和主義思想ほど暴力的且つ、往生際が悪いものだ。

誰もが警戒心を持つのも無理はない。

抵抗するかと思いきや、老人たちは意外なことに―――

 

『我々が悪かった。許してくれ。今度こそ本当に謝る!』

 

老人を含めた生き残りの乗組員たちは、姿を晒すと全員ペコペコと土下座をした。

あれだけの地獄を味わえば、誰もが改心するな、と思ったが……

 

―――馬鹿め、油断しよって。

 

心のなかでは、提督たちを嘲笑うように老人たちは嘘をついていたのだった。

彼らの後ろには、AK-74uとM72 LAWを隠していた。

M72で提督が鎮座する《あしたか》の艦橋を狙撃して爆殺し、残りは適当に大暴れして、ひとりでも多く道連れにする方針である。

 

「分かった。だが、降伏を受け入れる前にひとつだけ言っておきたいことがある、良いか?」

 

提督は、彼らに訊ねた。

 

「ああ、良いだろう」

 

それが貴様の最後の言葉、つまり遺言だなと嬉々たる気持ちを押さえて返答した。

やはり、提督たちは全員お人好しの低脳な腰抜け、あの艦娘たちと言う憲法9条に伴い、日本及び世界平和の破壊者たちに拐かされた哀れな愚者たちである。

だから自分たちの立てた、この巧妙な罠に相手は気づいていないだろう、と老人たちは安心していた。

 

「古い世界の決まりことで今も変えないもの、将来も変わらないものがある……」

 

老人たちは、彼が何を語っているのか、分からなかった。

しかし、提督の言葉は冷水を浴びせるように老人たちに告げた。

 

「テロリストとは、交渉しない」

 

提督の言葉を聞いた瞬間―――

 

『この世界の破壊者がーーー!!!』

 

老人たちは顔を真っ赤に紅潮させて、隠し持っていたM72 LAWを構えて発射した。

オレンジ色の発煙を吹きながら、ロケット弾の最後尾からロケットブースターの燃焼ガスが噴出して標的に向かって飛翔した。

直後、AK-74uの銃口からも曳光が走り、薬莢が飛び散るほど撃ちまくった。

これくらいの火力ならば、相手は重傷及び、死傷は避けられない。

 

『ははは、死ね!世界平和の破壊者どもーーー!!!』

 

悪党さながらの言葉を発しながら、老人たちは嘲笑った。

しかし、ロケット弾は空中停止した直後、謎の空中爆発を起こした。

空中には火焔の華が咲き乱れて、老人たちが撃ち放った攻撃は、提督が乗艦する《あしたか》や古鷹たちには一発も当たることはなかった。

 

「な、なんだと!」

 

老人たちには、何が分からずに慌てていたときだった。

彼らの小型脱出艇は、《あしたか》による威嚇射撃を喰らい、船体は揺さぶった。

至近弾でも相当な威力がある。その砲撃の衝撃波により、老人を含め、少数の敵乗組員たちが海上に放り込まれた。

なお且つ、老人たちの仇を取らんと船体にしがみ付いた敵乗組員たちは横転した船体にしがみ付き、拳銃などの小型火器で抵抗をしていた。

 

「よし、あとは頼むぞ!マヤ」

 

「ホイホイ♪まかせーて!」

 

提督は、マヤに伝えた。

すると、重巡洋艦《摩耶》の艦首部分から白煙が吹いた。

推進を上げながら、上空に向かって飛翔した。

やがて成層圏に辿り着いたロケット推進をした物体は、人工衛星のような形を形成して、敵乗組員たちがいる小型脱出艇に狙いを定めた。

 

「吹けよ嵐!響け雷鳴!」

 

マヤの言葉に伴い、横転した小型脱出艇のほぼ真上から、敵乗組員たちに神罰を与えるように落雷が降り注いだ。

 

「バカ!もっと大人しくやれーーー!!!」

 

『……やれやれ』

 

キリシマの注意を促すも、ハルナと蒔絵は、やれやれと頭を抱えた。

 

『へ?なに?』

 

敵乗組員たちは間抜けな声を漏らし、訳も分からずに蒼空を見上げた瞬間、落雷は散布し、たちまち彼らに襲い掛かった。

敵乗組員たちは短い悲鳴を上げながら、スタンガンを押し付けられたように電流が身体中の神経網を強烈に刺激され、全身に痺れとともに、電流の影響により、徐々に意識を失い、そして彼らは気絶した。

 

「目標無力化に成功です!」

 

古鷹の報告を聞いた提督は、ふうっ、と短く息を漏らした。

古鷹たちはむろん、エンジニア提督、叢雲・霞たちを助けることができて、何よりだと言う緊張感が解れたのだ。

 

「ありがとう、ハルナ、キリシマ、マヤ、蒔絵。また助けてもらって」

 

「いいや。寧ろこちらが感謝する側だ」とハルナ。

 

「昔ならば容赦はなかったが、今は少しばかり抑えているからな」とキリシマ。

 

「そうそう♪みんなを護るためだからね」とマヤ。

 

「協力してくれてありがとう、提督!」と蒔絵。

 

提督は、礼を伝えた。

先ほど老人たちの攻撃を防いでくれたのは、ハルナたちが秘かに展開したあのバリアーこと、クラインフィールドだった。

同時にあの落雷装置を展開させたのは、蒔絵の目の前に彼らを殺す光景を見せたくないと言う提督・古鷹たちと、彼女たちの心配りでもある。

局所的に展開、さらに人間を気絶させるぐらい落雷の出力は調整できるため、この作戦を実行したのである。

無事に済めば、重畳な結果だな、と提督は双眸を落として、いよいよこの作戦を実行するときだなと悟った。

 

「それじゃあ、そろそろ作戦実行に移ろうぞ」

 

『はい、提督(司令官)!!!!』

 

古鷹たち及び、エンジニア提督、叢雲・霞たち、そしてハルナたちも返答した。

 




今回はこれで敵の装甲艦撃沈に伴い、この作戦こと『 タイム・リンク作戦』も終盤になりました。

因みに元ネタ、この装甲艦の倒し方は、『超戦艦空母出撃』のMI作戦でも三式弾を使用して、装甲艦の強靭な装甲(バルジ)を無効にしています。
後に改良型は、この三式弾を無効にしています。
大和や武蔵相手には悪かったですが。

同じく提督たちを支援したSCAR3-1は、 『CoD:IW』で主人公たちを援護した航空機のコードネームです。
《ジャッカル》もF-35のような外観をしていましたので、こちらを採用しました。

マヤちゃんのあの技は、クロスラインの第一話で披露した技です。あの台詞で悪者たちを攻撃したシーンはお気に入りですので、再現もしました。

次回でいよいよ、この作戦のクライマックスでありますのでお楽しみください。

今回は豪華二本立てでありましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。

それでは第31話まで…… До свидания((響ふうに)

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