剣が君の為に在るのは間違っているだろうか   作:REDOX

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 お久しぶりです、初めましての方は初めまして。前々から書くかも書くかもと言っていたロキ・ファミリアIF√です。本編の方が行き詰っているので、息抜きに書いていました。


プロローグ
すべての始まり


 それは偶然だったのだろう。偶々頼まれた仕事、偶々故障した荷台、偶々訪れた村。そこに誰かの意図が介在していたわけもなければ、自分で進んでその状況に陥ったわけでもない。

 だが、言葉にするのは恥ずかしく、そんな言葉で形容するのは夢想家(ロマンチスト)のようで私にはほとほと似合わないが、私は結局その言葉に行き着くだろう。

 

――それは、きっと運命だった

 

 日が昇ったばかり、身体を引き締めるような朝の寒さの中私は君と出会った。朝靄が辺りを包み込み、まるで世界に二人だけのように感じながら、私は君と剣を重ねた。それは、私にとって――そして願わくば君にとっても――今までにない衝撃だった。

 

――金色の君

 

 澄み切った空気を纏い、放つ剣閃は正に風。思わず見惚れた、思わず手を伸ばしてしまった。今まで感じたことのない感情、今まで感じたことのない衝動。何かが私を衝き動かした。剣を振るう、いつもと変わらないその行為は、君と向かい合っているだけで何か特別なもののように思えた。

 世界が彩られていく。鈍色だった世界が、金色に。金色に染まった世界が、鮮明に。

 

――君は、私が求めていた人だ

 

 恋は盲目なんて、誰が言ったのだろうか。違う、全く違う。だって、自分の視界はこんなにもひらかれた。自分の世界はこんなにも広がった。何時までも君と斬り合っていたいと思った。たった数日、たった数時間、それが私に許された時間だったにも関わらず。

 その時間が永遠になれば良いと思った。一生、剣を重ね、視線を合わせ、高めあっていく、そんな未来を願ってしまった。

 

 美しかった、その生き様が。強さを求めるそれは、まるで獣。

 美しかった、その剣閃が。強さを求めるそれは、まるで鉄。

 美しかった、その金の瞳が。強さを求めるそれは、まるで黄金。

 獣のように敵を求め、鉄のように冷徹に剣を振るい、それでいて人々が夢見る黄金のように輝く――そんな君に心が打たれた。

 

 剣を重ねる毎に、感情が溢れそうになった。笑みは我慢できなかっただろう、でも君も笑っていた。楽しそうに、本当に僅かだけど口角を上げていた。それを見て私は更に嬉しくなった。ここにいる、目の前にいる。

 自分の剣を受け止めてくれる誰かが、自分の剣を理解してくれる誰かが、自分の剣を認めてくれる誰かが――目の前にいる。

 それを愛おしいと思わず、どうしろと言うのか。

 

 「強くなりたい」と言った君に、私は「ああ」と答えた。それが、きっと私が吐いた最初の嘘だった。だって、もうその時点で私が強くなることよりしたいことができてしまっていた。結果的に強くはなるだろう、しかしそれは今までとは決定的に何かが違う。

 一つの出会い、一度の剣戟、一重の感情、一人の少女――たったそれだけで、私の剣は変わってしまった。それが良いことだったのか、それとも悪いことだったのか、きっと神すら知らないだろう。

 

 

――ああ、きっと私は君に恋をした

 

 

 




閲覧ありがとうございます。
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 さて、投稿してしまいました。こちらは本編より一話を短めに書いていますが、何分定期的に書いているものではないので更新速度には期待しないでください(元々遅いですが)。一応注意としては、原作前からの開始となるので原作の続きによっては設定等の齟齬が起こるかもしれません。

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