PERSONA4 THE LOVELIVE 〜番長と歌の女神達〜   作:ぺるクマ!

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閲覧ありがとうございます。ぺるクマ!です。

ついにFGO第2部4章の情報が公開されましたね。もう大奥イベントから待ちくたびれました。

そして、今回はタイトルの通り書きたかったあのシーンです!知っている方も知らない方も読んだ後にでもタイトルの曲を聞いてみてください!

改めてお気に入り登録して下さった方・感想を書いてくれた方々、本当にありがとうございます!皆さんの応援が自分の励みになっています。これからも応援よろしくお願いします。

それでは、本編をどうぞ!


#75「Time To Make History.」

 突如として告げられた言葉に悠たちは唖然としてしまった。巷に流れている"午前零時に絆フェスのサイトを見ると画面に死んだアイドルが現れて向こう側に連れて行かれる"という噂が本当だったということにもだが、この世界の名前が自分と因縁のあるものと酷似していたのだから。

 

「……! マヨナカステージだって?」

 

「そう……誰も傷つかない、誰とも傷つけ合わない、ここは理想の世界。本当は久慈川さんとμ‘sの子たちだけを招待するつもりだったけど……別にいいよ。あなたたちの為のステージを用意したの。ほら、見て」

 

「!!っ」

 

 突如として周囲に鈍い光が入り、自分たちが何処にいるのかが認識できた。否、どういう場所に立っているのかというべきだろう。悠たちが立っていたのは舞台の上、それも煌びやかに飾り立てられた、イベントステージそのものだった。そして、

 

「ゆ、悠さん!? それにりせちゃんにことりちゃんまで!?」

 

「穂乃果!? それに、みんなも……」

 

 なんと、ステージにはなんと自分たちだけでなく穂乃果や海未たちをはじめとする他のμ‘sメンバーもいた。あちらも自分たちと同じように噂を確かめようとしてこの世界に連れてこられたらしいが、悠たちと同じ場所にいることにも困惑しているようだ。

 

「な、何でここに?」

 

「私、自分の部屋で動画見てて、いつの間にリボンか何かに引き込まれて……それから…………」

 

「どうやら俺たちは意図的に呼ばれたらしいな」

 

 ステージ自体に灯りこそ入ってないものの、まるで必要以上に“りせの完全復活”をアピールするデザインが為されていた。ステージ上には“KUZIKAWA RISE with μ‘s”というロゴ、まるで稲羽でのりせのストリップ会場を彷彿させるような雰囲気。この謎の声の主はこのためにりせと穂乃果たちをこの世界に引き込んだのか。

 

「あなた……一体、何者なの!? 私たちをこんな所に引き込んで、こんなものまで作って……一体何がしたいのよ!」

 

「フフフ、そんなのどうでもいいじゃない。私はただ、あなたたちと繋がりたいだけ。ほら、こんなに沢山の子たちが、あなたたちのステージを待っていたんだから」

 

「えっ?」

 

 

 

オオオオオオオオオオオオッ!! 

 

 

 

 またも突然だった。気が付けば、自分たちを包囲するかのように、ステージの周りがシャドウに埋め尽くされていた。それもかなりの数でりせと希がリサーチしたところでも百体は超えている。

 

「しゃ、シャドウ!? この世界にもシャドウがいるの!?」

 

「さあ、歌って。そして踊ってよ。そうすれば皆幸せになれるから」

 

 謎の声がそう告げた途端、周りのシャドウたちは不気味な歓声を上げて悠たちをはやし立てるように身体を揺らした。見ればシャドウたちの身体は、首や手、足などが何かリボンのようなものでお互いに繋がれて、それ自体が意思を持つかのようにうごめている。シャドウといえど、その姿はまるで鎖に繋がれた奴隷のように見えて吐き気を覚えた。

 

「ふざけないで! 無理矢理こんな場所に連れてきて、シャドウ相手に踊れって言うの!? 冗談じゃない! 私たちを早く元の世界に返しなさい!!」

 

「そうよ! 明日も練習があるし、夜更かしは美容の大敵なのよ! アンタのこんな悪趣味に付き合う義理はないっての!」

 

 りせとにこがそう不満をぶちまけた途端、不意にシャドウたちが動きを止め、一瞬の静寂が訪れた。一体何が起こったのか、にこの的外れな言葉が気に障ったのかと思っていると、

 

 

 

「帰る? いいえ、貴方たちは踊るの。だって、それを皆が望んでいるんだもの」

 

 

 

ー!!ー

 

 

 

 謎の声がそう言ったのと同時に、悠たちの耳に不気味な歌が入ってくる。まるで聞くだけで不快感を感じる不協和音のような音は遥から迫るように音量を上げて身体の隅々まで行き渡る。そして、シャドウたちもその歌に合わせて、まるで踊るように四肢を動かし始めた。瞬間、自らが倒れないようにその場を踏みしめなければならないほどの変調が襲い掛かってきた。

 

「なにこれ……力が……」

 

「ど……どうなってるんですか……これ……」

 

「フフフ……素敵でしょう? この曲は私からのプレゼントだよ。伝わってくるでしょう? "繋がりたい"って言う、この子たちの心が」

 

 確かに、謎の声の言う通りこの不協和音から何か意志のようなものを感じる。ノイズが混じってハッキリとは聞こえないが、"繋がろう"・"あなたと一緒になりたい"などといった声がサブリミナル的に聞こえてくる。

 どうやら、あの曲とシャドウたちのダンスが俺たちに影響を与えているようだ。そう考察しているうちに、その影響がどんどん悠たちの身体を侵食していく。だが、このまま何もしないで相手の思うようになる悠たちではない。

 

「鳴上先輩!」

 

「ああ! みんな、行くぞ!」

 

「「「「「はいっ!!」」」」」

 

 自分たちにはシャドウに対抗する力がある。学園祭以来のペルソナ召喚……約二か月間のプランクが心配だが、それでも自分たちの身を守るために悠たちは自身のタロットカードを顕現する。

 

 

ーカッ!ー

「「「「ペルソナっ!!」」」」

 

 

 タロットカードを砕いて己の化身ペルソナを召喚した悠たち。そして、すかさずステージ周りで踊るシャドウたちに攻撃を仕掛ける。イザナギの雷撃・カリオペイアの豪炎・ヤマトスメラミコトの斬撃などがシャドウたちに当たろうとしたその時、

 

「なっ!?」

 

 目の錯覚か、各々が放った攻撃は消失マジックのように霧散していった。突然の呑み込めない状況に悠たちは混乱する。まさかこのシャドウたちにはいつぞやのりせシャドウや希シャドウのように相手の攻撃を分析し無効化する能力でもあるというのか。だが、それに驚いているのも束の間、振り返ってみると、召喚したペルソナがいつの間にかタロットカードに戻っていた。

 

「ぺ、ペルソナが勝手に戻っちゃった!?」

 

「何で? 私たち、そんなことしてないのに……」

 

 今まで起こったことがない事態に穂乃果たちはパニックに陥ってしまった。しかし、そんな慌てる穂乃果たちを嘲笑うかのように謎の声がクスクス笑いが聞こえた。

 

「フフ……おバカな子たち」

 

「まさか……これもお前の仕業なのか!」

 

「フフフ、勘違いしないで? 私は何もしてない。言ったはずだよ? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って」

 

 謎の声が告げた事実にただただ驚愕するしかなかった。つまりこの世界では一切の戦闘行為が効果を持たないというのか。そうなったらこちらに対抗する手段なんてない。最初から相手に対抗手段を持たせないなんて、そんなの反則だ。

 だが、そうこうしている間にも不気味な歌は鳴り止むことなく、身体の自由をジワジワと奪っていく。

 

「ううっ……! 私たちをどうしようっていうのよ!」

 

「フフフ、どうもしないよ。ただ受け入れてくれるだけでいい。さあ、繋がりましょう? この永遠の絆の証に…………一緒に踊りましょう。ねえ……久慈川りせ? μ‘sのみんな?」

 

 謎の声と呼応するように、不気味な歌の音量が更に上がっていく。それに比例して意識がどんどん薄れて行き、身体が言うことを利かなくなってきた。

 

「くっ……もう……だめ……」

 

 ついにメンバーの中で音感が良い真姫が膝をついて倒れてしまった。それに続いて、花陽とにこ、絵里とメンバーが次々と感染症にかかったように倒れて行く。このまま何も出来ずにこの世界に取り込まれてしまうのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 意識が朦朧とする中、ある者は最後の力を振り絞って頭を回転させた。

 

 自分が解析ペルソナ持ちであるが故か、はたまた普段からメンバーや想い人のことを観察しているが故か、自然と目の前で踊り狂うシャドウたちの様子がよく分かる。

 

 自分の目から見て、あのシャドウたちがあの不気味な歌に踊らされているように見えた。

 

 だとすれば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……

 

 

 

 動かなくなる身体を無理に動かして隠していた携帯を取り出して操作する。あの歌の音量が大きくなってきたせいか、意識が更に遠くなって身体の自由が利かなってきた。だが、ここで止まってしまったら、そこで終わりだ。

 

 やっと目当ての画面が表示させる。後はボタンを押すだけだ。しかし、あの不気味な歌の音量が更に上がって意識が更に遠ざかる。

 

 

 それでも、負けてなるものかと最後の力を振り絞る。

 

 

 そして意識が途切れる寸前、何とかボタンを押すことができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー!!ー

 

 

 

 刹那、不気味な歌をかき消すような大音量で全く違う音楽が耳を支配した。突然違う音楽が大音量で耳に入ってきたので戸惑ったが、この曲には聞き覚えがある。この曲は夏休みに何度も踊った【Time To Make History】。だが、驚くべきポイントはそこじゃない。

 

「こ、これは!?」

 

「か、身体の自由が……戻った!?」

 

 何とあの不気味な歌が聞こえなくなってから、身体の異常は嘘のように消えていた。意識はハッキリすると、手足も問題なく動かせる。見ると、ステージ周りのシャドウたちがさっきとは違うリズムで違う動きをしていた。一体、何が起こったのだろうかと疑問に思ったが、その答えは近くにあった。

 

「の、希!?」

 

「な……なんとか……なったなぁ……」

 

 悠に抱きかかえられながら弱々しい声でそう答える希。なんと意識が朦朧としている希が自身の携帯から最大音量で音楽を流していたのだ。希はそう言い残すと糸が切れた人形のように気を失った。慌てて悠は希に声を掛けるが既に意識は失っていた。そして、表情はやり切ったと言わんばかりに和やかだった。

 

「もしかして……このシャドウたちは」

 

 希の取った行動でシャドウの動きが変わったことに何か確信を得た直斗。見ると、先ほど倒れていた真姫たちも完全復活とはいかないものの立ち上がれるくらいの気力は戻ったようだ。その様子を見た瞬間、パズルのピースが全てはまったように、直斗は頭の中にこの状況を打破する方法が浮かび上がった。

 

「……分かりましたよ。この状況を逆転させる方法が」

 

「直斗くん?……どういうこと?」

 

 突然直斗が発した言葉にりせたちは困惑する。

 

「東條先輩が身を持って証明してくれました。あのシャドウたちはあの不気味な歌で躍らされているんです。だから、あの歌とシャドウのダンスを遮ることが出来れば、勝機はある」

 

「でも……そんなことどうやって」

 

「先ほどの東條先輩と同じように別の音楽と動きに奴らを巻き込むことが出来れば可能です。そのためには……」

 

「おしゃべりな子ね……」

 

 突如ステージから這い上がってきたリボンが直斗の足に巻き付いた。リボンは強引に直斗をステージの端に引きずり込み、逃げられないようにと直斗を拘束する。

 

「しまった!?」

 

「な、直斗くん!?」

 

「フフフ……繋がった。これで、貴方もみんなの望むあなたになる」

 

 リボンに繋がれた直斗は何かを身体に流されたのか、目の光が失われていく。直斗は最後の抵抗とばかりに悠の方を向いて、辿り着いたヒントを告げた。

 

「み、皆さん……あいつらを……ダンスで…………

 

 直斗はそう言い残すと瞼を閉じてその場に倒れてしまった。突然の出来事に狼狽えてしまったが、悠は湧き出る感情をグッと堪えた。直斗の犠牲を無駄にしないためにも、ここでダンスをしなくては。だが、行動を起こそうとした瞬間、件のリボンが今度は悠の手に同じリボンが巻き付いた。

 

「フフフ……何をしようとしていた分からないけど、私がそんなことをさせると思う? 摘める可能性は摘んでおかなきゃ」

 

「やばっ! せ、センパイ!!」

 

「お兄ちゃん!!」

 

 リボンに繋がれた瞬間、身体に得体の知れない何かが電流のように流れてくる。それを感じた時、既に悠の意識は深い場所へと落ちていった。

 

 

 

 

「これで、貴方も皆が望む姿になるのよ……鳴上悠」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────繋がろう……

 

 

 

 

 

 暗い先の見えない深淵の中で、ふとそんな声が聞こえてきた。その声は悠に言い聞かせるように優しく囁く。

 

 

 

 

 

──────もう頑張らなくていいんだよ。楽になろう。

 

──────巡る巡る……この前のない世界で、ずっと繋がっていよう。

 

──────だって、みんながそれを望んでいるんだから

 

 

 

 

 

 ああ……この場所は心地よい。ずっとこのまま繋がっていよう。この安らぎのある、誰の邪魔もされない穏やかな場所で。もう俺は、頑張らなくていい。このみんなの望まれる自分で……この繋がりがたくさんあるこの場所で…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――我は汝……汝は我…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 刹那、目を覚まさせるように頭に聞き覚えのある厳かな声が聞こえてきた。この声は……今までずっと中にいた自分の声。

 

 

 

――――汝…霧の侵略から世界を救いし者よ

 

 

 

――――今こそ汝は示すべし……

 

 

 

――――汝の知る…絆の力を…無知なる者へ……

 

 

 

 その声を聞いて、目が覚めた。

 

 

 そうだ……自分は自分。誰かから望まれる自分じゃない。それに、自分の知る絆はこんなものじゃない。こんなものはまやかしだ。永遠の絆などはこんなものではないし、あの声が言っているものはただの洗脳だ。こんなものは…………間違っている! 

 

 

 

 

 

――――汝……新たに双眸を見開きて、今こそ発せよ! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおっ!!」

 

 

 

 

 

 心の声で意識が覚醒する。雄叫びを上げた悠は力いっぱいリボンを引っ張り、無理やりリボンをちぎり取った。

 

「きゃあああああああああっ!?」

 

「センパイっ!?」

 

「……良い腕輪だ」

 

 悠はそう言うと、フラフラとしながらも立ち上がり、強い意志を感じる真っ直ぐな目で天を見据えた。気を失ったと思っていた悠が突然復活したことに驚いたのか、りせたちは腰を抜かしていたが、あちらもこの事態は想定外だったらしく謎の声は狼狽えた様子だった。

 

「そんな……私の力が……もしかして、あなた」

 

「りせっ! 俺の課題曲を掛けてくれ! このシャドウたちに見せてやろう。俺たちのダンスを」

 

 悠の檄に唖然としていたりせはハッとなる。

 そうだ、今は呆けている場合ではない。直斗が言っていた通り、もし自分たちにこの絶望的な状況を逆転できる方法があるのなら、それはこちらの音楽と動きにあのシャドウたちを巻き込むしかない。そのための手段は……この夏休みに必死に練習してきたダンスしかない。

 

「うん! 私のコウゼオンの力で、音楽をシャドウたちに全開で届けるよ。だから、決めちゃって! 悠センパイ!!」

 

「お兄ちゃん! 頑張って!!」

 

 りせは希の携帯を手に取って力強くそう言うと、コウゼオンを召喚して音響の準備を完了させる。それを見た悠は大きく頷くと、ステージのシャドウたちを見渡して、見せつけるように宣言した。

 

 

 

 

「行くぞ! μ`ジック スタートだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────何かが聞こえてくる。

 

 

 意識がハッキリし始めてそう感じた穂乃果は重い瞼をゆっくりと開いてその光景を目にした。

 

 

(わあ……!)

 

 

 その光景に穂乃果は思わず興奮してしまった。悠が音楽にのってダンスを踊っているのだ。この曲はあの夏休みに何度の聞いたことがある悠の課題曲【Time To Make History】。何でこんな場所でダンスしているのかという疑問は湧くが、そんなことはお構いなしに思わず興奮してしまった。

 

 夏休みの特訓のお陰なのか、オープンキャンパスやジュネスライブの時より技術が上がっていて、動きがバラエティに富んでおり悠らしさが溢れている。毎日のように悠のことを見ているのに、まるで初めてみるかのようなクールな悠のダンスに言葉が出ないほど見惚れてしまった。

 

 それに、以前絵里が言っていた"表現力"なのだろうか、悠が心から楽しそうに踊っているのがより一層感じる。それはシャドウたちも同じなのか、さっきまで暗い感じだったシャドウたちが心の底から悠のダンスに魅了されているのが心で分かった。

 

 

(私も……一緒に踊りたい!)

 

 

 状況が状況なのに、ついそう思ってしまった。あんなダンスを見せられたら、居ても立っても居られない。今すぐにステージに行って踊りたい。何より一度でいいからずっと憧れていた悠とステージで一緒にダンスがしたい。

 

 身体が本調子じゃないのを忘れて、悠と一緒に踊りたい一心で立ち上がった穂乃果は急いで悠の元へと駆け寄っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(よし、良い感じだ)

 

 ここまでは順調。夏休みに絵里とりせの特訓を頑張ったお陰か、以前よりも動きが良くなった気がする。それに、あのシャドウたちも上手くこっちのペースに巻き込んでいる。このままラストスパートで決めてしまおうとしたその時、

 

 

「悠さん! 一緒に踊ろう!」

 

 

 いよいよ最後のサビに入ったというところで、いきなり穂乃果が乱入してきた。突然入ってきたので危うくテンポが乱れるところだったが、何とか体勢を整える。今までやったことがない穂乃果とのデュオをやることになり、どうしたものかと思ったが、それは杞憂だった。

 初めてこの曲で一緒に踊るのに、まるで何度も合わせたかのように息がピッタリと合う。夏休みにずっと一緒に練習したお陰か、穂乃果の動きが手に取るように分かる。何より、穂乃果と踊っていると楽しい。それが伝わったのか、穂乃果もこちらを見て楽しそうにしているし、シャドウたちのボルテージも最高潮に達している。

 

 

(感じるぞ……シャドウや穂乃果たちの心の熱狂を)

 

 

 ついにフィニッシュを迎えようとしている瞬間、悠は今まで感じたことのない感情を高ぶりを感じていた。そのせいか、自分の中にある"女神の加護"たちの輝きが増していき、心の中に新たなる何かが生まれてくる。

 

 

 

(ペルソナは心の力。自分たちの心の有りようでその姿を変えて行く。傷つけ合うのは戦いだけじゃない。俺たちはこれからも、変わっていける! この想いが届いたのなら、応えてくれ!)

 

 

 

 

ーカッ!ー

「イザナギ!」

「カリオペイア!!」

 

 

 

 

 フィニッシュと同時に、悠と穂乃果は勢いよく顕現したタロットカードを砕いてペルソナを召喚した。

 

「「えっ?」」

 

 その様子を見ていたりせやことりは唖然とした。何故ならそのペルソナが手にしていたものがいつもの大剣や赤い剣ではなく、()()()()()()()()()()()だったのだから。それに構わず2体のペルソナは楽器を定位置に持ってセッションを開始する。

 

 

 目にもとまらぬ速さでありながら聞き入ってしまう音を奏でるカリオペイアのギターに、それに合わせるように正確な旋律をクールに奏でるイザナギのベース。一度耳に入ってしまうと鼓動が抑止できないほど高まってしまう。そんなペルソナのセッションに感動したのか、シャドウたちはこれでもかというくらい興奮して大きな歓声を上げる。

 

 

 

 

ワアアアアアアアアア!!

 

 

 

 

 

 興奮が冷めぬままイザナギとカリオペイアの演奏が終わると、シャドウは光に包まれて輝き始めたと思うと、まるで宙に溶けるかのように消滅し始めた。その光景はまるで夜空の天の川を間近で見ているかのように美しく、さっきまでピンチだった状況にも関わらず、思わず綺麗だと感嘆してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう……」

 

「ハァ……ハァ……疲れた~! やっぱり悠さんと合わせるのは大変だよ~」

 

「ははは、それは俺もだ。腕を上げたな、穂乃果」

 

「うん!」

 

 踊り終えた余韻に浸りながらも悠と穂乃果は互いのダンスを称賛し合いながら笑みを浮かべていた。

 夏休みの特訓やジュネスのライブでも思い知ったことだが、ダンスとはやはり表現だと思う。どうやらこの世界は現実の世界より、"互いの心が伝わりやすい"環境にあるのだろう。最初はあの不気味な歌を押し付けるだけのシャドウの心が徐々にこちらのダンスに惹きつけられているのを感じた。

 

「センパーイっ!」

 

「お兄ちゃーん! 穂乃果ちゃーん!」

 

 ダンスの余韻に浸っていると、不意打ちでりせとことりが悠に抱き着いてきた。思わず倒れそうになるのを堪えて、悠は穂乃果に支えられながらも2人をしっかり受け止めた。

 

「超カッコよかったよっ! 惚れ直しちゃった♡てか、今のペルソナは何!? イザナギがベース弾いててびっくりしたんだけど!?」

 

「そうだよ! 穂乃果ちゃんもカリオペイアもギター弾いてたし」

 

「い、いや~……正直悠さんとのダンスに夢中だったから……よく分かんなくて……」

 

 やはり、ダンスのことよりも普段とは違ったイザナギとカリオペイアに驚いて混乱しているようだ。違いがあると言っても手にしているのが武器ではなく楽器といったところだけなのだが。

 

「俺もよく分からない。だけど、あのシャドウたちに……いや、あの人達に伝えたいって思ったら、俺の中のペルソナが応えてくれたんだ。穂乃果もそうじゃなかったか?」

 

「あっ、確かにそうかも……あんまり覚えてないんだけどなぁ」

 

「へえ、そんなことまで出来ちゃうんだ。さっすがセンパイ! 特捜隊&μ‘sのリーダーは健在だね」

 

「それほどでも」

 

 夏休みはシャドウ案件がなかったので忘れかけていたが、おそらくあのイザナギの変化は自分の中にある“女神の加護”によるものだろう。だが、そうだとしてもその影響が何故穂乃果のカリオペイアにも出たのかは分からない。

 

「うっ……これは……」

 

「わ、私たち……元に戻ったの……?」

 

「そうみたいね……」

 

 すると、リボンに繋がれて倒れていた直斗や不気味な歌で気絶していた真姫たちが目を覚ましていた。どうやら呪縛が解けたらしい。

 

「直斗くん! 絵里センパイ! みんな! やったよ! センパイと穂乃果ちゃんが超カッコイイステージ決めてくれたから!」

 

「僕にも分かりましたよ。先輩たちのお陰で、正気に戻ることができたんですから。って、あれ? 東條先輩!」

 

悠くん……

 

 すると、希はフラフラと立ち上がろうとするが、そのまま悠の方へ身体を倒してしまった。これは予想できなかったのか、流石に悠も身体に伝わるマシュマロのような柔らかい感触に困惑する。

 

「ちょっ……希」

 

う、うち……疲れてもうたから……少し、こうさせて……

 

「あ、ああ……」

 

 悠は希からの突然のお願いに戸惑いながらも、この活路を見出してくれた希を労うように優しく抱き寄せた。その様子にまたも他のメンバーは目を鋭くさせる。

 何とも羨ましい。普段の希の行いからすると、端から見れば狙ったかのように見えるが、どうやらあれは自然体で本当に倒れてしまうほどに疲弊しているようだ。悠に抱き寄せられるなど羨ましいし、そこを代われとも思ったが、勝利への道を開いてくれた希にこれくらいのご褒美はあってもいいだろうと、今回は我慢することにした。

 

「そ、それで? 直斗くん、今言ったことってどういうことなの?」

 

「そうですよね。直斗さん、説明してくれますか?」

 

 我慢はするが、それでも不機嫌を隠せないりせと花陽は怖い笑顔で直斗にそう尋ねた。そんな2人に慄きながらも直斗はついさっき自分に起こったことを説明した。

 

「え、ええ……奴らに取り込まれたお陰で、少しはあのシャドウたちのことが分かりましたよ」

 

「シャドウたちのことが?」

 

「あのリボンの様なものに巻かれると自分の思う“自分”ではなく、“周囲の望む自分”であることを強要されるというか……自分を捨ててでも、あのリボンで他のシャドウたちと繋がっていたいと思うようになってしまうんです。恐ろしいのは、僕も“そうするべき”だと感じてしまった点ですね」

 

「そうね。私はあのおぞましい歌を聞かされて気絶した方だったけど、直斗さんと同じ感じだったわ。もう、パパもママも私のことを大切に想っていることは分かっているのにね」

 

 直斗の話と先ほどまでの出来事を照らし合わせると、やはりあの不気味な曲やシャドウたちのダンスが洗脳のような作用があるのは間違いなさそうだ。そう思っていると、直斗たちの言いように不満を感じたのか、りせが口をとがらせて抗議した。

 

「そんなの良いわけないじゃない! 直斗くんは直斗くん、真姫ちゃんは真姫ちゃんなんだから」

 

「今考えれば、おかしな思い込みであることは分かります。ですから、そう思わせてしまうのが、あの歌とリボンの力なんでしょう。改めて思うと、恐ろしい力です」

 

「ああ、踊っている時にもそう感じたよ。だから、俺たちは“伝えたい”って気持ちを込めて踊ったんだ」

 

「伝える……それって?」

 

 悠の言葉の意味が分からなかったのか、りせは首を傾げる。そんなりせたちに分かりやすくようにと悠は優しく解説した。

 

「夏休みにりせが言ってただろ? ダンスはただリズムを刻むとかじゃなくて、自分の気持ちや感じることを表現して、見てる人たちに伝える為のものだって。だから、俺はシャドウたちの望むものじゃなく、俺自身のことを伝える気持ちで踊ったんだ」

 

「私も! 最初は悠さんに合わせてただけだったけど、普段ライブやってる時みたいに楽しもうって気持ち込めて踊ったんだ」

 

「お陰で目が覚めましたよ。皮肉なものですね。かつて目を逸らし続けて、向き合うと約束した“本当の自分”が如何に大切かを思い知らされるなんて」

 

 2人の言葉に直斗はやれやれと肩をすくめた。

 おそらく、あのシャドウたちあんなものに繋がれただけで自分を捨てていいはずがないと感じたからこそ、リボンの呪縛を解かれたんだろう。最終的にイザナギとカリオペイアのセッションが後押しになったのだろうが、悠と穂乃果のダンスにそう思ってくれたのかと思うと、何だか報われた気がした。

 

「というか、りせちゃん……悠のダンスを間近で見てて何も感じなかったの?」

 

「わ……分かってたわよ!? センパイのダンスがいつもと違うことくらい分かるもん! ただ、ペルソナで音響やってたから上手く言えなかっただけだもん!」

 

「ことりは分かってたけどね♪お兄ちゃんのことは何でも知ってるから」

 

「くっ……ブラコンめ………」

 

 りせとことりが口喧嘩を始めていつもの特捜隊&μ'sの調査が戻ってきたと思っていると、全てのシャドウが消え終えたのか、天の川のような美しい風景は消え去って、辺りには静けさが戻っていた。それを確認したりせは何かを察知したのようにシャドウたちが消えた天井を見上げた。

 

「シャドウの気配が消えたね……何だろう、この感じ……どこかに帰っていくみたいな」

 

「帰る……? シャドウが?」

 

「私にはそう感じたの。皆、帰るべき場所に帰ったって感じで……上手く言えないけど」

 

「しかし……あのシャドウたち、一体何者なんでしょう? 僕らの知るシャドウとは、少し違うような……」

 

 確かに直斗の言う通りである。この世界で自分たちを苦しめたシャドウは今まで出会ったものとは性質が違うのかもしれないが、一体何だったのだろうか。当面の危機に脱したものの、あのシャドウやこの世界について、まだ分からないことが山ほどある。まずは何とかしてここを抜け出す方法を探さなければ。

 

 

 

「気に入ってくれないんだ……折角あなたたちのために用意してあげたステージなのに」

 

 

 

 突然雰囲気が変わったと思うと、いつの間にかあの声が会話に入ってきた。さっきまで声が聞こえないのでいないと思っていたが、どうやら黙って自分たちを傍観していたらしい。

 

「あっ、まだいた! いい加減にしなさいよね! あんなものでシャドウを縛っておいて、何が永遠の絆よ! あんなのアンタの言いようにしてるだけじゃない!」

 

「その通りです! これが君の言う"繋がり"なのだとしたら、あまりにも一方的すぎる!」

 

「そうだよ! あんなものに繋がれて強制的に考えを捻じ曲げるなんて……可哀想だよ!」

 

 ここぞとばかりに謎の声にかみつくりせたち。りせたちの言う通り、こんなものは絆でもない。向こうはこの世界は永遠の絆がある理想郷などと言っているがこんなのは違う。ただ他人を縛り付けて、自分の理想を一方的に押し付けている……そんなものは間違っている。

 

 

 

「フフフ……アハハハハハハハッ!!」

 

 

 

 しかし、謎の声は反論するのではなく、りせたちをバカにするよう高らかに笑い始めた。その笑いはどこか狂気じみていて、りせたちは逆に寒気を感じてしまった。

 

「な、何がおかしいのよ!」

 

「いいの……あなた達がそう言うなら無理にここにいて欲しいわけじゃないから。あの子たちを帰したくらいでいい気にならないでよね」

 

「なんですって……!」

 

「それに、可哀想だって? そんなわけないじゃない。私たちの“絆”は永遠よ。相手は他にもいくらでもいるだもの」

 

「"相手はいくらでもいる"だと……お前はまた誰かをここに引き込むつもりなのか!」

 

「フフフ……残念だけど、あなたたちの出番はもう終わり。もうすぐ次のステージが始まるの。たまみとツバサたちのステージがね」

 

「たまみ……? ツバサ……? それって、まさか……」

 

 瞬間に悠の中で全ての事態が繋がった。そもそも今回この場所に自分たちが引き込まれてから察していたことだった。しかし、それは最悪の予想で決して当たって欲しいものではなかった。そんな嫌な予感を感じつつも、悠は己の推測を言葉にした。

 

「かなみんキッチンのメンバー……お前が彼女たちをさらったのか!? それに綺羅さんまでも」

 

「なっ!? 綺羅って、あのA-RISEの綺羅ツバサ!? まさか」

 

「フフフ……どうでもいいじゃない。あなた達にとっては関係ない話だもの」

 

「関係ないって…………希センパイ!」

 

「OKや!」

 

ーカッ!ー

「「ペルソナっ!」」

 

 りせと希は顔を見合わせると、ペルソナ【コウゼオン】と【ウーラニア】を召喚して解析を開始する。そして、ものの数分もしないうちに2人は何かを掴んだ表情を浮かべた。

 

「掴まえた! シャドウが集まってる場所が……1……2…………7つ?」

 

「本当にたまみの反応だ。それに……これって」

 

「フフフ……悪戯はダメ。部外者は立ち入り禁止なの」

 

 その時、いつの間にか忍び寄っていたリボンが悠たちの足元に這い上がる。完全に油断していた。締め取られた腕は抵抗する間もなく、凄まじい力で悠たちの身体をどこかへ引き抜いていった。

 

 

「「「きゃああああああっ!」」」

 

「しまった!? お前!!」

 

 

 悠の叫びも虚しくまたもこの世界に引き込まれた時と同じ光に包まれて意識が遠のいていった。去り際に謎の声は勝者は自分だと言うように、勝ち誇ったような声色でこう言った。

 

 

 

 

 

「フフフ……さよなら、久慈川りせ。鳴上悠」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♫~♫♩~♩~♫~♫♩~♩~

 

 

 

 

 

 

 

…………聞き慣れたメロディーが聞こえてくる。

 

 

 

 

 

 

 目を開くと、いつものあの場所がそこにあった。床も天井も全てが群青色に染め上げられている、まるでリムジンの車内を模した不思議な空間。この場所は【ベルベットルーム】。精神と物質の狭間にある、選ばれた者しか入れない特別な空間。

 

 

 

「ようこそ、我がベルベットルームへ」

 

 

 そして向かいのソファにこの部屋の主である【イゴール】が座っていた。夏休みの間は、あちらも休暇を取っていて久しく会っていなかったが、黒いタキシードに一度見たら忘れそうにない長い鼻とギョロッとした大きな目は今でも変わらない。

 そして、その傍らにはイゴールの従者であるマーガレットとその妹であるエリザベスが各々手にペルソナ全書を携えて座っていた。

 

 

「お久しゅうございます、お客人。こうして再びお会いする日をお待ちしておりました。またも不可思議な災難が降りかかったようですな。フフフフ…………」

 

 

 イゴールは面白そう言いながら、悠を見てニヤリと笑っている。よくもまあ他人事にように言うものだ。こっちも好きで巻き込まれているだけではないと言わんばかりに眉間に皴を寄せると、イゴールは話を逸らすように指をパチンと鳴らす。すると、マーガレットが携えていたペルソナ全書から色とりどりの宝玉が宙に浮かんで小さな輪を作った。

 

「いやはや、貴方様の中に存在するこの宝玉たちはつくずく興味深い。いや……最も興味深いのは貴方様自身の方かもしれませぬな」

 

 一体何を言っているのだろうか? 首を傾げる悠を見かねたのか、イゴールに代わってマーガレットが代わりに口を開いた。

 

「お忘れのようですが、お客様の力の性質は“ワイルド”。数字に例えるなら0……空っぽのようでありながら無限の可能性を秘めておられます。だから、先のペルソナに我々も知らない新たな力が目覚めたのでしょう。それが、この宝玉たちの後押しだったとしても、その力を引き出したのはお客様自身……そういうことでございます」

 

 分かりやすくそう言われてもいまいち実感が沸かなかった。確かに自分には仲間たちにはない、ペルソナを幾つも所持できる特別な力を持っていることは去年から重々承知しているが、それほど自分が特別な人間だと思えないのだ。

 

 

「さて、貴方様が今回挑まれる世界は果たして何故生まれ、何の為に存在しているのか……いずれその答えは解き明かされましょう。その先に何が待ち受けているのか……楽しみでございますなぁ」

 

 

 ヒヒヒと面白そうに笑うイゴールを見て、悠はドン引きしてしまった。相変わらず、この老人は一体自分をなんだと思っているのだろうか。その笑い声からして、この人物があの謎の声の正体ではなかろうかと不安になってくる。すると、意識が薄くなっていき視界が点滅し始めた。どうやらここでの時間はそろそろ終わりのようだ。

 

 

「では、今宵はここまでと致しましょう。では、またお会いする時まで」

 

「では、次にお会いする時までご機嫌よう。目覚めた後の叔母様の対処には十分ご注意くださいませ」

 

「これっ! エリザベス!!」

 

 

 意識が完全に眠る寸前にイゴールとエリザベスのそんな会話が聞こえた気がするが、そっとしておこう。

 

 

 

 

 何はともあれこのタイミングでベルベットルームを訪れたということは、今回の事件にもP-1Grand Prixのヒノカグツチや学園祭の佐々木竜次のような存在が関与しているのは間違いないだろう。ならば、自分たちが追っている犯人も関わっているに違いない。

 

 

 毎回尻尾を掴めずに逃げられてばかりだが、今回こそは必ずその尻尾を掴んでやる。だから、そこで待っていろと悠はまだ見ぬ真犯人にそう告げて決意を新たにしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………………」

 

 

 ベルベットルームから帰ってきたのか、目を開けると家のリビングの天井が見えた。どうやら無事に現実に戻ってきたらしい。いや、元の場所に返されたというべきか。そう言えば、ことりやりせ、直斗と希はどうしたのだろうと思い、身体を起こしてみると

 

 

 

「おはよう、悠くん」

 

 

 

 背中から自分を呼ぶ声が聞こえたので振り返ってみると、そこには腕を組んでこちらを見下ろしている笑顔の雛乃がいた。だが、その笑顔を見て悠はビクッとなって慄いた。あの笑顔は怒っているときだと察した時には遅かった。みると、雛乃の傍らには正座をして震えていることりたちがいた。つまり…

 

 

「悠くん、寝る前に私とオハナシしましょうか? ねえ?」

 

「は、はい……」

 

 

どうやら、今夜は長くなりそうだ。

 

 

 

To be continuded next Scene.


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