PERSONA4 THE LOVELIVE 〜番長と歌の女神達〜 作:ぺるクマ!
皆さまはどのような年末年始をお過ごしでしょうか?自分は年末は京都や東京などあちこち歩きまわって、人酔いしてもうクタクタです。でも、大晦日のFateの特番や正月のウルトラマンDASHなど面白い番組がたくさん見たので、それなりに正月を過ごしています。今年は去年よりもいい年になるように、願うばかりです。
さて、今回は番外編で正月の話です。先日のアンケートで正月ネタが良いと言う方が多かったので、正月のお話を執筆してみました。年末に旅行に行っている時や、親戚の家で年を越した際に執筆したのですが、途中苦労して考えた部分が吹っ飛んで失望しかけたこともありましたが、何とか書き上げました。
この番外編は今の本編での状態をそのまま持ち込んだ形になっておりますので、この正月の話は本編とは別物と考えてください。本編でも正月の話はちゃんと執筆したいと思っていますので。ただ、この先書こうと思っている内容についてもちょろっと出しているところもありますが……それを含めて楽しんで頂けたら、幸いです。
長い前書きになってしまいましたが、おまたせしました。それでは、番外編ではありますが、悠たちの正月をお楽しみください。
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「…………………」
目を覚ますと、悠はどこか知らない場所の椅子に座っていた。周りを見渡すと、そこはどこかの学校の職員室に見えた。小さい学校なのか、普通の学校よりも小さい。悠が座っていたのもその一つの小さい職員用机だった。一体どういうことだろうと思ってると、目の前には蓋の空いた弁当が一つ置いてあった。箱の半分を占めている白米と美味しそうに彩られたおかずたち。それを見ると自然と空腹を感じたので、不思議に思いつつも悠はその弁当のおかずを一つ箸で掴んで口に含んだ。
(この味は………もしかして……)
悠がその味に心当たりを感じたその時、
「鳴上先生―――!!」
職員室のドアが勢いよく開かれ、元気な声と共に一人の少女が入ってきた。その少女はどこかの学校のものであろうセーラー服を身に着けたオレンジ髪の少女。その少女を見て、悠はぎょっとなった。
「ほ、穂乃果?」
「ホノカ?違うよ!私は千歌だよ!」
「ち、千歌?」
よく見れば、その少女は穂乃果と同じサイドポニーではなくショートであった。髪が穂乃果と同じオレンジ色なので、間違えてしまったらしい。しかし、一体この少女は何者なのか?すると、千歌と名乗った少女は何か不思議に思ったのか、悠に顔を覗き込むように近づける。
「もう!先生、本当にどうしたの?それにホノカって誰?もしかして、先生……昔の夢でも見てたの?」
「え?」
「それより先生、遅いよ!お昼から練習って言ってたでしょ!みんな待ってるんだよ!」
「お、おい!」
千歌という少女はそう言うと、悠の手を引っ張って悠を職員室から引きずり出した。全く訳が分からずにどこかに連れて行かれる悠。階段を上る最中、己の恰好を見ると、自分は私服でも八高の学ランでも音ノ木坂のブレザーでもない、学校の先生が着ているようなスーツだった。どういうことだと思っていると、
「みんなー!鳴上先生を連れてきたよ!」
どうやら目的の場所に着いたらしい。見るとそこは屋上で、心地よい風とと共に千歌の他に8人くらいの少女が待っていた。
「ああっ!やっと来たぁ!」
「先生遅いずらよ!」
「先生……」
「まあまあ、センセイも何か事情があったんじゃない?」
「確かに…いつも時間に忠実な先生が遅れるなんて、ありえませんわ」
「こういうこともあるよってことだね」
「ふっ……我がヨハネの主にもそういうことはあるわ」
「とりあえず、先生ヨーソロー!」
「えっ?」
彼女たちの言葉に悠はさらに困惑する。それに彼女たちは一体……。大人しそうな子やどこかの方言を使う子、長いポニーテールの子や何だか訳の分からないことを言っている子など、色々な意味で個性豊かだ。どうなっているんだと頭を抱えようとすると、
「チャオ!鳴上先生!」
「うおっ!」
すると、背後に金髪の少女がまわっていた。いきなり背後から現れたので、悠はびっくりしてしまう。
「おや?…先生は今日は元気がないようですね。それじゃあ、このマリーがハグで先生を元気にしちゃいま~す!」
マリーと名乗ったその少女は両手を大きく広げて、悠に抱き着こうとする。まだ混乱したままの悠は動けずにハグされそうになったが、その寸前に黒髪の少女とポニーテールの少女がマリーと言う少女を羽交い絞めにして引き離した。
「ちょっと鞠莉さん!それはダメですわ!」
「そうだよ!前にそんなことやって、先生の奥さんにこっぴどく怒られたの忘れたの!?」
「Oh!そうでした……でも、それでも燃えるのが乙女というものデ~ス」
マリーと呼ばれた少女は一瞬しょんぼりしたものの、すぐにあっけらかんと反省する気0という感じでそう言った。悠は助かったと思った同時に、彼女たちの発言にある疑問を感じた。
(俺に奥さん?……まさか、さっきの弁当の味は………)
先ほど職員室らしき場所で味わった弁当はある人物の懐かしい味がした。そのことから推測するに自分は……
「それじゃあ、今日も練習頑張ろう!鳴上先生、今日もよろしくね!」
「「「よろしくお願いします!鳴上先生!!」」」
彼女たちはそう言うと、悠にしっかりとお辞儀をした。練習とは一体なんなのか?それに、自分は一体ここで何をしているのか?それに疑問を感じさせる暇もなく、悠の視界は暗転した。
再びを目を開けると、今度は見覚えのある部屋にいた。ここは稲羽にある自分の部屋。寝ている場所は紛れもなく自分の部屋の布団だった。
「…………夢か」
どうやら、さっきのは全て夢だったらしい。カレンダーを見ると、日付は1/1となっている。
「新年早々…不思議な夢をみたものだな」
そう呟くと、悠は布団から身体を起こした。
1月1日
様々な困難を乗り越えた悠とμ‘sは年越しを陽介たち特捜隊と過ごすため、冬休みを利用して八十稲羽を訪れていた。そして、昨日の夜中に特捜隊&μ‘sの皆と神社に集合して、一緒に除夜の鐘を聞いて新年を迎えた。
<堂島家>
元旦の朝を迎えていた堂島家では、早朝から悠とことり、菜々子が豪華な料理を運んでは並べていた。その様子を堂島と雛乃はゆったりと見守っていた。
「おいおい、えらく豪勢なおせちだな……これ本当に悠たちが作ったのか?」
「ええ、俺だけじゃなくて、ことりや東條、絢瀬たちが手伝ってくれましたから」
悠をはじめとする特捜隊&μ‘sが誇る料理人たちの手で作られたおせちは豪華絢爛だった。真ん中には大きな伊勢海老がドンと構えており、定番の黒豆や栗きんとんなどお店に売っているものよりも丁寧な作業が施されている。さらに、アワビやはまぐり・キャビアなどめったにお目にかかれない食材までもが並べてあった。
「お前、こんな高級食材どこで手に入れたんだ?」
「……知り合いからです」
先日、悠たちの元に去年知り合ったシャドウワーカーの部隊長兼桐条グループのご令嬢である"桐条美鶴"から大量の食材が送られてきたのだ。それと一緒に手紙も送られてきており、こう書かれていた。
"去年世話になったお礼だ。これらを存分に使ってご家族や仲間たちと賑やかな正月を過ごすといい。今後ともよろしく頼む"
流石桐条グループのご令嬢はやることが違うというか、色々とぶっ飛びすぎている。お気持ちは嬉しいのだが、こんな高級食材をポンと送られてきても困るもので、悠たちも箱に詰まった伊勢海老やアワビ、キャビアなどを見た時はどうしようかと戸惑った。しかし、せっかく貰ったものを台無しにするのはもっと悪いので、悠・ことり・希・完二・絵里・にこの6人の料理人たちは気合を入れて存分に腕を振るった。結果、気合が入りすぎて豪華絢爛のおせちが人数分完成してしまったのだ。今頃、他の仲間たちも各々の家族と共に、同じおせちを味わっていることだろう。それはそれとして、こちらも準備は整った。準備を終えた悠たちは堂島と雛乃が待つ炬燵に足を入れる。
この家も去年よりも家族が増えたものだと堂島は思った。妻の千里が亡くなって、正月はずっと菜々子と2人だったのが、去年は悠が、今年は悠に加えて雛乃とことりがいる。こうしていると、自分は本当に幸せ者だと思った。そのことに感謝して、堂島は皆に新年の挨拶をした。
「もうみんなには言ったと思うが、改めて明けましておめでとう」
「「「「おめでとうございます!」」」」
「去年は、悠もことりも色々と頑張ったな。菜々子も雛乃にとっても苦労した一年だったと思う。今年は悠は受験で大変だと思うが、お前なら大丈夫だろう」
「あ、ありがとうございます」
「まあ……これくらいのことしか言えないが…みんな今年もよろしくな。それじゃあ、悠たちが作ったおせちを食べるか」
堂島の挨拶が終わると、皆は箸をお皿を持っておせちに目を向けた。今年のおせちはジュネスのものと違い、美鶴が送ってきた高級食材を悠たちの手で彩られた豪華なおせちだ。
「菜々子は何から食べる?色々あるぞ」
「う~ん………こぶまき!」
「あら?菜々子ちゃんは通ね。じゃあ、私も昆布巻きから食べようかしら?」
「お兄ちゃんは何から食べる?」
「そうだな、黒豆から行くか」
「お前ら……高級食材もあるって言うのに……ったく」
高級食材に目もくれず、昆布巻きや黒豆などおせちの定番料理からいただく悠たちに呆れる堂島。かく言う堂島もかまぼこから食べているので、人のことは言えない。こうして、堂島家の正月初めの朝は賑やかに過ぎていった。
おせちを堪能し、一息ついた堂島家。
「それじゃあ、私はことりと菜々子ちゃんの晴れ着の着付けを手伝いますから、悠くんと堂島さんは先に神社で待っていてください」
雛乃にそう言われて、いそいそと外に出る悠と堂島。流石に家族とは言え晴れ着姿への着替えを見る訳にはいかない。すると、
「おーい悠!」
菜園の様子を見てみようとすると、厚手のコートを見た陽介・完二・クマの特捜隊男子組がこちらにやってきた。
「明けましておめでとう、陽介・完二・クマ」
「ああ、明けましておめでとう。堂島さんも明けましておめでとうございます」
「センパイ!堂島さん、明けましておめでとうっす」
「センセイ!パパさん!明けましておめでとうクマ~」
「ああ、明けましておめでとう。今年もよろしくな。そういや他の連中はどうしたんだ?」
堂島はいつも一緒にいるはずの女子陣がいないことを言及する。
「ああ、あいつらは一旦天城ん家に集まってから来るそうです」
「それは…まさか!」
「そう!晴れ着クマよー!センセイ!!」
陽介と悠の言葉に嬉しそうに反応するクマ。特捜隊&μ‘sの女子陣の晴れ着姿。これにテンションが上がらないものはいないだろう。完二も柄にもなく楽しみにしているらしい。悠にとってはそっちも気になるが、ことりと菜々子の晴れ着姿の方が内心楽しみにしている。そんな悠たちに堂島は呆れてしまったが、自信も娘の菜々子の晴れ着姿が楽しみなので、何も言えない。男どもは女子陣の晴れ着姿に期待を膨らませながら、商店街にある辰姫神社へと向かった。
<辰姫神社>
商店街を通って、辰姫神社に着いた悠たち。正月ということもあるのか、いつも人気のない神社は夏祭りと同じように人がいっぱいで賑やかになっている。その賑わいに悠たちは仰天した。
「うわぁ…凄いっすねぇ。今年の神社は」
「まあ、去年よりも商店街は賑わってるからな」
「やっぱり、初詣はこれくらいがいいクマね」
「本当に去年とは大違いだなぁ。この町も」
あまりの賑わいに目を奪われていると、
「悠せんぱーい!!」
遠くから元気な少女の声が聞こえてきた。声がした方を振り返ってみると、
「やっほー!おまたせー!」
「すみません。遅くなりました」
「晴れ着って動きづらい…」
「凛も同感だにゃ~」
「でも、こういうのも悪くないわね」
「ふふふ、どう先輩?こういうりせも中々でしょ?」
「さあ!このにこちゃんの晴れ着姿を見るがいいわ!」
特捜隊&μ‘sの女子陣全員が晴れ着姿でやってきた。
「おおっ!これはっ!!」
「ハイカラだ……」
「おお……」
「むほほ~い!みんな綺麗クマ~!」
「おおう………」
女子陣のあまりの煌びやかさに悠たち男子陣と堂島は目を奪われてしまう。皆それぞれ己のイメージにあった色と柄の晴れ着を着こなしており、髪型などもきめ細やかに整えてある。結論から言うと、クマの言う通りみんな綺麗だ。
「この服……動きづらいし、重いし…すぐにでも脱ぎたい………」
「ウチもマリーちゃんに同意や…」
「まあ、これが晴れ着だからしょうがないよ」
「マリーおねえちゃんもラビリスおねえちゃんもきれいだよ」
それにマリーやラビリスも皆と同じく晴れ着を着てそんな愚痴を言っているが、そこは雪子と菜々子が何とかフォローしてくれている。
「おいおい!みんなレベル高すぎだろ…海未ちゃんとか天城とか東條さんとか、元から着物が似合うやつはともかく、穂乃果ちゃんとか凛ちゃん、あの里中や矢澤まで……綺麗じゃねえか。花陽ちゃんや真姫ちゃんもすっげ~似合ってるし、それに絢瀬さんとかラビリスちゃんも着物外国美人みたいな感じだし……俺、生きててよかったー!」
陽介は皆の晴れ着姿をじっくり見ると、歓喜のあまりにそう雄叫びを上げた。
「ああ!ことりと菜々子の晴れ着姿は最高だ!」
「お前…そこはブレねえのな」
悠は悠で、従妹のことりと菜々子の晴れ着姿に見惚れている。やはりシスコンはブレない。一方、兄の言葉を聞いたことりと菜々子は嬉しそうな表情をしている。一部不満そうな顔をしているが、そこはスルーで。
「……………………」
「おおう?完二?直斗の晴れ着に見惚れてやがるな?」
「!?っ、べ、別に何も!?」
「あら~?カンジは~ナオちゃんの晴れ着にムネがキュンキュンしてるクマね~」
「うっせー!締めんぞゴラァ!」
中々お目にかかれない直斗の晴れ着に目を逸らしながらもチラッと見ていたところを陽介とクマに見つかって、大声で照れる完二。その姿に直斗は顔を真っ赤にして俯いてしまい、他のみんなもその様子をニヤニヤしながら見守っていた。
そんな一幕もあって、皆が一旦落ち着いたところで、
「明けましておめでとう!悠先輩。今年もよろしくね」
皆を代表して、穂乃果が悠に新年の挨拶をした。それに合わせて、海未たちも挨拶をしてお辞儀をした。
「明けましておめでとう。みんなとても綺麗だ」
悠が女子陣にそう言うと、女子陣は皆嬉しそうに頬を朱色に染める。すると、何故か希がみんなより一歩前に出て、己の晴れ着姿を見せつけるようにひらりと回った。
「鳴上くん♪ウチの晴れ着姿はどう?
悠にグイッと近づいて上目遣いでそう尋ねる希。東京の神田明神では希の巫女姿を何度か見てきたが、今日は晴れ着姿せいもあるのか希の美しさがいつもより磨きがかかっている。その姿に悠はどうにか平静を保ちながら返答した。
「ああ……すごく似合ってる」
「ホンマっ!ありがとう!」
悠の曖昧な返事にも希は嬉しそうに微笑んで、悠に更に近づこうとする。だが、
「ちょっと!お兄ちゃん、希さんにデレデレし過ぎ!」
「先輩!りせのこともちゃんと見てよ!」
ことりとりせが2人を引き離して、悠にそう詰め寄ってきた。
「な、鳴上先輩!私の晴れ着もちゃんと見てください!」
「わ、私も!」
ことりとりせに便乗して花陽と真姫までも悠の元に詰め寄ってきた。流石の悠もこの事態には慌ててしまう。
「鳴上!私のも…って、ちょっ!アンタ!」
「悠……モテすぎ………」
「マリーちゃん!怒る気持ちは分かるけど、雷はやめて!!」
「にゃー!これは危険だにゃー!」
「止めろー!誰かマリーちゃんを止めろ――!」
モテすぎる悠に嫉妬したマリーが怒りのあまりに雷を落とそうとするのを、陽介と穂乃果たちが全力で止めにかかる。正月早々の神社はもうしっちゃかめっちゃかで大騒ぎだ。その様子を堂島は呆れて、菜々子と雛乃は微笑ましく見守っていた。
「お前ら……正月から騒がしいな…てか、これ大丈夫なのか?」
「いいじゃないですか。これが悠くんたちらしくて」
「いいのか……」
「おにいちゃんたち、楽しそう」
その後、みんなで神社にお参りをしてから、おみくじを引いた。お参りの際、穂乃果たちに何をお願いしたのかと聞かれたが、悠はあえて秘密にしておいた。みんなはずるいだの言っていたが、そんなに大したことはお願いしてないし、言うと多分恥ずかしくなるので言わなかった。
「だあぁ!ちくしょうー!!"凶"引いちまった―――!!」
おみくじを引いて、皆が"大吉"や"中吉"、"吉"を引いた中で、陽介だけが"凶"だった。今年は受験が控えているせいか、陽介はかなりブルーになっている。
「うわぁ…花村は今年も運がないんじゃない?」
「ということは…」
「やめろ――!それ以上は言わないでくれ―――!!」
ちなみに、陽介以外で受験を控えているメンバーは全員"大吉"か"中吉"だった。そんなこんなで初詣を終えた悠たちは時間もあるからと、ゆったりと商店街を散策した。
その後、悠たちは一旦各々の家へ戻ってから、いつもの如くジュネスのフードコートに集合する。途中に通った商店街では色々と屋台が陳列しており、去年よりも賑やかなものとなっていた。女子陣も晴れ着を脱いで普段着に戻ってジュネスに集合する。ちなみに堂島はそのまま警察署へ、雛乃は片付ける仕事があると天城屋の部屋へ戻っていった。
「あれ?そういや里中と天城はどうした?」
「そう言えばと…りせの野郎も見当たらないっすね」
「なんだか嫌な予感しかしないんだが………」
気が付くと、何故かその3人がいつの間にかいなくなっていた。千枝と雪子、そしてりせ……この組み合わせはなんだか嫌な予感しかしない。すると、希が悠たちに最悪の事態を告げた。
「ああ、あの三人ならさっき何か自分たちが作ったお汁粉を持ってくるって言ってたで」
「「「「!!っ」」」」
この時、特捜隊男子陣は絶句した。何故なら彼らの頭の中に、ある図式が浮かんだからだ。
"千枝・雪子・りせ+お汁粉=物体X"
「おい!直斗っ!お前、そのこと知ってたのか!?」
「い、いえ。僕も浮かれてて気づきませんでした……」
直斗も新年ということで浮かれていたのか、雪子たちがお汁粉と作っていたことに気づいていなかったらしい。
「おいいいっ!どうすんだ!あいつら、また何かやらかすか分かったもんじゃねえぞ!」
「このままじゃ、楽しいお正月が台無しになるクマ!!」
「何とかしねえとまずいっすよ!」
「陽介さん、どうしたんですか?そんなに慌てて」
慌てる陽介たちを見て、花陽がそう聞いてきた。
「どうしたもこうしたもねえ!天城の奴らがお汁粉を作ってきやがった!このままじゃあ、あの夏の悪夢が再来すんぞ!」
「「「「!!っ」」」」
陽介の言葉に穂乃果たちも遅れて絶句した。脳裏に蘇ったのは、夏休みに起こったあの悪夢。事の重大さにようやく気付いた穂乃果たちだったがもう手遅れだった。
「おまたせ~みんな~」
「お汁粉持ってきたよ~」
「せんぱ~い!りせが愛情込めて作ったお汁粉食べて♡」
時は既に遅く、満悦な笑顔で鍋とお箸、そしてお茶碗を持ってきた雪子と千枝、りせがフードコートにやってきてしまった。
((((終わった……))))
みんなの心が絶望に満ちた瞬間だった。しかし、その鍋の蓋を開けてみると
「「「「ふ、普通だと!?」」」」
なんと、見た目も匂いも普通のお汁粉だった。これには皆は驚愕する。しかし、その反応に不満を感じた必殺料理人たちは唇を尖らせる。
「ちょっと!みんなその反応酷くない!?」
「私たちだってちゃんと進歩してるんだよ!」
「そんな反応するなら、食べてみてよ!絶対に美味しいから」
3人の反応に少し反省する一同。
「た、確かにそうだよね…」
「せっかく雪子さんたちが作って下さったので…」
「じゃあ」
穂乃果と海未、真姫が雪子さんたち特製お汁粉に手を付けようとすると、陽介が全力でそれを制止した。
「ま、待て!安全を確認しないと穂乃果ちゃんたちには食べさせられねえ!!俺らから行くぞ!完二!」
「ウっス!!」
穂乃果たちを止めて、陽介と完二は自分たちの茶碗にお汁粉を入れて口に入れた。
「「!!っ」」
口を含んだ瞬間、陽介と完二は目を見開いた。
「う……うまい!」
「大変おいしゅうございます!」
2人の反応に、
「お、美味しい!」
「陽介さんたちの言う通り、普通に美味しい!」
「こんなことがあり得るの!?」
結論から言うと、皆の反応の通り普通に美味しい。小豆も良い味が染みているし、中に投入された白玉も食感がモチモチしていて食べ応えがある。考えてみれば、去年もあれだけの被害を出しておきながら成長しないのはおかしな話だ。きっとこれまでの反省から料理本を見て作ったのだろう。何か変な疑いをかけてしまってすまなかったなと思っていると、
「良かった~みんな喜んでくれて」
「やっぱり料理本に書いてあったのに、
「「「えっ?」」」
「やっぱりヨーグルト入れて正解だったね」
「隠し味にコーヒー牛乳入れたのが良かったんじゃない?」
「私は、決め手はタバスコだと思うな~」
何だかとんでもないことを言っている
「鳴上くん」
困惑する悠に希はこっそりと耳打ちした。
「実はな、ウチが先に天城屋に先回りして普通のと交換したんよ」
「え?」
真相はとても単純だった。希が雪子たちに気づかれないようこっそりと彼女たちが作った物体X(正月エディション)と普通のものとすり替えたらしい。
「流石だな……東條」
「うふふ、女の子はスピリチュアルやからね。ちなみにこのお礼は…………………でお願いな」
「!!っ……分かった」
悠が自分の提示したお願いを承諾してくれたことに喜びの表情を見せる希。内容はちょっと大っぴらに言えないことだったが、希のお陰で自分たちは物体Xの脅威から逃れたのだし、希の嬉しそうな表情を見るとまあいいかという気持ちになった。
悠がそう思ったと同時に、空から白い粉のような物体がしんしんと降ってきた。これは、雪が降ってきたのだろう。
「うわあ!雪だ~!」
「今年も結構降ってきたな」
「また雪積もるんじゃないっすか?」
「じゃあ、その時は雪合戦やろうよ!」
「いいですね!」
雪が降ってきたことにテンションが上がる一同。その様子を見ながら、悠はお汁粉を食べて去年のことを振り返っていた。去年は一昨年の事件に負けないくらい、色々あった。
音ノ木坂の神隠し・P-1Grand Prix・ラブライブ・激動の夏休み・絆フェスetc………
更には"シャドウワーカー"や"A-RISE"などの人々と知り合ったりもした。何というか、一昨年よりも激動の一年だったかもしれない。だが、これからも悠たちに様々なことが降りかかり、また夢の中で出会った少女たちのような今は知らない人々とも出会うだろう。それでも、悠も心に不安という気持ちはなかった。何故なら
「じゃあ、雪合戦は男子VS女子でやろうか」
「ふざけんな!圧倒的に女子の数が多すぎんだろ!?」
「ええ?」
「ええじゃねえよ!」
「じゃあ、商店街チームVSジュネスチームでいいんじゃない?」
「それ、俺とクマ公しかいねえだろ!」
「ったく、男ならそれくらいでギャアギャア言うんじゃないわよ」
「陽介さん、カッコ悪い……」
「え?」
「カッコ悪いです」
「やめて!そんな憐れむような目で俺を見るのはやめてくれー!!」
ここにあの数々の苦難を共に乗り越えた仲間たちがいるのだから。彼ら彼女たちに巡り合えたことに感謝して、悠はお参りの際に願った願いをまた心の中で思い返した。
(今年も…平和にみんなと過ごせますように)
悠の祈りに呼応するかのように、空から降ってきた雪がしんしんと悠たちを包んでいった。
Fin
いかがだったでしょうか?
改めて、読者の皆様。明けましておめでとうございます。今年が皆様にとって良い一年になりますように。
今年も「PERSONA4 THE LOVELIVE~番長と歌の女神たち~」をよろしくお願いします!