第六戦隊と!   作:SEALs

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お待たせしました。
なお前回、読み直して訂正部分がありましたことをお伝えいたします。

今回の海戦には一部ネタも入れています、こちらもお楽しみください。

いつも通り、最後まで楽しめて頂ければ幸いです!

では、本編であります。どうぞ!


第26話:脅威の装甲艦

謎の襲撃を受ける時間に遡る―――

 

作戦実行日 時刻1021

本土海域 八丈島

 

 

海軍が復活してもなお、海上の安全及び治安確保を図ることを任務とする沿岸警備隊も活躍していた。

海上警備を主する彼らは、基本的に不審船や密入国者たちの取り締まりなど戦前と変わらない。

だが、北朝鮮などの脱北者たちの取り締まりで彼らは食料を渡したため非難の嵐を浴びた。

その脱北者の皮を被った者たちは、北朝鮮人民解放軍に所属する工作員だったため、余計に質が悪い。

民間人、または難民を装いゲリラ活動した場合は捕虜として認められないから射殺されても、ジュネーブ協定で違法にはならない。

いくら人道的支援とは言え、ましてや敵国、且つ反日国家に食料を渡す国はいない。

普通の国ならば拿捕、または撃沈することが当たり前なのに対して、問題を起こさなければ大丈夫と言う当時の外交音痴の日本政府に、外務省などの責任でもあった。

北朝鮮の工作船は例外を除くと、何もせずに見過ごしたり、寧ろ尖閣諸島事件も逮捕するも、中国の圧力に負けて逮捕した犯罪者に御馳走に伴い、飛行機で本国まで送り返した。

戦後のツケが来たため、『泥棒に銭追い』や『敵の味方』まで揶揄された。

ソマリア派遣時でも海自ではなく、海上保安庁を派遣しようと考えた無能な野党に、自衛戦争でもすらも首相のせいで起きたなど、やじを飛ばすしかない連中なのだから呆れさせる。

 

黒木首相率いる民自党による緊急法案により、海上保安庁は一度は解体され、そして新たに『日本沿岸警備隊』として設立させた。

なお、一部では未だに『海上保安庁』と呼ぶ者たちも存じている。

 

日本沿岸警備隊の管理下は通常時は国交省が担い、基本的には従来の海上保安庁時代の警備任務は変わらないが、アメリカ沿岸警備隊と同様に海軍が管轄するように改善された。これにより、海軍の一部門となり、その場合は海軍の他の部隊と同様にPCAの規制が課せられることもスムーズに対応可能となった。

 

なお、以前ならば交戦規定(ROE)が曖昧、悪く言えば持っていなかった。

近代戦では先手必勝であり、専守防衛など生ぬるいことをしていたら、交戦前に部隊が壊滅する。

深海棲艦出現後は憲法改正が行われ、特別立法も兼ね備えて交戦規定を実現することが出来た。

元帥や提督たちはむろん、黒木首相たちの努力があったからこそ進歩したと言っても過言ではない。

 

今回の作戦では、日本沿岸警備隊・第三管区所属が周辺警備を行う。

現場に派遣された巡視船は大型巡視船や小型巡視船を含めて、合計10隻が出動した。

友軍艦隊とは言え、巡視船中心の警備船団と言った方が良いだろう。

深海棲艦相手に機関砲など貧弱な武装では厳しいが、国籍不明の不審船相手には充分であり、牽制も出来る。

まだ現場には来ていないが、あと1時間ほどで提督の艦隊が来るとの報告を受信した。

仮に深海棲艦が出現した場合は、提督たち率いる各鎮守府の艦娘たちが迎撃する。

そして上空警戒はP-3C対潜哨戒機の後継機、P-1対潜哨戒機が偵察及び、対潜は哨戒を行っていた。

なお、万が一に備えて対潜魚雷を装備していた。

 

今回の任務、元より作戦では珍しく交戦はないか、と現場にいた者たちは楽観的に思えた。

制空・制海権内で深海棲艦たちは減少したのに、大袈裟過ぎると思う者たちも少なくなかった。

謎の黒い空間、元より黒いこの積乱雲のために、そこまでする必要があるのか、とも呟いたが……

 

“不審船発見。ただしこの不審船は亀甲船の如く奇怪な姿をしており、正体及び国籍不明”

 

上空警戒中のP-1対潜哨戒機からの電信は、警備部隊などにも受信された。

当然、誰もが首を捻った。

 

「亀甲船だと?……いったい何かの間違いだろう?」

 

松山が呟いた。

亀甲船とは、豊臣秀吉の文禄・慶長の役の際に、李氏朝鮮時代に存在したとされる朝鮮水軍の軍艦である。

甲板が亀の甲羅のように被甲に伴い、表面上には槍衾に覆われている。

ただし、近年の研究では現存する船体がないこと、史書の記述があいまいな事から詳細は明らかではなく、実在が疑問視されることが多い。

存在しても木造船の一種で手漕ぎの突撃艇と言った方が正しい。

実際には5隻が運用されたとされているが、日本側の記録には登場していない。

戦意高揚のためのプロパガンダとも言われる。

簡易に言えば、模造である。

木造船ならば分かるが、そもそも時代を逆行するような艦を持つ国は存在しない。

誤報ではないか、と誰もが思ったときだった。

 

『なんだ。あれは……回避!』

 

P-1パイロットたちの無線機を受信内容を答えるように、上空警戒中のP-1対潜哨戒機が撃墜され、上空で爆発音が轟いた。

その墜落する際に放つ断末魔にも似た雄叫びが、大気を震わせた。

 

何が起こったか、全員は素早く察知した。

 

「不審船からの対空ミサイルだ!全員戦闘態勢に移れ!」

 

警備部隊の巡視船が戦闘態勢に移るが……

 

沿岸警備隊のヘリ搭載型大型巡視船《しきしま》の手前にいたPL級巡視船《あかいし》と《もとぶ》が上空から狼の遠吠えを思わせる響きと引き換えに、落下物の群れに叩きつけれられた。

 

「あっ!《あかいし》と《もとぶ》が……!」

 

双方とも火柱を上げ、その場に停止した。

巡視船は船底までぶち抜かれ、大量の海水が、湧き出すように入ってくる。

まもなく予備浮力の全てを失った《あかいし》と《もとぶ》は、喫水を深めつつ横倒しになり、海中に引き込まれた。

双方の全乗組員は、誰ひとりとして助からなかった。

 

「今のは、なんだ!?」

 

呼び掛けた松山の耳に、切羽詰まった隊員たちの叫びが飛び込んだ。

 

「亀甲船からの砲撃!しかも戦艦級です!」

 

「なんだと!」

 

舌打ちした松山が、何者かが亀甲船を現代に甦らせたのではないかと考え、身を乗り出すようにして眼を凝らした。

 

水平線に突き出しているのは、撃墜されたP-1操縦士たちの言う通り、亀甲船だった。

しかも装甲に覆われたその巨体は、さながら中生代にいた恐竜のようである。

微妙且つ、複雑な曲線を描くその甲鉄の中央に艦橋が突き出している。

前部には、主砲の砲身が突き出している。

 

「本当に戦艦なのか、我々は夢を見ているのか!?」

 

次の瞬間、双眼鏡の視界で、眩い光が光ったかに見えた。

 

亀甲船からの砲撃だ。

 

「亀甲船発砲!砲弾、向かって来ます!」

 

レーダー員の悲痛な声が上がる。

またしても前衛を務めた2隻のPL型巡視船が、亀甲船からの激しい砲撃により、次々と直撃を受けた。

損傷した各巡視船の破口からは水蒸気が噴出し、さらに火災が発生した。

蒙々と上がる黒煙が視界を遮り、黒い煙幕のなかに垣間見える炎が、船体から噴き出す鮮血のようだった。

阿鼻叫喚とともに、生き残った乗組員たちは次々と海に飛び込んだ。

 

「元帥たちに緊急電!平文で良い!不審船は国籍不明の亀甲船、そして、戦艦並みの火力を持つ!」

 

そう叫んだ瞬間、大空を切り裂くような轟音を引き連れて、巨弾が落下した。

海水が湧き返り、大型巡視船と言えども嵐に揉まれる木の葉さながらに翻弄された。

しかし敵弾命中は免れ、通信係の隊員は、松山が叫んだ内容を辛うじて打ち終えた。

 

その瞬間を見計ったように、巨弾がまたもや襲来して来た。

 

周囲に水柱が吹き上がると伴い、《しきしま》の船体の、まさに中央部に直撃した。

 

正確なのか、まぐれ当たりだったのか。

しかし、華奢な巡視船を葬るのには、それで充分だった。

薄い装甲しか持たない巡視船は、自らの船内からの爆圧に耐えきれず、引き裂かれて紅蓮の炎を上げた。

さらに立て続けの衝撃が襲い掛かり、数瞬前で華奢な貴婦人のような大型巡視船は漂流者たちに看取られて爆沈したのだった。

むろん、松山指揮官以下、全乗組員は即死した。

生き残った巡視船は、パニックになった。

しかし、彼らの命を引き換えに、この敵情の打電は元帥たちに届いたのだった……

 

 

 

本土海域 八丈島付近―――

 

「全員戦闘態勢、急げ!」

 

エンジニア提督が乗艦及び艦隊指揮を行う《むらさめ》型護衛艦《むらさめ》のCICから、切羽詰まった警報が鳴り渡った。

周囲には船体の破片に伴い、遠くからは黒煙が浮かび上がるように漂っているのが、CICのリアルタイムで分かる。

 

「大淀、水偵を発進させろ。発見次第、緊急打電を送れ!」

 

「了解しました!」

 

彼の指示を受けて、まず大淀は《零式水上観測機》を用意した。

彼女の艤装妖精たちが発進準備を行い、手慣れた作業が終えるとカタパルトは理想の角度に上げ、零観はゆっくりとプロペラを回転し、カタパルトから射出された機体はふんわりと風向きを掴み、大空へと飛び立った。

 

「よし、みんな行くぞ!」

 

エンジニア提督も覚悟を決めており、彼の切り札、礼号組艦隊も同じく覚悟を決めていた。

 

「霞、やるわよ!」

 

「もちろんよ、叢雲!」

 

艦隊旗艦の叢雲と、副旗艦を務める霞は互いに実力を認め合う形に伴い、固い絆を強めるように軽く拳を合わせる。

 

「みんなで必ず勝利するわよ!」

 

足柄は全身から奮え立つほどの勢いで宣言する。

妙高姉妹のなかでは、断トツと言って良いほど好戦的且つ、戦場では先陣を切ることは当たり前でもある。

 

「よし!あたいらも負けてられないな!」

 

「うん!清霜も大活躍して、司令官と武蔵さんにたくさん褒めて貰うんだから!」

 

朝霜も、清霜も戦意高揚状態。

凸凹コンビではあるものの、戦闘ではずば抜けな活躍を見せるほどの腕利きである。

 

「提督。八丈島東50キロ、 東経241度2分、北緯33度3分のポイントにて敵艦を確認!速力15ノット!」

 

「提督!零観から入電。我敵艦見ゆ、敵艦は友軍艦隊の情報通り装甲艦です!針路、速力変わらず!

なお敵は提督と古鷹さんたちの鎮守府に来たデモ隊とのことです!」

 

エンジニア提督は、レーダーに映るエコーなどを確認した戦術乗組員や妖精たちなどの呼び声とともに、大淀の零観から打電による同時報告を受け取った。

 

「うむ。これより我が艦隊は戦闘行動に移る!

大淀は、元帥と提督に緊急打電!“巡回していた海保の巡視船部隊が壊滅”と同時に、“我これより友軍艦隊の救助に伴い、撤退の援護する”……そして“敵艦の正体は装甲艦、その乗員たちはデモ隊”と送れ!」

 

『了解!!!』

 

全員が戦闘海域に突入すると同時に、大淀は緊急打電を打つ。

 

直後、後方から遠雷のような轟き、雷にも似た音が聞こえた。

エンジニア提督たちは音の方向、上空を見上げた。

注視していれば、何者であったのかすぐに理解できた。友軍の戦闘機部隊だ。

 

《エンジニア提督と礼号艦隊メンバー、こちらジェスター1-1だ。支援に来た。対艦ミサイルで武装している》

 

「コピー。ジェスター1-1、目標は装甲艦だ。やってくれ!」

 

亀甲船は本来存在しないため、歴史を学んでいるエンジニア提督は『装甲艦』と呼んだ。

提督たちもこの場にいれば、同じように答えている。

エンジニア提督たちが見た機種はF-15N《シーイーグル》、米空軍や空自の傑作制空戦闘機F-15を海軍向けに仕立て直した発展型だ。

2機の鋼鉄の翼は編隊を組み、エンジニア提督たちの頭上を飛び去っていく。

元帥の要請を受けて、基地航空隊の支援が加わっている。

彼らは先行し、進路上に存在する邪魔な敵を蹴散らすことを主な任務としていた。

両機は胴体下に抱えていた対艦ミサイル―――AGM-84《ハープーン》を発射。直後、ドッとアフターバーナーを点火させて加速し、左に急旋回して離脱していく。

発射母機が離脱に入った後も、AGM-84《ハープーン》はまっすぐ目標に向かって突き進んでいた。

 

狙いは敵艦。突き出すように浮かぶ鉄の攻城からは閃光の矢が放たれる。

あの艦にはCIWSが搭載されているのだろうか、全てのミサイルは無理であった。

爆風と衝撃を受けた攻城は、直撃を受けて黒煙に包まれた。

 

《敵艦に命中。エンジニア提督と礼号艦隊メンバー、幸運を》

 

「了解、支援に感謝する」

 

エンジニア提督は、2機のF-15Nに礼を言った。

例の装甲艦に止めを刺せようと、《むらさめ》のCICでは戦術乗組員と妖精たちが、ターゲットの割り振り作業が完了した。

 

「あの装甲がハッタリだと良いが……」

 

不安に駆られた彼の、この予言は的中しなかった。

黒煙を突き抜け、ついに彼らの視界に入る。

AGM-84《ハープーン》対艦ミサイルを直撃したのに対し、無傷のまま甲鉄艦は健在していた。

 

「なんと……!」

 

「空自のミサイル攻撃を受けたのに……!」

 

「あー、もう、チートもインチキも良いところよ!」

 

《むらさめ》の艦橋で双眼鏡を使って見つめていたエンジニア提督と、傍で護衛する叢雲と霞はこの驚愕な光景に対し、各々の言葉が飛び込んだ。

信じられない光景、未知の敵艦はまさにコロンブスの卵と言っても良い。

敵艦の艦橋には、あの老害たちが狂喜していた。

よほど、この惨劇とも言えるこの光景か、自艦の性能に喜んでいるかのどちらかだ。

 

エンジニア提督は、唇をキュッと噛んで命じた。

 

「俺が支援攻撃をする!むらちゃんとかすみんは、足柄たちと二組に分かれ、敵艦の左右から挟み撃ちに雷撃せよ!」

 

指示を聞いた叢雲と霞たちは頷いた。

 

「了解!あんたも無茶しないでよ!」

 

「もしも無茶したら、承知しないんだから!」

 

「分かっているよ!愛するむらちゃんとかすみんのためならば!」

 

『もう、馬鹿(なんだから)……////』

 

エンジニア提督の言葉で、両頬を微かに赤く染めた叢雲と霞は照れ隠しの素振りを見せる。

直後、唇を綺麗な矢型にして、ふたりは足柄たちに命じた。

 

「大淀さん、清霜……私についてらっしゃい!」

 

「足柄、朝霜……遅れるんじゃないわよ!」

 

『了解!!!』

 

叢雲は大淀と清霜、霞は足柄と朝霜に各々のペアを組み、二手に分かれて突撃する。

エンジニア提督は《むらさめ》に搭載している《90式艦対艦誘導弾》及び《ハープーン》によるアウトレンジ攻撃及び、接近戦は《62口径76mm連射砲》による砲撃で彼女たちを支援する。

気休め程度の陽動だが、時間稼ぎとしては充分だ。

彼が陽動している間に叢雲と霞たちが、有効射程距離に入り、必殺の酸素魚雷による雷撃を喰らわせる。

先ほどのミサイル攻撃を耐えても、《蒼き暗殺者》とも言えるこの酸素魚雷を数発も喰らって、無傷な敵艦はいない。

 

エンジニア提督は、自分たちが過去にタイムスリップしたとも言えるこの奇妙な海戦の幕開けに不気味さを感じていたのだった……

 




緒戦とも言えるこの海戦は、例の装甲艦が優位に立ちましたが……
巡視船相手では性能の差はありますから、どこぞの無能連邦大統領の連邦軍が輸送船や病院船を撃沈して、俺最強と勘違いしていますものですから。

なお、この装甲艦の元ネタは『超戦艦空母出撃』に登場した米軍艦です。
装甲艦、または甲鉄艦とややこしいですが、最強な戦艦であります。
ただし、大和や武蔵相手には分が悪かったですが。

F-15Nは、CoD:MW2より。
あの援護シーンは迫力です。
ただし現実世界でも計画機として、実際にありました。
機体改修はむろん、搭載兵装課題などに躓くなどと言う理由で計画中止になった模様。
この世界では日本が制式採用、尚且つ機体統一は部品相互などの利点もありますからね。

さて次回はエンジニア提督たちと、例の老害連中が操縦する装甲艦との激戦です。
果たしてこの勝負の行方はいかに……

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

次回に伴い、来年も本作品と、天空の富嶽をお楽しみください。

それでは第27話まで…… До свидания((響ふうに)

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