第六戦隊と!   作:SEALs

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お待たせしました。
予告通り前回の続き、提督たちとの作戦会議であります。
今回のサブタイトルは、とある架空戦記の作戦名であります。

いつも通り、最後まで楽しめて頂ければ幸いです!

では、本編であります。どうぞ!


第22話:タイム・リンク作戦 前編

柱島泊地―――

時刻 1600時

作戦会議室

 

提督たちは元帥とエンジニア提督とともに、叢雲と霞率いる調査艦隊メンバーの調査報告を聞くため、この場所に召集した。

古鷹たちはもちろん、ハルナたちも同じく緊急会議に参加した。

この作戦会議室は盗聴防止様式に施されている。

電波を遮断する分厚い鉛の壁に囲まれており、外から指向性マイクで狙っても物音ひとつ聞き取れない。

窓ガラスも同じ仕組みに伴い、防弾仕様となっており、狙撃されることもない。

オフィスそのものも立ち入るには数重のセキリティ・システムをパスをしなければならない。

提督はむろん、古鷹たち各艦娘の目の網膜・虹彩パターンを登録されていて、入室の際にはこの識別システムをクリアしなくてはならない。

また完全武装した憲兵が付き添うことにもなっている。

 

「俺たちが戻るまで提督たちも大変だったな、あの連中相手をするとは」

 

「ああ……だが、キリシマが倒してくれたから良いが、本当に連中相手は御免被りたい」

 

エンジニア提督の問いを聞いた提督は、やれやれ、と言わんばかりに首を短く横に振った。

 

「言いたいことは分かるけど、かと言って恫喝と暴力する時点で、平和ボケ連中自体が子どものままだな」

 

「全くだ。あんな連中の意見など受け入れなんて出来ないな……情けをかけることさえ害悪になる」

 

我が国独自の左翼連中自体をまともにしようとするなら、日本が徹底的に手を入れるしかない。

だが膨大な負担を余儀なくされ兼ねないため、日本はそんな負担を被るのは御免だった。

寧ろ連中の次から次への暴露される悪行の数々をネットやSNS、YouTubeなど動画に投稿する。

独自の力を押さえて、連中の衰退後には全力で壊滅させた方が遥かに効率的で良い。

 

「終わり良ければ全て良しだが……」

 

提督は、軽いため息をついた。

反日売国奴たちを教育して、近代化させるべきだと思う人間もいなくなるから、我々の手間が省けるというものだと思えば気が楽と言える。

 

「奴らが馬鹿なことをしたら即座に、我々と各軍が協力して徹底的に叩くしかない」

 

「確かにそうだ。今後も悉くあるかもしれないが……まぁ何はともあれ、今は調査艦隊の報告が最優先だ」

 

元帥の言葉を聞き、話を再開する。

 

「それじゃあ、エンジニア提督たちの調査報告を頼む」

 

「はい、元帥!」

 

エンジニア提督は頷いた。

 

「では、私と叢雲と霞たちとともに現地調査チームの責任者である佐橋兵衛教授と説明致します」

 

エンジニア提督たちとともに傍にいた男性―――佐橋兵衛は、ノーベル物理学賞候補になったことのある京大量子力学研究所所長が指名された。

佐橋は素粒子論の権威である。

チームの人数は彼を含めて全20人、いずれも現代物理学、宇宙物理学も含むエリート学者たちである。

 

彼らにはふんだんな機材と補助人員が与えられ、自衛隊のヘリや海保の巡視船はむろん、提督たちの艦娘たちの護衛付きと言う特権が与えられた。

元帥の提案通り、マスコミに対しては『海底火山の噴火』と言う欺瞞作戦とともに、今回の調査報告が早かったことが幸いでもあった。

提督たちは怠ることはなく、何時でも出撃準備は完了していた。

報告次第で作戦実行は今日、もしくは明日に来るだろうと推測していた。

 

なお、警戒として雲の周辺半径20キロの海域は海保とエンジニア提督たちを含む友軍艦隊によって完全封鎖され、提督たち軍関係者以外は立ち入り禁止になっている。

もっとも深海棲艦の出現以来、艦娘たちの護衛なしで航行しようとする船舶は無きに等しいが。

現状に戻る。

 

「では、私が説明致します」

 

佐橋がメガネをずり上げながら切り出した。

アインシュタイン博士のような白髪の蓬髪《ほうはつ》に伴って、哲人めいた風格の持ち主である。

 

室内には大型スクリーンと、そして映写機とノートパソコンも用意されている。

スクリーンに投射されたカメラ映像には、”雲”が映し出されていた。

提督と古鷹たち自身は、ハルナたちの話を聞いただけで自分たちの目で見ていない。

しかし、そこに映し出された雲は、ハルナたちの言う通り、黒い空間に近く異様だった。

 

カメラは、正面から雲をとらえている。

外観は積乱雲に似ているのだが、やや歪んだ長楕円形のかたちをしており、奇妙に幾何学的《きかがくてき》である。

しかも周辺部分は、雲のように絶えず変化している。

そして内部では稲妻のような光が絶えず点滅していた。

 

「……結果は出ましたけど、絶対的に時間が足りませんでしたな。だから結論と言っても推論がほとんどですが……」

 

「それでも結構です」

 

元帥が答えた。

 

「これは些か拙速を要する事件ですので。行動のための指針を得ることが何より大切なのです」

 

「なるほど……それではまずあの雲のサイズと、形から申し上げますが、私どもの観測では、雲の高さは、海中まで入り込んでいる部分を加えて、約1000メートル。

側面部の最大幅がおよそ2キロはある分厚い凸レンズ形状をしており、海面に対して垂直に立っております。

正面、つまりレンズの表面部分の最大幅は、およそ5キロ。御覧の通り、長楕円形をして海中からそそり立っております。

しかも移動も変形しません。尚且つ奇妙なことに、雲を形成する物質には水蒸気によく似ているのです。……と言うより、スペクトル分析によれば、水の分子そのものなのです。

しかもなお普通の雲の持たない特異な性質を持っているわけですな。

結論から申し上げますが、あの雲は、提督とハルナさんたちが仰る黒い空間とも言えるアレは、一種の擬似的なブラックホールを形成していると思われます」

 

「つまり、本物のブラックホールではないと考えれば良いのだな」

 

提督の答えに、佐橋は頷いた。

 

「提督の言う通り、本物ではありません。あの雲には事象の地平線を思わせるものが形成されているようなものなのです。

電磁系と光学系、例えば観測レーザーを使って調べたところ、レーザー光の屈折と消滅が観測されました。

重力異常も感知されましたが、御承知の通り、重力波の観測はこれが微小なために極めて困難です。

しかし、レーザー光が干渉されると言うことは、特異な重力場が形成されていると考えて良いでしょう。

この重力場は、凸レンズのもっとも分厚い部分を中心に左右対称に形成されおり、その内部では電波は通りません。

雲の周辺では5キロ以内に接近すると、電磁場の大きな乱れが観測されます。

我々としては雲の内部に無人観測機を飛ばしたかったですが、回収不可能の危険もあるため控えました」

 

佐橋教授は本物に残念そうな表情になった。

元帥によって禁止されており、ハルナたちはむろん、彼女たちの仲間や、その世界の住民たちに迷惑を被ることもあり得るからだ。

 

「ありがとう。ハルナさんたちに尋ねるが、この映像に映った雲……黒い空間で間違いないね?」

 

元帥は言った。

 

「ああ、我々の見た黒い空間だ。間違いない」

 

ハルナが答えると、キリシマ、マヤ、蒔絵も頷いた。

 

(あの雲をもう一度くぐれば、ハルナたちは無事に元の世界に戻ることが出来ると言うことか……)

 

内心に呟いた提督は安心感に伴い、同時に不安と寂しさもあった。

むろん古鷹たちや、ハルナたちも同じ気持ちであることは変わらない。

だが、元の世界に帰らなければ、ハルナたちの仲間たちも同じように心配している。

しかし、元の世界に戻れるかどうかも分からない。

元の世界に戻れることも出来る反面、違う時代に飛ばされることもあり得るからだ。

現在の化学力を尽くしても解明出来ずに、Xファイルとなってしまう未解決事件も少なくない。

その多くは宇宙人やUFOによる誘拐説、神隠し、次元の歪み、そしてタイムゲートなどと言った超常現象として至極ありふれている。

今回の場合は次元の歪みか、若しくは宇宙人の化学力に関するかもしれないと、提督は推測した。

 

「あの雲は異次元、またはタイムゲートと呼んでも良いのでしょうか?」

 

提督が尋ねると、佐橋教授はかぶりを振った。

 

「その結論は我々には出ません。そう断定するにはあまりにも、我々の知る限りの科学理論に反するのですが……」

 

「だが、現時点で我々の存在しているではないか?」

 

「私の艦だって、無事くぐり抜けることも出来たよ!」

 

キリシマと、マヤの言葉を耳にした佐橋は顎を撫でた。

 

「確かに科学に反しますが、あなた方が証人としていることもありますからこう認めざるを得ないです。

一種のタイムゲート、或いは次元の歪みと言うしか考えて然るべきでしょう」

 

「もしもあの黒い空間が人知を越えるものだとすると……」

 

提督はもう一度尋ねた。

 

「なぜ突然出現したのでしょうか?……自然界において様々な特異な現象が積み重ねて発生したのでしょうか?」

 

「とてもそうとは思いませんな」

 

佐橋の隣に座っていた永田と言う学者が発言した。

永田は、東大・宇宙物理学研の教授である。

いかにも秀才らしい白皙《はくせき》の持ち主である。

 

「私はこれはある意味では宇宙的規模の現象だと考えます。かつてアーサー・C・クラークと言う通信工学の専門家でもあるSF作家は『2001年スペース・オデッセイ』と言う映画の原作を書きました。

クラークは通信衛星の原型を考えた科学者でもあり、彼の小説は、人類の曙時代にエイリアンが地球に訪れてモノリスと言う物質を設置することから始まります。

モノリスに手を触れた瞬間、アウストラロピテクスの脳が刺激を受けて、知能が触発されることになる。

それから、何十万年も経って人類は月に行けるほどの化学力を獲得することが出来ました」

 

一呼吸置くと、永田は再び口を開く。

 

「しかしエイリアンは、月にもモノリスを用意しておいたのです。月でモノリスが発見され、人類がそれに手を触れた瞬間、モノリスは木星のある一点を指向する強力な電波を発生します。

人類は惑星間探索船を建造して、木星に向かいます。

そこでクルーの唯一の生き残りである船長が発見したものは、巨大なモノリスが木星の軌道を回る姿でした。

実はそのモノリスこそタイムゲート、つまり、宇宙空間を自在に旅するためのチャンネルだったのです」

 

「つまりあなたは、あれはエイリアン、または未来人が作った物だと言われるのですか?」

 

提督は尋ねた。

 

「あくまで憶測ですが」

 

「……私はむろんそうは考えませんがね」

 

永田の答えに、佐橋は堅い表情で言った。

ふたりを見た蒔絵は―――

 

「先ほどのブラックホールも同じ宇宙規模の現象だから……この特異点は事象の水平線と呼ばれる敷域に囲まれていて、その内部は連続体ではない時空構造が出来上げることになる。

つまり宇宙の蟻地獄とでも言うべきもので、光さえもここに吸い込まれると永久に出られなくなる。

この事象の水平線の周辺でも時空の歪みが生じて時間の流れが遅くなる。

これを利用すると理論的にタイムトラベルができるけど、これはあくまでも未来に行けるだけで、過去に戻ることは不可能だから……あれ?」

 

提督と古鷹たちはむろん、元帥とエンジニア提督たちは驚愕していた。

半分以上はちんぷんかんぷんなだが、なんとか概念として把握できる。

彼らに対して、佐橋教授と永田に関しては―――

 

『ぜひ、私たちの研究所に!!』

 

ふたりは感動のあまり、蒔絵をスカウトする。

 

「ありがとうね。でも、私はハルハルたちと一緒にいるって決めたからごめんね……」

 

蒔絵の断りを聞いたふたりは、本当に残念そうな表情をしていた。

提督たちは『昭和のギャグ恋愛漫画で似たような場面があったな』と内心に呟いた。

ようやく我に返った佐橋教授たちは、短い咳払いをして説明に戻る。

 

「蒔絵ちゃんの理論も含め、いろいろな解釈が出てくることは当然でしょう。あとは元帥と提督たちの判断次第になります」

 

「うむ、分かりました」

 

元帥が立ち上がると、全員起立をした。

 

「みんなご苦労様だ。採取したデータや資料などは全て私たちで預からせていただきます。またこれは我々提督たちの極秘任務であり、全員が守秘義務を宣誓されたことをお忘れなく。

なお作戦名は『タイム・リンク作戦』と名付ける。以上だ!」

 

『はい!!!!!!』

 




今回は架空戦記風に伴い、一部ギャグもあると言う展開になりました。

なおモデルになった架空戦記は、私の好きな田中光二先生の記念べき初架空戦記『超空の艦隊』からです。
ジパングも好きですが、此方の方が面白くて好きであり、設定もきちんとしています。
また少しだけですが、海外ドラマ『Xファイル』ネタも入れました。
昔の方がホラー要素強いですから、此方の方が印象強い話も多いです。

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
では次回も古鷹たち第六戦隊の魅力とともに、シュガーテロもお楽しみに!

それでは第23話まで…… До свидания((響ふうに)

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