第六戦隊と!   作:SEALs

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お待たせしました。
前回の後書きにて後編に続きますと言いましたが、事情により中編に分けることになりました。

では積もり話もいろいろありますが、今回も楽しめて頂ければ幸いです。

気難しく考えずに改めて……

本編であります。どうぞ!


第10話:イノシシ大戦略 中編

美しい白銀の月とともに、紺碧に染まった夜空が優雅に照らす。

静寂な夜にも拘らず、警戒態勢中の柱島泊地は相変わらず穏やかではない。

昼間に鎮守府内に突如として現れた巨大イノシシが現われ、鎮守府内を暴れると近くの山へと逃げたからだ。

 

あとで鬼怒たちから聞いた話しによると、いつものように輸送船の護衛任務を終えて帰投するとすぐに各資材や補給物資となる食料が大量に入った木箱を揚陸した。

今回も戦意高揚且つ運びきれないほど大量の資材や食糧を得ることが出来たため、これを何度かに分けて、工廠や各倉庫にまで分割して運ぶことにした。

ここまでは良かったが、鬼怒たちが残りの資材や食料を運ぼうとした際に事件が起きた。

ワゴン車並みの大きさを誇り、全身ずぶ濡れ状態のイノシシが食料の入った木箱を壊して、これを我が物顔で食べていたのだった。

彼女たちは全身が凍りついたかのように、巨大イノシシを見たのだった。

鬼怒たちに感づいた巨大イノシシはエサを横取りしに来たのかと思い、彼女たちが気に喰わなかったのかと言う動物の本能に従い、突如として襲い掛かったのだと言う。

鬼怒たちが慌てて説明し、さらに瑞穂が追いかけられたのも頷けるのだった。

ずぶ濡れ状態と言うことは、あの巨大イノシシは海を渡って泳いできたことが分かった。

瀬戸内海ではたまに目撃されることもあり、泳いだ最高距離は30キロほど泳いだこともあるらしい。

あの大きさならばその倍は泳げるが、恐らく偶然にも鬼怒たちが運んだ食料の匂いでこの鎮守府に来たのだろうと提督は推測した。

 

「ともあれ俺たちがあの山に入り込み、みんなで奴を始末する!」

 

『はい!!!』

 

今回は夜戦と言う名の巨大イノシシ狩りをするため、メンバーも夜戦が得意な古鷹たちはもちろんのこと―――

 

「夜のイノシシ狩りなんて燃えちゃうね!」

 

夜戦と聞いただけで戦意高揚且つ燃えているのは川内である。

特に艦隊のなかでは彼女はナイトヴィジョンが必要ないほど、夜目がずば抜けているのでイノシシ狩りに選抜した。

史実でも日本軍の熟練見張員たちは、レーダーよりも早く遠くにいる敵艦を見つけた功績も多いほど夜目がとても良い。

暗い部屋の中に閉じこもりつつ、ニンジンなどビタミンが豊富なものを食べて鍛えたほどとも言われている。

撃墜王の坂井三郎も昼間に月が見えるほどの視力を持っていたと言われている。

 

「イノシシ狩りか、深海棲艦を狩った方が楽だな」

 

天龍も夜戦が得意なため、無理を言ったのか提督に頼んだ。

提督は『三川艦隊メンバーで行くから、問題ない』と言うことで決定している。

 

「天龍、あまり舐めていると痛い目に遭うぞ」

 

「そうよ、天龍。提督の言う通り、あまり舐めていると痛い目に遭うわよ」

 

「その前に俺がシシ鍋にして食ってやるさ!」

 

天龍が慢心しかねないから、同じ三川艦隊メンバーの夕張も同行させている。

 

「私の見張員も『所どころ地面や落ち葉に付着している血痕や足跡を辿れば良い』と言っています!」

 

鳥海も同じく夜戦が得意であり、特に彼女の相棒こと熟練見張員の妖精たちも川内と勝るも劣らない力を発揮する。

さすがに暗闇のなかの血痕や足跡は見えにくいので、妖精たちに頼らざるを得ないこともあり、また双方は貴重な証拠なのでこれらを消さないように注意しながら進む。

 

「提督…私たちも、ヒトミたちも……一生懸命に……サポートますね……」

 

弾薬箱を持ちながら提督に話したのは、巡潜甲型改二(伊13型潜水艦)1番艦・伊13ことヒトミである。

着任早々はしどろもどろでハッキリとせず、悲観的で自信過小な娘だったが、改装後は自信を持ちとともに自己主張できるようにもなった。

 

「姉貴、心配いらないって!提督と古鷹さんたち、そしてこのイヨがいるんだから大丈夫だって!」

 

彼女の隣にいるのは、同じく巡潜甲型改二2番艦・伊14ことイヨである。

真面目な姉とは対照的に、ハツラツとハイテンションでエキセントリックな楽天家な娘。

なお友人提督たちとともに門司港に遊びに行った際に、酒飲み伝説を作るほど酒好きである。

 

「ふたりとも無理はするなよ、俺と古鷹たちのサポートをしっかりすれば大丈夫だ」

 

「はい、提督…」

 

「もちろんだよ、提督!」

 

提督の言葉に頷いたふたりも加わり、提督たちは協力して巨大イノシシを狩る。

扶桑姉妹たち率いる待機組は、万が一襲撃に備えて鎮守府で警戒することにした。

 

「あれだけ負傷しても丈夫で不死身に近いが、必ず弱点はあるからな」

 

提督はメタルストーム MAULショットガンを構えつつ、周囲を警戒して進んだ。

背負っているとある秘密兵器、コイツが役立つことを祈っていると……

 

「提督、偵察用ドローンが例のアイツを見つけたって報告が来たよ」

 

彼の傍で警戒していた加古から、先ほど放った偵察ドローンが負傷した巨大イノシシを発見したとの連絡が来た。

 

「ようやく見つけたな、全員準備しろ!」

 

提督は“全員配置につけ!”と、ハンドサインを送る。

昼夜に比べて周知は暗いため、秘密兵器を幾つか持って来た。

 

「明石たちが開発してくれたこれを使ってみるか!」

 

提督はまずグレネードを調整した直後、すぐさまこれを遠くまで投擲する。

すると、周囲をスキャンするかのように広範囲に敵味方識別(IFF)センサーが広がる。

彼が取り出したものは、バリアブルグレネードだ。

その中で搭載されている機能、スレットと言われる特殊機能を試しに使った。

これは一定期間中に壁や遮蔽物の奥に潜む敵もだが、必要とあれば味方も視認可能になる。

他にも敵の視界を奪い、混乱させ、動作を遅くするスタン、敵のドローンなどを破壊するEMP、一時的に煙幕を展開しストリークなどのレーザー索敵を無効化するスモークが搭載されており、これら4種を切り替え可能という優れものでもある。

 

「スゴイな、また明石と夕張が開発した装備は」

 

「えへへ、気に入ってくれてありがとう」

 

「ああ、あとで間宮券と天ぷらそば券をやるからな」

 

「やった!」

 

提督が率直な感想を言うと、夕張はピースサインをした。

 

「それじゃあ、みんな準備いいか?」

 

提督は訊ねた。

 

「準備できました、提督!」

 

「提督、いつでもOKだよ〜」

 

「司令官、準備万端です!」

 

「提督、こっちも何時でも大丈夫だよ!」

 

「ヒトミも、準備…完了…です……」

 

「イヨちゃんも準備完了だよ!」

 

「よっしゃ、天龍さまの攻撃でシシ鍋にしてやる!」

 

「まだ言うか、あんたは」

 

夕張の突っ込みを受け流すように、提督は背中に背負っていた秘密兵器を取り出す。

その秘密兵器とはハンガリーで開発された対物ライフル・ゲパードシリーズの最新モデルとして、M2の改良型『GM6 Lynx』に切り替えた。

この銃はブルパップ方式を採用しており、作動はロングリコイル方式のセミオートマチック且つ銃身を後退させ全長を短くした状態で携行でき、携行性を高めている。

しかも連射速度は高く、2秒で6連射ができると言う利点がある。

対物ライフルとしては小型軽量であり、立射姿勢で連射も可能なので、携行性と合わせると即応性は高いため、念のために持って来た。

 

提督はGM6 Lynxの巨大なその銃身に取り付き、狙撃スコープを覗き込んだ。

狙撃には大気中の湿度変化、風力が弾道に与える影響、この距離だとコリオリ効果も考慮する必要がある事も視野に入れなければいけない。

コリオリとは、地球の自転により飛翔する物体が受ける転向力のことだなと呟いた。

もっとも12.7mm弾と言った大口径銃弾だから気にしなくても良いが、用心に越したことはない。

問題は風向きと風力だが―― 運がいいことに、狙撃スコープの向こうに映る標的とともに、枝についている1枚の木の葉が見えた。

 

「風に揺れるこれを参考にしない訳にはいくまいな……」

 

彼は小声で呟き、GM6 Lynxのセーフティを解除した。

これで引き金を引けば、50口径の銃弾が放たれる。

直撃すれば人体は真っ二つに、あの巨大イノシシの頑丈な身体などに命中すれば、ケロリッとできないほどの致命傷を与えることができる。

 

「不味いな……」

 

しかし、提督は引き金にかけた指に力を加えない。

スコープに映る木の葉が、落ち着きなく右へ左へと風に揺れていた。

提督が撃つまでは、古鷹たちは待機状態を維持している。

もし自身が初弾で外してしまえば、標的は警戒を強めてしまうに違いない。

提督たちは辛抱強く待っていると、ようやく木の葉は、踊る相手がいなくなったように大人しくなった。

 

「ようやく、治まったか……」

 

これで照準が非常にやりやすくなったと同時に―――

巨大イノシシは食事を食べ終えたのか、後ずさりしてこの場から離れようとした。

チャンスだと提督は考え、最後に照準を微調整、そして引き金にかける指に力を加える。

砲撃音に近い轟音とともに、撃ち放たれた銃弾は音速を超えて直撃した。

狙撃スコープの向こうで、予期せぬ方向から予期せぬ攻撃を受けた巨大イノシシの左脚に命中した。

 

苦痛の悲鳴を上げて、ようやく巨大イノシシは提督たちに気がついた頃には―――

 

「オープン・ファイア!」

 

提督の『攻撃開始!』と言う掛け声で、古鷹たちも攻撃を開始した。

彼女たちの装備も、昼の装備よりも重装備に変更した。

M4A1はもちろんのこと、より強力なM240やMG3汎用機関銃、熊やイノシシなどの大型動物猟用のスラッグ弾を装填したAA-12を中心に、重火器は連発可能なダネル MGLと、そして対戦車火器として米軍や自衛隊が制式採用しているFFV社製の無反動砲 M3 MAAWSによる一斉射撃が行われた。

古鷹たちは一斉射撃をし、ヒトミとイヨは各弾薬を運搬すると言う役割をしている。

提督も立て続けに、GM6 Lynxを撃ち続ける。

弾切れが尽きると―――

 

「提督、予備弾だよ♡」

 

隣でサポートしている加古がウインクをし、マガジンを渡してくれた。

装填し、また新たな命を吹き込んで、再び射撃を開始し続けた。

 

 

 

「撃ち方やめ! 撃ち方やめ!」

 

もはや焦土化したようになったのを見た提督は、射撃中止を命じた。

硝煙の臭いが凄まじいくらいだと思えたが、あれだけの火力で死ななければ脳天に当てるしかないなと考えたときだ。

 

「天龍、待て!まだ危険だ!」

 

天龍はAA-12を構えて、前に出た。

 

「心配するな、提督! あの弾幕だ!もう焼き豚に……」

 

天龍が最後まで言おうとした時だった。

ザザザザザッと走り抜ける音が聞こえ、そして―――

 

「オ〝ッ!」

 

重傷を負いつつも、最後の抵抗だろうか巨大イノシシは天龍に体当たりする。

 

「ほわあああああっ!」

 

その衝撃は軽トラが突っ込んだようなものなのか、彼女は断末魔の悲鳴を上げながら後ろまで吹き飛ばされた。

この反撃に満足したのか巨大イノシシは銃創を気にすることなく、全速力でこの場から逃げ出した。

 

「天龍!大丈夫か!?」

 

提督たちが駆け寄った。

周囲を警戒しつつ、夕張は天龍をゆっくりと両手で支えて起こした。

提督はポーチから救急箱を取り出し、応急処置をする。

 

「大丈夫、天龍!?」

 

「ああ、このくらいの……傷……大したこと…」

 

「少し手当てするから、大人しくしろ!」

 

艦娘でも、俺たち人間と変わらない。

出会った中でも最高の人間である以上は、命に代えてでも守らねばならない。

例え偽善者と言われても良いのだと呟いたとき―――

 

「お、俺……少し、休んでいいか……」

 

提督は、何処かで見たことある映画みたいだなと呟いた。

天龍はそう言うと、ガクッと気絶した。

 

「誰か助けてください!」

 

夕張がそう叫ぶと―――

 

“Your love forever 瞳を閉じて 君を描くよ それだけ〜♪”

 

美味い具合になぜか某恋愛映画で有名になった名曲が掛かって来た。

 

「あ、もしもし……」

 

ヒトミが持っていたスマホを取り出して、電話に出る。

その場にいた古鷹たちは、ズテッとギャグ漫画のように滑った。

提督は滑らなかったものの、いつもは冷静な提督もこの状況を見て、苦笑いした。

彼と同じく滑らず、古鷹たちが転んでいるこの状況を見た彼女は―――

 

「あ、あの……こ、後編に続きますね……」

 

『なんだか、メタいな(ですね)……』

 




今回は前回同様『CoD:AW』本編に登場したバリアブルグレネードと伴い、メタルストーム社製のMAULセミオートショットガンや、『CoD:G』でも登場したMOM社製の対物ライフル、ゲパードGM6の最新モデルLynxを登場させました。
双方ともお気に入りであります。

なお一部ギャグとして、ヒトミちゃんに担当してもらいました。
ある意味、フリダームにし過ぎたかなと思います。
なお今回のイベントでドロップいますから、我が艦隊も捜索中です。
元よりE-4までいけましたが、断念して残りの期間と資材が危ういためE-1でひとみちゃんを迎えるために戦力を集中させます。
悔いのない様にしていきます。

ともあれ、今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

次回はこの続き且つ、夜戦で狩りたいと思いますのでお楽しみに!
それでは後編こと、第11話までДо свидания((響ふうに)

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