PERSONA4 THE LOVELIVE 〜番長と歌の女神達〜   作:ぺるクマ!

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閲覧ありがとうございます。ぺるクマ!です。

今年のFGO福袋はアサシンクラスで引いて、山の翁が出ました!後はダンメモのデートアライブコラボ復刻で折紙が……。

改めて、お気に入り登録して下さった方・誤字脱字報告をして下さった方・感想を書いて下さった方々、本当にありがとうございます!

今回から落水さんの話が始まりますが、落水さんの過去の話はこの作品に合わせて完全に自分のオリジナルです。それでも楽しんで貰えたら幸いです。

それでは今年初めの本編をどうぞ!


#89「MAZE OF LIFE 1/3」

────冷たい人

 

 

 誰かが自分をそう言った。知っている、そんなことは自分でも知っていた。

 

 小さい頃からそうだった。誰もがそんな自分を避けていた。

 

 この性格は両親の影響もあるのだろう。父母共に厳しい人格で、褒められたことなど数を数えるほどしかなかった。記憶にあるのは弓道の大会で優勝したくらいだった気がする。

 

 だが、自分はこれで良いと思った。自分と関わったことで誰の得になるわけじゃない。自分は自分、例え冷たい人物だと蔑まされてもそれでいい。

 そう思って周りに壁を作っていた。故に誰も自分に話しかけてこないし、近寄っても来ない。それで付けられたあだ名は【氷の女王】。実に的を得ていると思った。

 

 だが、その壁をいとも簡単に壊してきた者がいた。

 

 

「なあ落水! 俺に弓道を教えてくれ!」

 

 

 それは高校時代、同じ弓道部でクラスメイトの男子からだった。確か、彼は自分ほどではないにしろ弓の腕は良く、何より誰にでも優しくお節介を焼く物好きやつだと自分は認識していた。それによく異性を誤解させる言動をして、ブラコンの妹に叱られているとも。

 

 しかし、前触れなくそんなことを頼んできたその彼に自分は辟易した。そんな前触れもなく急に弓道を教えろなど、無神経としか思えない。当然のことながら、自分はその申し出を一蹴した。

 

 それから彼はしつこく自分に弓道を教えてくれと頼んできた。来る日も来る日も凝りもせず、鬱陶しかった。

 正直他にも弓に秀でている部員はいるのに、何故自分なのか。もし孤独でいる自分への同情であるならば、はた迷惑だ。放っておいてほしい。

 

 その旨を一度彼にぶつけたところ、彼はきょとんとし、逆にこう切り返した。

 

 

「俺は落水に教わりたいと思ったから頼んでるんだ」

 

「えっ?」

 

「落水って矢を射るときの集中力とか凄いだろ? 俺はあんまり集中力ないから、どうやったらそんな風に射れるのかってことを知りたいんだよ。これじゃあ、ダメか?」

 

 

 初めてだった。ありきたりな答えだったのに、何故かこの男は自分のことをよく見ているのかと不意に感じてしまったのだ。

 そんな彼の偽りのない熱意に負けてしまったのか、観念して自分の持つ技術を教えてしまった。人に教えるのは初めてだったので拙いレクチャーになってしまったが、彼は真剣に自分の話を聞いてくれた。

 

 それから彼は部活だけでなく、学校生活でも自分に絡んでくるようになった。やれ勉強を教えてくれだの、やれ弁当のおかずを交換しようだの、一緒に商店街で買い食いしようだのと昔からの友達であるかのように接してきたので正直戸惑った。

 今まで"氷の女王"と称されて孤独に過ごしてきた自分にとって、友達という存在を持ったのは初めてだったということもあったのだろう。

 

 だが、そんな日常を自分は不思議に楽しいと思った。彼と過ごす一分一秒がどれも初めての体験で、自分には縁のないと思っていた"青春"という密かに憧れていたものを実感できたから。

 時々極度のブラコンの彼の妹とイザコザになったり、その妹とらしくもない舌戦をして泣かしてしまったことなどあったが、そんな彼らとの日常がとても楽しかった。

 

 

 もしかしたら、この時が人生で一番楽しかった時間だったかもしれない……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 つまらない過去を振り返ってしまった。落水は一旦足を止めて大きなため息を吐く。

 あの時間を振り返ってつい感傷に浸ってしまうということは、決意が弱いという証拠だ。

 

 自分は決めたのだ。例え自分を犠牲にしてでも絆フェスを成功させる。だから自分は……

 

 

 

 

「落水さんっ!!」

 

 

 

 

 背後から聞き覚えのある声が鋭く聞こえてきた。まさかと思って振り返えると、そこには元の世界に戻ったはずの少年少女たちが息を荒げてこっちに向かって走った。

 

「あなたたちっ!? ここで何を……!」

 

「落水さん、貴女を助けに来ました」

 

「なっ……!」

 

 少年少女らの中心にいる少年、鳴上悠の言葉に愕然とする落水。それを他所に近くにいた少年……花村陽介らが紡ぐように言葉を続けた。

 

「悪いけど、やっぱり俺らだけで逃げるとか、出来そうにねえって事になってさ」

 

「例え最小限の犠牲でも、誰かの踏み台にして自分たちが助かるなんて御免です」

 

「それに、皆で決めたもん。必ず全員助けて元の世界に帰るって。落水さんだけここに残るのは、絶対だめだよ!」

 

 真剣で真っすぐな表情で答える彼らの言動に、落水は睨みつけるように顔を歪めた。まるで用意周到にお膳立てしたものをぶち壊されたように。

 

 

「馬鹿な子たち……あなた達も、有羽子も……あの人も……」

 

 

「テメェ……やっぱ何か知ってんだな? 何隠してやがんだ!」

 

「ちょっ、完二さん! そんな言い方……」

 

 完二の恐喝染みた詰問に花陽がそう注意する。だが、落水はそれに応えることなく鋭い視線で宙空を睨みつけている。まさか、あの声がそばにいるのかと思った悠は半ば臨戦態勢を取った。

 

「出てきなさいっ! 取引は成立したはずでしょう! 彼らを元の世界に戻しなさいっ!」

 

 すると、案の定というべきかすぐに辺りの空気が重くなり、あの声の気配が出現した。

 

「ああ……残念だけど、それは出来ないの。言ったはずだよ? この世界に出入りできるのは本人がそう願っている子たちだけなんだもの……」

 

()()()()()()()()()……?」

 

 謎の声の発言に違和感を感じたのか、直斗が再び顎に手を当てて思考する。だが、それとは反対に落水は悔し気に宙空を睨み続けている。そして、

 

「……追っても無駄よ。取返しが着くうちに早く戻りなさい」

 

 声の主との交渉を諦めたのか、落水は鋭い視線で悠たちを……否、悠を見据えてそう言うと、答えを待つことなく踵を返した。

 

「お、おち」

 

 

ー!!ー

 

 

 悠は必死に落水を呼び止めようとするがその前に黒い靄が掛かって行く手を阻んだ。まるで落水を護衛するかように。

 

「ちょっ! 一体どこから……」

 

「ちっ、なるほどな。このシャドウたち……落水さんの自由を奪うためじゃなくて護衛の為に付き従ってたってことか」

 

「あーもー! どうしても邪魔する気!?」

 

 またもシャドウたちに行く手を阻まれて悪態をつく千枝たちに、再びあの声が語りかけてきた。

 

「まだ分からないの? あなたたちが足掻いても無駄なのよ。あなたたちに与えられた選択肢は二つ……私の絆を受け入れるか、この場所を去るか……」

 

「ふざけないで! そんなのどっちもダメに決まってるじゃない!」

 

「そうです! 私たちは誰も見捨てません! そんなの……出来るはずがありません!!」

 

「フフフ……可哀想な子たち……そんなことしたって意味ないのに…………じゃあ、私が決めてあげる。私たちと繋がりましょう」

 

 海未たちの決意を否定するように謎の声の合図と共に、シャドウたちの音楽とダンスが悠たちを襲う。何度の味わったこの重たい感覚だが、決して気持ちの良いものではない。

 

「クソっ! どうしたら、落水さんに伝わるんだっ!」

 

「お、お兄ちゃん落ち着いて!」

 

 そんな最中、悠は落水を引き留められなかったことに悔しさを感じているのか、らしくもない地団駄を踏む。普段見ない従兄の姿に驚きつつも宥めようとすることりだったが、悠の心のモヤモヤは晴れることはない。

 一体どうしたら落水に自分たちの言うことが通じるのか。一体、あの人に何があったのか。今の悠にはそれが分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────才能のない子……

 

 

 初めて彼女を見た時、そう思った。

 

 あの高校生活から大学を経て、タクラプロに入社した自分は新人アイドル【長田有羽子】のマネージャーになった。

 

 正直言うと、初めて彼女と出会ったときはあまり期待していなかった。

 有羽子は特別何かに秀でているという訳でもなく、アイドルとしての才能も全然ない。はっきり言って何もない、どこにでもいそうな青臭い素人だった。

 だが、彼女にはハッキリとした夢があった。それは何だと尋ねた時、彼女が真っすぐな瞳で言った言葉を今でも覚えている。

 

 

「私は自分の歌で全ての人たちに自分の気持ちを伝えて、元気や勇気を与えたい! だって、私もそうだったから!」

 

 

 呆れたものだとこの時の自分は嘆息した。全ての人間を歌で元気づけるなんてそんなこと出来るはずがない。馬鹿馬鹿しいと大半の人間は思うだろう。

 

 だが、その時の自分は呆れると同時に、彼女のその夢に共感してしまった。当時駆け出しで青かったのもあってか、彼女の嘘偽りのない純粋さとその情熱に見惚れてしまったのだろう。あるいは、彼女の姿が高校時代の彼と重なって見えたのかもしれない。

 どちらにしろ、自分はこの時に有羽子の夢を叶える為に奔走すると決めた。

 

 

 それから彼女は必死に頑張った。どれだけプロデューサーに馬鹿にされても多くの人に駄作だと蔑まれても彼女は諦めることをしなかった。

 自分も負けじと色んな会社に彼女の曲を売り込んだり、数少ない事務所コネで仕事を貰ったりと少しでも有羽子の知名度が上がるようにと色々と手を尽くした。どれだけ酷評され嫌みを言われようとも、どれだけ悔しい思いをしても、有羽子を信じて突き進んで行けば必ず報われると信じた。

 

 そして、その血がにじむような努力が実を結び、ついに有羽子は業界に認められるほどに成長した。CDが飛ぶほど売れたり、握手会に最後尾が確認できない程の行列が出来たりしたときは自分も思わず涙が出るほど嬉しかった。

 

 

「やった! やったよ、鏡ちゃん!」

 

「ええっ! よくやったわね、有羽子!」

 

 

 ついに、彼女はタクラプロでトップアイドルであると世間に認められた。それを聞いた時は思わず有羽子と抱きしめ合ったくらい嬉しくて涙がボロボロと出てしまった。

 

 頑張ってよかった。でも、彼女はもっと輝ける。もっと多くの人に彼女の歌を聞いてもらって元気になってほしい。そんな希望を持って、自分は更に彼女に尽くそうと誓った。

 

 

 

 

 だが、それは間違っていたことを後になって気づいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ……ハァ……も、もう……疲れた~~! ちょっと休憩を」

 

「そ、そうですね……少し休憩を取りましょうか……」

 

 何とかシャドウたちを一掃できた一行だったが、ずっと走ってたり踊ってたりを続けていたので、体力が限界に近づいてしまった。このままではいけないと現在小休憩を取っているが、皆の表情は芳しくない。

 

「お兄ちゃん、少しは落ち着いた?」

 

「……ああ、もう大丈夫だ。心配かけて悪かったな」

 

「ううん、気にしないで」

 

 どうやら先ほどまで荒れていた悠もことりの必死の励ましもあって落ち着きを取り戻したようだ。その姿を見て、他のメンバーも安堵する。

 

「それにしても、あの声の人は一体どういうつもりなのかしら?」

 

「そうだよね。さっきは襲ってきたり、今は襲ってこなかったりって何がしたいのか分かんないわ」

 

 それにしても何度も思ったことだが、あの謎の声は全くもって厄介な相手だ。ここまで来ても姿を見せないどころか、まともに話す気配すらない。

 

「ええ。ですが、先ほどあの声の言った事から重要なことが分かりました」

 

「重要なこと?」

 

 "重要なこと"と言われてもピンとこないのか、ハテナマークを浮かべる穂乃果たち。だが、我らがリーダーの悠は察しがついていた。

 

「この世界の出入り口についてだな。あの声はこの世界に出入りできるのは()()()()()()()()()だと言っていた」

 

「ええ、実は不思議に思ってたんです。僕らは最初にここへ来たとき、あの声は半ば強制的に僕らをこの世界から追い出しました。なのに、僕らがすももさんたちを救いに来た時、あの声は僕らを追い出そうとはしなかった」

 

「あっ……そう言えば」

 

「せっかく誘拐した英玲奈さんやともえさんたちが救出されたり、更にはシャドウ化した一般人も解放したりって相手には不都合なことが起こっているのに……その原因である私たちを追いださないって……どういうことかと思ったけど」

 

 直斗の疑問は悠のみならず、雪子や絵里など薄々勘の良い者は気付いていたようだ。あの声が嘘を言っているのではないかとも思ったが、あの調子だとそうであるとは考えにくい。

 

「となると、この()()()()()()()()()()()()()()()()も分かってきたな」

 

「マヨナカステージに落ちる条件? それって、絆フェスのサイトで例の動画を見た人のことじゃ?」

 

「もちろん、それが第一の条件ではあります。僕が聞いた話では、同時に動画を見ても意識を失った被害者と、そうではない人がいる……その差が何か、今までは特定出来なかったんです」

 

「なるほど、確かにそりゃ妙だな」

 

 陽介の言う通り、これは奇妙な話だ。

 りせや穂乃果たち、たまみやツバサたちはあの声がステージをやらせるために呼んだゲストだとしても、同じ条件で動画を見た人達の中で、落ちる者と落ちない者と別れるのは引っかかる。

 だが、それについて直斗は確信を持っていた。

 

「これで、分かりました。被害者は()()()()()()()()()()()()()()()()()()だったんです」

 

「ちょ、ちょっと、直斗くん! 何言ってんの!」

 

「自分からって、そんな人いる訳ないじゃない!」

 

 直斗の回答に千枝とにこはあり得ないと一蹴する。それは他のメンバーも同じように思っていたのだが、察した様子の希が分かりやすく説明するように口を開いた。

 

「……つまり、こういうことやろ? この世界に落ちる条件は"マヨナカステージに落ちたい"って願いじゃなくて、あの声の言う"誰も傷つかない絆"に同調して、それを欲しがってしまうっていうこと?」

 

「ヤローの言うニセモンの絆を欲しがっちまった奴らが、この世界に落ちるっつーことっすか?」

 

 希と完二が辿りついた答えを告げた瞬間、穂乃果たちの空気が一変した。

 

「そ、そんな……」

 

「実際そうでしょうね。僕らは皆さんと出会って本当の絆というものを理解していますが、多くの人がそうであるとは限りません」

 

「……確かに、ちょっと気持ち分かるかも。私たちだってそうだったでしょう? 私だって、皆と会えてなければ、本当の自分なんて誰にも見せられなかったもの」

 

「「「………………」」」

 

 雪子の言う通りだ。現実的な話になるが世の中自分たちのように出会いに恵まれている訳ではない。誰だって人には言えない秘密を抱えているし、見せたくない本当の自分だっている。それを公に堂々と曝け出せる人間なんてあまりいない。

 だからこそ、絆フェスのサイトを見て自分のこのような絆が欲しいと無意識に願った故に、ここに落とされてシャドウになってしまったということなのだろう。

 

「私も……悠さんと会ってなかったら今こうやって皆と一緒にいられなかったと思う」

 

「確かにな……本当の自分なんて格好悪いことこの上ないしな」

 

「いや、アンタは元からカッコ悪いじゃん」

 

「うん。陽介さんは偶にカッコイイけど、普段はガッカリだし」

 

「ガッカリ言うな!」

 

 シリアスな雰囲気から一変、いつも通りのコミカルな風景が展開された傍らで悠は情報を整理した。

 つまり、このマヨナカステージに入れるのはあの絆フェスの動画を見て、偽物の絆に同調した者だけ。それを踏まえると、例え誰かを助ける為だとしても、あの声がこの世界に残りたいと望んだ悠たちを追いだすことはないということだ。

 

 

「とにかく、休憩はここまでだ。一気に落水さんに追いつくぞ」

 

「そうだね。何が起こるかもしれないし、急ごうか」

 

 

 悠とりせのトップツーの言葉に一同は腰を上げて先へと走って行った。この先は何があるか分からない。本腰で行かなければ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日は突然訪れた。

 

 

 彼女はあの日……自分と新曲のことで口論になったあの後、()()()()

 

 

「…………」

 

 

 現場を見た時、頭が真っ白になって全身の力が抜けていったのを覚えている。そして、今まで自分がやってきたもの全てが泡のように消えてしまったようにも思えた。

 

 

 そして、有羽子の事件を知った世間は一斉にマネージャーの自分を叩いた。"アイドルを殺した最低のマネージャー"だと。そして、自分はその責任を取ってタクラプロを退社した。

 

 

 

 退社した後、あの日の光景が夢に出てくるようになった。その度に自分はひたすら自問自答した。

 

 

 

――――自分はどこで間違ったのだろうか。

 

――――あの子のためにやってきたはずなのに…

 

――――何で間違ってしまったのだろうか。

 

 

 

 来る日も来る日も考えた。そして、ある結論に至った。至ってしまった。

 

 

 

 

そうだ、自分には不相応だったのだ。

 

 

 

 

 分かり切っていた。答えは単純だった。

 

 結局自分はあの人のようにはなれなかった。関わった人間を幸せにするあの人のように。

 

 誰かのために行動することなど、誰かのために寄り添うことなど、根っから冷たい自分には不相応だと気づくべきだったのだ。あの人の真似事など出来っこなかった。

 

 そう、最初から無理だったのだ。あの子の望みを叶えることなど……自分には出来るはずなかった。

 

 自分が人の望みなど叶えるなどおこがましい。逆に自分は人を不幸にする。

 

 

 そう、自分はあの頃と変わらない。自分はどこまでも……

 

 

 

 

 

 

 

 

冷たい人だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ?」

 

「どうやら着いてしまったようですね。新しいステージに」

 

 しばらく進んで行くと、新たな景色が目に入った。踏み入ったその場所は今まで入ってきたステージの中でも異色な光景だった。まるで能や狂言の舞台のようなステージの左右にはからくり人形のような置物が鎮座している。頭上には見惚れてしまうほど咲き誇っている桜が幻想的な雰囲気を醸し出していた。

 

「な、何ねココ! ジダイゲキっちゅーやつで見たオトノサマのお家みたいクマよ~! もしかして、土足厳禁?」

 

「んな訳あるか。てか、クマ吉最初から靴はいてないじゃん!」

 

 あまりに幻想的な光景に思わず目を奪われるが、今までの出来事から察するにここもたまみたちの時と同じく"皆の望む本人"が反映されているようだ。ということは、

 

「あっ、あそこに落水さんがっ!」

 

「落水さんっ!」

 

「落水コラァっ!」

 

 花陽が指さす方を見ると、そこには天井を見上げて立ち尽くしている落水の姿が確認できた。近寄ろうとする悠たちに気づいたのか、落水はゆらりとこちらを振り返る。

 その瞬間、落水は開口一番に思わぬ一言を発した。

 

 

 

「私はね、死神なの」

 

「えっ?」

 

 

 

To be continuded Next Scene.


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