PERSONA4 THE LOVELIVE 〜番長と歌の女神達〜 作:ぺるクマ!
何とか本編を更新できました。ここまで番外編ばかりを投稿しててすみませんでした。
先日ペルソナQ2発売記念で行ったアンケートの中間発表ですが、➀と予想していたのが何故か②が多く、ヒロインも番長は穂乃果・真姫・希とまばらになっていて、ジョーカーは現在双葉だけという結果に………〆切までまだあるので良かったら活動報告で投票よろしくお願いします。それとアンケートに答えてくれた方々、ありがとうございました。
改めて、お気に入り登録して下さった方・感想を書いてくれた方々、本当にありがとうございます!皆さんの応援が自分の励みになっています。
至らない点は多々ありますが、皆さんが楽しめる作品になるように精進していくつもりなので、これからも応援よろしくお願いします。
それでは本編をどうぞ!
…………………………………
薄っすらと目を開けると、どこかに来ていた。視界に映る全ての色が群青色に見える。時々訪れるあの部屋に来ているようだが、いつも耳に聞こえるあのピアノと女性のソプラノのメロディーが聞こえない。それに部屋にはイゴールはおろかマーガレットやエリザベスもいない。つまり、ここには悠以外誰もいない。どういうことだろうか。
「………………………………」
「………………………………」
「………………………………」
誰かの声が聞こえてくる。意識がぼやけているのか誰かの声か判別できない。しかし、どこか聞き覚えがある声だった。一体何の声だろうかと聴覚を研ぎ澄ませてみる。
「………………………………」
「………………………………」
駄目だ………内容が聞き取れられない。さっき聞こえたものとは違う声なのは分かるのだがハッキリしない。それに段々頭痛がしてきた気がする。
「………………………………」
「………………………………」
また違う声が聞こえてくる。今度こそ聞き取れそうなのに意識が遠のいていく。何とか意識を保とうと踏ん張ろうとするがその甲斐虚しく意識を手放してしまった。
<音ノ木坂学院 屋上>
ザワザワザワザワザワザワザワザワ
音ノ木坂学院学園祭2日目。この学園祭のメインイベントと言えるμ‘sのライブを見に来た観客たちはざわめいていた。もう予定していた時刻は過ぎたというのに一向に始める気配がないからだ。これにはせっかく暑い中ライブを楽しみに訪れた観客たちは不満を募らせていく。
「………ふふふ、やはり彼女たちは彼を助けに行ったのね」
そう騒めく観客の中、秘書を彷彿とさせる衣装に身を包んだプラチナ髪の女性は静かに笑みを浮かべてそう言った。他の観客とは違い、こうなることが予想していたような余裕の笑みだった。
「………彼のことはあの子たちに任せて良さそうね。状況は圧倒的に劣勢だけれども…………」
女性はそう呟くとスッと歩き出した。だが、ふと一歩踏み出したところで足を止めて、上に広がる青空を見上げた。
「ここはあの子たちが何とかしてくれるみたい」
<音ノ木坂学院?? 校門前>
そして、件の彼女たちはアイドル研究部室のテレビから繋がる異世界の校門に立っていた。何故彼女たちがここにいるのか、それは言わずもがなと言った方が良いだろう。
「新聞部の天野さんと薫さんからしっかり聞いてきたで。やっぱりあのテレビに映ってた"佐々木竜次"って人も数日前から消息を絶ってるって」
「佐々木………あのテレビに映ってた悠を連れ去った犯人ね」
「…あのモノ○マみたいな恰好や口ぶりからして嫌なやつだにゃ」
「GWのヒノカグツチが可愛く見えるほどね」
昨夜映ったマヨナカテレビ、それに映ったあの気が狂った少年に一同は辟易するように顔をしかめる。あの人をバカにしたような言動、某ゲームのマスコットキャラクターを彷彿させるふざけたファッション……思い返せば思い返すほど苛立ってくる。普段温厚なメンバーでさえ今すぐにでもぶっ飛ばしたと思ったほどに。にこに至っては本当に殴るつもりなのかポキポキと指を鳴らしている。
「消息不明ってことは、やっぱり悠を誘拐してテレビの中に………」
「でも、何であの人はこんなことをしたんでしょうか?あんまり理解ができなくて………」
「そうね……これは私の憶測だけど、希から聞いた話からこう推測できるわ」
絵里は花陽の疑問を説明するかのように、自身の憶測を語った。
佐々木竜次は新聞部に所属しており人一倍自尊心が強く、自分が注目されるべき人間と思い込んでいたが、誰も自分の記事に目向きもしてくれなかった。自分はこんなところでくすぶってる男じゃない。自分はもっと上を目指せる男だと自身に言い聞かせながら日々を過ごしていた。
佐々木はネタ探しの最中、何かの拍子でこのテレビの世界のことを知り、自身もテレビの中に入れると気づいた。そして、ネタに悩んでいた佐々木はこの世界は利用できると考え、新たな学校の怪談"音ノ木坂の神隠し"という名目で噂を広め、内容の"生徒が行方不明になる"ということを真実にするために自身が目を付けた人をあの世界に放り込んだ。これは自分にしか気づかないし誰にも絶対にバレない最高の手口で、噂が完全に広まった頃合いに自分がその真実を突き止め、皆の注目の的になるだろうと思っていた。
しかし、その生徒たちは行方不明になるどころか数日もしないうちにひょっこり帰ってきた。どういうことかと思ったが、正気でいられなくなった佐々木は諦めることなくひたすら次々とターゲットを放り込んでいった。そんな苦労は虚しく結果は同じで噂がそれほど発展しなくなり、代わりにμ‘sという自分があの世界に放り込んだ者たちが結成したスクールアイドルが世間で話題になった。
それに不満を抱いた佐々木はそのμ‘sを貶めるためにある策を思いついた。それは自分たちの大切なマネージャーである悠を誘拐して、大事な時期でのライブを失敗させるというもの。綿密に計画を立てて意を決した佐々木はあの凶行に及んで、まんまと目論見を成功させて今に至る。
「なるほど……確かにそう考えると納得が行きますね」
「なんだか絵里ちゃんが言ってることが本当のことみたいに聞こえるにゃ」
「これはあくまで憶測よ。実際のことは本人に聞くしかないわ」
語り終えた絵里に皆は納得したようにそう称賛を浴びせるが本人は照れることなく淡々とそう注意した。
「確かに…今のエリチが語ったことはあくまで推測や。GWに海未ちゃんたちが巻き込まれたっていうP-1Grand Prixのことや何で目を付けたのか穂乃果ちゃんたちなのか…………そして何であんな方法でウチらを嵌めようとしたのかとか色々不自然な点があるからな」
しかし、どんなことであれ佐々木が悠を事故に見せかけてこの世界に誘拐して自分たちを挑発したのは紛れもない事実だ。それはあのマヨナカテレビでの内容が物語っている。
「……………皆、もう聞く必要はないと思うけど……これでいいのね?」
絵里は再度の確認と言うように皆にそう問うた。絵里のその言葉に海未たちは迷うことなく絵里にこう答えた。
「当たり前です。私たちは……悠さんに助けてもらいました」
「今度は…私たちが悠さんを助ける番ですっ!!」
「μ‘sは私たちを助けて支えてくれた悠も含めてμ‘sなんです!」
「絶対に助け出すにゃっ!」
「今までの恩返しするなら……それは今です!」
改めて各々の決意を聞いた絵里はホッと胸を撫で下ろす。今までリーダーとして自分たちを引っ張ってきた悠はここにはいない。今回が
「やああああああああああっ!」
言ってる傍から奇声が聞こえた。何事かと思っていると、
「いたっ!」
日本刀を振り回してすっころぶ穂乃果の姿があった。唐突な光景に皆は唖然としてしまった。穂乃果が奇行に入るのは時々あることだが、これは流石に開いた口が塞がらなかった。
「穂乃果、何を」
「えっ?見ての通り素振りだけど」
「それ…悠さんの日本刀ですよ」
海未の言う通り穂乃果が手にしているのは、悠がこの世界で戦闘になった時に使用していた日本刀である。何やら稲羽にいる知人に譲り受けたもので現実に持って帰るのは危ないからとこの世界に置いていったものだ。
「こ、今回は風花さんのゴマ団子もないし……せめて日本刀だけでも使いこなそうって思って」
「危ないからやめなさい。悠はそれを軽々使いこなしてたけど、それ私たちが使うってなったら結構重たいの知ってるでしょ」
「で、でも……穂乃果はみんなみたいにペルソナ持ってないし、家に武器らしいものなかったし……」
「慣れない武器を使うのは無防備なのと同じよ。とりあえず護身用として持っておくだけにしなさい」
「…………分かったよ」
渋々と言うように穂乃果は絵里の言うことを聞いて日本刀を鞘に納めた。しかし、その背中は不服だと言わんばかりに不機嫌であった。
「………穂乃果」
普段と違う雰囲気を見せる親友に海未は不安を覚えずにはいられなかった。やはり今回のことは自分のせいと思っているのだろうか。海未は数時間前の部室でのやり取りを思い返した。
~数時間前~
「「「「…………………………」」」」」
昨夜の衝撃的なマヨナカテレビでアイドル研究部室重苦しい雰囲気に包まれていた。あのテレビが映ったことで皆は作戦会議のために朝早く登校したのもあるが、今までμ‘sの支えになっていた悠がこの場にいないということ、そして悠があんな目に遭っていたのに自分たちは何も知らずにのほほんと過ごしていたことを悔やんでいた。
本当なら今すぐにでも悠を助けに行きたい。しかし、今日はラブライブへの出場が掛かった大事なライブがある。昨日みたいな悪天候ではなく青空が広がるライブ日和だ。こんな状態にも関わらずライブを行わなかったら、ラブライブに出場できないどころかμ‘sを応援してくれているファンの期待を裏切ることになってしまう。
そう、あの佐々木という人物は自分たちに暗にこう言っているのだ。
"ライブか悠の命か、どちらか一方を選べ"と
こんな酷とも言える究極の選択を無意識に迫られて、皆はもう通常ではいられなくなってしまった。しかし、
「行こう。悠さんを助けに」
「ほ、穂乃果!?あなた……」
部室の空気を穂乃果はそう言って打ち破った。あのマヨナカテレビで一番ショックを受けているはずの穂乃果が一番にそんなことを言ってきたことに驚きを隠せなかった。
「だって!悠さんがピンチなんだよ!?もう学園祭とかラブライブとか気にしてる場合じゃないよ!?」
威勢よくそう言う穂乃果だが、皆がそれに賛成という訳ではなかった。もちろん今まで自分たちを命懸けで助けてくれた悠を今すぐに助けに行きたい気持ちの方が強い。でも、
「でも、それこそあの佐々木ってやつの思惑かもしれないじゃない。私たちを」
「でももすともないよ!?じゃあ皆は悠さんの命よりライブが大事って言うの!!」
「!?っ、そんなことは言ってないでしょ!?」
「穂乃果っ!!それは言い過ぎよ!」
どうやら穂乃果も尋常ではないほどアドレナリンが出ているのか思わず皆にそう言ってしまった。絵里が穂乃果を宥めようとしたが、穂乃果は止まらなかった。
「ごめん…………………でも、こんな時…陽介さんたちなら迷わずに悠さんを助けに行ってるよ。だって」
「………黙りなさいよ、ペルソナを持っていないくせに………」
「!!っ」
穂乃果が皆にそう話す中、我慢の限界に達してしまったにこはぼそっと言ってはならない禁句に触れてしまった。穂乃果とことりが事件が起こった時に気にしている"自分だけがペルソナを持っていない"ということに。
「何よ!ペルソナも持ってないくせにっ!!ペルソナを持っていないアンタに何が出来るっていうのよっ!?」
「そ…それは………」
「それに何でそこで花村たちが出てくるのよ!!にこたちとあいつらは違うって言う訳!?」
「にこっち!!」
「それは言ってはダメでしょっ!!」
これには流石に言い過ぎだと思ったか、にこを窘める。にこも今のは流石に失言だと察したか顔を伏せてしまった。穂乃果も痛いところを突かれたか先ほどの勢いもなくなり放心状態になっている。既に部室の雰囲気は最悪。口喧嘩をした穂乃果やにこのみならず誰も話そうとはせず気まずい沈黙が部室を包んでしまった。
(…………悠、こういう時あなたならどうしてたの?)
絵里は思わずここにはいない悠にそう聞きたい衝動に駆られてしまう。しかし、そう考えてもこの事態が解決する訳でない。ここは無理にでも皆に決断を下させようとした瞬間、誰かの携帯の着信音が鳴り響いた。
「穂乃果ちゃん……大丈夫かな?」
数時間前のやり取りを思い出していると、隣の花陽がそう呟いた。どうやら花陽だけでなくみんな自分と同じように感じているらしい。
「今回のことで責任を感じてるのかもしれないけど……危ういわね」
「穂乃果ちゃんには何の責任はないのに……………」
「……………………………」
各々が心配そうな表情をで穂乃果を見る。にこは思わず溢れてしまった失言で穂乃果を追い込んでしまったのではないかとバツが悪そうにしている。しかし、今自分たちが何か言って励まそうとしても穂乃果には届かないだろう。
「……………………これは治療用のお薬でこれはお水とおにぎり………あとこれはクマさんのメガネで……それから」
「「「「??」」」」
穂乃果の心情を察していると、すぐ近くで誰かがブツブツ何か呟いてるのが聞こえた。何だろうと思って見てみると、そこには……神妙な表情で大きなリュックに色々物を詰め込んでいることりがいた。
「こ、ことり!?なんですか!?その大荷物は」
「(ギクッ!)だ、だって……お兄ちゃんケガしてるし、お腹減ってるだろうし……そう考えたらこうなって」
「いくら何でも多過ぎよ!それじゃあシャドウから逃げられないじゃない。量を減らしなさい」
「で、でも……」
「減らしなさいっ!!」
「はい…………………」
絵里たちに強く叱責されたことりは渋々と持ってきた大荷物を減らし始めた。
「……大丈夫かしら?悠さんがいないこの状況…」
真姫は遠目から皆の様子を見てそう呟いた。
いつにも増して騒がしいし、悠が危機的状況であるせいか普段の落ち着きが見られない。こんな調子で悠を助けられるのだろうか。真姫は心に不安を覚えざる負えなかった。
another view(穂乃果)
「穂乃果のせいで悠さんが………穂乃果が何とかしなきゃ」
悠さんの日本刀を手に握り締めて私はそう心に鼓舞する。今回のことは穂乃果のせいじゃないって海未ちゃんや絵里ちゃんは言ってくれてるけど、元はと言えば穂乃果が無茶なトレーニングをして悠さんに迷惑をかけたことが原因だ。穂乃果があんな無茶をしなかったら、今頃悠さんは穂乃果たちの傍にいて一緒にライブをしてたはずなのに。
だから、穂乃果が何とかしなきゃ。ペルソナは持ってないけど穂乃果にも出来ることはあるはず。絶対悠さんを助けてあの佐々木って人を捕まえて……またスクールアイドルをやって廃校から学校を守らなきゃ。そのためにも………
「あれ?…………でも、事件が終わって廃校を阻止出来たら………………穂乃果たちどうなっちゃうんだろう」
そうだ、元を辿れば穂乃果たちは廃校を阻止するために……いや、穂乃果たちをこの世界に放り込んで殺そうとした犯人を捜すためにスクールアイドルを始めたんだった。じゃあ、もしあの佐々木って人が穂乃果たちをテレビに入れた犯人で捕まえられたら……
この世界に行く必要がなくなる?
そうだとしても……廃校が阻止出来たら、穂乃果たちが
「………………………………」
そう考えたら何故かずんずん進んでいた足が止まっていた。何でだろう………そう考えたら
「穂乃果?どうかしましたか?」
「穂乃果ちゃん?どうしたの?」
思わず考え事していたら海未ちゃんとことりちゃんは心配そうにこっちを見てきた。
「な、なんでもないよ。この日本刀重いなぁって思ってただけ。こんなの振り回せるなんて、悠さんってすごいよね」
「「……………………」」
「ご、ごめんね。ちょっと…………早く行こうっ!」
みんなの視線から逃げるように穂乃果は駆け足で校舎に入っていった。もう考えてても仕方ない。だって……穂乃果たちも目的は変わらないもん。だから大丈夫だよ、きっと。
大丈夫………だよね
another view(穂乃果)out
<???>
「………………うっ」
気がつくと、さっきの場所とはまた違う見知らぬ場所に横たわっていた。まだ体調が優れないのか先ほどと同じように視界がぼんやりとしている。まるで辺りが霧に包まれているように。
「ここは……………あれ?」
視界がぼんやりしているのは体調が優れないからではなくて、もしやこの場所が霧に包まれているからではないか。となるとここはまさか
「テレビの……中なのか?………………!!っ、いたっ」
そう思って少し体を動かすと全身に激痛が走った。やはり意識を失う前に何か衝撃を受けたようだが、ここまで身体が動かない程になるものとは思わなかった。しかし、ここがテレビの中ならば
ーカッ!ー
「ぺ……ペルソナっ!」
何とかタロットカードを顕現して砕くと、回復魔法を使えるペルソナを召喚する。やはりここはあのテレビの世界。いつの間に自分はテレビの世界に入っていたらしい。優しい光に身体を包んで痛みは和らいだ。だが、コンディションが悪いせいか完全には治せなかったが動けるところまでは回復した。ここで悠は状況確認をすることにした。
(ここがテレビの世界なら……………………まずい、クマのメガネ…家に置いてきたから視界が…………武器もないし、ここがどういう場所なのかも分からない。どうすれば……………腹減ったな)
考えうる限り最悪な状況に悠は思わずため息をついた。メガネもない・仲間もいない・武器もない。その上、治りきってないケガと極度の空腹でコンディションは万全ではない。今まで稲羽の連続殺人事件やP-1Grand Prixなどの災難に巻き込まれてきた悠だが、こんな事態は未だに遭ったことはなかった。
(………いや、悩んでいても仕方ない)
それでも何とかしようと悠は身体を動かして行動を開始した。先ほどの痛みがまだ残っていて少し足を引きずってしまうが構わない。今自分にできることは進むことだけなのだから。
「ここね……」
確認を終えて校舎を探索してから数十分後、いつもの如く他の部屋とは異質な雰囲気を放つ教室を見つけた。そこは穂乃果たちにはあまり馴染みのない"新聞部"という表記がある部屋だった。
「よし、じゃあ今すぐ」
「ちょっと待って。少し確認したいことがあるんよ」
希は新聞部室に入ろうとする穂乃果たちを呼び止めてペルソナを召喚するポーズを取る。
「【ウーラニア】」
希はウーラニアを召喚して結界を展開すると、改めて新聞部室に神経を集中させた。
「おおっ!これが希ちゃんのペルソナ」
「りせちゃんの【コウゼオン】みたいだにゃ」
「……やっぱりこのペルソナ、希の特徴がモロに出てるわね」
「…………………………………」
希が何かを察知している間、穂乃果たちは初めて見る希のペルソナの姿に興奮していた。約数名は希の特徴である身体の一部分を恨めしそうに凝視しているが、希はそっとしておいた。しばらくして、何かを察知したらしい希はウーラニアの結界を解いて皆にこう言った。
「反応があるのは新聞部室やね。人間の反応が2つ。それは佐々木くんと悠くんのっていうのは間違いない。でも……」
「でも?」
「もう一つ妙な反応があるんよ。何か……
「神秘的?」
「……ウチがまだこの力に慣れてないせいかもしれんから大雑把にしか分からへん。りせちゃんだったら分かっとんたんかもしれへんなぁ」
悠と佐々木の他に何かを察知したは良いが、その正体が大雑把にしか解析できなかったことを悔いる希。希が言葉にした"神秘的"な存在については引っかかるが、それは自分たちが立ち止まる理由にはならない。今まで悠が自分たちにしてくれたようにどんな障害があろうとも止まらずに進むだけだ。
大きな不安を覚えつつも一行は新聞部室に突入した。
<???>
♩♩♩♩~♩♩♩♩~♩♩♩♩~♩♩♩♩~
「ここは………」
中へ入るとそこにはいつものように異様な光景が広がっていた。花陽と真姫のキャバクラ・にこの遊園地・絵里のコンサートホール………今まで訪れた場所とはまた一段と違った場所があった。中央に建てられた人が何住人も入りそうな大きなテントを囲むように柵が建てられており、陽気な音楽がBGMとして流れている。穂乃果たちが立つ入り口には"ようこそ"という看板が掲げてられていた。
「これって、サーカスやない?」
「こ、これがサーカスですか!?サーカスにしては……楽しそうな雰囲気じゃないような」
希が指摘した通り、目の前に広がっている光景は"サーカス"という言葉がしっくりくるものだった。よく見れば、周りを囲う柵には"佐々木サーカス"とデカデカと表記されているポスターがずらりと貼られてあった。だが、そのポスターのイラストはほのぼのとしていながらスプラッタに描かれているため、花陽の言う通りあまり楽しそうなものとは思えなかった。
「これって……あの人、今までの私たちの戦いを楽しい見世物って思ってたこと?」
「………人が死んでいたかもしれないのに」
「あの男…………」
佐々木の心情風景を目のあたりにして彼女たちは更に怒りを募らせた。悠が命懸けで戦って苦しみながらも自分の影と向き合った今までのことをあの男はただの見世物と捉えていた。それだけで彼女たちの怒りに油を注ぐには十分だった。
「よしっ!行くわよっ!」
「「「「「うんっ!!」」」」」
改めて必ず悠を助けて犯人をとっちめようと決意を固めた一行はサーカスの中へと突入した。
「ぷぷぷ……………来たね、馬鹿な小娘ども。存分に楽しむといいさ。この"絶望"の大サーカスをね」
ーto be continuded
Next #57「What do you mean I'm here?」
Will be contribute in Middle of September.