PERSONA4 THE LOVELIVE 〜番長と歌の女神達〜 作:ぺるクマ!
新年早々にテストがあって、更にその後に期末が控えているので頭が茹で上がりそうです……。新年早々ですが、今月は更新がいつもより遅くなりますが、ご容赦下さい。
そんなことはさておき、改めてお気に入り登録して下さった方、感想を書いてくれた方・最高評価と評価を付けて下さった方・誤字脱字報告をして下さった方々、本当にありがとうございます!皆さんの応援が自分の励みになっています。
皆さんが楽しめる作品になるように精進していくつもりなので、これからも応援よろしくお願いします。
それでは、特捜隊&μ‘sの海水浴をどうぞ。
........................
ミーンミーンミーンミーンミーンミーン
心地よく吹く潮風。
激しく照りつける太陽。
ゆらゆらと陽炎が見える灼熱の山道。
見れば誰もが夏だと直感する山道を今、一台のシャトルバスが駆け抜けていった。運転しているのはおっとりした顔の如何にも教育者であろう風格を持ち合わせた女性。そして、その後ろでは……
「スキップ!」
「うわあ!あとちょっとで勝ち抜けだったのに~~!!」
「よーし!あたしも負けてらんないぞぉ!」
「ここでポーションだ」
「ぐっ…この私がポーションを許すなんて………」
「お兄ちゃんたち、すごいね」
「私もチェスやって見ようかな……」
いつものようにはしゃいでいる特捜隊&μ‘sたちの姿があった。
今日は前から約束していた通り皆で海水浴に行く日。悠たちはシャトルバスに揺られて各々の時間を過ごしながら目的地までの旅路を満喫していた。
バス内の最後席ではいつもの如く、穂乃果たちがカードゲームに白熱していた。いつもはトランプで勝負している彼女たちだが今回は趣向を変えてUNOをやっている。そのUNOがトランプをやっている時よりも激闘を繰り広げていた。
「凛ちゃん、今UNO言い忘れてたでしょ!」
「してないにゃ!そういう穂乃果ちゃんだって、さっき言い忘れてたにゃ!」
「ちーがーうーよ!穂乃果は小声で言っただけだもん!海未ちゃんだってそうしてたよ」
「な、何を言ってるんですか!?私はそんなズルいことはしていません!」
「そこの3人が言い争ってるうちに……喰らいなさい!渾身のドロー4!」
「うわあああああああっ!」
「千枝たち……もうちょっと静かにね」
「そうよ。本に集中できないわ」
「真姫ちゃん、それは目に悪いよ」
UNOで白熱しているのは穂乃果・凛・にこ・千枝と言った特捜隊&μ‘sのわんぱくガールズたち。少々盛り上がりすぎたのか近くにいた雪子と真姫に注意されてしまった。
「全く……後ろは白熱してるわね」
「そうだな……チェック」
「むむ……まあ、せっかくの海だし気持ちは分からなくないけど………えい」
「おっ……夏と言えば海だしな………よっと」
「むっ……ここでナイトを動かすとはやるわね………はい」
「何でお前らはチェスをしながら会話してんだよ……しかも早指しで」
「陽介くん、静かにしたほうがええよ。もう2人とも自分たちの世界に入っとるから」
「……そうだな」
前席では悠と絵里のチェスも静かながら白熱していた。その様子はさながら達人同士の対決を思わせる。その他のメンバーと言えば、窓に広がる景色を眺めたりしている。完二はわざわざ手芸セットまで持ち込んで作品作りに熱中しており、菜々子とことりは一緒にあやとりをしていた。
「今更だけど、まさか雛乃さんがバス運転できるとは思わなかったなぁ」
本当なら去年みたく原付で行きたいものだったが、悠と穂乃果たち音ノ木坂学院は原付禁止なので却下。それだと市営バスなどの交通機関で行くことになるがそれでは時間がかかってしまう。どうしたもんかと悩んだ時、雛乃が自分がバスを運転すると言いだしたのだ。
わざわざ天城屋のシャトルバスを借りてあれよあれよと乗せられたもので、最初はとても心配したものだが、ブランクが空いているものとは思えない程の運転技術だったのでホッとしている。
「うふふ、こう見えても理事長やる前は色んなことやってたのよ、陽介くん」
「あははは……お母さん、凄い」
「理事長の意外な一面を見た気がするなぁ」
何故雛乃が中型免許を持っているのかを聞いてみると、教師ならこれくらい当然とはぐらかされた。何か別の目的があったように見えるのだが、そこまで追及すると深い闇を見てしまう気がしたので一同はそっとしておいた。
そうして、雛乃の運転に揺られて1時間後……
「おっ、みんな!アレを見てみろ」
「「「わあああああああああああああ」」」
そこで皆が目にしたのは、特捜隊にとっては一年ぶりに、μ‘sにとっては初めて見る七里海岸の海だった。チェスは白熱していた悠と絵里も一旦指すのを止めて窓の景色に目を移した。
「楽しみだな。今年は直斗やラビリス、穂乃果たちもいるし、賑やかになりそうだ」
「そうやねえ。それはそうと悠くん、いくら男の子やから言うてあんまりポロリ期待しちゃいかんよ」
「……してないから」
「今の間はなんやったんかなぁ?うふふふ」
そうやって悠をからかう希の姿はとても嬉しそうだった。流石幼馴染属性というべきか、その様子がどこか付き合っているより熟年の夫婦のように見えたので、周りの女性陣はジト目を2人に向けたのであった。
「ことりお姉ちゃん、ぽろりって何?」
「な、菜々子ちゃんは…知らなくていいんじゃないかな?」
「??」
<七里海岸>
「ああ……なんかキンチョーするなぁ……」
「そんな緊張することないだろ?」
駐車場にバスを停めて各自更衣室に向かった後、早めに着替えを終えた男子陣は砂浜で女性陣の到着を待っていた。こういう場合、着替えが早い男子が女子のことを待つことになるのは必然である。
「お前はいつも穂乃果ちゃんたちの近くにいるからそうなんだろうけど…だって、あの生りせちーに加えて、今話題のスクールアイドルμ‘sだぞ!あんな可愛い子たちの水着を拝められるなんて、一生に一度あるかないかなんだぞ!3億の宝くじが当たったようなもんだぞ!やっべ……なんか周りがみんなモヒカンに見えてきた」
「……一応言っとくが、菜々子とことりに手を出したら許さんぞ」
「だから手を出さないから!俺はお前みたいにシスコンでもないし、ロリコンでもないから!」
「シスコンなのは認めるが、俺はロリコンじゃない。フェミニストだ」
「どこの変態軍師だ!てか、一番警告するべきはそこのエログマだろ!」
「むううっ!ヨースケひどいクマ!いくらクマでも、センセイの可愛いナナちゃんやコトチャンにあんなことやこんなことはしないクマよー!」
クマは猛烈に抗議するが、悠は確かにと目を据わらせる。確かに、去年起こったポロリ事件は元を辿れば女子の水着を脱がそうとしたクマが原因なので、陽介の言う通りクマを警戒するべきだろう。
女性陣のことでぎゃあぎゃあと騒ぐ男3人のやり取りを聞いていた完二はやれやれと呆れて肩を竦めていた。
「先輩ら、何そんなに盛り上がってんすか。たかが水着っすよ」
「てか完二、お前今回は海パンなんだな」
そう、今回の完二の水着は去年のヴィーナス誕生の原因を作った黒いブーメランパンツではなく悠たちと同じ海パンだった。それに対して3人は意外そうな顔で完二をマジマジと見た。
「な、何っすか?そんなジロジロ見て……」
「顔を赤めるな!色々誤解してしまうだろ!俺にソッチの趣味はねえから!」
「だからちげえって言ってんだろ!?何べんいやあ分かんだアンタは!」
もはやお約束と言ってもいいやり取りをする陽介と完二だったが、そんなことは置いといて話を戻した。
「いやあ……お前がまた去年みたいに際どいブーメランパンツ履いてきたのかと思ってよ」
「もしそうだったら、ことりたちの目に毒だから、視界に入らないように海まで吹っ飛ばそうかと思ってた」
「なっ!……あっぶねえ…海パンで良かったぁ」
「吹っ飛ばされる自覚はあったのかよ」
先輩2人の話を聞いて戦慄する完二。この時、去年のことを反省して海パンを選んで良かったと心の底から思った。
その時、
「センパーーーイ!」
「はっ!?」
「うおっ!?」
「うっほほ~い☆」
彼方からりせの声が聞こえてくる。そして振り向いた先に、彼女たちはそこにいた。その彼女たちの水着姿に男どもは見惚れて言葉を失ってしまった。
では、ここでそんな彼女たちの水着姿をご紹介しよう。
「先輩たち待っててくれたんだ~」
「先に入ってればよかったのに……」
「本当だよ……」
まずは特捜隊メンバー。
りせはピンクの水玉模様が特徴的なセパレートと水着用のスカート。それはアイドル復帰前とは思えないほどりせに似合っていた。千枝は黄色のビキニで雪子は白いビキニ。未だに水着姿を男子陣に見られるのは恥ずかしいのか、頬を赤らめて恥ずかしがっていた。
「わーい!海だあっ!!」
「テンション上がるにゃあっ!!」
「さあ!見なさい!海辺の妖精にこちゃんの登場よ!」
続いて登場したのはμ‘s活発ガールズの穂乃果・凛・にこ。
穂乃果は白黒のチェック柄の三角ビキニ、凛はスポーツタイプのセパレート、にこは可愛らしいフリルがついたピンク柄のビキニを着こなしている。久しぶりの海ゆえか、3人ともテンションが上がっていた。
「ちょっと3人とも、他の人に迷惑ですよ!」
「そうよ。もうちょっと節度を持ちなさい」
「まあまあ、ええんやない。ところで悠くん、ウチの水着どう?」
「い、いいんじゃないか……」
そして、次はμ‘sの保護者ポジションにいる絵里・希・海未。
絵里は大人っぽい青色のスカラップビキニ、海未は大人しめの赤色のクロシェ、希は露出度の少し高い淡い紫色のビキニで腰にパレオを巻いていた。悠は合宿と同じように希の水着に少しドキッとしてしまった。
「わあ!ここが七里海岸。良い場所だね!」
「そう?うちの別荘の近くの海の方が綺麗な気がするけど」
その次は花陽と真姫。
花陽は雰囲気に合った大人し目でありながらも美しい白いオフショルビキニ、真姫はセレブなイメージを感じさせる黒いレースアップだ。この2人は1年生なのに、水着のせいもあるのか大人っぽい雰囲気を醸し出していた。
「菜々子、海に来るのって初めて」
「そうなんだ。じゃあ、今日は初めての海をお兄ちゃんと一緒に楽しもうか」
「うん!」
「……………………」
そして、悠が待ち望んでいた菜々子とことり。
菜々子は可愛らしいピンク色のワンピースで、ことりは控えめなエメラルド色のタンキニだった。こうやって二人並ぶと姉妹のようで愛らしく、全てにおいてパーフェクトだと悠は心の中で感動の涙を流していた。
「う~ん…水着って難儀やなぁ……こう肌を露出するのって、気恥ずかしいし…」
「あはは、慣れたら大丈夫だよ」
「まだ…全然慣れない………」
そして、風花・ラビリス・マリー。
風花はエメラルド色のセパレート、ラビリスは先日マリーに選んでもらった大人っぽい水色のホルターネックビキニ、そのマリーは去年陽介に買ってもらった黒のバンドゥ水着だ。何とも筆舌に尽くしがたいプロポーションと美しさを兼ねそろえた美少女3人に他メンバーは羨ましそうに見惚れていた。
ーカッ!ー
((オー!イエスッ!!))
女性陣の水着姿を間近で見れて、陽介とクマのテンションは最高潮に達していた。
「おいおい……やべーだろ、アレは……俺ら、こんなに良い想いしちゃっていいの?後からモヒカンが襲ってくるとかないよな!?」
「いいんだクマ……ハア~、去年より可憐なプリティちゃんたちに囲まれて~ナナちゃんもいて、クマは感激クマ~」
「夏って……いいっ!!」
「よ、陽介くん……悠もクマくん何で泣いてんのよ!」
あまりに予想外の男子陣の反応に戸惑う女性陣。そんなことは露も知らず、男子陣は突然目の色を変えて軍隊のように整列した。
「良いかお前たち!!俺たちはここに敵を倒しにきたんじゃない。潰しにきたんだ!」
「「「サー!イエッサー!!」」」
「いや、海水浴に来たんでしょ!?」
「敵って誰よ…」
思わずツッコンでしまう絵里たちだが、それはもう悠たちの耳に届いていなかった。
「よし…行くぞ………女子たちに群がるナンパ野郎どもを、ぶっ潰す!」
「「「「Yeahhhhhhhhhhhhhhhhh!!」」」」
「アンタたちが一番危ないっつーの」
「あははは……」
ここに男どもの心は一つになった。もしナンパしよう者など居たら、即座に対応。悠に至ってはことりと菜々子に手を出す輩は即座にぶっ○すというほど意気込んでいた。そんな男どももテンションに女性陣は若干引き気味で後ずさっていた。正直その心意気は嬉しいが、そこまでされると気が引けるというものだ。
海未はふとラビリスの身体を見て、ふと疑問に思った。
「あれ?てか、ラビリスって……その……大丈夫なの?一応……機械の部分とか……他の人とかには……」
そう、ラビリスは人間ではなく対シャドウ兵器…つまり命あるロボットだ。そんな彼女が水着に着替えたら明らかに身体の所々にある機械の部分が見えてもおかしくないのだが、何故か今はそんなものは見えず、自分たちと同じ人間の肌になっていた。
「ああ、それは問題ないよ。詳しくはいえないけど、桐条の技術で私たちには人間の肌に見えているから」
「そ、そうなんですか……」
海未の疑問に風花がそう返すが、一体どういう理屈なのかは知らない方が良いだろう。あまり理解出来ないだろうし、知ったところで何か未知の技術が漏洩したとかで桐条に追われそうな気がしたからだ。
「あれ?そういや、直斗は?」
「あっ、そういえば……って、いた!おおい!直斗くーーん!」
「ちょっ……久慈川さん……」
見ると、直斗は近くの岩場に身を隠していた。余程水着姿を見られるのが恥ずかしいのか、中々悠たちの前に出てこない。
「ほら!出てきなよ。センパイたちも待ってるんだから!」
「い…良いですよ………何か恥ずかしいですし………」
りせが必死に説得して岩陰から引っ張り出そうとするが、直斗はそれでも抗って中々出ようとしない。すると、
「そうよ直斗くん。折角の海なんだから、そんな恥ずかしがらずに行きなさいな」
「ひ、雛乃さん………そうですね」
遅れてやってきたらしい雛乃が直斗を説得。雛乃の言葉に納得した直斗がおずおずと岩陰から出てきた。だが、りせは何故か口をあんぐりと開けて硬直していた。一体どうしたのだろうかと一同が首を傾げたが、雛乃と直斗の姿を確認した瞬間、その意味を理解出来た。
「り…理事長………綺麗」
「本当に子供を産んだのよね?」
「な、直斗くんも……凄い…」
「お肌…すっごく綺麗……」
「やっぱりあの胸…詐欺よね?」
雛乃が着こなしているのは黒色のモノキニ。露出度は高くはないが、雛乃特有の大人の色気というものを際立たせおり、とても人の親とは思えないほど若々しく見える。それが相まって周囲の男どもの目を惹きつけていた。何と言うか、穂乃果たちやりせの現役アイドルを押しのけて男たちの視線を独り占めしているような勢いである。これには甥っ子である悠ですら息を呑んでしまうほど見惚れてしまった。
そして、直斗はギンガムチェックのワンショルダータイプ。どうやらりせがこれが似合うと押し切られて購入したものらしいが、元々兼ねそろえていた美貌と
「か、完二くん!?大丈夫ですか!?」
「だ、だい…じょうぶ……っす(ボタボタボタ)」
直斗の水着がそんなに興奮するものだったのか、いつも以上に鼻血をダボダボと出していた。穂乃果たちどころかりせにすら鼻血を出さなかったので、これは珍しい。
「巽くん?大丈夫ですか?どこか具合が……」
「ちょっ!直斗君!そんなに完二に近づいたら」
「……ぐはっ…(バタンッ!)」
「巽くん!しっかりしてください!巽くんっ!!」
直斗が急接近したことによって、興奮度が増して倒れてしまった完二。完全にスキー旅行に行った時の二の舞である。その様子を見て、悠と陽介は思った。やっぱり完二を海の彼方までぶっ飛ばすべきではなかったのかと。
「ねえねえ!そんなことより早く遊ぶクマ!」
「そうだな」
「そうするか」
「目の前の惨状を見てその対応って……」
「じゃあ、おっさき―――!」
「ああっ!一番乗りは譲らないぞおっ!!」
いたたまれない雰囲気になりつるあるこの状況を忘れようと、悠たちはそう言って海へ飛び込んでいく。こうして今、特捜隊&μ‘sたちの海水浴が幕を開けた。
「あはは!陽介さんすご~い」
「じゃあ、このままあそこの島までレッツゴー!!」
「OK!…って、無理だろ!?」
「男ならそれくらい根性見せなさいよ」
「クマは頑張るクマ―――!」
「行くぞっ!おらあ!」
「負けるかあああっ!!」
「私だって!遠泳なら負けませんっ!!」
「真姫ちゃ~ん!はやくこっちおいでよ~!」
「別に……今本読んでるから」
「そんなこと言う真姫ちゃんは~こうだ!」
「あっ!私の本!」
「返してほしかったら、こっちおいで~!」
「ちょっ!本が濡れるからやめ……わ、分かったわよ!行けばいいんでしょ!」
「手…手を離したらダメだからね……」
「雪子ちゃん、そんな慌てんでええよ。もっとリラックスして」
「ラビリスちゃん、教えるの上手いわね」
「お兄ちゃん!バナナボートやりたい」
「菜々子も!」
「いいぞ。何時間でも」
「わあ!お札がいっぱい!お兄ちゃんお金持ちだぁ」
「お兄ちゃん……いつの間にバイトしてたの?」
「……叔母さんには内緒にな」
そして、たくさん身体を使って遊んだ後はお昼の時間。皆はブルーシートを敷いて大きな弁当箱を開いた。
「わああっ!美味しそう!!」
「これ全部絵里ちゃんたちが作ったの!?」
「ええ。この前は悠とことりに作ってもらったからね。朝食の時、板前さんのお手伝いをしている間に台所を使わせてもらったから、ちょっと凝ったものを作れなかったんだけど」
そうはにかむ絵里と希が作った弁当は目に張るものばかりだった。色んな具材が入っているというおにぎりの数々にから揚げに卵焼きetc……。流石はμ‘s最高の料理人たちが作った弁当。これで本気ではないとなるとその先が気になってしまうほどの出来栄えだった。
「……私、調理場に立たせてもらえなかった」
「当たり前よ。もうあんな危険物を作らせる気はないわ。ちゃんと基本を覚えるまではね」
「うっ……」
ず~んと沈む雪子に追い打ちを掛けるように絵里はそう言った。
先日のクッキー事件のこともあって、絵里は雪子を台所から締め出している。雪子は練習が出来ないと文句を言っているが、基本が出来るまで立たせないと一蹴した。このことを受けて天城屋の板前さんたちから犠牲になる食材が減って助かったと感謝され、悠にも引けを取らない料理の腕までもあって、良かったら将来ここで働かないかと葛西さんに言われて複雑な気持ちになったとか。
雪子のみならず、その言葉には同じ必殺料理人の千枝やりせ、更には風花にも突き刺さった。
「わあっ!絵里お姉ちゃんと希お姉ちゃんのお料理、おいしいね」
「「菜々子ちゃん……」」
菜々子に手料理を褒めてもらって思わず感動する絵里と希。何故かは分からないが、この純粋な小学生の素直な言葉は心に響く。
「マジで美味ぇ……これが夢までに見た女の子の手作り料理………俺はもう……死んでもいいっ!」
「本当っすね!やっぱり料理できる女って最高っす!!」
「サイコークマ~~~~!!」
今まで女子の手作り料理とは名ばかりの必殺料理を食べさせられた陽介たちは再び感動の涙を流していた。その反応を見た特捜隊女子陣は複雑そうな表情で見ていた。
「ちょっと!にこの作ってるんですけど!どうよ!このにこちゃん特製コロッケは!」
「「「ああ……うん。いいんじゃね?」」」
「ア・ン・タ・た・ち~~~~~~~~っ!!」
陽介のにこの料理に曖昧なコメントをするが、それは大きな間違いだ。似た目はちゃんとしていなさそうな感じだが、にこは自分に匹敵するほどの料理上手だ。そのことは以前にこの家にお邪魔した時に証明されている。にこの名誉のためにも皆にそのことを伝えようとした時、
「わあっ!にこお姉ちゃんのコロッケ、とっても美味しい!!」
「菜々子ちゃん!」
菜々子が先ににこのコロッケを口にして笑顔でコメントしてくれた。美味しいと言われてにこは感激する。
「おっ、確かに美味え!悠にも負けてねぇんじゃねえか?」
「おおっ!矢澤先輩もやるっスねえ!俺も負けてらんねえっス!」
次々に出る好コメントににこは思わず涙が出そうになる。そして、にこが一番感想を貰いたい人物から更に嬉しいコメントが来た。
「うん。にこも相変わらずやるじゃないか。将来良いお嫁さんになるな」
「お、およっ!?……うわああああああああああああん!私、今日死んでもいいわ!」
「にこちゃん!?」
菜々子の美味しいコメントと悠の爆弾発言。それが相乗した効果は見ての通り、にこを号泣させた。一体何がそう刺さったのか分からず、コテンと首を傾げる悠と菜々子だった。
「はあ~やっぱり、こう水着の女子がキャッキャウフフで遊んでる姿は目の保養になるなあ」
「ああ……」
午前中は少しはしゃぎ過ぎたので少し砂浜で休憩している悠と陽介。目の前では浅瀬で追いかけっこしてる穂乃果たちや砂浜で砂の城を作っている菜々子とことりがいる。見ると、希と絵里はパラソルの下で自分たちと同じく小休憩を取っていた。風花はメンテナンスの時間だとラビリスを連れてバスの方へ戻っていき、雛乃は久しぶりだからと1人で遠泳しに行った。
午前中もフルスロットルで動き回ったというのによくそんな体力があるものだと女子陣の有り余る体力に感心してしまう。そんなことを思いながらぼおっとしていると、陽介はふとこんなことを聞いてきた。
「お前さ、ぶっちゃけて聞くけど
「えっ?…」
「何気にいつも一緒にいるんだろう?そんな中で俺の理想はこの子だって思ったことねえわけ?穂乃果ちゃんとか海未ちゃんとかさ。希ちゃんに至っては大事な幼馴染だろ」
唐突にそんなことを聞かれて戸惑う悠。確かに音ノ木坂学院に転校してから穂乃果をはじめとする女子たちと過ごすことが多くなったわけだが、陽介が言ったようなことは正直考えたことはなかった。
(……と言ってもな)
「ちなみに言うと、俺は断然花陽ちゃんだな。年下っていうのもあるけど、やっぱり里中たちにはない癒しとか母性があるだろ?そこがグッとくるんだよなあ」
「それ、里中たちに聞かれたらまずそうだけどな」
仮にそうなったら、陽介は業火に焼かれて風穴開けられた挙句に星になっていることだろう。最もそれをやるのは誰かとは言わないが。
「はは、違いねえ。それで、お前はぶっちゃけ誰がタイプなんだよ。誰にも言わねえから」
「まあ…強いて言うなら……」
陽介に強く言われては断る訳にもいかず、陽介に言うくらいなら良いかと思った悠は己のタイプの女性を告げようとしたその時、
「きゃああああああああっ!」
「「!!っ」」
「紐ほどける~~~!!」
「ちょっ、クマ!何やってんの!?」
「ケチケチクマね~。もっとこう豪快にポロリと~」
「きゃあっ!だめええ!!」
海の方から女子陣の悲鳴が聞こえてきたのでよくよく見てみると、例の如くクマがポロリを狙おうと女子たちにセクハラを働いているところだった。
「あのバカグマ…まだ懲りてなかったのか。てか、今ことりちゃんに手出してなかったか?」
「……よし、仕留めよう。陽介、得物はあるか?」
「ねえよ…」
これは失言だったと陽介は今更ながら後悔する。だが、あのクマもこのシスコンに一回シバかれたら少しは反省するだろう。そう思ってクマの冥福を祈ろうとしたその時、
「ぐぎゃああああああああああああっ!!」
「捕まえたぞ!ゴラァ!!ことりたちに変なことしてんじゃねえ!」
「む…無念……」
既にクマは完二に捕縛されていた。去年も同じことがあった故か、手馴れていて迅速な手際だった。
「完二くん、ありがとう」
「いいっすよ、こんくらい。後は先輩らにシバいてもらうんで」
「ほどほどにね」
「「……………………………」」
この一連の展開にデジャブを覚える悠と陽介。見ると、完二は捕まえたらしいクマを片手に乗っけて砂浜に上がってきたところだった。そしてよく見ると、何と下に履いていた海パンがないのが見えた。これはまさか…
「あっ!先輩、聞いてくださいよ。このアホグマがまた」
案の定、完二はクマへの文句を聞いてほしいのか悠たちの方へと歩いてきた。
「お、おい!?完二!!お前…下!」
慌てる悠と陽介を見て、完二は自分の下を見てみる。そして、
「下?………ああ、安心してください。履いてますから」
思わずそっと見てみると、確かに完二は履いていた。去年の悪夢を思わせる黒のブーメランパンツを。
「紛らわしいんだよ!てか、何で海パンの下にそれ履いてるんだよ!!」
「ええっ!いや、海パンの下にこれ履くのってポロリ対策になるって本にあったっすよ!」
「ま、まあ…確かにあるっちゃあるけど……またそのブーメランパンツかよ」
「家にこれしかなかったんで……」
「去年みたいにヴィーナスが誕生するよりかは良いんじゃないか?」
「まあ…そうだな」
何はともあれ去年のポロリ事件の焼き増しにならなくて良かった。とりあえず、完二の海パンは捜索しなくてはいけないため、特捜隊男子陣は流された完二の水着を探しに行ったのだった。勿論、また再犯の恐れのあるクマを引きずって。
「はあ…悠たちは何やってんだか」
「まあ、ええんやない。楽しそうやし」
先ほどの男子たちのやり取りを聞いていたのか、パラソルで休憩を取っていた絵里と希はそんなことを言っていた。実のことを言うと、ああやって陽介たちとはしゃぐ悠の姿は彼女たちに新鮮に映ったのだ。音ノ木坂ではいつも自分たちに構ってばかりであまり男子たちとはしゃぐ悠を見たことがないのもあるが、ああやって気の知れた男友達と遊ぶことがそんなに楽しいのだろう。
「あれ?」
ザッバアアアアアアアアアアアアン!!
すると、突如大きな波が砂浜に押し寄せてきた。浅瀬で遊んでいた穂乃果たちが巻き込まれたようだが、大丈夫だろうか。心配そうに見つめる絵里と希だが、それは杞憂だったようだ。
「ふう…凄い波でしたね」
「うん!サーフィンしたみたいで楽しかったよね!」
「そう言ってるのは穂乃果ぐらいですよ」
「一回上がりましょうか…少し疲れましたし」
そう言いながら砂浜に上がってくる穂乃果たち。被害を受けたどころか、むしろ遊園地のアトラクションを楽しんだかのような反応だった。相変わらずなものだなと思った2人だが………
「えっ?………えっ!?ちょっちょっちょっ!!」
その考えは甘かったと気づかされた。
「えっ?絵里ちゃんどうしたの?それに希ちゃんも」
「そんな泡を食ったような顔をして」
「あ……あのな……海未ちゃんと花陽ちゃん……………下が……」
「「「「下?」」」」
希に促されて、穂乃果たちは海未と花陽の下の方を見てみる。そして、それを確認した途端、皆はまるで銃声を聞いたかのように仰天した。
「「きゃ、きゃああああああああああっ!!」」
「海未ちゃんと花陽ちゃんが
まさかの事態。完二の代わりに海未と花陽の上半身裸になっていた。どうやら先ほどの大波に飲まれた時に水着が流されてしまったらしい。おそらくさっきクマに悪戯されて紐が少しほどけたことも一因あると思うが、まさか本当にポロリするとは思わなかった。
「ちょっと、どうしたのよ……て、ヴぇええええええええっ!!」
「海未ちゃんと花陽ちゃんが……」
「ど、どどどどうしよう!?」
「と、ととりあえず何人かで2人を囲むのよ!!」
「わ、私何か探してくる!」
「凛も探してくるにゃ!」
絵里の指示で何人かで海未と花陽を囲んで周りから見えないようにして、穂乃果と凛は何か隠せるものはないかとすぐさまどこかに走り出した。残ったメンバーも頭を回転させて対策を考えるが中々いいものが思いつかない。タオルで隠そうともそれは今バスの中にあるし、近くに都合よく隠せるものなどない。
「おおいっ!お前ら!」
すると、遥か彼方から完二の水着を探していた悠たちが戻ってきた。さっきの波が女子たちに何か被害を与えていないかと心配になったのだろう。
だが、こちらは今緊急事態。それも男子たちには見せられないものがあるので、何とか追い返そうと千枝は男子たちに向かって叫んだ。
「こっちくんなーー!」
「今はダメですうううううっ!!」
「えっ?なんだって?」
「何かあったのか?」
「ちょっと焦ってるぽいし、急いだ方が良いっすね」
千枝たちの大声も虚しく遠くにいる悠たちに千枝の必死の声は聞こえず、何かあったのかと思ったのか、走ってこちらに向かってきた。
「やばっ!あいつら上がってくる!」
「どどどどどどうしよう!?」
「あいつら、こんな時に難聴系主人公みたいなことすんなっての!!」
このままでは上半身裸の姿を男子たちに見られてしまう。いっそこのまま悠たちを強引に吹き飛ばして時間を稼ごうかと考えていたその時、
「海未ちゃん!花陽ちゃん!あったよ!」
何かを探しに行っていた穂乃果と凛が戻ってきた。手に何かを持っているようだがそれは……
「って、ワカメじゃないですか!?」
「こんなのどうするんですかっ!!」
「いや、これくらいしかなくて」
穂乃果が持ってきたのは胸が少し隠せるくらいの大きさのあるワカメだった。どこかで拾ってきたのか分からないが何故それを持ってきたのか。抗議したいところだが、もうすぐそこに男子たちは迫ってくる。
「良いから早く!!」
だが、もはや選択肢はない。海未と花陽は一時の恥ならばと諦めて、穂乃果と凛からワカメを受け取った。
「「「…………………………」」」
男子陣は目の前に広がる光景に唖然としてしまった。そこにはワカメで胸元を隠す海未と花陽の姿があったのだから。何もコメントが出来ず、ただただ気まずい空気が流れていた。
「……………………これは?」
「こ、これはその………考える人?…だっけ?」
「それを言うなら、ヴィーナスの誕生でしょ」
「……どっちでもいいです…………きゃっ!」
「「「あっ……………」」」
すると、何かを踏んでしまったのか、海未はそれに驚いてワカメを離してしまった。そうなると、どうなるかはもうお分かりだろう。
「う、海未ちゃん!!ゆ、悠さんたち……見た?」
「「「「…………ごちそうさまでした」」」」
ー!!ー
ドオオオオオオオオンッ!!
瞬間、見てはいけないものを見てしまった男共は女性陣によって海の彼方へ吹き飛ばされた。そして、男子たちはわが生涯に一片の悔いなしと言うように腕を上げてそのまま沈んでいった。
「これで…良かったのかな…」
「とりあえず……かゆいです」
「ううううう……」
その後、懸命な捜索により2人の水着はちゃんと見つかり、吹き飛ばされた男子たちも無事回収されて何事もありませんでした。
そろそろ日が傾いてきた頃、
「まあ…なんだかんだあって、楽しい一日だったな」
「ハァ……一瞬離岸流に流されそうになったっすけど……」
「いや、アレは完全に私たちが悪かったですから。本当にすみませんでした…」
「うううう……もうお嫁にいけません…」
階段近くでクマを除く男子陣とポロリ被害に遭った花陽と海未、そして真姫と絵里と希たちはぐったりとしながら水平線を眺めていた。今日は色々楽しいこともあれば災難に遭ったこともあって、心も身体ももうクタクタになっている。
ちなみに砂浜ではその他の女性陣が砂浜でお城を製作中だった。何かこだわりがあるのか、楽し気ながらも真剣な表情で製作している。あの中に入るのは気が引けたので、何か話題をと希が真姫にこんなことを聞いてきた。
「真姫ちゃんもどうやった?久しぶりの海は」
「私は……まあ、楽しかったです。皆に誘われなかったら、絶対海なんて行かないし」
「はは、確かに真姫ちゃんは深窓の令嬢ってイメージだもんな」
陽介の軽口に真姫はうっとなりながらも視線を逸らした。
「でも……そのイメージとは違うことをするって……悪くないって思った。前まではいつも勉強ばっかりだったから」
「なるほどな。まあ言うなれば、キャラやイメージって言うのは、壁だもんな。高い壁に囲まれてりゃ、楽かもしれないけどよ。楽と楽しいは違うっつーかさ………」
真姫の言葉に何か思ったのか、意味深にそう語る陽介。広大な海を目のあたりにして、何か語りたくなったのだろう。しかし、
「先輩…去年と同じこと言ってるっすよ」
「マジで!?うわああああっ!俺、また語っちゃった!?同じこと語っちゃった!?」
完二の言う通り、陽介は去年と同じことを同じ場所で語ってしまった。あまりに恥ずかしい失態に陽介は頭を抱えてしまう。
「存分に語れ。恥はかき捨てっていうだろ」
「恥だっていう認識は覆らない訳ね……ハァ………俺はいつまでガッカリなんだよ…」
更に傷口に塩を塗られたような仕打ちを受けて陽介はついに項垂れてしまった。これはやり過ぎたかと悠は些か罪悪感に見舞われたが、周りはそうではなかった。
「でも、陽介さんの言っていることは何か分かる気がしました。こういうイメージがあるから、こうしたらダメだって……アイドルや芸能人なら話は別かもしれないですけど……それは自分で自分を縛ってる感じがして、嫌ですね」
「そうですね。私も以前穂乃果のスクールアイドルの誘いを断ってしまったのは自分のイメージに固執していたからかもしれませんね」
「私も。生徒会長だからって、妙な見栄を張って周りに壁を作ってたのよね……でも、悠や穂乃果たちがその壁を破ってくれた」
陽介の言葉を聞いた花陽たちがしみじみそう言った。どうやら今の陽介の言葉に思うところはあったらしい。
「改めて思うと、ウチらは恵まれてるなぁ」
「ああ、希ちゃんの言う通りだな。俺たちはそんなつまんねえ壁を破ってくれた、親友に出会えたんだからよ」
陽介が照れ臭そうにそう言うと、皆は一斉に悠の方を向いた。本人もそこまで鈍感ではないので、皆の視線の意味を察したのか、どこか照れ臭くなった。
「お前は前に俺たちと出会えてよかったって言ってたけどよ、それは俺たちも一緒だよ。俺たちもお前と会えて良かった。こうして、自分の殻を破ってみんなと良い思い出作れたんだからな」
「ああ…」
悠と陽介は互いにそう言うと、いつものように拳を合わせて二カッと笑った。その様から、まるで絵に描いたような相棒と言った関係を垣間見た気がして、絵里たちも思わず微笑みを浮かべてしまった。
「おおい!悠さーん!みんなーー!!写真撮ろうよ!ちょうどでっかいクマさんが完成したからさ!」
すると、砂浜で遊んでいた穂乃果たちがこちらに手を振って呼んできた。見ると、砂浜に遠くから見ても認識できるほどのドデカい砂のクマ像が完成していた。あまりの出来具合に思わず感嘆の声を上げてしまった。
「「「おおおおおおっ!!」」」
「いや、デカすぎでしょ!?5mはあるわよ!」
「しかも完成度も高いし!!どうやって作ったんだ!?」
ただでかいだけでなく、コンテストなどに出したら間違いなく賞を取れるのではないかというほど細部に至るまで精密にクマが再現されていた。いくら何でも穂乃果たちの手で作れるとは思えないほどの出来栄えだ。海未と陽介のツッコミに穂乃果たちは苦笑いをした。
「いや~、せっかく作るんだからって思って夢中になってたら、こんなになっちゃって」
「すごいクマ~!クマのクマが大きく再現されてるクマよ~!」
「菜々子もがんばったよ。クマさんの足は菜々子が作ったの」
「私がやった。何かコーハイたちと一緒に作ってたら、勢いで」
「やっぱりマリーちゃんかよ!?」
犯人はやっぱりマリーだった。こんな人間離れ染みたことをやってのけるのはマリーしかいない。流石にこれには陽介のみならず、絵里や真姫たちも唖然としてしまった。しかし、この男は違った。
「良いんじゃないか」
「良いのか……って、いつの間に人だかりできてるし!?てか、お前もサラッと写真撮ってんじゃねえよ!!」
「菜々子とことりが作ったものは保存しておきたい」
「ここでシスコンを発動させんな!!てか、これほとんどマリーちゃんの作品だろ!?」
悠は通常運転で写真を撮ってるし、あまりの物珍しさに周りの人も続々と集まって写真を撮り始めていた。何というか既にもう状況がカオスだった。
「鳴上くん、そんなに保存したかったら、このまま持って帰ろうか?ウチがこれを抱えて」
「お願いできるか?」
「いややめて!絶対崩れちゃうから!せっかくの作品を壊れちゃうからやめて!ラビリスちゃん!!」
「誰かラビリスちゃんを止めろ―――!!」
後日、七里海岸に突如現れた巨大な砂のクマ像は注目を浴び、一時ネットで話題になったらしい。そして、それが話題を呼んでジュネス稲羽店のの売り上げが数倍上がったとか。
最後の最後まで特捜隊&μ‘sの海水浴は賑やかだったであった。
「ふふふ、みんな疲れてるわね」
夕焼けに染まる道を走っている最中、バックミラーで車内を見てみると、悠たちは遊び過ぎて疲れたのか、座席でぐったりと眠っていた。端から見守っていたが、今日はポロリがあったり巨大な砂の城を作ったりとしてのが原因だろう。それでも泥のように眠る悠たちの寝顔はとても楽しそうだった。
「来年も……こうしてみんなではしゃげたら良いわね…悠くん」
雛乃はそう悠に語り掛けると再び運転に意識を戻した。しばらくして、ようやく天城屋旅館に戻ってきたその時、タイミングを見計らったかのように雛乃の携帯に着信は入った。誰からだろうと思ってみると、知らない番号だった。
「もしもし、南です………えっ?りせちゃんのマネージャーさん?」
ーto be continuded
Next #66「Scout for Bond festival.」