マリージョアから出航してしばらく経つが、船の中が窮屈だな
タイガーが用意してくれた船はそれなりの大きさなのだが、思いの外解放した奴隷が多く、ぎゅうぎゅうに詰め込まれている形になっている
このままでは怪我人の治療もできない
木遁で増設するか……
「タイガー、少し船を改造していいか?さすがに狭すぎる」
「そんなこともできるのか?」
「ああ、このままだとさすがにな……」
「できるなら是非頼む」
よし、タイガーからの許可も降りたし早速やっちゃおう
木遁で船の両脇につなぐように新たな船を作りだす
船の旋回能力が下がったり、見た目が不恰好になるが背に腹はかえられない
「すごいな……こんないとも簡単に」
タイガーが驚いているが奴隷たちの移動させるのを手伝って欲しい
元奴隷の人たちは奴隷時代の習慣が染み付いているのか、男女ごっちゃでも苦情がないが、俺の観念からしたらやはり別にするべきだろう
そんなわけで新たな左右の船を男と女でわけ、動けない者はそのまま真ん中の船に残った
ふぅ、だいぶスッキリしたな
これで治療が始められる。怪我人の数が多いから影分身使うか
「どうしたマダラ、急に分身して」
「怪我人の治療をしようと思ってな。それとこれをみんなに食わせといてくれ」
俺は大量の兵糧丸をタイガーに渡す
「お前にできないことはないのか……。あとこれは?」
「これは兵糧丸といって味は悪いが栄養価が高く腹が膨れる。見た感じ栄養失調が何人かいたから丁度いいだろ」
「何から何まですまんな。ありがたく使わせてもらう」
「気にすんな。俺が勝手にやってるだけだ。じゃあ俺は治療を始めるから頼んだぞ」
そう言い残し俺は医療忍術で怪我人の治療をしていく
その際、柱間細胞を活性化させながら少し医療忍術に組み込むことで焼きごてでつけられた奴隷紋を消していく
基本的にあれは火傷だからな、細胞の再生を活性化させることで上手くいった
正直消せるか半信半疑だったが無事に消せてよかった……
これで天竜人の奴隷だった証拠がなくなったため、助けた人たちの安全が保証されたな
そして奴隷紋が消えた人たちは泣きながら喜んだ
それはゴルゴン三姉妹も例外ではなく三人とも泣き崩れた
「わ、妾は…妾はもう、怯えなくても、よ、よいのか?」
「そ、そうよ姉様、もう…もうあの紋を見なくていいのよ」
「う、うぅ」
三人で抱き合って泣いているハンコック、サンダーソニア、マリーゴールド
しばらく三人きりにしてやるか……
あと原作キャラでいえばコアラか
コアラは相変わらずニコニコしてて、奴隷紋が消えても変わらないかと思ったが、消えたことを確認したらボロボロと泣き始めた
突然のことに俺はあやすこともできずオロオロとしてしまい、結局コアラが泣き止むまで見守ることしかできなかった
「あ、あの、泣いてしまってごめんなさい。なんでもしますから殴らないでください」
「殴らないからニコニコするのをやめろ。お前はもう奴隷じゃない。自分でも確認したろ?」
「ッ⁉︎」
「泣きたいなら泣いていいんだ。お前は人間だ、それを忘れるな」
そう言い終わったら堪えていたコアラはまた泣き始めた
今度は放置することはなく、背中を叩いてあやしてやると散々泣いて疲れたのかコアラはスヤスヤ寝始めた
予想外の出来事だったが良かった…のか?
コアラが原作より早く感情を出してくれたのは間違いなく良かったと言える
最悪タイガーに丸投げするつもりだったからな……
とにかくコアラを寝かしつけ、他の人たちの治療も終わったのでゆっくりする
「治療は終わったのか?」
「タイガーか、一通りは終わった。ところでこの船はどこに向かってるんだ?」
「ああ、一応シャボンディ諸島という場所に向かってる」
「シャボンディか…丁度いいかもしれん」
シャボンディなら海賊狩りが捗りそうだ。修行と資金稼ぎにうってつけだな
「?なんの話しだ?」
「いや、なんでもない。そこから魚人島に向かうのか?」
「そのつもりだ。同族を早く故郷へ帰してやりたい。それで他の元奴隷たちなんだが……」
「それなら気にするな。時間がかかるかもしれないが俺が送り届ける」
「重ね重ねすまん。こっちも落ち着いたらお前を魚人島へ招きたいと思っている」
「そうか?それはありがたいが、そっちの方を優先でいいから急ぎすぎんなよ。あと見張りなら分身で交代しながらするから寝れる時に寝とけ」
「ああ、そうさせてもらう。つらくなったらすぐに言ってくれ」
さてと、タイガーもいなくなったから少し情報を整理するか
消えた影分身たちから大量の情報が流れてきたんだよな
それで気になる情報は黄猿ことボルサリーノのことだ
やはり出てきたか……
今はまだ中将と呼ばれていたが、ピカピカの実が厄介なのは変わりない
それなりに戦えたことから能力的には負けてないことが分かるが、やはり戦闘経験の差がでたか
これは本格的に鍛えないとな……
シャボンディに行くならシャッキーのぼったくりBARに行ってみるか
ハンコックたちのこともあるからレイリーに会える可能性が高いはずだ
考えないといけないことはそんなもんか?
忘れてないといいんだけど……
ーーーーー
マリージョアを襲撃してから三日後、予定より早くシャボンディ諸島に着いた
何せ食料がなけなしの料理と兵糧丸のみだ。俺が耐えれなくてだいぶ急いだ
これから俺は元奴隷の人たちを故郷へ送り届けるために、五つのグループにわけ送る際に木遁分身を二人つける
シャボンディに大勢で上陸して下手に騒がれたくないので、俺が分身で食料や衣服を買いつけそのまま出航だ
そこで例外となるのがゴルゴン三姉妹とコアラだ
そう、コアラも例外である……
元奴隷たちの故郷の場所を聞いていく中で、コアラが俺についてくると言い出し俺は正直悩んだ
理由は分からない。聞いてもまだ秘密と言い張るばかりで教えてくれない
コアラが俺についてくるということはタイガーが死ぬ可能性が限りなく低くなるということだ
そして当たり前だがコアラの革命軍入りがなくなる
原作を知っている身からすればどうすればいいのか悩むに悩んだ
そして悩んだ結果俺はコアラがついてくることを許可した
革命軍の戦力が減って今後どういった展開になるのか読めないが、コアラが自分の意見を主張したのでコアラの好きにさせることにした
元奴隷だったコアラにとって自分の意見を言うことは、すごく勇気がいる行為だと思う。だけどコアラは勇気を振り絞って意見した
俺はそんなやっと人間味を出したコアラの意見を拒否することができなかった
そんなわけでコアラと九蛇に帰るためにグロリオーサとレイリーに合わせる必要があるハンコックたちは例外で、俺と一緒にシャッキーの店に向かうことになる
そしてタイガーとの一時的な別れでもある
「マダラ、本当に世話になった。俺一人ではこんなにスムーズにいかなかっただろう。それに財宝もこんなにもらってしまい……」
「細かいことは気にするな。俺が勝手にやったことだって言ったろ。それに財宝に感しても盗品だから俺の懐は痛まん」
「そうか、すま……いや、ありがとう。いつか魚人島に寄ってくれ、俺はお前を友として歓迎しよう。あとは頼んだぞ」
「ああ、期待しとくよ。お前も気をつけろよ」
タイガーと握手で別れを済まし、13番グローブに五人で向かう
道中ガラの悪い海賊たちが大量に絡んできたが返り討ちにし、時間が勿体無いので放置する
「わかっていたがマダラ、そなたは強いのだな……」
「そうね姉様、この数の相手を一瞬で片付けるなんて異常だわ」
「すごい……」
「大したことじゃない。この程度ならお前たちもすぐにできるようになるぞ」
「「「本当(か)⁉︎」」」
「本当だ。俺が保証するから安心しろ」
そういうと三人は嬉しそうに笑う
あと会話でわかるように俺はハンコックたち三人に懐かれている、というか妙な信頼をおかれている
ここにくるまでの三日間でだいぶ話すようになり、忍術を少し見せてやったりもした
ハンコックは治療をしてやった後に泣いてたのが恥ずかしくなったのか、照れながら礼を言ってくるのはすごい可愛かった
「あっマダラさん、あそこですか?」
「ん?ああ、多分あそこだな」
コアラに言われ店が見えてきたことに気づく
一緒についてくる以上、家族みたいなもんになると言い聞かせておいたのでコアラはだいぶ自然に話すようになってきた
それにしても本当にぼったくりBARって描いてあるんだな……とりあえず入るか
「あら?見ない顔ね、新人さん?」
おおー本物だ
「お邪魔します。あなたがシャッキーであってますよね?」
「ええ、そうだけど私に用かしら?」
「いえ、正確に言えばここに入り浸ってる人物に用があってね」
「ほう、それは私のことかね?」
うおっ⁉︎後ろから声をかけられてビックリしたー
本物のシルバーズ・レイリーだよ!
てか全然気配がわからんかった……
「初めましてシルバーズ・レイリー。俺はマダラという者です。さすがは海賊王の元右腕、全然気づかなかった」
「私のことを知っているようだから自己紹介は省かせてもらおう。謙遜することはないマダラくん、君もなかなか腕がたちそうだ。それより私に何か用かね」
「ええ、伝説のクルーともなれば顔が広いかと思いまして、お願いがあり来ました」
「そこにいる子たちに関係があるのかね?」
「さすがですね。こちらの三人は姉妹なのですが出身が女ヶ島なものでして」
「女ヶ島?それはまたなんでこんな場所に……」
「理由は内密にしてもらいたいのだが約束してもらえないか」
理由の部分でコアラも含め四人の体が強張った
まだ完全に心の傷が癒えてないのだろう……
「大丈夫だ。なにがあっても俺が守ってやる」
ゆっくりと優しく言ってやると少しは安心したのか四人の体から力が抜けた
「ふむ、よっぽどの事情と伺える。他言しないと約束しよう。シャッキー」
「わかっているわ。私も他言しないと約束するわ」
「ありがとうございます。ところでお二人は昨日の新聞をお読みで?」
「ああ、勿論読んだとも。過去に例をみない事件……、もしやそうなのか?」
俺は無言で頷く
さすがレイリーだ、これだけで察するとは
シャッキーも正確に把握したようだ
「……君はとんでもないことをしたもんだ。たしかにこれは他言できないな」
「後悔はしてませんよ。俺がやりたいことをしただけです」
笑って答えるとレイリーも笑い返してくれた
「わかった。知り合いに連絡を取ってみよう」
「ありがとうございます。よかったな三人とも、あとはこの人に任せれば大丈夫だ」
「ありがとうマダラ。そなたのおかげで無事に島に帰れそうじゃ」
「ありがとうマダラ」
「そうね、本当にありがとう」
三人が嬉しそうにしてくれ良かった
「そっちの子はどうするのマダラちゃん?」
「コアラは俺についてくるそうなので問題ないです」
「そう、それなら安心ね」
シャッキーが意味深に笑いかけてくる
「そうだな、マダラくんの側なら問題ないだろう」
「俺の家族は絶対に守りますよ」
「ふふ、良かったわねコアラちゃん。素敵なお兄さんが守ってくれるって」
コアラが照れくさそうに笑う
「それと全員今日はここに泊まっていきなさい。私の知り合いに連絡が取れるまでここにいるといい。あまり外に出るのも得策ではないだろう」
「そう…ですね。お世話になります」
そうしてシャッキーお手製の料理を堪能しながら夜は更けていった
コアラの性格がだいぶ違いますがこんなじでいきます