Armored Core ~Day after Day Sweet Lily~ 作:一織
「今回はACの撃破よ、手強い相手らしいわ」
「わかりました。全力で行きますね」
『どうせ不細工なおっさんなんでしょ?』
「へえーそういう貴方は随分見た目に自信があるんですね、リリスのパイロットさん」
『女……!?しかも私よりも年下!?』
「……余所見してて良いんですか?」
澪は一気にハイブーストで接近し両腕に装備したMURAKUMOを同時に振るう
『がぁああああああ!?』
「本気出さないと……殺しちゃいますよ…?」
『くそっ!!』
「遅いです」
リリスがパルスガンを撃ってくるが余裕で躱し、すれ違いざまにもう一度MURAKUMOで斬りつける
『ば……バケモノ…』
「いえ、ただのAC乗りです」
澪は冷静に告げ、MURAKUMOでリリスのコクピットを切り裂く
コクピットの周りに鮮血が飛び散り、リリスのパイロットは胴体を二分され絶命した
「任務完了です。残念です……こんなにあっさり死んじゃうなんて」
『……帰還しましょうミオ』
「はぁい♡」
――――――――
マグノリアはあの時のミオの様子を思い出していた…
無慈悲に女性だと知ってもコクピットを切り裂き、パイロットを二分して絶命させて見せた。AC同士での戦闘では普通は血を見ることは少ない。
それを見てマグノリアは吐きそうになった。いくらAC乗りで死が身近にあったとはいえ、AC用の武装で切り裂かれた人間はあまりにもひどいものだった。正直二分割でもいいほうだろう、下手をすれば肉塊になるレベルだ
そんな光景を見ても平然と「残念だ」と冷徹に言い放つ彼女が今、自分の膝の上ですやすやと寝息を立てて可愛らしく寝ているのだ…そんな彼女が平然と人を殺すなど考えられなかった
いや、考えたくなかった……普段の可愛らしく、ほんわかとした少女があんなに冷酷に人を殺めるなんて思いたくなかった…
「マギー、っと……嬢ちゃんが寝んねしてたのか」
「ファットマン……私は…この子が好き……でも……時々この子が怖い……」
「マギー……俺はそう言われた時にどう答えていいかわからない。だがな、その嬢ちゃんがお前さんのことを好きなのも確かだ。なら……マギーにだけは本心を向けてるんじゃないのか?」
「ファットマン……貴方は優しいのね…」
「優しさ………か」
――――――
「マギーさん!これ美味しいですよ!こんなにおいしい食べ物初めて食べました!」
「え?あぁ…レーション?それ美味しい?」
「はい!この食べ物すっごく美味しいです!れいしょん?って言うんですね、おいしいです!」
「そう……そうね…美味しいわよね」
耐えられなかった……あのレーションを美味しいと言って笑顔で食べる彼女が……彼女の過去は正直言って言葉にするのすら憚られるものだった…
ろくな食事を食べたことがなく、飲み水も飲んだことなどなく…初めて彼女がスピリッツを口にした時など、「こんなに美味しい飲み物あるんですね!」と目を輝かせて言ってきたのだ…
年端も行かぬ彼女がそんな酷い思いをしてきたと考えるだけで自分がどれほど恵まれていたかが分かった。少し前まで、左腕を失いACに乗れない事を嘆いていた自分を殺してやりたいほどに自分を憎んだ
正直に言ってミオの闇は深すぎる…もし私が彼女と同じ目にあったのなら確実に精神がおかしくなって廃人になることだろう
――――――
「……ねえ、ミオって昔の事……覚えてる?」
「はい?あー…昔の事ですか?私は……捨てられたんですよ、世界に」
「え」
「親には女だからと捨てられて、どうにか生きていこうにも働けるわけでもない。と社会に捨てられて、その間は何を食べて何を飲んでたのかもわからなかったかなぁ…?その頃は私は知識が無かったので、後、男の人に酷いことされそうになったり…されたかなぁ…?その辺詳しくは覚えてないですけど、気がついたら周りが真っ赤になってて男の人は居なくなってましたけど」
「多分私が殺しちゃったんだと思いますけどねぇ…どうやったんでしょうか?」
「まあ、そんな昔の事なんてどうでも良くって、今マギーさん達と一緒に居るだけで幸せなんですよー」
「………そう…ごめんなさい…昔のことなんて聞いて」
「いえいえ、全部終わったことなので」
そう言って微笑む彼女は…儚く……とてももろく見えた
今回は重い感じ…になったと思うんですけど……どうなんでしょう?