PERSONA4 THE LOVELIVE 〜番長と歌の女神達〜   作:ぺるクマ!

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あけましておめでとうございます。

去年同じ時期に正月モノの番外編をシリーズ化したものです。年初め最初の投稿ではありますが、楽しめてもらえたら幸いです。


Extra⑥「Happy New Year!-2019-」

……………………………………………………

 

 

 

 

 

「あれ?ここは……」

 

 

 

 目を覚ますと、悠はとあるお洒落な雰囲気のあるラウンジの席に座っていた。

 窓にはどこかの夜景が映っており、古い町並みと街灯、そして広がる暗闇の海が織りなす厳かな雰囲気に思わず目を奪われてしまった。一体ここはどこなのだろうか。

 

 

「綺麗な夜景ですネ♪鳴上先生♡」

 

 

 気が付くと、隣に見覚えのない美少女がいた。ショートの金髪に青い目、胸元が大きく開いた紫色のイブニングドレスに身を包んでいる。どこぞのお嬢様なのか、雰囲気が上品に見えた。もう一度言うが、自分にこんな知り合いにいない。ましてや、この子に先生と慕われる程のことなどしていないはずなのだが。

 

「あ、あの……君は?」

 

「君って…寝ぼけているのデスか?私は貴方が愛するマリー……小原鞠莉です!もう雰囲気に酔っちゃったんデスか?いくら何でも早すぎますヨ」

 

「ま、マリー?」

 

 マリーと言えば、自分の大切な知り合いの久須見真理子もいるのだが、あの人物とは全然違う。それはともかく、ここは何処なのかも確認しておくべきだろう。

 

「ここは……どこだ?」

 

「まだ寝ぼけているのデスか?ここは()()()()。私とダイヤと果南の卒業旅行に付き添ってきてくれたんじゃないデスか♪」

 

「イタリア!?」

 

 衝撃的な発言に思わず驚いてしまう。確かにこの美しい夜景から日本ではないと思っていたが、まさかイタリアとは思っていなかった。それにダイヤと果南って誰だ?辺りを見渡すが、この場所には自分とこの鞠莉という謎の少女だけしかいない。その2人は今どこにいるのだろうか。

 

「そんなことより、まずは乾杯しまショウ。先生♡」

 

 そして、鞠莉は手元に置いてあったグラスを取って乾杯するようにチンと鳴らした。しかし、悠はグラスのドリンクを見て怪訝な表情になる。

 

「なにこれ?」

 

「ジンジャーエールですヨ。先生はお酒は弱いとお聞きしたので」

 

「明らかに違うものに見えるんだが?」

 

「そんな細かいことは気にしないで下サーイ。せっかく2人っきりなんですから……」

 

 すると、鞠莉は潤んだ瞳でこちらを見てきた。その上品な仕草と表情に思わずドキッとしてしまったが、悠は何とか冷静になって窓の夜景に目を移した。経緯はどうあれ、せっかくのイタリアなのだ。再び訪れることはないかもしれないので、この素晴らしい夜景を目に焼き付けなければと思ったが、彼女はそうはさせてくれなかった。

 

「せんせ~い!このエクセレントな夜景を見るより、もっとマリーを見て下サーイ♪夜は長いんデスから♡」

 

 よほど構って欲しいのか、鞠莉はスッと身体を悠に寄せてきた。彼女の柔らかい感触が直に来たので思わずビクッとなってしまう。

 

「あ…あの……ところで、ホテルとかは大丈夫なのか?かなり遅い時間っぽいし……その………ダイヤや果南…も心配してるんじゃ…」

 

「ふふふ、このマリーに抜かりはありまセーン!ちゃんとここのホテルのスイートルームを取ってマース!もちろん先生と相部屋で♪」

 

「えっ!?」

 

 気になったことをふと言ってみたらまさかの衝撃発言。鞠莉はそう言うと胸元からスッと一枚のカードキーを取り出した。

 

「大丈夫デース。お金の心配はありませんし、名簿にはちゃんと"小原悠"と"小原鞠莉"としておきましたから♪これなら心配なく泊まれますヨ」

 

「ちょっとまて。男女で相部屋はまずいだろ。それに、俺と君は教師と生徒の間柄だろ……それは流石に……」

 

 何故自分が教師となっているのかは分からないが、仮にそういう関係だったとしたら、これは流石にまずい。すると、悠の言葉に鞠莉はムスッとした顔をすると、顔をずいっと近づけて声をワントーン低くしてこう言った。

 

「いい加減諦めてください。私が今日の日のためにどれだけ投資したと思ってるんですか?」

 

「いくら使ったんだ?」

 

「うふふ、まさに持つべきものはマネーですネ♡」

 

「もっと別のことに使ってくれ……」

 

「Oh!それは私たちの将来のことを思ってのことですか?シャイニー!嬉しいデース!」

 

 突き放す感じにそう言ったのでこれで退くと思ったが、全くの逆効果で鞠莉はそれが嬉しく感じたのか、思いっきり悠の胸に抱き着いてきた。それを受け止めきれず、悠と鞠莉は床に倒れこんでしまった。

 一気に距離が近づいたことによって鞠莉の身体が所々に密着する。顔も近く、思わずクラッとしてしまう匂いが鼻を刺激した。まだアルコールも入っていないのに何か酔ったみたいに視界が揺らいでしまう。

 

 

「先生、私はこう見えても本気なんですよ……だって、貴方が私を……ひとりぼっちだった私を救ってくれたから……私はあなたのことをとっても好きになったのデス……」

 

「!!っ」

 

 

 耳元で囁く鞠莉の声に嘘はないと【言霊遣い】級の伝達力がそう言っている。それがストレートに伝わってきたので、悠の心の鼓動も徐々に早くなっていく。この子の好意は偽りじゃないと認識したことで、悠の意識は全て目の前で愛おしそうに見つめる鞠莉に集中した。

 

「それに…私も卒業して……もう教師と生徒の関係じゃ…ないんですから………」

 

 潤んだ瞳でそう見つめられては声が詰まってしまう。そして、鞠莉は目を閉じるとゆっくりと顔を近づけていった。これ以上はいけないと頭で警告が鳴っているが身体はそれに抗えない。突き放す力を失い、このままなさるがままにキスしようとしたその時、

 

 

バタンッ!

 

 

「あああああああああああああっ!!見つけた!!」

 

 

 

 その直前、誰かが押し入ってきた音が聞こえ、同時にとある少女のけだましい声が響き渡った。ビクッとなって振り返ってみると、そこには大勢の少女たちがこちらを睨んでいた。

 

 

「どこに行ったのかと思っていたら……」

「こんなことに……」

「まさか…お兄さんと……良い感じになってたんなんて……」

「ちょっ!ヨハネの主に何しようとしてたのよ!?」

「もしかして今、先生とキスしようとしてたズラ!?」

「せ、先生とキス………ぴぎゃあああああっ!!」

「ま、鞠莉さん!?破廉恥ですわっ!!ま、まさか……先生と…」

「流石にこれは笑えないよねぇ」

 

 

 何と言うか、目の前で勝手に盛り上がっている少女たちをどこかで見たことがある気がする。特にあのオレンジ髪の子は穂乃果に似ているし、赤紫色のロングヘアーの子は至っては折り紙を教えた梨子と瓜二つだ。

 おそらくあの中のうち2人が鞠莉も言っていたダイヤと果南という友達だろう。なら、あとの少女たちは誰なのか。

 

「Oh!ダイヤに果南!それに千歌たちまで……何故ここに?」

 

「それは……あっ」

 

 この事態には鞠莉も困惑しているようだ。誰かが事情を説明しようとした途端、その中からとある女性が1人コツコツという音を立ててこちらにやってきた。その女性を見た途端、鞠莉は顔を青ざめた。

 

 

 

 

 

これは、どういうことかしら?あ・な・た?

 

 

 

 

 

 聞き覚えのある冷たい声。まさかと思って、その人物の顔をみようとした途端、まるで待ち受けていたかのように視界がぼんやりと歪み始め、視界が暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 再びを目を開けると、今度は見覚えのある部屋にいた。ここは稲羽にある自分の部屋。寝ている場所は紛れもなく自分の部屋の布団だった。

 

「ゆ…………夢か」

 

 どうやら、さっきのは全て夢だったらしい。見ると、汗がどっと出ていた。カレンダーを見ると、日付は1/2となっている。

 

 

「初夢にしては……恐ろしいものをみたな」

 

 

 そう呟くと、悠は布団から身体を起こした。夢の内容も笑えないが、一番気にかかるのがあの声の人物だ。一体誰だったのだろうかと疑問を残して、悠はいそいそと着替えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<堂島家>

 

「おう…起きたのか、悠」

 

「おはよう!お兄ちゃん!」

 

「おはよう、悠くん。朝ごはん出来てるわよ」

 

 居間に降りると、そこには変わらない堂島家の朝の光景があった。台所で雛乃が腕を振るって料理を作り、ことりと菜々子がこたつのテーブルにお皿と箸を並べている。堂島はゆったりとテレビを見ていた。ちょうど箱根駅伝がスタートしたところで、外を見ると去年に負けないほどの雪が深々と降り注いでいた。

 

 

「ところで悠、お前宛に年賀状がたくさん来てたぞ」

 

「年賀状?」

 

 駅伝を見ながら朝食を取っていると、堂島がふとそんなことを言ってきた。

 

「ほら、これだよ」

 

 そう言うと、菜々子はどこからかたくさんの年賀状を抱えて出してきた。よく見ると、そのほとんどが鳴上悠宛となっていた。それを見て年賀状とは懐かしいと悠は思った。親の転勤で引っ越しを重ねてきた故か、年賀状など送っても無意味と思ってしばらく書いていなかったし、自分宛に来たものなどほとんどなかった。

 改めて見ると、こうして自分に年賀状がたくさん届くとどこか気持ちが高ぶる自分がいるのを感じる。

 

「そうか……じゃあ、ゆっくりテレビでも見ながら見てみるか。誰か出してない人がいるかもしれないし」

 

「そうだね」

 

 何はともあれ久しぶりの年賀状だ。じっくり見てみるのも一興だと、悠はことりと菜々子と一緒に年賀状を手に取った。

 

 

 

 

 

 まず、陽介とクマからだ。ジュネス稲羽店をバックにピースしている2人の写真が大きく映っていて、下の方に手書きのメッセージが書かれてあった。

 

 

『明けましておめでとう!今年もよろしくな!相棒!!』

『センセイ・ナナちゃん・コトチャン、あけましておめでとうクマ~!』

 

 

「うん。普通だね」

 

「陽介たちなら何かしてくるかと思っていたが、まあこれくらいが正月らしくて良いか」

 

 

 ガッカリ王子と称される陽介やトラブルメーカーのクマに至っては普通の年賀状だった。何と言うか、何か小恥ずかしいことを言って自爆という構図が浮かんでいたのだが、予想に反して普通な内容だったので拍子抜けだった。別に年賀状にそんな気てらったものを求めている訳ではないが。

 

 

 お次は千枝や雪子たちからだ。更には完二やりせ、直斗からのも届いてある。皆陽介と同じ家族との写真を背景に手書きのメッセージが書いてあるものだ。メッセージの内容が似たり寄ったりだったので、ダイジェストで見てみよう。

 

 

『明けましておめでとう!今年もよろしくね!肉は君を裏切らない!』

 

『明けましておめでとう。今年も天城屋をよろしくね。今度ことりちゃんたちと一緒にどうぞ』

 

『先輩!明けましておめでとうっス!!今年も俺、先輩についていくっス!!』

 

『せんぱ~い!明けましておめでとう!今年こそ、貴方のハートをゲットしてみせるよ♪7月からのアニメも頑張ってね☆』

 

『昨年はお世話になりました。先輩は今年数々の神秘的な事件に巻き込まれると思いますが、ロードとして頑張って下さい』

 

 

「……後半おかしくないか?」

 

「うん…千枝さんと雪子ちゃんとかは良いとして、りせちゃんと直斗くんは何かコメントしづらいし………りせちゃんは後でオハナシだけど………

 

 特捜隊メンバーの他にも悠宛の年賀状が届いていた。部活動仲間の一条康に長瀬大輔、エビ…もとい海老原あいに後輩の松永綾音、家庭教師の生徒の中島秀。稲羽の知り合いからも年賀状が届いていて感無量になる。それもそのほとんどがμ‘sを応援しているとかラブライブ頑張って下さいなどと言ったメッセージが多かった。

 

「みんな、μ‘sを応援してるって言ってるな。ラブライブ頑張れって」

 

「こうしてみると、嬉しいね」

 

「菜々子も嬉しいよ!」

 

 こんな東京から遠く離れたところでもμ‘sを応援してくれる人たちがいる。そんな稲羽の住人からの応援メッセージに悠とことりは何だか元気を貰えた気がした。

 

 

 

 

 

 続いてμ‘sのメンバーからだ。最初に出てきたのは海未からのものだった。こちらは家族の写真はなく、着物を着こんだ海未が門松の隣で微笑みを浮かべている写真は背景に手書きのメッセージが書かれてあった。

 

 

『あけましておめでとうございます。今年も色々と穂乃果が迷惑をかけるかもしれませんが、よろしくお願いいたします』

 

 

「海未はちゃんとしているな。字も達筆で綺麗だし、着物姿も綺麗だ」

 

「穂乃果ちゃんのことを言ってくる辺り、やっぱり海未ちゃんは穂乃果ちゃんのお母さんみたいだよね……」

 

「そうだな」

 

「ところで、着物の海未ちゃんを綺麗って言ったことについては後でオハナシね♪」

 

「えっ?」

 

 続けて、その穂乃果たち高坂家からの年賀状だ。こちらも穂乃果と雪穂が着物を着てピースしている写真が背景になっていた。そして肝心のメッセージはというと、

 

 

『明けましておめでとう!今年もよろしくね!悠さん!』

『悠さん、今年も姉をよろしくお願いします』

『鳴上くん、卒業後ここで働かない?ついでに穂乃果か雪穂をお嫁に』

『お母さん!?何言ってるの!?』

『悠さん!今のは気にしなくていいですからね!?』

 

 

「何で年賀状で会話しているんだ……」

 

「いろいろとツッコミ満載だよね……」

 

……きーちゃんには後でお話しなくちゃいけないかしら

 

 娘たちが普通に新年の挨拶をしているのに、何故母親はさりげなく勧誘しているのだろう。それに、心なしかこの年賀状から穂乃果の父親のモノらしき殺気が感じられるのは気のせいだろうか。そして、何か後ろで年賀状を見ていたらしい雛乃が黒いオーラを醸し出しているが次へ行こう。

 

 

 次は同じ現象が起きそうな西木野家だ。

 

 

『明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします』

『昨年は真姫がお世話になりました。是非とも真姫を鳴上くんの嫁にもらって下さい今年も娘をよろしくね

 

 

「ほら、やっぱり……」

 

「これ、絶対真姫ちゃんが改ざんしたよね?その跡が丸わかりなんだけど……」

 

……西木野さんもお話しなければいけないかしら?

 

 雛乃の黒いオーラが更に禍々しさを増していく。これ以上酷いことにならないようにと次の年賀状に移った。次のを見ると、何とシャドウワーカーの美鶴からのがあった。とりあえずこれで一旦落ち着こうと、美鶴からの年賀状を手に取った。

 

 

『明けましておめでとう。去年はラビリスや皆月のことで世話になった。今年もどうかよろしく頼む。そして、もし進路に困ったら言ってくれ。シャドウワーカーはいつでも君を歓迎する』

 

 

「美鶴さんもか!?」

 

「まだお兄ちゃんのこと狙ってたんだ……」

 

 美鶴は大丈夫かと思ったのに、裏切られた気分になった。確かに去年何回かシャドウワーカーに入らないかと言われたことがあったが、まさかここにも出してくるほど本気だったとは……余程人員が足りていないのだろうか。

 

「お前、色んなところで人気者だな……」

 

「本当よねえ………桐条さんも後でオハナシね……」

 

 色んなところで就職?のお誘いがあった悠に堂島と雛乃は各々そんな反応を見せた。その叔父と叔母の視線が耐えられなくなかったのか、悠は振り切るように次の年賀状を読み進めた。

 

 

 

 次の年賀状は花陽と凛、そしてにこと絵里からだった。ここも着物を着てポーズを取っている写真を背景に手書きのメッセージが書いてあるもので、内容が似たり寄ったりだったのでダイジェストで見てみよう。

 

 

『明けましておめでとうございます!』

『今年もよろしくにゃ!』

 

『去年は世話になったわね。今年もよろしく頼むわ』

『悠兄様、今年もお姉様をよろしくお願いいたします』

『悠にい!また一緒に遊ぼう!』

『あそぼ~う』

 

『明けましておめでとう』

『鳴上さん!来年もよろしくお願いいたします!』

 

 

 うん。ここまではいたって問題はなかった。強いて言えば、亜里沙が来年と今年を間違えていたことだが、許す。

 それにしても矢澤一家と絢瀬姉妹からの年賀状はどこか心が洗われたような気持ちになった。菜々子と言い、こころやここあと亜里沙といい、何故小さい子の言葉は癒しを与えてくれるのだろう。そう思っていたのが顔に出ていたのか、ことりが怪訝そうにこちらを見ていたのだが、そっとしておこう。

 

 

 さあ、次は鬼門の希だ。どんなことを書いてきたのだろうと身構えて見てみると、神田明神の巫女服に身を包んだ希が微笑む写真で以下のことが書かれてあった。

 

 

『悠くん、明けましておめでとう!今年も悠くんにとって素敵な一年でありますように』

 

 

「あれ?普通だ。希のことだから何かあるんだと思ってたんだが…」

 

「本当だね。あれ、ここにおみくじがあるよ」

 

 見ると、右下の一角におみくじと書かれているところがあった。どうやら銀の部分をコインなどで剥がして内容が分かるという仕組みになっているようだ。希にしては中々粋なことをするなと思った悠は意気揚々と銀のところを剥がしていく。すると

 

 

大吉

"あなたは今年素敵な嫁ができるでしょう!将来は2人の子供と義妹に恵まれます。特徴は大きな胸とスピリチュアルな雰囲気の子です。"

 

 

「やっぱり………」

 

 普通だと思っていたらこれだ。このおみくじ、完全に希の手作りなのが丸わかりだし、女の子の特徴というのも絶対希自身を指している。あからさま過ぎるアプローチに悠は思わず苦笑いしてしまった。だが、

 

「…………………今すぐ希ちゃんをおやつに」

 

「待ったまった!俺からも言っておくから!!俺の部屋から竹刀を持ってこようとするのは止めてくれ!!」

 

 黒いオーラを纏ったことりが今すぐ希の元にカチコミに行こうとしたので、必死に止めにかかった。その後、あの手この手でことりを宥めるのに30分かかったと言っておこう。

 

 

 

 

 

 その後、辰巳ポートアイランドの文吉爺さんや秋葉原のネコさん、更にはA-RISEやかなみんキッチンといったアイドルなどからも年賀状が来ていた。中には去年は世話になったと書いてあった差出人不明のものもあったが、これで大体見終わっただろう。何というか年賀状如きにここまで体力を使うとは思わなかった。これもそれも誰かさんたちの年賀状のせいだが、悪い気はしなかった。

 

 

 

「あっ、まだお兄ちゃん宛の年賀状残ってる…………あれ?この年賀状変だよ」

 

「えっ?」

 

「差出人の名前はないし、紙がちょっと変と言うか………」

 

 ことりが手にした年賀状を見ると、奇妙なことに全体が青だった。もしやと見てみると、端っこにタロットカードのマークが書かれてあった。そして、裏を見てみるとメッセージが書いてあった。その内容は……

 

 

 

 

『明けましておめでとうございます。お客様の世界で年賀状というものは一年の感謝を伝え、関係を深めるために出すものとお聞きしたので、筆を振るってみました。今年がお客人にどのような道を切り開かせるのか、ベルベットルームの住人一同を代表しまして、楽しみにしております。また、私を楽しませて下さい。M』

 

 

 

 案の定、これはベルベットルームの住人からだった。時間の概念がないと言っていた彼らだが、まさか年賀状を書いて送ってくるとは思っても見なかった。書いたのはおそらくマーガレットだろうが、相変わらず達筆だなと改めて感心した。

 

 

 

「ふううっ…」

 

 大方の年賀状を読み終えた悠はぐうっと伸びをすると、一息ついて天井を仰いだ。年賀状を一通り読んで思い返せば、去年は確かに色々なことがあった。

 

 

音ノ木坂の神隠し事件にP-1Grand Prix

オープンキャンパスと学園祭に波乱の夏休み、

更にはその先の絆フェス。

 

 

 どの出来事も一筋ではいかず、皆と力を合わせなければ成し遂げられなかったものばかりだ。あの時のことを思い出すと、ヒヤリとしたことや辛くなったこと、そして何より皆で乗り越えた達成感と嬉しい気持ちが蘇ってきた。

 年賀状は一年の感謝を伝えるために出す者と誰かが言っていたが、そうかもしれない。どんなものであれ、この自分宛の年賀状から十分過ぎるほどの感謝の気持ちが伝わってきたのだから。

 

 

ピンポーン!

 

 

「おっ、あいつらが来たんじゃないか?」

 

 玄関からインターホンが鳴ったと同時に堂島はそう言った。耳を澄ませると、ガヤガヤとした賑やかな声が聞こえてくる。そう言えば今日はせっかく雪が積もったんだからということで雪合戦しようと約束していたのだった。年賀状に夢中になって時が過ぎるのを忘れていたらしい。

 

「あっ、本当だ。じゃあことりが」

 

「いや、俺も行く」

 

「菜々子もいく!」

 

 ここは自分が行こうと、ことりの申し出を遮って悠は皆が待つ玄関へ向かう。

 また今日も仲間たちとも一日が始まる。そんな当たり前の日々に…そして、こんな自分を仲間や友達と思ってくれる彼・彼女たちに感謝して、悠は従妹たちと笑顔で玄関を開けた。

 

 

 

 

 

「「「みんな、いらっしゃい」」」

 

 

 

 

 

 

 

―fin―




明けましておめでとうございます。ぺるクマ!です。

前書きにも書きましたが、去年同じ時期に正月モノの番外編を出して、やっぱり年初めはこういう話を書かなきゃ始まらないと思って急遽シリーズ化して書いちゃいました。来年もし執筆を続けていたら2020年バージョンも作ろうかなとは思ってますが、肝心の本編は数日後に更新する予定なのでご安心下さい。

さて、今回の話のテーマは"年賀状"でした。最初は雪合戦にしようかと思ったのですが、銀魂の年賀状回を見て、こういうのを書いてみようと思ってこれにしました。年賀状って書くのは面倒ですけど、昔の友達や先輩から来ると嬉しいと感じましたね。

それはともかく改めて、読者の皆様あけましておめでとうございます。昨年は色々ありましたが、今年も「PERSONA4 THE LOVELIVE~番長と歌の女神たち~」をよろしくお願いします!

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