新しい石が来た、希望の石が現れた。
さて、チキチキサーヴァント召喚の時間である。
「ご主人、猫缶を召喚するのだぞ!もしくは金払いがいい奴がいいワン!」
「おう、ダメそうなら山でイノシシでも狩ってくるぞ?」
「マスター、株で稼ぎましょう。大丈夫です、錬金術師ですから」
「それ、絶対ダメな奴ですよ。僕、新しいゲーム欲しい!ゲーム召喚しよう!」
「テルマエ、テルマエを所望する」
キャットの野郎が後ろから抱き着き、なお背中は幸せ。
豚肉を片手に、山を見ながら兄貴が提案し、なおそれは特売品。
善意で言ってるけど絶対溶かしそうなユニクロを着たパラケルスス。
それと、子供かっていう感じのアレキサンダー。
あと、風呂ガイジのスパルタクスに俺は揺さぶられていた。
「あれ、メフィストは」
「イヒヒヒ、わたくしお手伝いを」
「おい、ちょっと!なんで石を、あぁぁぁぁ!」
思い切り、目の前で聖晶石を叩き割る悪魔がそこにはいた。
勝手に石を使うとかリアルファイト必須案件だぞ、ぬわっー!
光は、三つだった。
つまり、サーヴァントである、ヤッター!
「先輩、家族が増えますね」
「も、もう一回言ってもらえる?」
「うん?」
小首を傾げるマシュ、かわいい。
そんな風にほっこりしていたら、俺の周りにいたサーヴァント達が離れていた。
おう、どうした急に?
「マスター、後ろ後ろ」
「えっ、後……ろ……」
「サーヴァント清姫……こう見えてバーサーカーですのよ。どうかよろしくお願いしますね、マスター様」
「えっ?」
「えっ?」
「なにそれこわい」
あ、あんまりだぁぁぁぁぁ!
空前絶後の超絶怒涛のバーサーカーマスター、バーサーカーに愛され、バーサーカーに命を狙われる者。
猫、ドM、ヤンデレ、すべてのバーサーカーに愛された俺はフランシスコ!ザービーエール!
「……八ッ、意識が飛んでたわ」
「フフフ、マスター愛しいお方」
「近い近い怖い怖い」
「嘘って、わたくし大嫌いですの」
「や、やだなぁ!きよひーマジきよひー最高だわ」
「正直な方って素敵ですわ」
なんだこれ、なんだこれ!
なんでバーサーカーばっか出てくるの!
しかも清姫、きよひーなんで!
それとなく会話が成立するけどみんな綱渡りだよ!
ドラクエみたいに選択肢があってないような物だよぉ!
「あの、清姫さん。マシュ・キリエライトです。よろしくです」
「シャアアアア!」
「えっ?」
「おっと失礼、本能的に盗られまいと……嫌だわ、慎みに欠けてましたわ」
助けて、誰か助けて!
兄貴、目が合ったよね、合ったよね!
胴体に太ももを絡み付かせてくるこのエロテロリストどうにかして、下半身がヤバいから!
「坊主、女難の相が見えるぜ。ドルイド的に」
「なんのフォローでもないよ!あと、お前が言うなよ!」
「食事にセックス、眠りに戦。何事についても存分に愉しみ抜く。それが人生の秘訣だよ」
「子供がそういうこというじゃねぇーよぉ!」
「ご主人が望むなら、ただし正妻の座は譲らないワン」
「お前まで来るなぁ!やわら……や、やめろー!俺の傍に近寄るなぁ!」
か、家族が増えました。
一悶着あった頃、清姫の歓迎会とのことでマシュが頑張った。
ちなみに、ローストビーフと生姜焼きとチキン南蛮とステーキである。
すげぇ、みんなの要望の結果は肉ばっかりやでぇ。
「アレキサンダーさん、サラダは如何ですか」
「ん、野菜はいいや」
「キャットさん、サラダは」
「オニオンは天敵、慈悲はない」
「クーフーリンさんは――」
「無理だ、もう腹いっぱい。だが、断ることは……」
サーヴァントなのにお腹いっぱいになるんですね。
あとパラケルススは善意だと思うけど勧めるのはやめなさい、彼ってば断われない系の人だから。
そういえば、メフィストの姿がなかった。
なんでだろう、雲隠れしているのか?
「メフィストさんなら面白そうな予感がするって出かけました」
「よくない予感がする」
「マスター、あーん。はい、あーん。お口を開けて、ほらあーん」
「こっちか、こっちの予感か!」
やめてください、お腹いっぱいです。
甲斐甲斐しく、清姫にお世話されるのであった。
俺、雛鳥の気持ちを味わったぜ。
そろそろ家が手狭になったな、グレモリー先輩に頼んではぐれ悪魔狩りでもして稼がしてもらおうか。
そんなことを考えながら、眠った深夜の事だった。
ゴソゴソ、ゴソゴソ、そんな音に俺は目が覚める。
うん?なんだか下半身があったかいような……はうっ!?
「ますたぁ……あぁん!」
「うぉぉぉ!犯す気か!エロ同人みたいに、エロ同人みたいに!」
布団を捲ると、脱ぎかけた着物を着た汗びっしょりの清姫がいた。
股の間に、股の間にである。
「わたくし、ランサーでしたら慎みがあったのですが、バーサーカーですので」
「なんの説明にもなってないよ!」
「理性というか竜というか、捕食者の本能的に仕方ない。えぇ、これは仕方ないのです」
「だから水着の時は純情乙女なのか……ダメ、引っ張らないで!」
「我慢しなくてもいいのですよ、うふふ。こんなに滾らせて、どうか私にも触れてくださいまし。嘘を吐かず、触れたいところへ。それがわたくしの望みです」
「これ以上はダメだから、あっ……」
小鳥の鳴き声に、俺は朝かと呟いた。
俺の横では、ますたぁなんて寝言を言う清姫がいる。
あと、頬擦りはやめてください角が刺さって痛いです。
はぁ……。
「朝チュン、朝チュンなの――」
「先輩、おは……」
「あっ」
マシュが無言でドアを閉めた、そして今度はノックしてくる。
お、おかしいな?なんでまた入ろうとしてるのだろうか。
「先輩、おはよ……おかしいなぁ夢じゃなかった……」
「マシュ、説明をさせてほしい。俺は天井を見ていただけで、俺からは動いてない」
「先輩、最低です……」
そっと、ドアを閉めて降りていくマシュ。
バン、とか勢いよくではなくそっ閉じである。
なんだか、意味深ですごく罪悪感ががががが。
取りあえず、清姫起こすか。
「起きろ、起きてくださいマジで」
「ますたぁ、朝からですか?うふふ、でも良いんですよ」
「おおっと、まさかのキラーパス!俺、先に下に行ってるから」
「あぁ、これが賢者タイムって奴ですね。冷たいですわ、でもそれもいい」
もうダメだコイツ、なすことなすことが全部良い方向に解釈される。
俺は、考えるのをやめた。
「まぁ、なんだ。よく、柔肌は別格だって聞いてたし、仕方ないよな」
「イヒヒ、昨日はお愉しみでしたねぇ」
「まぁ、何事も経験ですね」
「マスター、これ……やっぱり大事な物ですから」
サッと、パラケルススが何かを渡してくる。
見れば、避妊具だった。
もう、お前の善意が一番つらいよ!
みんなのフォローが最悪だよ!
「酒池肉林、英雄色を好む、だが浮気だけはダメだぞご主人!」
「婦女を蹂躙する、まさしく圧制者であるぞ!何?同意の元なら圧制者ではないのか……そうか、そうかぁ……」
「そうですよ、わたくしとマスターは両想い、キャッ!」
無言でご飯を食べるマシュを見ながら俺は俯く。
この空気、なんていうか死にたい。
殺せ、いっそ殺してくれ!
「マシュ聞いてほしい」
「……」
「俺は何にもしてないんだ!本当だよ、清姫だって夜這いは掛けるくせに恥ずかしがってたし!なぁ!」
「い、嫌ですわ。そそそんなことは、確かに殿方のあああ……きゅ~」
「し、死んでる!いや、気絶してるニャン!あっ、あまりの動揺に間違えたワン」
ほ、本番はしてないよ。
マシュ、なんでこっち見てくれないの、ねぇってば!
「先輩」
「はい」
「最低です」
「……はい」