第六戦隊と!   作:SEALs

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お待たせしました。
天空の富嶽同様に、今年も本作品をよろしくお願いいたします。
海戦描写に時間が掛かりましたので、遅れて申し訳ありません。

いつも通り、最後まで楽しめて頂ければ幸いです!

では、本編であります。どうぞ!


第27話:海上の決戦

《むらさめ》のCICでは、ターゲット割り込み作業が完了した。

もっともターゲットは、この装甲艦1隻のみだが強靭なバルジを備えている。

此方の戦速は20ノット。敵艦はおそらく高速艦の可能性もあるが最大戦速を起こすと砲撃戦ではその反動で転覆しかねないために15ノットまでに落としている。

相対戦速は35ノット。両者の距離は近くなってきた。

 

異形とも言えるこの装甲艦の実力は、いかなるものかとも頭がよぎった。

 

「よし、攻撃開始!」

 

エンジニア提督は、エンゲージを命じた。

バルジは同じ部分を攻撃され続けると、脆くなり破壊される。

ミサイルによるアウトレンジ攻撃を集中すれば、活路を生み出せると、彼は推測した。

《むらさめ》に搭載された《90式艦対艦誘導弾》発射筒及び、《ハープーン》4連装発射筒から閃光が上がり、同時に大量の発射煙が放出された。

全ての対艦ミサイルは、ドッと凄まじい勢いで上昇して行くと同時に、自らの意志で急降下する両対艦ミサイルは装甲艦に襲い掛かった。

豪雨を思わせるような両ミサイルが直撃に伴い、水柱を弾けるように跳び跳ねた。

相変わらずダメージが皆無だったが、目晦まし及び陽動攻撃としては充分だった。

 

「司令官が攻撃を開始したわ!霞、私たちもやるわよ!」

 

「分かっているわよ、すでに前に進むだけよ!」

 

エンジニア提督の支援攻撃を確認した叢雲と霞たちは、魚雷攻撃射程距離まで接近する。

彼女たちをはじめとする足柄たちが持つ最大の武器とする四連装酸素魚雷発射管が、唸りを上げて旋回した。

各員ごとに、1人当たり四連装2基―――8本の魚雷が8人分だ。

それに叢雲・霞自身の装備魚雷、連装4基を加えれば、合計48弾の酸素魚雷を放てる鑑定だ。

 

「敵予想位置、入力完了、発射用意よし!」

 

最初の魚雷攻撃は、隠密の内に行なうことになっている。

あのデモ隊連中相手に聞こえるはずもないが、つい声が小さくなってしまうのは、人間の性もだが、彼女たち艦娘たちも同じである。

 

『よし、てぇーーーーーー!!』

 

叢雲・霞の号令一下、足柄たちが装備した魚雷発射管から、圧搾空気に押された鋼鉄の鮫たちは獲物を求め、蒼空の海に躍り出た。

海中に飛び込んだ、彼女たちの誇る《九三式酸素魚雷》―――かつて欧州列強が標準する魚雷の、2倍以上もの炸薬量を弾頭部に詰め込まれ、純粋酸素を触媒として推進器を回す、画期的な兵器として、各国海軍を驚愕させた。

雷跡も、射程距離も、列強各国の魚雷を遥かに凌駕する。

つまり戦場を迂回しつつある敵艦に対して、その予想位置に向けて放てるのも、この長距離射撃があるからこそ活かせるものだ。

 

「大淀さん、清霜、投射は!?」

 

叢雲が問いかけた。

 

「無事、魚雷発射完了です!」

 

「清霜も投下できたよ!」

 

「足柄さん、朝霜、そっちは!?」

 

霞も同じく、二人に問いかける。

 

「無事投射完了よ!」

 

「あたいも全弾投射したから大丈夫さ!」

 

霞の報告を聞き、叢雲は無線機でエンジニア提督に伝える。

 

「司令官、私たちは全員、魚雷発射完了よ!全員投射成功!」

 

《よし、すぐさま次弾装填作業に掛かれ!》

 

肉眼に伴い、《むらさめ》に搭載しているOPS-28低空警戒/対水上捜索レーダーと、叢雲たちが装備している電探にはっきり見えている。

 

装甲艦の艦名はおろか、何処の国の艦船なのかはわからない。

戦艦と、強靭なバルジを兼ね備えていること以外は一切不明だ。

攻撃力や防御力では敵わないが、エンジニア提督と叢雲・霞たちはあえて突撃した。

各電探に備えられた敵艦が、次第に距離を詰める様子が分かる。と、行く手を阻むように水平線の向こうから、ぱっと光る紅い火が見えた。

 

「敵艦発砲しました!」

 

CICのレーダー妖精の声が、イヤマフを通じて、CICにまで響いてくる。

エンジニア提督は唇を舐めて湿し、不敵な口調で言ってみせた。

 

「さすがは戦艦だ、だが、まだまだだ。この距離でこちらも今は全速行動中だ。そうそう当たらんよ!」

 

《むらさめ》型護衛艦の最大速力は、30ノット。

現在の護衛艦は快速であることに、エンジニア提督は絶対の自信を持つ。

なおかつ、自分たちの部下に聞かせるためである。

指揮官は常に冷静沈着且つ、泰山自若としていれば、部下たちも落ち着いて、命を賭けようと全力な気持ちになる。

その点をついてのことだが、案の定叢雲・霞たちもむろん、乗組員たちも戦意高揚である。

彼らに応えるように機関部が上げる雄叫びと競うと、頭上を轟音が駆け抜けた。

 

ふと上空を見上げると、紅い線が飛び越えていく。

一度だけでなく、二度、三度と砲弾が飛び超えていく。

素人が操縦しているか、こちらが足が速いと来ているので照準に戸惑っている様子が分かる。

 

「よぉし、射程だ。全員、撃ち方始め!」

 

エンジニア提督の号令一下、《むらさめ》とともに叢雲・霞たちが装備する各連装砲が一斉に火を吹いた。

火力に伴い、防御力も敵わないかもしれない。

だが、願望を現実に変えるべく、エンジニア提督は砲撃続行を命令する。

 

《むらさめ》の76mm連射砲、足柄の20.3cm、大淀の15.5cm、叢雲・霞・朝霜・清霜の12.7cm連装砲が、立て続けに撃ち放たれる。

あの装甲艦の、戦艦級に主砲の攻撃力を優る連射速度と機動力で補いながら、五分の海戦を挑んでいく。

と、そのときだった。

 

「この時間を待っていたのよ!」

 

「これで終わらせるわ!」

 

砲撃中にも拘わらず、利き腕の手首に嵌めた腕時計型のストップウォッチを睨み、時間を計っていた叢雲・霞は声を張り上げた。

 

ふたりが計っていたのは、魚雷弾着弾時間だ。

海中を疾走していた酸素魚雷の群れが、目標たる装甲艦の未来位置に達する時刻である。

 

そのとき、爆発音が響いた。

 

立て続けに3本、おどろおどろしく太鼓を叩くような轟きが、海上を伝わって来た。

 

「よし、海の藻屑よ!」

 

「司令官!爆発音に伴い、魚雷命中!」

 

叢雲・霞は声を弾ませた。

エンジニア提督も顔をほころばせたが―――

 

「敵艦、まだ健在しています!」

 

「なんだと!?」

 

エンジニア提督は双眼鏡で、例の敵艦を確認した。

被雷した様子もないどころか、全くダメージを受けた様子もなく、未だに走り続けている。

彼らは知るべきもなかったが、各ブロックに分かれたバルジの中に充填されたヘリウムが、叢雲・霞たちが、魚雷の爆発エネルギーを吸収して無効と化してしまったのだ。

その分、浮力は減ったが、致命的なものではなかった。

再び不気味な音を轟かせ、装甲艦の各主砲のフリットが軋みながら大きく見開く。

 

「本当にあの若者の言う通りだ、お前ら女性を戦場に送るクズ人間どもを、それに武器をぶっ放しで本当の平和が来ないことを思い知らせてやれ!

話し合いと俺たちの熱い拳を乗っけて、ぶん殴らせて分からせてやれ!」

 

『おおっーーーーーー!!!』

 

老人は、乗組員たちに喝を飛ばした。

爆炎交じりの水柱がリズムよく吹き上げるを気にせずに、デモ隊は反撃と言う名の復讐を込めた砲撃を開始した。

 

「それにあと少しで、増援が来るからな……」

 

 

 

老人の言葉は的中したように、上空に姿を現した。

高度5000を飛ぶ猛禽たちからは、海上にいる味方装甲艦を攻撃する護衛艦と、艦娘たちがはっきり見えた。

ときおり浮かび上がる輝きが主砲の発射であり、眩く弾ける閃光が直撃弾であることを、国籍不明のパイロットたちは理解した。

 

「無駄な努力ごくろうさん。難攻不落の要塞でもある甲鉄艦するとはね」

 

3機で三角形の編隊を組み、上空を旋回しながら、AC-130を駆る金髪碧眼美女のジーン少佐が言った。

 

「我々の登場が少しばかり遅れたかもしれないですが、そこは僥倖かも知れませんね、隊長。

この場で連中を懲罰出来れば、オリンピアやストーム・ナインの名が一挙に高まる。わざわざ援護した甲斐もあると言うものです」

 

片手で航空食を頬張る男、大西明宏大尉が言った。

茶髪に伴い、サングラスを掛けている醜く太っている女性、但馬たか子少佐がすかさず言った。

 

「そうだ。隊長、早く他国の子どもを殺傷する恐怖の使徒である人殺しどもをやっつけよう。侵略民族どもに平和がどれだけありがたいことを!」

 

「よし、その意気だ。さて目標だが、理想的は旗艦を狙うべきだが……」

 

言いながら、ジーンは砲手に問いかける。

 

「どう、サルムサ? 兵器女を狙える?」

 

「おまかせください。ただしじわじわと痛め付けるようにいたします」

 

砲手を務める、フィリップ・サルムサ軍曹が言った。

肩の力を抜いて、常の装填作業をこなす。

 

「高度を6000まで上げるぞ。敵機はまだ来ないと思うけど、警戒は怠るな!」

 

ジーンの指示に従い、3機のAC-130はエンジンの回転を上げ、機首を上向かせた。

両翼に備えた4基のアリソン T56-A-15ターボプロップエンジンの出力を充分に引き出して、今かと獲物を狩る妖鳥が蒼空を駆け上がる。

 

高度6000で、ジーンは上昇を止めた。

 

「どう、見える? 目標は駆逐艦だ!使い捨ての雑魚でも一発で中破はつまらないからね」

 

「なに、いつになっても、じわりじわりといたぶり殺すのが戦争、ましてや人間もどきの兵器女は人間ではないわよ」

 

但馬が言ってきた。

元々評論家希望で、反戦に並々ならぬ愛情を抱いている部下の言葉を、ジーンは軽く受け止めた。

 

「間違いないわね。では、平和主義者たる我々は、ジャップどもに神罰をプレゼントと行こう!」

 

「対空迎撃も撃ってきません。あいつら、油断しきっているようだ!」

 

装填完了。目標座標を合わせたサルムサは何時でも発射準備を整えた。

 

「よし、発射する。まずは私の機体だ。2番機、3番機順次砲撃せよ。サルムサ、行くわよ」

 

「はい、撃て!」

 

サルムサが答えた途端、105mm榴弾砲が火を吹いた。

機体に大きな反動が走り、ジーンたちの身体にまでこの反動が伝わった。

この振動に堪えた機体を、操縦桿を倒して押さえ付け、旋回する。

次発装填時間は掛かるが、2番機、3番機順次砲撃で補うことが出来る。

神の矢を思わせる3発の砲弾は、エンジニア提督艦隊めがけて、まっしぐらに突入した。

 

 

 

すでに数十発を越える各連装砲を撃ちながらも、エンジニア提督や叢雲・霞たちは奮闘していた。

息詰まるような時間が襲い、今や完全に砲弾の散布界に捉えられた装甲艦が、林立する水柱に包まれてもなお健在であった。

彼は双眼鏡越しで驚愕とも言えるこの戦況を見て、顔色を変えた。

各砲弾が命中すれど、砲弾の運動エネルギーを分散させ、逸らして避弾経始を考慮したように傾斜装甲を兼ね備え、防御力に特化した装甲艦は難攻不落の海上の要塞だと実感した。と、そのときだった。

今まで沈黙していた、OPS-24B対空レーダー担当員が、顔色を変えて振り返った。

 

「対空レーダーに感あり!上空5000メートルに機影です!機数3。機種はAC-130《スペクター》が接近中!」

 

「友軍機か?」

 

「いいえ、IFF確認出来ず。敵機です!」

 

エンジニア提督は、敵が油断させたのはこのためかと、血の色を失ったように呟いた。

連中はこちらを甚振るように、追い詰めるつもりだと言うことを。

 

「いかん!このままでは挟み撃ちにされてしまうぞ!基地航空隊に急速!迎撃機を出せ!

迎撃機が来るまで、こちらは《スタンダード》と、敵機のミサイル攻撃に備えて《シースパロー》も撃てるようにしろ!」

 

エンジニア提督が命じたとき、不気味な風切り音が上空から彼らのいた艦隊中央に舞い降りた。

爆発力にも劣る榴弾砲弾とは言え、高度から落下された一撃だ。

海上が鳴動し、表面に被った海水もろとも、海面が根こそぎ、叩きつけられた砲弾は散弾のように散った弾片とともに、爆焔交じりの水柱が幾つか立ち上げた。

 

幸いにも誰も直撃弾は誰も受けなかったが、煽りを喰らって被弾したのは―――

 

「むらちゃん、かすみん!」

 

叢雲・霞が被弾、艤装の一部が小破した。

 

「このくらいの傷、大したこと……」

 

「……大丈夫よ、司令官!このくらいの傷で、こんなんじゃ霞は沈まないわ!」

 

彼女たちの負傷をよそに、AC-130部隊は、内の通信システムを用いて告げられた報告を聞いた時、ジーンたちはにやりとさぞ嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

「次発装填、急げ!」

 

「よし、撃て!」

 

再び105mm砲が咆哮する。開口部から左手側、丸太のように突き出したAC-130に据えられた砲身がオレンジ色の火矢を吹き出した。

自分たちが人類に神罰を与える神々のごとく、ただひたすら攻撃を仕掛けるのだった……




今回も同じく、『超戦艦空母出撃』同様に、この装甲艦はMI作戦の夜戦では日本重巡部隊の雷撃に堪えています。
なお、本来ならば、AC-130は対艦攻撃に不向きですが、元ネタ『CoD:G』の空母ステージで連邦軍も、Y-8ガンシップが出していましたので、良いかなと思いオマージュしました。

次回も同じく、この激戦です。
次回でいよいよこの戦いの行方、海戦のケリをつけます(マスターチーフふうに)

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

次回に伴い、今年も本作品と、天空の富嶽をお楽しみください。

それでは第28話まで…… До свидания((響ふうに)

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