普段は同サイトで2次小説を書かせて頂いているミツフミと申します。
今回、初のオリジナル小説&初の短編小説でちょっとドキドキしながらの投稿ですが、(まぁ投稿する度にドキドキしてるのはいつもの事ですが)少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
それでは本編をどうぞ!
「ん、ん~。漸く終わったぁ~。」
手に持っていたシャーペンを机に投げた俺は、椅子にもたれかかって大きく伸びをする。
ずっと同じ姿勢だったせいで、こり固まった腰が「パチン」と心地いい音を鳴らした。
「ふぁぁぁ。全くヒラ先のやろう、受験対策だ何だの言いながらとんでもねえ量の課題出しやがって……。
ただ単に生徒の苦しむ姿見て愉悦に浸りたいだけだろ。
ってあいつはどこの麻婆神父だよ。」
欠伸をしながら、俺はたった今やり終えた数学の課題をこの課題を出した担任の代わりに睨みつけ、ぶつくさと文句と自分にツッコミを入れながら明日の授業に必要な教材と共に鞄の中にしまっていく。
その最中にまた欠伸が出た。
「さて、と。明日の準備もすんだことだし、そろそろ寝るとするか。
……ってうわっ、もう1時過ぎてるじゃねえか! そりゃ眠いはずだな。」
振り返った先にある壁時計の針は共に1を指していて、いつも寝ている時間を3時間以上もオーバーしている事を示していた。
さっきから頻繁に欠伸をするのはそのせいなのだろう。
「……明日起きれっかな。」
そうぼやきながらベッドの上に置いてあるスマホを手に取ってアラームの音量をいつも設定している8から最大の16に変更してベッドの枕元に置く。
中学3年の俺にとって、1月の後半である今の時期は受験シーズン追い込みの時期。
万が一にも寝坊して遅刻でもしたら麻婆神父……もとい担任によって大変な目に遭ってしまうのだ。
『ーー』
「……ん?」
そんなこんなで寝る準備も万端になり、布団をはぐったタイミングでふと聞こえた音に、その場で動きを止めてドアの方に目を向ける。
ドアをノックする音が聞こえてきたからだ。
「……気のせい、か?」
家族4人暮らしのうちは、両親が共働きで今日は2人とも仕事の関係でまだ帰っていない。
そして今年で小5になる4歳年下の妹は遅くても10時には寝てしまう為にこんな遅くまで起きてるはずもない。
「……やっぱり気のせいだったか。」
布団をはぐる雑音があって、よく聞こえなかった為に気のせいって事にして布団の中に入った俺は、枕元に置いてあるリモコンで明かりを消した。
『おにいちゃん……。』
「うおぉ!」
灯りが消えたと同時にか細い声がドアの方から聞こえてきておもわず飛び上がる。
ビックリして煩い心臓を無視しながら俺はリモコンで明かりを点けると、大股でドアに近付き取っ手に手をかけると勢いよく横にスライドさせた。
「! 早希!?」
ドアのすぐ先にはピンクのパジャマを着た、妹の
「お兄ちゃん!」
ドアが開いた瞬間、早希は腰まである長くて綺麗な黒髪を揺らして抱えているクマのぬいぐるみごとポフリと俺の胸に抱き着いてくる。
「早希?」
いつもならとっくに寝ている筈の妹の、いつもと違う様子に疑問を感じながら、いつも通り抱き着いてきた早希の頭を撫でていると、
「うぅ、ひどいよ。わたしを無視して寝ようとするなんて……。」
若干涙声で怒っていながらもどこか安心した色を含んだその声が、俺の顔より20cm以上下から聞こえてきた。
「えっと、悪い。まさか早希がまだ起きているなんて思ってなかったし、ノックの音も気のせいだと思ってな。
……それでどうしたんだ? こんな夜遅くに。」
素直に謝って、早希がこんな夜遅くに俺の部屋に来た理由を尋ねると、早希の小さくて華奢な肩がピクリとはねる。
そして半分隠れて見えない早希の顔が見る見る赤くなっていった。
「早希?」
そんな妹の様子に再び疑問を感じながら再度声をかけると、早希はゆっくりと俺から1歩後ろに下がって顔を上げる。
その顔はリンゴみたいに真っ赤で、しばらく見つめていると早希は恥ずかしそうな表情でぎゅーっとクマのぬいぐるみを抱きしめて俯く。
「えっと、えっとね、その……お兄ちゃんに、お願いがあって来たの。」
「お願い?」
赤い顔で俯いて何故かもじもじしながら、俺の言葉にコクリと頷く妹の姿を見て俺の頭の上では疑問符が浮んだ。
とりあえず、早希が話しやすいようにしゃがんで目線の高さを合わせる。
俯いて見えなかった早希の顔が見えるようになり、赤の少し入った茶色の大きな瞳が、おずおずと不安げに動いているのが分かった。
「お願いって何?」
「! えっと、私と、今日、いっしょに――、」
「ん?」
上目遣いになりながらお願いの内容を言ったようだったが、尻すぼみに小さくなった声は肝心のお願いの内容を言う頃には聞き取れる大きさではなかった。
「ごめん、聞き取れなかった。もう一度言ってくれないか?」
「うぅ///」
だからもう一度言って欲しいと頼むと、早希は顔をまた赤くさせて、そして抱えているぬいぐるみの後頭部に顔を埋めてしばらくした後、
「えっとね、今日、一緒に寝て欲しいの。」
顔をうずめたまま早希は、か細い声でお願いの内容を口にした。
「……。」
「……。」
俺達の間に沈黙が流れる。
聞こえて来るのは壁にかけてある時計の針の音だけ。
そして数秒した後、先に沈黙を破ったのは、
「ごめーん、聞き取れなかったなぁ。だからもう一度言ってくれない?」
にやけながら言った俺のその言葉だった。
「聞こえてたよね! 今のは絶対聞こえてたよね!!」
そんな俺の表情を声だけで察知した早希がぬいぐるみから顔を上げる。
「聞こえてないよ〜?
早希が『一緒に寝て欲しい』って言った事なんてぜぇんぜぇん聞こえてないよ〜。」
「ちゃんと聞こえてるんじゃん!
うぅ〜///」
再びぬいぐるみの後頭部に顔をうずめる早希。
でもぬいぐるみの後頭部では赤くなったその顔を完全に隠す事は出来ず、傍から見えるその頬はさっきより赤くなっていた。
「悪い悪い。まさか小5にもなって一緒に寝ようって言って来るなんてな……くっくっくっ。」
「わ、笑わないでよ!」
「えー、笑ってねぇよ〜。“可笑しいって気持ちから顔の表情をくずしてそれを声にしてる”だけだよ。」
「それ笑ってるってことだよね!」
「まったく、早希はまだまだ甘えん坊さんだな。」
「あ、甘えん坊じゃないもん///
ただちょっと今日は怖い夢を見ちゃったから眠れなくなっただけだもん!」
「そっかそっか。怖い夢見て1人じゃ眠れなくなったから俺の所に来たのか~。
ふふっ。早希はまだまだ子供で甘えん坊さんだな。」
「むぅ~~///」
妹から頼られる。それは兄として誇らしい物だが、それで嬉しくなってついついからかい過ぎた為か、早希は頬を膨らませ抱えているクマのぬいぐるみで俺にボフボフして来た。
ぬいぐるみで叩かれても全くダメージないのに赤い顔で必死になって叩いてくる妹の可愛らしい姿につい頬をほころばせながら、流石にからかい過ぎたなと自重して「悪かった、ごめんごめん。」と降参する。
「もう、しない?」
いつでも再び攻撃できるようにぬいぐるみを構えて、むすぅ、と頬を膨らませている早希。
そんな妹の姿に、微笑ましい物を感じながら「もうしないよ」と答えると、少し間の開いた後「じゃあ、一緒に寝てくれたら許す//」と赤い顔で恥ずかしそうにそんな条件を言う早希が可愛いらしくて、再びからかいそうになってしまったのを我慢するのが大変だった。
この話の続きはありません。これで終わりです。
最後まで読んで頂きありがとうございました♪