「それじゃあお兄ちゃんレッツラゴー!」
「しっかり捕まってろよ」
荷物運びも終わり、今日から新しい高校生活が始まる。まぁ1年だけだけど。
「そうそう!はいっ!」
「?メガネ?」
「お兄ちゃん目があれだから!メガネかければ少しはいいかなって思って!」
「なんだよ目があれって。まぁ小町からの貰い物ならなんでもつけるけど」
「うわー、嬉しいなー」
「…どうだ?」
「おぉ!なかなかというかかなりいいよ!バッチシ!」
「小町も可愛いぞ!」
「はいはい、そういうのいいからね」
「…いくか」
最近小町が冷たい。
「千葉県から引っ越してきました、比企谷八幡です」
「…それだけ?」
「はい」
別によろしくしてくれなくてもいいしな。
「じゃあ席は松浦さんの隣ね。あそこよ」
「ふぅ…」
「比企谷くんだよね?私は松浦果南。よろしくね」
「あ、あぁ。よろしく…」
すごい美人だな…黒澤家といい、この地域は美人が多いのか?
「八幡さん」
「ん?…黒澤姉か」
「?ダイヤ、比企谷くんと知り合い?」
「ダイヤでいいですわ。えぇ。隣の家ですの」
「そうだったんだ。ダイヤの家大きいでしょ?」
「あぁ。和風の豪邸だった」
「あそこは小さいのにね…」
「…まぁ確かに」
「ど、どこを見て言ってるの!?」
まぁまだ希望はあるさ!諦めるな!黒澤姉!
「あ!そういえば次移動教室だよ!急がなきゃ!」
「そうでしたわ」
「いきなり家庭科か」
浦の星学院入って初めての授業は家庭科の調理実習。
今日はトリュフを作るらしい。
「グループは好きな人と組んでいいわよー」
出ました。ボッチにとってその言葉は死んだも同然。
「八幡さん、私達と組みましょう?」
「あ、あぁ。助かる」
黒澤姉…今お前が女神に見えたよ…
結局グループは松浦、黒澤、モブ女子、俺となった。
雑な扱いでごめんね、モブ女子さん。
さっそく調理開始。どうやらこのグループは料理ができるらしい。
どんどん工程も進んでいった。
「隠し味隠し味…」
「?黒澤何入れてるんだ?」
「辛ですわ!」
「…ワンモアplease?」
「辛ですわ!」
「……ka・ra・shi?」
「はい!ですわ!」
…ダメだこいつ、早く何とかしないと…
「…誰か黒澤を連れ出せ」
「了解!黒澤さん!こっち!」
「な、なんでですの!?辛は何にでも合う最高の調味料!」
「あはは…ダイヤあまり料理得意じゃないの忘れてた…」
「ったく…幸い、まだあんまり入れてなかったしチョコの量多くすれば大丈夫だろ」
そして、何とか無事完成。
「じゃあいただきます!」
「ストップですわ!このワサビをかけてからですわ!」
「あぁ!?ダイヤ!何するの!」
「さぁ!八幡さんも!」
「やめろばか!」
「バカとはなんですの!?さぁ!さぁ!」
「ち…か…づくなっ!」
「どうしてそんなに拒むんですのっ…!」
「チョコにワサビかけようとするからだっ…!」
「どうやらワサビの素晴らしさがわかってないようですわねっ…!」
「いい加減諦めろ…!」
「とぉ!」
その時、突然黒澤は後に下がり、そして、俺がバランスを崩したところに…俺の口にわさびを突っ込んできた。
「むぐっ!?……」
「ひ、比企谷くん!?大丈夫!?」
ゆ、許さんぞ黒澤……
「うぅっ…」
「あら、起きた?」
「ここは?」
「保健室よ。何があったの?口にあんなにワサビ…」
「…聞かないでください」
まじで死ぬかと思った…
「そ、そう。とりあえず、もう下校時間だから。体調は大丈夫?」
「はい。すぐ帰ります」
「わかったわ。あ、あと松浦さんにお礼言ってあげてね。あの子がここまで運んでくれたから」
「そうだったんすか。わかりました」
「今日はひどい目にあった…?松浦?」
「え?…比企谷くん。大丈夫だった?」
「あぁ。買い物か?」
「うん。夜食の調達」
「片方持つぞ」
「あ、ありがと…」
「?どうした?鳩が豆鉄砲くらったような顔して」
「う、ううん。行こっか」
「…そういや、ありがとな。保健室まで運んでくれたんだろ?」
「ん?あぁ、気にしないで。ダイヤもやりすぎたって言ってたし、明日多分謝ってくるんじゃないかな?」
「そうか」
「…」
「…」
「…そうだ、比企谷くん。アドレス交換しない?」
「ん?…まぁいいけど。ほい」
「わっ。わ、私が打つんだ。…はい!ありがとね」
「おう」
「ちゃんと返信してよ?」
「…善処する」
「怪しいなー。そういえば、なんで比企谷くんはここに引っ越してきたの?」
「親父の転勤」
「そうだったんだ。…沼津に来た時どう思った?」
「まぁ海は綺麗だし自然豊かな場所?」
「そっか。実はね、浦の星って今年から共学になったでしょ?あれ、人数が少ないからなんだ」
「まぁクラスも2つしかなかったしな」
「でも共学になっても多分…」
「まぁ女子校だったところにわざわざ来る男子なんてハーレム作りたいとかそういう下心あるやつだけだろ」
「じゃあ比企谷くんも下心でここ選んだんだ?」
「……」
「ふふっ、冗談だよ。妹さんが心配だから、でしょ?」
「…黒澤に聞いたのか。知ってるならからかうなよ…」
「比企谷くんの顔面白かったよ…ふふっ」
「…もう荷物持たない」
「あ!ごめん!ごめんってば!」
……そういえば、なんで俺は普通に松浦と帰ってるんだ。
もう人とは関わらないと決めたのに。