博麗霊夢物語   作:はるちぃ

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入学式

霊夢はやっと6歳になりました。今日は寺子屋の入学式です。

 

ここでこの世界の寺子屋の設定を。

寺子屋には全部で3学年ありますが通うのは6年間なので、入学式は2年に1回。

対象は、入学時に6歳以上の子ども ( 同程度の妖怪でもOK )。

授業は月~金。金曜日の最後の授業はどの学年も共通で体育です。

教師は慧音だけなので、学年ごとに授業時間が違います。

1年生:8:30~10:10《 授業時間30分×3、休み時間5分×2 》

2年生:10:20~12:30《 40分×3、5分×2 》

3年生:13:00~15:50《 50分×3、10分×2 》

こんな感じです。

 

◆◆◆

 

「おかあさん、はやくはやく!!」

「ちょっと待ってて霊夢!...あーもう、普段巫女服しか着ないから、着物を着るのに時間がかかるな。」

今日は寺子屋の入学式。主役の霊夢はもう既に四つ身という子供の庶民服を着ている。

ようやく着替えが終わった。

「さあ霊夢、行こうか。」

「うん!!」

博麗神社から人里まではかなりの距離がある。

それに、通学路の途中には妖怪達がうじゃうじゃいて危険だ。

だから、霊夢は寺子屋へ、空を飛んで通うことになった。

2人は、期待と不安を胸に飛び立った。

 

霊夢には、3歳くらいから霊力を使う練習をさせてきた。

もちろん修行などというものではなく、遊びの一環でだが。

なぜかと言うと、霊夢はただ育ってきた場所が博麗神社で、かなりの霊力を内に秘めているというだけの、他はごく普通の子供だからだ。

博麗の巫女は代々、寺子屋に入学して少したったくらいの時期の子供から候補が挙げられ、その中で修行をしたいと言った子供だけを選ぶ、という方法で決めてきた。

だから私は、霊夢にも、彼女本人が修行をしたいと言うまで修行をさせるつもりはない。

でもそれでも、霊夢はかなりの霊力を持っているから、それはちゃんと使えるようにいままで遊びと称して練習させてきたのだ。

...練習させてきて思ったが、やはり霊夢はただ者ではない。

私は霊夢と、霊力で弾をつくって的に投げるゲームをしてきた。

彼女の命中率は半端なく、いつも的の真ん中を綺麗にくり抜いてくれる。

あとは、お互いに霊力の弾を投げあって当たった方が負けというゲームも、最近は決着がつくのにかなりの時間がかかるようになった。

そして、空を飛ぶということも、すぐに覚えた。

今では、私と並んで飛べるほどスピードも出せるようになっている。

一応言っておくが、霊夢はまだ6歳になったばかりである。

 

しばらく経って、人里が見えてきた。

「おかあさん、どこが寺子屋?」

「寺子屋はあそこだけど、霊夢、寺子屋に行く前にまず人里の入口へ行こうか。」

「なんで?」

「霊夢、あのね、私たちは空を飛べるけど、人里の人たちは飛べないの。私たちが空から降りてきたら、人里の人たちはびっくりしちゃうでしょ。」

「なるほど〜。」

「だから、私たちは普通に歩いて人里に入った方がいいの。霊夢は明日から1人で学校に行くことになるけど、1人でもちゃんと入口から歩いて入るんだよ。分かった?」

「はーい!!」

 

霊夢は、今日が初めての人里。

博麗の巫女には拾ってきた子供がいる、ということは人里にはもう知れ渡っているから大丈夫だとは思うが、それでもどんな目で見られてしまうかが不安だ。

それに、寺子屋でいじめられないかどうかも不安だ。

ギィィと人里の扉を開け、手続きをし、霊夢の紹介をして人里に入った。

門番はただ、「かわいいお子さんですね。」と言っただけだった。

周りに建ち並ぶ民家や店に目を向けて、楽しそうにしているわが子。

初めて人里に来て、はしゃいでいるわが子。

人里の子にしたら、すごく変な子なんだろうな。

上手くやっていけるといいけど。

 

「霊夢、ここが寺子屋だよ。中に入ろうか。」

「うん!!」

教室に入ると、そこには5人ほどの生徒がもう座っていた。

机の数からすると、このクラスは14人だろう。

入学式が始まる前、私は先生に挨拶をした。

「お久しぶりです先生。この度は、娘がお世話になります。」

「やあ、久しぶりだな霊奈。学校1喧嘩好きな問題児が博麗の巫女だなんてなぁ。」

「あははっ、先生それは霊夢に言わないでくださいよ〜。」

「ああ、分かってるよ。そうそう、3年くらい前の大異変の時は本当に助かったよ。ありがとうね。」

「いえ、時間がかかってしまい申し訳ないです。」

「早期解決だったよ。さすがは我が生徒だな。」

そう、私にも寺子屋へ通っていた時期があったのだ。

別に何でもない感じにしているが、本当は先生や教室やその匂いがすごく懐かしくてたまらない。

 

全員が揃ったところで入学式が始まった。

ひとりひとり名前が呼ばれて、返事をしていく。

ひときわ目立ったのが、金髪ロングのちいさな女の子だ。

「霧雨魔理沙」「はい!!」

元気な返事だなぁ。ちょっとハスキーな声がこれまた可愛い。

他の子は特にこれといった特徴がなかったので、申し訳ないけど覚えていない。

あ、次だ。

「博麗霊夢」「..はい。」

さっきまでものすごくはしゃいでいたのに、流石に緊張したのか少し小さめの声だ。

霊夢はこんなに人に囲まれたことがなかったからなぁ。

多くて私、紫、藍、橙だけか。

橙以外に、同年代の子と遊んだこともない。

そんな霊夢にとっては、声を出せたことがそれだけですごいことだろう。

私がひとりで感心していると、さっきからチラチラ感じてはいたが、さっと隣に来て、耳元にスキマを開けたやつがいた。

「霊夢、かなり緊張してるわね。」

紫が呟いた。

「でも返事ができてよかった。」

「ええ。そうね。」

私は、じっと座っている霊夢を見つめた。

私の心も霊夢の心も、不安でいっぱいだった。

 

入学式が終わり、10分ほど、子どもは子ども、親は親で話す機会があった。

やはり「巫女さんですか?」と聞かれた。

「いつもありがとうございます。」「お子さんの霊夢ちゃん、あなたが拾ったんでしょ?」

「そんな庶民服、巫女さんでも持っているんですね。」

とか、それぞれが思い思いの事を言ってきた。

「巫女なんて妖怪殺しか人殺しのどっちかよ。」なんて声も聞こえてきた。

一応笑顔でいたが、やはり何か特別な好奇心を持つ目で見られるのはつらいな。

やっと私から話題が逸れた時に、子どもたちの方を見た。

喋っている子はあまりいなかった。

霊夢も1人で荷物の整理をしていた。

まあまだ友達なんてな、なんて思っていた。

でもその時、あの金髪ロングの魔理沙ちゃんが、霊夢に近づいていった。

「なあ、おまえ博麗のみこの子どもだろ?」

「....うん。」

おまえ、私の子に何を言おうとしてるんだよ...!

思わず、つっかかりそうになった。

「私は.....魔理沙っていうんだ。よろしくな!」

魔理沙は、にかっと笑った。

「...!私は霊夢。よろしくね、魔理沙!」

霊夢もびっくりはしていたが、満面の笑みで答えた。

ああ、霊夢と友達になってくれるのか。

本当に良かったと心から思った。

心配性だな、私って。

魔理沙ちゃん、本当にありがとう。

 

その帰り道。

飛んでる途中、いつのまにか紫と藍と橙が横にいた。

「霊夢、入学式バッチリ見てたよ!」

「ちゃんと返事が出来てすごいな。」

橙と藍が霊夢のことをいろいろ褒めてくれた。

「人が沢山いてびっくりした〜。」

と、霊夢。

「そういえば、魔理沙、だったかしら。あの子が友達になってくれてよかったわね。」

「うん!」

紫も藍も橙も、ずっと霊夢のことを心配して、入学式を見守ってくれてたらしい。

紫は、表には出さないが、霊夢に友達ができたことをすごく喜んでいる。

「みんなと仲良くするんだよ。」

と、私が言うと

「うん!!」

霊夢は大きな声で返事をした。

 

この日は神社で5人で夕ご飯を食べた。

とても賑やかな食卓で、霊夢も楽しそうだった。

3人が帰ったあと、霊夢はお絵かきをしていた。

夜、霊夢が寝た後に、私はこっそりその絵を見た。

そこには、私たち5人の絵が。

そして、まだ習っていない不完全な平仮名で、『かぞく』と書いてあった。

私だけでなく、紫たち3人も霊夢にとっての家族なのだろう。

そうだね。私たちは家族だね。

私たちなら、きっとこれから何があっても乗り越えられるね。

私は、とても幸せな気持ちで眠りについた。

 




お久しぶりではありませんね。はるちぃです。
霊夢がだんだん大きくなってきております。
これからどんなことが起きるんでしょう。
楽しみにしててください。

あと、本当に申し訳ないんですが、もしこのシリーズの読者さんで、小さい頃の霊夢の絵を描いてくれるっていう人がいたら、ぜひメッセージ送ってください!
私は絵がかけないんです泣
(ノ*´_`)ノ助けて~

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