PERSONA4 THE LOVELIVE 〜番長と歌の女神達〜   作:ぺるクマ!

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閲覧ありがとうございます。ぺるクマ!です。

先日部屋の掃除をしてたら押し入れから昔使ってたゲームキューブ+ゼルダの伝説風のタクトが見つかりました!嬉しくて試しにTVに接続したらまだ使えたので現在時間を見つけてはプレイ中。面白過ぎてレポートが手につかなくならないか心配になってきました……ゲームはやっぱり一日一時間ですね(笑)

改めてお気に入り登録して下さった方・評価を付けて下さった方・感想を書いてくれた方々、本当にありがとうございます!皆さんの応援が自分の励みになっています。色々あって更新が早かったり遅かったりしていますが、これからも応援よろしくお願いします。

それでは、本編をどうぞ!


#76「Invitation of the festival.」

────ヒルガオは咲かない……こんなにも願っているのに

 

 

 

 何か聞こえてくる。まただ。またあの声が……何時ぞやの苦悩に苛まれて思い悩む声が聞こえてくる。

 

 

 

 

────伝えたいのに伝えられない……

 

 

 

────何故伝わらないのだろう…………

 

 

 

────ああ……それはあまりに…………からだろう…………

 

 

 

 

 

 

 

 

────だから、私は……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

 

 

 いつもより目覚めが悪い朝だと思った。昨日のマヨナカステージや雛乃の説教のせいか、はたまた不可思議な夢を見たせいか頭が重い。それに、何か下半身の方に柔らかい感触があって気持ちいいような……

 

「…………あれ?」

 

zzz……zzz……ダメだよぉ……お兄ちゃん……兄妹でそんなこと……

 

 気になって布団の中を見ると、どっと冷や汗が出た。なんとそこには自分の身体を抱き枕にして、気持ちよさそうに寝ていることりがいた。何とも我が従妹ながら可愛らしい寝顔で想像したくもない寝言を言っているがそんなところではない。

 

「…………はっ!? 殺気が」

 

 自室の扉を見てみると、もはやお約束というべきかジト目で睨みつけるりせと希、気まずそうに目を逸らす直斗、そして昨日と同様に怖い笑みを浮かべている雛乃の姿が……このパターンはやっぱり。

 

「悠くん、分かってるわよね?」

 

「はい……」

 

 それでは行ってみよう。レッツ朝のお説教タイム。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<タクラプロ エントランスホール>

 

「ふぁあ」

 

「あんまり……眠れなかった……」

 

 あのマヨナカステージから帰還して翌日、悠たちはタクラプロ事務所のエントランスで待機していた。事件のことを受けていち早く現場に行こうと夜行バスでこっちに向かっている陽介たちを迎えるためである。

 今回の事件がまた異世界絡みだと発覚した故か、昨夜はそのことで頭一杯で眠れず、睡眠不足気味の者がほとんどだ。特に眠そうだったのは昨晩鳴上家……もとい南家に泊まった者たちである。無事現実に戻ったは良いが、居間で待ち構えていた雛乃に説教を食らったらしい。どうやら許可なしに夜中に外出していたと思われたらしく、普段温厚な雛乃から考えられないほどの剣幕だったらしい。そして、身内の悠とことりは誰よりもこっぴどく怒られた。

 

「「……………………(カクンコクン)」」

 

「だ、大丈夫ですか? ……ゆ、悠さんとことりだけ凄く眠そうですけど」

 

 そして、朝の説教のこともあって、この2人だけ目の下に隈が出来ており、うっつらと身体を振り子のように揺らしている。端から見たら心配になってしまうほどにやばい。

 

「大丈夫だ……お、俺たちにはコーヒーがある」

 

「そ、そうだよね……コーヒーさえあれば……眠気なんて」

 

「いや、それ超絶ブラックなところで働いてる人みたいになってるから……」

 

 流石にこれでは支障をきたすので受付の人に断って2人はベンチで少し寝かせることにした。中々見られない悠の寝顔をこっそり写真に撮っている者が数名出てきたが、そんなことは放っておいてりせは本題にはいることにした。

 

「さっき井上さんに会ってさりげなく聞いてみたんだけど、やっぱりたまみたちとまだ連絡が取れてないって。それに加えて今日リハーサルする予定だったA-RISEとも連絡が取れなくなったみたいで、井上さん……疲れたよ」

 

「やっぱりね。ということは、昨日あの世界でりせちゃんと希がサーチしたのはともえさんたち本人ってことね」

 

「うん。昨日は焦ってよく分からなかったけど、やっぱりアレは本当にともえたちだった気がする。だから、さっきも言ったけどこのことはかなみには」

 

「ええ、分かってるわ」

 

 昨夜のことで、この事件はあまりにも異質でペルソナ能力を持つ自分たちにしか対処できないと判断したため、心苦しいが昨晩協力を申し出てくれたかなみには内緒にしておくことにした。

 

 

 

「おーい! 悠っ!!」

「鳴上くーん!」

「せんぱ──い!」

 

 

 

 少し時間が経ってから遠くからそんな声が聞こえてきた。見てみると、東京にやってきた陽介たちがこちらに手を振りながら向かって来るのが見える。どうやら陽介たちが到着したようだ。

 

「うひょー! センセイ発見―! クマ、都会におりたーつ!」

 

「冬ごもり失敗した熊みてーな言い方してんじゃねーよ……」

 

「つか、事務所ん中涼しい! 生き返るわぁ!」

 

「そうだよね。こんなに紫外線浴びたらお肌が焼けちゃう」

 

「確かにな。でも、里中はお肌とかそんなことを気にしなくても……って、いて!」

 

「次言ったら……分かってるよね?」

 

 季節外れの残暑が厳しい中だったかのか、若干げんなりした様子で大袈裟に襟元をパタパタさせる陽介たち。何と言うか、いつもの特捜隊らしいこの光景を見て相変わらずだなと思ってしまった。昨日の事件については連絡がいっているはずなのにと、絵里は怪訝な顔をしているが、事態を軽く見ているわけでもないだろう。

 

「すまないな、急に来てもらって」

 

「はは、別にいいって。そういや、お前……あの子とはどこまで行ったんだよ?」

 

「はっ?」

 

「夏にクマ公が勘違いした時にかなみんキッチンのライブで出会ったあの子だよ! ほら、Pastel*Palletの氷川日菜ちゃん! お前、結構追いかけられてんだろ? でも駄目だぜ。お前には希ちゃんという幼馴染が」

 

「………………」

 

 前言撤回。本当に事態を軽くみているのではなかろうか。頼みの綱の陽介がこの調子だと困るのだが。同じことを思ったのか、穂乃果たちもそんな陽介を半眼で見つめていた。

 

「ハァ……陽介くんは懲りないわねぇ」

 

「いるよねえーこういう人。てか、CM撮影の時は花村センパイもいたでしょ」

 

「や、あん時は緊張してたし、ほとんどの人が悠に釘付けだったからそんな余裕なかったというか……」

 

 そう言われて先日の絆フェスのCM撮影のことを思い出す。確かに全員とはいかないものの、その撮影スタジオにいた人のほんとどが悠に興味深々だった。例の日菜は別として、”一緒にキラキラドキドキしよう”とか“一緒に世界を笑顔にしよう”などとわざわざ勧誘する子もいた。

 他にも以前クマがなりすましと難癖をつけていた“ミッシェル”という着ぐるみに完二が絡んで揉めていたくらいだろう。

 

「ああ、ついに来たぜ。この時が……寂れた田舎じゃなくて華の大都会! しかも相手は芸能人! 春だ……俺に甘い春が来る!」

 

 ドドン! と某冒険漫画の効果音が聞こえそうな勢いでそう意気込む陽介だったが、そんなことを宣う陽介に女子たちは逆に引いていた。クマのみならず、何故この男はこんなことを躊躇なく言えるのだろうか。

 

「寂れた田舎で悪うございましたね」

 

「花村くん、稲羽のこと……そんな風に思ってたんだ」

 

「最低……」

 

「てか、失礼じゃない? 私だって、結構有名なアイドルなんだけどなー。悠センパイしか興味ないけど」

 

「りせちゃん、あなたもさらっと全国のファンを泣かせること言ってるわよ……」

 

「花村先輩、行きのバスの時もこんな感じだったっすよ……あのかなみんチキンだかのメンバーだけじゃなくて、パスパラやらロザリアやらアロハピやらのメンバーの名前をフルで暗記して……ここに着くまでの間、ず~っと誰が好みやら嫁にしたいのはなんやらって聞かされ続けたっすからねえ」

 

 完二がうんざりしたようにそういうと、女子の陽介に対する視線が冷たくなった。

 

「うわあ……陽介さん、それはないよ」

 

「アイドルファンとしてはその姿勢は共有できますけど……」

 

「これはにこでも流石に引くわ。陽介だからかしら?」

 

「完二くん、可哀そう……」

 

「ぐおっ! 到着直後からアウェー感ハンパねぇ!!」

 

 まさに四面楚歌。否、十二面楚歌。援護のしようがない。悠は心の中で相棒に謝りながら黙っている事しかできなかった。暑さを吹き飛ばす冷ややかな視線と共に言葉の一斉射撃が襲い掛かった。

 

 

「最低!」

「最低です」

「最低だね」

「陽介さん、最低」

「サイッテー!」

「最低……」

「最低だにゃ」

「さい! てい!」

「最低」

「最低やな」

「最低」

「最低」

「ヨースケ、最低っ!」

 

 

「ぐがあっ!! 女子から最低の十三連撃……てか、クマ! お前まで加わってんじゃねえよ!」

 

「終わったな……アンタの春」

 

「オメーが余計なことを言うからだろうが!! ううう…………良いことなんて、一個もない人生……」

 

 女性陣の一斉射撃で精神がK.Oされた陽介は嵐が過ぎ去った後の枯れ木のようにしおれてしまった。あの調子だとしばらくは再起不能だろう。自業自得とはいえ少しばかり同情してしまった。すると、雪子が何か思い出したように悠に言った。

 

「そう言えば、鳴上くんに言伝があって、堂島さんと菜々子ちゃん、遅れるって。堂島さん、仕事が忙しいらしくて」

 

「ああ、今朝叔母さんが言ってたよ。後で迎えに行くって」

 

 今考えれば、堂島たちの到着が遅れるのはむしろ好都合だったかもしれない。かなみんキッチンとA-RISEの失踪が異世界が絡んでいる事件であると判明した今、堂島と雛乃の鋭い詮索を受けずに仲間たちと情報を共有することが出来たのだから。あの2人には隠し事をしているようで申し訳ないが、今更だ。

 

「そうなんだ。雛乃さんが一緒なら安心だね。でも、それより鳴上くん、顔色悪いけど大丈夫? 絵里ちゃんたちもだけど、ちゃんと寝れた?」

 

「……お察しの通り」

 

 雪子の問いかけに思わず苦笑いしてしまった。心配させないように上手く隠していたつもりだったのだが、雪子には誤魔化せなかったようだ。流石は天城屋旅館次期女将というべきか。出来るならその調子で料理の腕も普通レベルまで向上してほしい。

 

「ええ、昨夜は色々ありましたからね」

 

「“マヨナカステージ”ってやつか……その世界でもペルソナが使えるんだっけ? まさか、夏休みにりせが何気に言ったことが現実になったなんてなあ」

 

「花村センパイ復活はや! てか、私が悪いみたいに言わないでくれる? 私だってこんなことになるなんて思ってもなかったんだから」

 

 思ったより早い復活を遂げた陽介の発言にりせは頬を膨らませて抗議した。

 

「話を聞く限りだと、かなみんキッチンの人達が捕まっちゃってるんだよね。それに、あのA-RISEの人達も」

 

「ごめんね……折角来てもらったのに、早々にヘビーな話になっちゃって……」

 

「何言ってるの。りせちゃんが謝ることじゃないよ。それに、今回はダンスでシャドウと戦うんでしょ? ダイジョーブ! 夏休みにりせちゃんと絵里ちゃんに鍛えられたし、アタシたちもあれから猛特訓したから大丈夫だよ! アチョー! ってね」

 

「クマも負けない! 見てみて! りせちゃんとエリちゃんとの特訓の成果!」

 

 クマはそう言うと、両手を合わせて顔の傾きを保ったまま、首をぐるぐると回してみせた。あれはダンスではアイソレーションという動きで思わず感嘆してしまうほどの完成度だったが、そんな動きを夏休みで絵里とりせから教えてもらった記憶はない。

 

「クマくん……それ、どこで覚えたのよ。まあ、バリエーションは多い方が良いけど……」

 

「わあ! クマくんすごいねえ! よーし、穂乃果も密かに練習したアレを」

 

「張り合わなくていいですから!」

 

「ま、まあ……正確には“倒す”んじゃなくて、差し詰めダンスで“囚われた心を解放する”といった感じでしょうか? ……正直分からないことだらけですけどね」

 

「へえ、ダンスで伝えるかあ。面白そうだね」

 

「あのね雪子ちゃん、そんなお気楽な話じゃないんだから」

 

 妙に張り合うクマと穂乃果、呑気なことを言って楽しそうにしている雪子たちに呆れる絵里。いつも通りのペースではあるが、全員が今回の事件解決に向けてすでに心構えが出来ているのを感じる。伊達に去年の連続怪奇殺人事件やP-1Grand Prixを経験していない訳ではない。

 

「何はともあれ、特捜隊&μ‘sの再結成だね! 何だかワクワクしてきたよ」

 

「はは、GWの時は絵里ちゃんと希ちゃんはメンバーじゃなかったけどよ、俺たちはそういう運命で出来るじゃねえか?」

 

「そうだね。また事件に関わることになったけど、私たちの力で助かる人がいるんだもの。私たちでやれるなら、やらないよりいいと思う」

 

「クマの華麗なダンスでいたいけなアイドルを救っちゃう! そして、2人はギョーカイ禁断の恋に……!」

 

「ねーよ。つかどこ行ってもブレねーな、お前……まてよ? クマが言ってること、今回はあながち間違いでもねえんじゃねーか? ひょっとすると、俺もそんな可能性が!?」

 

「アンタ、その発想やめねえ限りぜってーモテねえと思うんすけど」

 

「同意」

 

 何はともあれ、決戦は今日の午前零時だ。必ずそこでマヨナカステージの謎を解き明かし、囚われたかなみんキッチンとA-RISEのみんなを助け出して見せる。少しでもダンスでの武器を増やすために再結成した【特捜隊&μ‘s】たちはレッスンスタジオへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<レッスンスタジオ>

 

 レッスンスタジオにて、本番の衣装を着て練習に励んだ。

 今回悠たちのステージ衣装は井上が随分とこだわっていたのは“高校生らしさ”だった。作りでは出せない“高校生らしさ”はうけがいいとのことだったので、特捜隊組は八十神高校の制服、μ‘s組は音ノ木坂学院の制服を若干改造した風にオーダーメイドで作ってくれた。

 特に特捜隊組は衣装だけでなく髪型も去年と同じに戻すなど、悠が八十神高校に通っていた頃の姿に合わせてくれている。やはりこの方が特捜隊らしくてしっくりくると悠は仲間たちの心遣いに感謝していた。

 

「ふ~、きついぜ……ぶっ続けでもう足がパンパンだっつーの」

 

「そうっすねえ……もう頭がクラクラして……」

 

 到着以来、数時間ぶっ通しで続けられた練習についに陽介と完二が音を上げた。夜行バスで急いで来てもらったとはいえ、いきなりこの練習量は耐え切れなかったらしい。それでも早々にリタイアした直斗や雪子たちに比べたら、まだ体力はあると言ったところだろう。

 

「仕方ないさ。俺たちのステージがどうなるかは分からないけど、プロの舞台に立つんだ。マヨナカステージでの戦いのことも考えたら、武器は多いほどいい」

 

「ああ、分かってるさ。でも、お前や穂乃果ちゃんはともかく、ダンスで戦うってまだ俺たちは実感が沸かないって言うかさ……」

 

「それでも、やるしかないわ。今はこれしか対策がないんだから」

 

 そんな風に話していると、休憩に早々入っていてどこかに行っていたりせが何か意味深な笑みを浮かべながらこちらに歩いてきた。

 

「お疲れ様! みんなすっごい頑張ったね。だから、そんな花村センパイたちにご褒美上げちゃおっかな?」

 

「ご褒美って、何だよ? 何かくれるのか?」

 

「実はね、近くのスタジオでかなみの撮影があってるんだって。だから、みんなで行ってみよう」

 

「ま、マジで!?」

 

「みんなも行きたいって言ってるし、せっかくスタジオに来たんだから、これくらいはしないとね」

 

「「や、やった──ー!」」

 

 このことを受けて陽介のみならずクマと花陽、にこも大喜びだ。昨晩あの衝撃的なプライベートな一面を見たとはいえ、アイドルはアイドル。それ以外のみんなも人気アイドルの撮影現場を見学できることもあってか嬉しそうだった。

 何と言うか、りせは本当にこういうところは上手い。人を笑顔にするコツを知っているというべきだろうか。

 

「ただし! その代わりに騒がずに大人しくすること。一応本番の撮影だし、特に花村センパイとクマ、それに花陽ちゃんとにこセンパイ……いい?」

 

「はい! ジュネスの名に懸けて騒ぎません!」

 

「クマもヨースケの名にかけて騒ぎません!」

 

「私も陽介さんの名にかけて騒ぎません!」

 

「にこも陽介の名にかけて騒がないわ!」

 

「意味わかんねーよ! てか、俺にかけんな!」

 

 不安だ。陽介たちはまだ常識があるので心配ないが、クマがかなみを目にした途端暴走しそうで怖い。そんな一抹の不安が過りつつも悠は皆の後に続こうとレッスンスタジオを出た。すると、

 

「あっ! 悠センパイ、ちょっとま」

 

 

「鳴上さーん!」

 

 

「うぐっ!」

 

 ドアを開けた瞬間、何かが悠の身体に突進するかのように抱き着いてきた。その正体はなんと日菜だった。まさかと思うが、ずっとレッスンスタジオの前でスタンバっていたのではなかろうか。

 

「やっと捕まえた。ねえねえ、鳴上さん。連れて行きたい場所があるからちょっとついてきて」

 

「え? あの……俺はこれから……」

 

「いいからいいから」

 

 日菜は悠の都合を聞くことなく手を引っ張ってどこかへ連れて行こうとする。しかし、

 

「ちょっと! お兄ちゃんを勝手に連れてかないで!!」

 

「おお! あの子怖ーい! 逃げろー!」

 

 ブラコンのことりがそれを見逃すはずがなく、悠を引っ張る日菜とそれを追いかけることりによる追いかけっこがスタートしてしまった。あまりに突然でテンポの速い展開についていけなかったが、取り残された陽介たちが思ったことは一つ。

 

 

 

 

────―そっとしておこう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<タクラプロ フォトスタジオ>

 

 連れて行かれた悠とことりのことは放っておいて、件のスタジオに着くと、先にりせが入ってスタッフさんに軽く挨拶して、事情を説明してくれた。スタッフさんも快くOKしてくれて、かなみの撮影を見学することができた。中では既に撮影は始まっていた。

 

「おおっ! すげえ! 頭ちっさ! 足なっが!」

 

「うん。確かにすごいね……どれくらいサイズなのかな? 直斗くんや希ちゃんくらい?」

 

「そこでウチらを引き合いに出すのやめてくれへん?」

 

 遠巻きにフラッシュをたかれるかなみを見て興奮する一同。若干話題が女子特有の一部分に集中しているようで、特に海未は意気消沈している様子が窺える。

 

「うっひょー! ベリーキュート! お胸がドーンとしててお尻がプリーンとしてて、まさにヨースケのすとらいくぞーんだよね」

 

「ばっか! お前あんましはしゃぐなって! てか、ほんものなんだよな……こんな近くでかなみんを見られるなんて、マジでありがとうございます!」

 

「本当です~! あの真下かなみさんをこんなに間近で見れるなんて……もう一生の思い出です」

 

「しゃ、写真は……ダメかしら?」

 

「ダメに決まってんでしょ」

 

 かなみは仕事モードに入っているのか、こちらの小声を気にせず、アイドルスマイルで撮影に励んでいた。プライベートの姿が残念とはいえ、やはりそこはりせと並ぶ人気アイドル。どんなポーズを取っても様になっていて、女子たちでも思わず見惚れてしまうほどの魅力を醸し出していた。

 

「ふふ、みんな楽しそうで良かった。あとでちゃんと紹介するね。ところで、悠センパイとことりちゃんは?」

 

「まだ帰ってきてないわ。一応ことりにはこの場所のことを連絡してるけど……全く、帰ってきたら練習倍にしてやるんだから」

 

 小声でそんなやり取りをしていると、誰かがこちらに向かってくるのがみえた。少し騒ぎ過ぎたのか、スタッフさんの一人が注意しに来たのかと思ったがそれは違った。

 

 

「久慈川りせ、これはどういうこと? 物見遊山でぞろぞろと見物? 修学旅行気分を味わいたいなら他所でやってくれないかしら」

 

 

「げっ!? 落水さん……」

 

 なんと、まさかのここで天敵の落水と遭遇。昨日のこともあってか、りせのみならず穂乃果たちも気まずそうに視線を逸らした。

 

「誰っすか? この人」

 

 昨夜のことを知らない上に初対面の完二は落水を見てそんなことを言う。だが、陽介は落水を見た途端、驚いたように仰け反った。

 

「お、おい! この人、落水鏡花じゃねえか!? 絆フェスの総合プロデューサーってことは知ってたけど……“女帝”が何でこんなところに……」

 

「落水? 女帝? ああ、この人が花村先輩と花陽が言ってた悪徳プロデューサーって人か」

 

 

 

ー!!ー

 

 

 

 完二の裏表のない性格……悪く言えばデリカシーのない性格が災いして撮影現場に冷たい空気が流れ込む。これはまずいと落水の方を見てみると、当人は完二を一瞥して深い溜息をついていた。

 

「全く……トラブル続きだっていうのに勘弁してもらいたいものだわ。こんな失礼な子たちの対応までさせられるなんて。タクラプロにギャラを上乗せしてもらおうかしら?」

 

「んだと……この……あいたっ!」

 

「落ち着きなさい! 完二くん!! これ以上失礼を働くつもり!? すみません! 落水さん! 私たちの後輩が失礼を……ほら、完二くんも!」

 

「す、すみませんした」

 

「……別にいいわ。ところで、鳴上悠だったかしら……貴方たちの保護者はいないようだけど?」

 

「ほ、保護者!? って、あれ? 何かきこえねえか?」

 

 

 

 

ー!!ー

 

 

 

 

 それは突然だった。陽介の言う通り、何か幻聴のようなものが聞こえてくる。まるでマイクから聞こえる雑音のようなものではなく、何かの曲がノイズがかかったように聞こえてくる。この音を聞いて、りせたちは戦慄が走った。何故なら……

 

「これは……昨日マヨナカステージに落ちる前に聞いた曲! まさか」

 

「み、みなさん! あれを!?」

 

 見ると、かなみの頭上に向かって手を伸ばし、何か不思議なものを見るかのように呆然としていた。かなみの視線を追って目に映ったものに皆は仰天した。忘れもしない、それはこの不気味な歌と同じ、昨日南家のテレビで目にした不気味な光だった。

 

「ほわあ……これ何でしょう? もしかして、噂のプラズマさん?」

 

 本人は何も知らず呑気なことを言っているがそんなことではない。

 

「おかしい……今は午前零時じゃないのに何故」

 

「そんなこと言ってる場合じゃないよ! はやくしないとかなみが連れて行かれちゃう!?」

 

「か、かなみが? ちょっと、待ちなさい!!」

 

「すみません!」

 

 このままではいけないと身体が本能的に働いたのか、落水を押しのけてりせたちはかなみの元へ走り出した。落水も良からぬことが起こると直感したのか、後に続くようにりせたちを追いかける。

 刹那、天井の光から伸びたリボンからかなみを連れ去ろうと襲い掛かってきた。そうはさせるかとりせたちは何とかかなみを守ろうとする。しかし、そうしたのは先行したりせや穂乃果、速さが専売特許の陽介や凛でもなかった。

 

 

「全く……世話のやける……」

 

「落水さん!?」

 

 

 それはなんと落水プロデューサーだった。まさかの人物に皆は唖然としてしまう。咄嗟の判断というべきか、恐らく落水はかなみの身が危ないといういう事以外この先何が起こるのか分からないでいるはずだ。

 あの冷酷さからかけ離れた意外な一面に驚いていると、本人はかなみに叱りつけるような口調で告げた。

 

 

「かなみ! 私に何かあったら井上か武内を頼りなさい! 絶対に絆フェスを……くっ!」

 

 

 最後の言葉は間に合わず、落水は無理やりリボンに引きずられて怪しい光の中へ取り込まれてしまった。

 

「ひ、ひきずり込まれましたよ……」

 

「どどどどどうしよう! 落水さんが……」

 

 予想もしていなかった非常事態に穂乃果たちは混乱する。無関係な一般人、それも絆フェス総合プロデューサーの落水がマヨナカステージに連れていかれてしまったのだから当然だろう。だが、

 

 

 

 

「逃がすか!!」

 

「お兄ちゃん、行こう!」

 

 

 

 

 

 瞬間、どこから現れたか分からないが、我らがリーダー鳴上悠とその妹南ことりが迷うことなく光の中に突入していった。

 

「悠さん!? ことりちゃん!? いつの間に!」

 

「ゆ、悠! お前ら! 2人の後に続け!!」

 

 陽介の檄に目が覚めた他のメンバーもリーダーの後に続いて光の中へ突入した。前触れもなく、いきなり突入する形になってしまったが、背に腹は変えられない。何が起こるか分からないが、何振り構っていられない。光の向こう側に何が待っているのか分からぬ不安に駆られながらも、特捜隊&μ‘sの面々は光の中へ身を躍らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あへ? 今のは……あれ? りせ先輩や落水さんは?」

 

 

 その場に、何も知らないかなみだけを置き去りにして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<マヨナカステージ>

 

 目の前が薄明るくなって、悠たちの身体は不意にどこかに投げ出された。先行した悠とことりは何とかバランスを取って着地すると、改めて周囲を確認する。

 

「ことり、大丈夫か?」

 

「うん。こっちは大丈夫だよ。それより、ここって」

 

 昨日のりせと穂乃果たちのために作られたステージではなくまるでライブのイベントの会場の出入り口のような場所だった。“MAYONAKA STAGE”と大々的に描かれたロゴのオブジェと自分たちが今立っているところを中心に奇怪な模様が不気味に広がっている。そして、目の前にはA・B・C・D・Eと表示されている5つの出入り口が開けてあるのが見えた。

 

「昨日のステージと少し違うね」

 

「ああ、今回は俺たちが強制的に乗り込んだからな。なら場所も違って、うおっ!」

 

「お兄ちゃん!?」

 

 辺りの光景を観察していると、頭上から人が降ってきた。これは……

 

「……何とかつきましたね」

 

「いったー! 思いっきり尻もちついちゃった」

 

「あたたた……センパイら、無事っすか?」

 

「俺が無事じゃねえよ……」

 

 後から突入してきた陽介たちも無事にマヨナカステージへと侵入できたらしい。だが、全員無事かというとそれではなかった。陽介の上に完二とクマが落ちていて陽介が息苦しそうにしている。そして、極めつけは……

 

 

「「「きゃ、きゃああああああああっ!」」」

 

 

 着地地点を間違えたのか、倒れた悠の上には何故か真姫・花陽・凛が乗っていた。頭に真姫、腹部に花陽、下半身に凛といった状態だ。それも悠の顔は真姫のスカートに覆いかぶさっている。事態を確認した海未たちはすぐさま悠と密着している真妃たちを引き離した。

 

「ゆ、悠さん! 何やってるんですか!?」

 

「今、真姫ちゃんのパンツ見たでしょ!?」

 

「す、すまない……でも、あれは不可抗力で、まさか真姫の黒いぱ……」

 

「変態!! メルポメネー!!」

 

 真姫は怒りに任せてタロットカードを砕き、メルポメネーを召喚する。そしてすかさず得意の火炎攻撃が悠を襲おうとするが、昨日と同じくその火炎は消失マジックにかかったように消えてしまった。

 

「うおっ! マジか! 真姫ちゃんの炎がパッと消えたぞ」

 

「おお! すごーい! まるでセンセイの右手がマキちゃんの炎をイマジンにブレイカーしたみたいだね」

 

「クマくん、わざと言ってるでしょ…………聞いてた通り、ここでもペルソナ使えるんだ。でも」

 

「ええ、あの通りペルソナで攻撃しようとしてもすぐ消されてしまいます。誰も傷つかない、誰も傷つけ合わないというのは本当のようですね」

 

 少し間抜けな展開であったがこの世界のルールを改めて再確認できた。そんな中、悠と真姫は先ほどのパンツのことを気にしてるのか、嫁を怒らせた夫のようなやり取りをしていた。

 

「ま、真姫……ごめんな」

 

「……ふんっ!!」

 

 謝り続ける悠に真姫はツンケンした態度で振り向こうともしないが、内心は今日の下着が攻め過ぎていたことに気づいて慌てまくっていた。母親がせっかく大舞台に出るし、もしかしたら悠にラッキースケベをかましてくれるかもしれないからと強く薦められた。まさにその通りになったので、嬉しくもあるが母親の言う通りになったのが信じられないという気持ちがせめぎ合ってこんな感じになっているのである。

 

「……てか、ここがマヨナカステージってやつ? 何かステージっていうより会場の入り口って感じだけど」

 

「はい。昨日とは違った場所ですね。前に来たときは、あの声が久慈川さんと穂乃果さんたちを捕まえる気でいましたからね。用意されたステージに招かれるのと無理やり入るのとでは、扱いが違うと言ったところでしょうか」

 

「んん~? やっぱりここはクマたちの世界と似てるけど少し違うクマ~。遠~くから知ってる匂いもするけど、全然繋がってないクマね」

 

 クマが辺りをクンクンとさせていたか思えばそんなことを言っていた。しかし、これは聞き捨てならない情報だ。

 

「えっ? じゃあクマさん、このマヨナカステージは稲羽の世界と私たちが行ってるテレビの世界とは繋がってないってこと?」

 

「そうクマねぇ。センセイとホノちゃんたちが行ってるテレビの世界にも学園祭の時にコッソリお邪魔したけど、あっちもあっちで繋がってなかったクマね。ご近所さんかもしれないけど、行ったり来たり出来るような感じじゃないクマ」

 

 つまり、クマの言うことが確かならば、この世界は音ノ木坂学院のテレビの世界と似ているところはあれど、完全に独立した世界だということだ。音ノ木坂の世界はマーガレットが出入り口を用意してくれたお陰で行き来できているが、この世界はそうはいかないだろう。であれば、この世界から脱出する方法は……

 

 

 

 

「フフフ……」

 

 

 

 

 それは、まるで待ち伏せていたかのように突然やってきた。上下左右、どこともない位置から響いてくる不気味な声。悠たちは身構えたまま辺りを見渡す。りせと希はペルソナでリサーチするがそれらしき存在や影は見当たらなかった。

 

「な、なにこれ……どこからか声が聞こえて……お化け!?」

 

「落ち着け、里中。この声はマヨナカステージの主の声だ。やはり現れたか」

 

 幽霊などのオカルト系が苦手な千枝は初めての謎の声の出現に慄いている。

 

 

「部外者はお断りって言ったはずなのに……やっぱり私たちと繋がりたくなっちゃったの? そんなに他のお友達も連れてきて」

 

「ふざけないで! そんなワケないでしょ!! 今すぐたまみやA-RISEのみんなを解放しなさい!」

 

「解放? それは違うよ。だって、ここにいる彼女たちはみんな幸せなんだから」

 

「し、幸せ? こいつ、マジで言ってんのか!?」

 

「イカれてるぜ……こんな世界に閉じ込められて幸せなわけねえだろ!!」

 

「威勢がいいわね。でも、そんなことはないわ。あなた達は何も知らないだけ。さあ、私たちと繋がりましょう?」

 

「聞く耳は持たないということね。仕方ないわ、こうなったら実力行使よ。昨日は後れを取ったけど、同じ手は効かないと思いなさい」

 

「フフフ……好きにすればいいよ。そのうち貴方たちも分かるから」

 

 

 すると、辺りを支配していた粘るような圧迫感が消えて少しだけだが、空気が正常化したような気がした。おそらくあの声の主が遠ざかったせいだろう。

 

「空気が変わったね。どこかに行っちゃったのかな?」

 

「そうみたいですね。少なくとも、昨日みたいに追い出されなかっただけでもマシでしょう」

 

「それにしても、全然楽しそうじゃなさそうな感じクマね! 難しいことは言えないけど、ムジュンしてるクマ~!」

 

「ああ、クマの言う通りだ。誰も傷つかないなんて胡散臭いし、そんなものが本当にある訳ねえっての」

 

 陽介たちはこの世界について各々そんなことを言っている。やはりこの世界について自分たちと同様に思う所があるようだ。

 だが、何故か引っかかる。悠たちの存在が邪魔なら昨夜のように強制的に追いだせばいいはずなのだが、今回はそうしなかった。つまり、それは()()()()()()()()()()()()()()()()ということではないか。

 しかし、そうだとしても、この状況だからこそ伝えなければならないのだろう。こんなことは間違っていると、この世界で自分たちにとって唯一の武器であるダンスで。

 

 

「捕まえた! この反応はたまみとともえの反応だよ。こっちにはすももとのぞみがいる。希センパイ、そっちは?」

 

「こっちも手応えアリや。こっち3つの道それぞれに反応がある。りせちゃんみたいに特定はできへんけど、A-RISEの3人のものやろうな」

 

 

 考察にふけっていると、りせと希の鋭い声が耳に聞こえてきた。どうやらこの世界に考察している間にターゲットの反応を掴めたようだ。

 何というか、やはり解析タイプのペルソナ所持者がいると心強い。りせはP-1Grand Prixのこともあってか以前よりも格段に能力が向上しており、希もりせからアドバイスを受けたのか、学園祭事件の時より見事に己のペルソナ能力を行使している。

 

「やっぱりか……悪い予感が当たりましたね」

 

「や、やば! 昨日より反応が弱くなってる。早く助けに行かないと……」

 

 やはりというべきか、ペルソナ能力を持っていない普通の人間がこの世界に長く滞在していると衰弱してしまうというのは変わらないらしい。これは一刻も早く救出しなくては。

 

「それならここからは別々で行動しましょう。道が5つに分かれているし、全員を早く助けるにはそれが効率的だわ」

 

 なるほど、流石は絵里だ。ちょうど道が5つに分かれていて、こちらも大人数であるので別々に行動する作戦を決行するのに十分と言えるだろう。

 

「うん! 絵里センパイの案でいこう。入り口は別々で、その先の道は複雑になってるけど、最終的には一つに繋がっているみたい。その道々で助けて行けば、一番奥で合流できるよ」

 

「OK。じゃあ、チーム分けだな。まずプロフェッショナルのりせと戦闘経験のある悠と穂乃果ちゃんたちを分けて……え~と……あとは」

 

 いざ人数を分けようとすると中々決まらない。それもこの大人数をどうやって分けたら良いのか。すると、

 

 

「先輩、一つ提案なんすけど、ここは()()()()でチームを分かれねえっすか?」

 

 

 頭を悩ませていると、完二がこんなことを言ってきた。

 

「はっ? 別にいいけどよ。珍しいなお前がそんなこと言いだすなんて」

 

 確かにこのような提案をよりによって完二からするとは普段の彼からすれば珍しい。すると、完二は照れ臭そうに鼻をこすると改めて悠たちにこう言った。

 

「俺らも夏ん間にチョイチョイ話してたんすよ。いつまでも先輩たちの世話んなってる訳にも行かねえって」

 

「ええ、来年は先輩たちも卒業してしまいますし、僕らは僕らなりのチームワークを身につけようと思いましてね。折角の機会ですし、僕は巽くんの案に乗せてもらいますよ」

 

「私も賛成です。私たちも悠さんや絵里たちなしでも行動できるようにならないといけませんから」

 

 後輩たちからの提案に悠は少し驚いてしまった。夏休みの練習の合間に何か話していると思ったら、そんなことを考えていたとは。これには悠も絵里も思わず驚嘆してしまった。

 

「へえ、アンタたちも色々考えてたんだねぇ」

 

「てゆーか、センパイたち私たちがこんな話してるの知らなかったでしょ? いつまでも子ども扱いしてるとすぐに追い抜いちゃうよーだ」

 

「言ったなぁ? じゃあ、あたしらも年上の力を見せてやろうじゃん。まだまだ若者には負けないぞぉ! ってね」

 

「千枝、私たちも若者だから」

 

 何はともあれ、学年別でチームを分けることには賛成だ。そうなると、チームは特捜隊3年組と2年組、μ‘s3年組と2年組、1年組に分かれることになる。多少人数のばらつきはあるがこのチーム分けなら問題なさそうだ。

 

「ええ? クマは? クマはどこに行けばいいの? やっぱりクマはことりちゃんのチームに」

 

「アンタはこっち! 穂乃果ちゃんたちのチームに入れたら絶対何かやらかしそうでしょ! そんなに悠センパイにシバかれたいわけ?」

 

 見ると、“ことりのチームに入る”との言葉が聞こえたのか、悠が修羅のような形相でクマを睨みつけていた。そして、その目はこう語っている。

 

“クマ……もしことりに手を出したら、ただで済むと思うなよ”と。

 

 流石にこれにはクマも恐怖を感じたので、りせの言う通りクマは特捜隊2年組に組み込まれることになった。

 

 

 

「じゃあセンパイたち、また後でね。何かあったらペルソナで連絡取るから」

「では、お先に失礼しますね」

「先輩ら、先にあの変なのにやられんなよ!」

「よっしゃー! やったるクマー!!」

 

 

「よーし! 穂乃果たちが一番を目指すぞぉ!!」

「おーうっ!」

「行きましょう!」

 

 

「が、頑張るぞぉ!」

「凛たちもいっくにゃ!」

「ちょっと! そんなに急に走らないで!」

 

 

 こうして後輩たちは意気揚々と自分たちの担当する道へと駆けて行ってしまった。初めての別行動でいい所を見せようと張り切っているのか、後輩たちはすぐに姿が見えなくなってしまった。

 

「な、何か……俺ら完全に良いところ持ってかれてねえか?」

 

「そうねえ。考えてなかったことはないけど、私たちは来年卒業であの子たちだけになっちゃうもの……もうそんなことを意識していたなんてね」

 

「ウチも驚いたなぁ」

 

「うん。まるで、雛鳥の巣立ちを見ているみたいだよ」

 

「雪子、それもうお母さんみたいになってるから」

 

 後輩たちの思わぬ成長ぶり感動している雪子たちだが、こちらとて黙ってばかりではいられない。遅れを取ってしまったが、ここから挽回だ。別に競争している訳ではないが、こっちだって年上の意地がある。千枝の言ってた通り年下の者たちに年上の底力を見せてやろうではないか。

 

 

「悠、私たちも負けないわよ」

 

「ああ、また向こうで会おう」

 

「アンタたち、負けたら承知しないんだからね」

 

「うん。にこちゃんたちも負けないでね」

 

「よし、特捜隊&μ‘s3年組、出動だ!」

 

 

「「「おおおっ!!」」」

 

 

 後輩たちに触発されて、やる気満々になった特捜隊&μ‘s3年組は勢いに任せて各々の道を走り出した。

 

 

 

 囚われたアイドルたちを救うために別々で行動することになった特捜隊&μ‘s。果たして、この世界に隠された秘密とは一体何なのだろうか? 

 

 

 

 

 

To be continuded Next Scene.


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