会談が始まってまさか三十分以内に襲撃である。
この話が纏まってからのタイミング、待ってたのだろうか。
「先輩、何か来ます」
「レヴィアタンの魔法陣、まさか旧魔王か!」
驚愕の声が教室に響いた。
それは魔法陣から現れる人物を誰か特定した魔王によるものだった。
「ごきげんよう、現魔王サーゼ――」
「イィィィヤッホォォォ!」
その時、爆発が魔法陣から出てきた彼女を襲う。
それは配管工みたいな声を上げながら爆弾を投げつけた、ウチのメフィストのせいである。
「なっ!?」
「ギャハハハハハ!アハハハッハハッ、ゴホゴホッ!噎せましたアハハハ、うぇ……」
「開幕ブッパですか。口上かガードの二択でしたね、なかなかやるね」
爆笑するメフィスト、ゲームの解説みたいな事を言うアレキサンダー。
言わせたげてよぉ、と思わずにはいられない。
なお、開幕ブッパとは開幕で必殺技を放つことである。
「アレが現代の魔術師ですか、嘆かわしい」
「実のところ眠くなってきたのである。でもご主人のために全力出すぞ……これが手加減である!」
さぁ、外に行こうとタマモが窓ガラスを割る。
割った所でマシュが先行して俺が飛び降りてキャッチして貰った。
なお、パラケルススはアーシア先輩を抱えて飛んでいた。
おい、アーシア先輩の顔が凄い真っ赤だぞ、お前フラグ立ててないだろうな?
「ハハハ、容赦がねぇぜ。本当に敵に回したくねぇ」
壊れた校舎の中から、そんな声が聞こえた。
まぁ、俺も英霊とか相手したくないと思うよ。
「いいねぇ、好き勝手暴れていいなんざ」
「むっ……フフフ、分かったぞ!体制側よ、汝らこそ圧制者なり!」
「ますたぁ、スパルタクスさんが校舎をよじ登ってますよ?」
知らない知らない、清姫の言葉なんて聞こえない。
あーあーあー、もうスパルタクスさん使いにくいよ。
どうしてすぐ反逆するの、趣味なの!
「おい、なんかこっち来てるが!」
「敵と味方の区別つかないから!頼んだ!」
「頼むんじゃねーよ!どういうことだよ、クソ!俺も切り札を使わないといけないってのか!」
アザゼル頑張れ、超頑張れ。
スパルタクスが校舎を登ってるけど、頑張って逃げてくれ。
「勉強不足ですね。いえ、そもそも魔術のシステムが違うのか。魔術回路を用いていないのにどうやってオドとマナを利用しているのか」
「はぁぁぁぁぁ!あっ、パラケルスス師匠考察は後にして下さい」
「アーシア、できる限り生け捕りにしなさい。後で研究に使います」
校庭に降りて好き勝手してるみんなを見ていた。
何やら、近くで魔術師相手にすごいこと言ってるパラケルススが居たけど目的のためなら仕方ない。
魔術師だからそういう思考回路も仕方ない、優しそうでパラケルススも腐っても魔術師なんだな。
そんな近くでアーシア先輩が手慣れた様子で魔術師を昏倒させている。
攻撃も自分の神器で回復して、そのままニコニコ笑顔で腹パンである。
あの戦闘スタイルを確立させたスパルタクスってば、マジやべぇわ。
「一度やってみたかったんですよね。映画で見て」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!?」
遠くでは馬に乗ったアレキサンダーが人を引きずっていた。
数人がロープに巻かれて、校庭を引きずられている。
魔術が馬に当るが馬はなんのその、十数人も牽引してるが速度は衰えない。
まぁ、そうだよな。ブケファラスも英霊だもんな、馬だけど。
もしくは宝具扱い、神秘の強さ的に攻撃が効くわけがなかった。
「マシュ、この戦い我々の勝利だ!」
「先輩、それはフラグではないでしょうか?」
マシュの言うとおり、戦場に変化が起きた。
どうやら俺が貴族の真似したせいでフラグが立ったらしい。
新手の奴らが魔法陣によって現れた。
しかも、原作となんか違っている。
「素晴らしい、これが真の英雄か」
そう魔法陣から出て宣ったのは中華服を着た男だった。
俺はそれを見て、原作が変ったことに驚く。
もしかして、アレは英雄派って奴らなのではないだろうか。
「曹操、俺はあの男をやる。アイツがクーフーリンの生まれ変わりだか本人だろうが関係ない。ヘラクレスとして、あの男は越えるべき壁だ」
「じゃあ、私はあそこの聖女をやりましょう。どちらが聖女として上か見せて貰います」
「あの悪魔だ。あの悪魔が先祖と契約したメフィストフェレスだというなら、捕まえて研究したい」
「では彼女を、円卓の騎士の生まれ変わりだ。相手にとって不足はない」
随分と離れているのに、俺の耳は奴らの会話を捉えていた。
魔術で集音して、何を話しているのやらと思ったら随分と物騒である。
ここに、確か白龍皇も裏切る予定のはずだ、面倒だな。
「ヴァーリー!お前、何故だ!」
「イッセー!どうして、どうしてなの!」
英雄派の登場と共に、そんな声が校舎からした。
見れば、赤と白の鎧を纏った奴らが空を飛んでいる。
もう一回、目を擦って見る。
赤い奴が追加で飛んでいる、なんでさ。
「悪いがリアス、俺はもううんざりだ。見ろ、この姿を!奴への憎しみだけで禁手に至った!これが、俺の気持ちを代弁している」
「悪いなアザゼル、赤龍帝といつでも戦え、真の英雄とも戦えると誘われたら、俺は誘いに乗るしかなかった」
えぇぇぇぇ!
なんで、赤龍帝が裏切ってるの?そして、憎しみで禁手ってどういうこと?
俺が固まっていると、マシュが前に出て警戒し始めた。
理由は自ずと分かった。
奴が、転生者君が此方を見て殺気を飛ばしたからなんだろう、俺は殺気とか感じないけど。
「お前さえ居なければ!アーシアは俺に惚れていた、リアスやゼノヴィアだって!どうしてアスカロンの時に、朱乃は俺に聞かなかった!俺に惚れるイベントが何故発生しない!それは、全てお前が悪いんだ」
……何言ってんだコイツ?
アーシア先輩は、まぁ助けてないから惚れないな。
でもグレモリー先輩とゼノヴィアって人は、あれ?ライザー倒したからグレモリー先輩は惚れないのか?
でもって、コカビエル倒したの俺ってことになるのか?そういえば、あの人悪魔になってないしミカエルの後ろに居たって事は教会陣営だもんな。
アスカロンの時って、えっと……確か堕天使は嫌いか聞く奴だっけか?
それに関しては俺のせいではない。
「分かったぞ、お前馬鹿だな!プークスクス、笑えないんですけど!えっ、あれですか?彼女が出来なくてテロ組織に入りましたリア充撲滅しますって感じですか?」
「ぶっ殺す!」
いきり立つ転生者君、残念だよ。
でも、それはお前が一途に頑張らなかったからだろ。
原作知識に任せていれば良いと思っただけで努力しなかったんだろ。
それを俺のせいにされては困るよ。
「ケッ、テメェがヘラクレスだって?本物はもっと化物染みてたぜ」
「聖剣だからなんですか?使い手がそんなことでは、信仰は示せませんよ?」
いつの間にか始まってろうとしている戦いがそこにはあった。
最速のクラス、ランサーとステゴロ聖女アーシア先輩に英雄派の一部が挑んでいた。
でも、ジャンヌとヘラクレス弱そう。本物に謝って下さいマジで!
「先輩、すみません」
「問題ない、いざとなったら令呪を使う」
俺は上空にいる赤龍帝を見ながら礼装を取り出した。
恐らくマシュは、なんか剣をブンブン振り回してる男に掛かりきりになる。
俺を守ることは少なくとも出来ない、俺は足手まといだからだ。
他のサーヴァントはどうかな?兄貴はヘラクレス(自称)だ。
アレキサンダーは上空に居る奴らを引っ捕らえては引きずっている。
メフィストは霧に包まれてどこかに消えた。
パラケルススは相変わらず魔術師を捕まえている。
キャットは……どこに行った?
清姫は口から炎出してる。それで、スパルタクスは……なんか戦っている。
「何故だ、一緒に英雄となろうではないか!悪魔が憎いのだろう、俺達に従え!」
「従えだと?フフフ、ハハハ!我々はみな平等、私はそれを理解できぬものを嫌悪する!英雄を自称し、人を率いて人の上に立ったつもりか笑わせる!英雄であろうと、虐げる者、即ち汝は圧制者である。圧制者よ、我が愛を受け入れるが良い!貴様から与えられる愛を、我は貴様に返そう!おぉ、圧制者よ!愛すべき圧制者よ!我は反逆する!」
「な、何だコイツ……まったく会話が成り立たないぞ」
あぁ、うんそっか。
英雄コレクターの曹操くん、スパルタクスは止めといた方が良いぞ手遅れだけどな。
やっぱり、俺だけで赤龍帝を相手しないといけないのか。
「いいぜ、やろうぜ。元々、お前を殺すのが俺の仕事だ」
「うおぉぉぉぉ!」