PERSONA4 THE LOVELIVE 〜番長と歌の女神達〜 作:ぺるクマ!
ちなみにペルソナの設定はアニメ寄りです。
また、手元にペルソナ4の戦闘曲『Reach Out To The Truth」があれば、是非とも戦闘シーンの時に聴きながら読んでみて下さい。
最後に新たにお気に入りに登録・感想を書いてくださった方々、ありがとうございました。皆さんのおかげでお気に入りが50件を超えて、『ルーキー日間』で前回より上の31位にランクインすることができました。
まだ透明バーの稚作ですが、今後も読者の皆さんが楽しめるような作品を目指して頑張りたいと思います。
また、何かあればアドバイスしてくれたら幸いです。(しかし誹謗中傷は勘弁してください)
それでは本編をどうぞ!
ーやられた
悠は頭を抱えてそう思った。まさかすでに神隠しが始まっていたとは思わなかった。ともかく、これ以上校内を探しても見つからないのは明白だ。
悠はまず自分を落ち着かせた。こんな時こそ、冷静にならなければならないと去年の事件から学んでいる。あのマヨナカテレビが本当ならば、やることは1つだ。
テレビの中に入る。
悠は早速携帯で近場の電気屋を探す。すると、
「悠くん?」
振り返ると理事長の雛乃が居た。
「叔母さん……」
「どうしたの?もうすぐ下校時間よ」
まずいと思った。ここで雛乃に『女の子たちが誘拐されたのでテレビの中に入ります』とは言えない。とりあえず悠は誤魔化すことにした。
「いや……人を探してて」
「人?」
「高坂って名前の女の子なんですけど」
とりあえず、思いつく名前を出した。
「高坂?………もしかして穂乃果ちゃんかしら?」
「知ってるんですか?」
「勿論よ、何せことりの親友だもの」
雛乃は朗らかにそう答えた。
「ことりに穂乃果ちゃんに海未ちゃん。あの3人は小さい時からとっても仲良しだったのよね。こっちが微笑ましくなるくらい」
「はあ」
何故だろう。その3人のことを話すと雛乃がイキイキしているように感じる。
「これが3人の小さい時の写真よ」
雛乃が一枚の写真を財布から取り出した。見ると、そこには小学生くらいの女の子たちが仲良さそうに笑っていた。
「これは……」
「ふふ、良いでしょう?この写真見るとね、元気が出るからいつも財布に入れてるのよ」
確かに、この3人の少女の笑顔を見るとこっちまで笑顔になるような純粋なものを感じる。
「あの…この写真、貸して貰っても良いですか?」
「え?…もちろん良いけど…どうして?」
「い、いや、その」
確信はないが、これから3人を救出するためにはこの写真が必要ではないかと悠は直感した。
「すぐに返しますよ。ところで叔母さん聞きたいことがあるんですが」
「何?」
「ここら辺って、電気屋ありますか?」
「は?」
〈音乃木坂学院?〉
another view
とりあえず私たちは校門を開けて中に入った。霧でハッキリとは見えないけど、校舎もグラウンドも間違いなく音乃木坂のものだ。でも私たちが知っているのとは違って、校舎はボロくグランドは荒れ果てていた。
「ど、どういうこと?」
「とりあえず、校舎に入ってみませんか?中に出口があるかもしれません」
海未ちゃんの意見に賛成し校舎に向かった。いつも使ってる昇降口に着いたは良いけど、ドアを開けようとすると
「あれ?……開かないよ」
「な!そんな訳ないでしょ!」
といい、海未ちゃんもドアを開けようとするが結果は同じだった。
「ど、どういうことでしょう……ドアが開かないなんて…」
廃校したから開かないのかな?というか、ここはどこなんだろう?全く分かんないや。
『廃校か……』
突然どこからか声が聞こえて来た。
『しょうがないよな、ここ普通の高校だし』
『通いたいと思う奴なんているのかよ』
『UTX学園に行けば良かった〜』
「な!」
「こ、声が聞こえる……」
「これって、音乃木坂の生徒の?」
みんな廃校のことを言ってる……それに、誰も廃校を嫌だって言ってない。そんな……何で?みんな嫌じゃないの?
「そんな……」
「穂乃果……コレが現実かもしれませんね」
「でも!スクールアイドルやれば必ず!」
「ハァ、あのですね。朝から言ってますけどどこにそんな確証があるのですか?そんな確証があるとしても、私は絶対やりませんからね!」
「う、海未ちゃん!」
そんな会話をしていると
『ラブアローシュート!!』
どこからかそんな声が聞こえた。
「え?誰?」
「う、海未ちゃんどうしたの?」
「何でもありません」
『みんな〜ありがと〜!』
「これってもしかして……」
「海未ちゃんの声?」
「違います!私じゃありません!」
これ、どう聞いても海未ちゃんの声だよね。
『うふふふふ、何言ってるのかな〜?これみんな貴女が隠れて言ってたことじゃない』
すると、目の前の霧の中から誰かやってきた。現れたのは……え?海未ちゃん?
「海未ちゃんが……2人?」
「どうなってるの?」
見た目は海未ちゃんだがなんか違う。目が怪しく光ってるし禍々しいオーラを纏ってるような…
「あ、貴女は誰ですか!それに、私はあんなこと言ってません!」
こっちの海未ちゃんは声を荒げて、あっちの海未ちゃんに問いかける。ややこしいね。
『うふふふふふ、貴女本当はアイドルやりたいんでしょ?』
突然、あっちの海未ちゃんはそんなことを言ってきた。
「え!」
「そうなの?海未ちゃん!」
「ち、違います!あの人が言ってることは全部嘘です!」
こっちの海未ちゃんは慌ててそう言うけど、あっちの海未ちゃんはお構いなしに喋り続ける。
『でも、やりたくても出来ないのよね。貴女はアイドルの衣装は肌の露出が多くて嫌って言うかもしれないけど、本当は違うんだよね〜』
含みのあることを言うもう1人の海未ちゃん。次の言葉に私は息を飲んだ。
『何で大キライな穂乃果のためにアイドルやらなきゃいけないの?ってね』
「え………」
私が……キライ?……
「海未ちゃん……そうなの……」
「ち、違います!何を言ってるんですか!」
『事実でしょ?小さい時からそうだった。穂乃果は不真面目でズボラで考えなしで食べることだけが取り柄のくせに、みんなからチヤホヤされる』
な、何を言ってるの?あの海未ちゃんは……ってこっちの海未ちゃん身体が震えてる……
『対して私は真面目で誠実で気品がある。それに日本舞踊の大元の娘。問題なんて起こしたことないのに……みんな穂乃果に惹かれていく!……何で…何でよ!何であんなバカな娘にみんな惹かれるのよ!』
急にもう1人の海未ちゃんは声を荒げた。
違う。こんなの私が知ってる海未ちゃんじゃない!だって海未ちゃんはこんなこと言わないもん!
「違う!貴女は海未ちゃんじゃない!」
『あら?穂乃果?貴女に私の何が分かるっていうの?』
「わ、分かるよ!小さい時から一緒だったもん!」
『ハァ、貴女は本当に何も分かっていないのね。呆れるわ』
『キライだからいつも穂乃果のやることに口出すんでしょ?ことりは穂乃果が心配だからって言ってるけど実は違う。本当は穂乃果のことが大キライだから!』
そ、そんな……海未ちゃんがそんなこと……
「穂乃果違います!私はそんなこと思ってません!大体貴女はなんなんですか!さっきから適当なことばかり。貴女は、本当に誰なんですか!」
『さっきから言ってるでしょ?私は【園田海未】、貴方の影。貴方の考えてることなんてお見通しなんだから』
「違います……違います!」
『いい加減認めたら?私はアイドルをやりたい。それに、穂乃果なんて大キライだってことをね!』
「違います!………貴女なんか……貴女なんか!!」
その時、嫌な予感がした。勘だけどその先は言っちゃいけないような気がした。私はすぐさま叫んだ。
「海未ちゃん!それ以上言っちゃダメ!」
でも、遅かった……
「私じゃない!!!」
『うふふふふふふふふ、あはははははは!!あーはっはっはっはっは!!』
もう1人の海未ちゃんは高らかに笑いながら、禍々しいオーラに飲まれていく。すると姿がさっきより大きくなって、弓矢を持つ山姥のような怪物になった。
『我は影…真なる我………自分に素直になれない貴方なんて消えてもらうわ。大丈夫、ラクに死なせてあげるから!』
「に、逃げよう!海未ちゃん!ことりちゃん!」
「うん!」
私は海未ちゃんの手を取って一目散に走った。逃げないと、殺されちゃう!
『うふふふふふ、逃げられると思ってるの?下僕たちよ、あれを追いなさい!』
後ろからそんな声が聞こえた。後ろをみると
丸い身体にシマシマ模様をした巨大な口と巨大な舌を出した怪物達が穂乃果たちを追っかけてきた。
私たちは懸命に走った。捕まったら命はないと思ったから。
校門まで走ったけど、すでに怪物達に先回りされていた。すぐに方向転換してグラウンドに逃げたけど、
「痛っ!!」
私たちは石につまづいて転んでしまった。こ、こんな時に…何で転ぶの……
すぐに立ち上がろうとしたが
「もう……ダメ…」
終わったと、私は直感した。周りは巨大な舌を持つ怪物達に囲まれており、逃げ場なんてなかったから。
「ことりたち…ここで死んじゃうの……」
ことりちゃんも死ぬかもと思ったのか絶望した表情になっていて、今にも泣きそうだった。
「うう…ちがう……ちがいます……」
海未ちゃんはうわ言のように、まだ否定の言葉をあげていた。すると、姿を変えたあっちの海未ちゃんが近づいてきてこう言った。
『うふふふふふ、言い残したことはあるかしら?特別に聞いてあげる♪』
言い残したこと?………
その瞬間私の視界が歪んだ。きっと涙のせいだろう。言いたいことはある。
ーごめんなさい。お母さん、お父さん、雪穂………穂乃果、ここで死んじゃう。何も恩返し出来なくてごめんなさい。
心の中でそう思ったのに……私が口にしたのは……
「……死ぬのはいやだよ!まだスクールアイドル始めてないのに!!………鳴上先輩にも……まだこれからのこと……言ってないのに!!」
最後に何を言ってるんだろう私……もう死んじゃうのにね……それに鳴上先輩って……
「お兄ちゃんに………やっと会えたのに……こんなとこで死ぬのは……イヤだ!!!」
ことりちゃんもそう叫んでいた。
『ふふふ、それで良いのね……さぁ!やってしまいなさい!下僕共!』
もう1人の海未ちゃんがそう言うと、怪物達が私たちに急接近した。私は死を覚悟して思わず目を閉じた。
another view out
しかし、いつまで経っても痛みがやってこなかった。穂乃果は恐る恐る目を開けると驚くべき光景を目にした。
怪物たちが穂乃果の前で止まっていた。いや、震えてるといった方が正しいかもしれない。何かに恐怖しているような感じだった。
『な、何なの!この気配は!!』
海未の影もオロオロしていた。何が起こったんだろうと思っていると、上から突然光り輝くものが出現した。よくみると、黄色に光り輝くカードが2枚空中に浮かんでいた。
『『我は汝…汝は我…』』
いきなり声が聞こえて来た。それは厳かな雰囲気を持った女性の声だった。
『汝…希望を与える者よ…』
『世界を救った者と共に…人々に光を…』
そう言うと、カードは静かに消えていった。
『ふ、ふん!何をしたのか分からないけど、こけ脅しだったようね!』
光り輝くカードがなくなったことにより、海未の影はさっきまでの口調に戻った。
『今度こそ…下僕共!やっておしまい!!』
そう命令したが……怪物たちは動かなかった。正確に言えばまだ震えていた。
『ど、どうしたの!…早く!私の命令が聞けないっていうの!』
ザッザッザッ
足音が聞こえてきた。途端に穂乃果たちを囲っていた怪物たちは震え上がって海未の影の方へ逃げてしまった。
『なっ!ちょっと貴女たち!』
足音のする方を向くと、そこには……
灰色が特徴的な髪に、音乃木坂学院のブレザー、そして黒縁のメガネをかけた青年。
「大丈夫。俺が来た」
鳴上悠が何処ぞのヒーローの名台詞を言って現れた。
「大丈夫。俺が来た」
決まったと悠は思った。決め台詞を言った後悠は今の状況を確認する。
(あれは誰かのシャドウか?もう暴走してるな。でも、高坂たちが無事でよかった。)
「な、鳴上先輩?……何でここに?」
「お、お兄ちゃん……」
「な、鳴上……さん…」
悠の登場に3人は驚きを隠せないでいた少女たちの方に向かい、3人を安心させるため頭を優しく撫でた。
「安心しろ。すぐに終わらせる」
悠は3人に笑顔でそう言うと、海未のシャドウに対峙する。
『お、終わらせる?随分とふざけたことを言いますね。ま、丸腰の貴方に何が出来るって言うの?』
海未のシャドウは声を震わせながら見下した態度で悠に言い放った。
「嗚呼、確かにそうだな。丸腰じゃあシャドウには勝てない」
悠は、海未のシャドウに毅然として態度でそう返した。と同時にニヤリと笑ってこうも返した。
「本当に俺が………丸腰だったらな」
悠がそう言ったと刹那、悠の周りが青白く光り出した。
『な……これは…貴女は一体……』
突然のことに海未のシャドウは動揺する。すると、
『我は汝…汝は我……』
聞こえてくる懐かしい声。確か初めてペルソナに目覚めた時もこんな感じだった。
そして、悠は上を向くと空中から青白く光る【愚者】のイラストが描かれたタロットカードが降りてきた。悠はそのカードに手を伸ばし、
汝…己が双眸を見開きて…今こそ、発せよ!!
「ペルソナっ!!」
そのカードを砕いた。途端に悠の周りが青白く光り出し、後ろから化身のようなバケモノが出現した。
隙間から光る金色の瞳を覗かせる鉄の仮面。
ハチマキ。
学ランをイメージさせる黒いコート。
右手には巨大な大剣。
これぞ、悠が最初に目覚めた己の原点と言えるペルソナ『イザナギ』である。
「な、なにこれ……」
「お、おにい…ちゃん?」
イザナギの出現に穂乃果たちは驚愕した。
『だ、だから何だって言うのよ!下僕共!やっておしまい!!』
海未のシャドウの声に我に返ったのか、舌を出した怪物もとい『失言のアブルリー』が4体全員悠たちに向かって突進してきた。
「…始めよう。イザナギ!!」
悠がそう口にすると、後ろに佇んでたイザナギが動き出す。イザナギは大剣を握り直して、横へ振り払った。すると、斬撃が生まれ『失言のアブルリー』2体がそれに直撃して、消滅した。
ー敵は残り3体
先ほどの斬撃の餌食にならなかった残り2体はそのまま突き進み、イザナギの肩と腹に噛み付いた。
「ぐっ」
イザナギが攻撃を受けた瞬間、悠が苦痛の表情を浮かべる。自身のペルソナが攻撃を受けた場合、痛みは自分にフィードバックするのだ。
「な、鳴上先輩!」
「お兄ちゃん!」
それを見た穂乃果とことりは心配の声を上げた。しかし、
「フッ」
当の本人は笑みを浮かべ、イザナギは腹に噛み付いた怪物を手で引き離して放り投げ、肩に噛み付いているもう一体を地面に叩きつけて踏み潰した。
ー敵は残り2体
放り投げられた1体は、再び立ち上がろうとした。立ち上がった刹那、いつの間にか距離を詰めたイザナギによる大剣の突きを食らって消滅した。
ー敵は残り1体
「次はお前だ」
悠は海未のシャドウを見据えてそう言った。海未のシャドウは先ほどの戦闘と悠の王者のような威圧を見て震えていた。
『わ、私が……こんな…やつに………負けてたまるかあぁぁぁぁ!!』
叫び声を上げ自暴自棄になった海未のシャドウは持っていた弓矢を構え、悠へ放った。しかし、イザナギは悠の前に立ち、放たれた弓矢を大剣でいとも簡単に斬り落とした。
『ま、まだよ……まだまだーーー!!』
簡単に弓矢を斬り落とされたのに激昂したのか、続けて弓矢を連射した。イザナギも続けて弓矢を大剣で斬り落とし続けていく。斬り落とし続けるだけで一向に攻撃してこない様子を見て、海未のシャドウは余裕を取り戻した。
『ふん、受けているだけ?そんなんじゃ私には勝てないわよ!』
すると、悠は不敵な笑みを浮かべながら海未のシャドウに手のひらを向け、
「イザナギ!!」
と、拳をつくり唱えた。すると
『キャァァァァァァァァァ』
海未のシャドウの頭上から特大の雷が落ちてきた。不意を突かれた海未のシャドウは雷をもろに受け感電する。
『わ、私が……この……私が………』
「トドメだ!イザナギ!」
悠がそう言うと、イザナギは持っていた大剣を海未のシャドウへ投げつける。感電して動けない海未のシャドウはなす術もなく、身体を突き抜かれた。
『あ…あ……あああああああ!!』
身体を突き抜かれた海未のシャドウは呻き声を上げ、消滅した。
それと同時に役目を終えたイザナギも青い光に包まれ姿を消した。
another view
私はあまりの出来事に、声を出すことを忘れていた。絶対絶命のピンチに現れたのは、私に勇気をくれた鳴上先輩だった。それに、アニメや漫画に出てくるような大男?を呼び出したと思ったら、あの怪物たちを簡単に蹴散らして、もう1人の海未ちゃんも倒した。
「お兄ちゃん……すごい!!」
ことりちゃんはそんな鳴上先輩を見て目をキラキラさせていた。さっきまで心配してた表情が嘘みたいに。
「な、鳴上先輩……」
件の鳴上先輩は、私の声に気付いたのかこちらを振り向いた。そして、
「フッ」
と、戦闘中にも見せた不敵な笑みを私に向けた。いつもと違ってメガネをかけた先輩のその笑みに私はしばらく見惚れてしまった。
another view out
(良かった。うまく倒せて)
悠は戦闘が終わった瞬間そう思った。イザナギを召喚した後身体を確認したが、あの悪夢のせいかペルソナがイザナギだけしか使えなくなっていた。正直不安であったが、腕は鈍っていなかったようで、去年は手こずっていた人のシャドウをイザナギだけで倒せた。
「な、鳴上先輩……」
後ろから穂乃果の声が聞こえたので、悠は振り返って穂乃果たちの元へ向かった。
「大丈夫だったか?」
「は、はい!大丈夫です」
「お、お兄ちゃんは大丈夫?怪我してない?」
「嗚呼、大丈夫だ……園田は?」
3人は海未の方を見る。するとそこには放心状態になっている海未がいた。
「園田。大丈夫か?」
「は………はい」
海未はおぼろげながら返事をする。
「園田、あれを見てみろ」
悠が指さした方を見ると、そこには先ほど倒した海未のシャドウが元の姿に戻って突っ立っていた。
「あ、あれは……私じゃ……」
「園田、よく聞け。あれはシャドウ。園田の抑圧された感情が生み出したもう1人の自分だ」
悠の言葉に3人は驚く。
「あ、あれが……私………じゃあ」
「俺はさっき来たばかりで知らないが、自分が思ってもしなかったことを色々言われただろ?それは元々園田の中にあったものだからだ」
「そんな………それじゃあ、私は穂乃果のこと……大キライだったんですね………」
悠の説明を聞いて海未は俯いて泣きそうになる。
「海未ちゃんは悪くないよ」
「え?」
声を発したのは穂乃果であった。穂乃果は海未に近づいてこう言った。
「ごめんね海未ちゃん……私…海未ちゃんが私のことキライって気付かなくて……」
「な、何を言ってるんですか?穂乃果……」
「だって!悪いのは穂乃果だもん!いつも私は海未ちゃんやことりちゃんに迷惑かけて……それに気づかずにのほほんとしてて……私…最低だよ…………これじゃあ………友達失格じゃん………ごめん………ごめんね………」
穂乃果は言葉を紡ぎながら、嗚咽して泣き出した。
「穂乃果ちゃん………」
「穂乃果……」
穂乃果の言葉に海未は戸惑った。穂乃果がそんなことを言うとは思わなかったからだ。
「どうして……貴女が謝るのですか…悪いのは………私なのに…………」
「親友だからだよ!そんなの当たり前じゃん!」
穂乃果の真っ直ぐな答えに海未は思わず目に涙を浮かべた。
「園田」
今度は悠が海未に話しかける。
「誰だって他人には見られたくない一面はある。それを受け止めて見てくれるやつは中々いない。でも、園田には高坂やことりみたいにお前のそんな一面を受け止めてくれる親友がいる。園田は幸せ者だ」
「なる…か…み………せんぱい………でも」
「これを見ても嘘だと思うか?」
悠は1枚の写真を海未に見せた。それは理事長が持っていた穂乃果と海未とことりの幼い頃の写真。その写真を見た瞬間、海未はハッと何かを思い出しポロポロと涙を流した。
そして海未は涙を拭き、自分のシャドウの方へ歩き出した。
「確かに私は穂乃果のことがキライだったかもしれません。でも、あの写真を見て思い出しました。私は穂乃果が羨ましかった、要するに嫉妬してたんです。私はそれをキライと勘違いして見て見ぬフリをしていたのですね」
海未はそう言うと、己のシャドウを真っ直ぐ見つめて言った。
「貴女は私、ですね」
海未のシャドウは頷き、黄色い光に包まれて宙に浮かんだ。すると、姿が今度は山姥ではなく青いドレスを纏った女神になった。
『我は汝…汝は我……我が名は【ポリュムニア】。汝…世界を救いし者と共に…人々に光を……』
女神はそう言うと再び光となって2つに分かれ、一方が海未にもう一方は悠の中に入っていった。
ー海未は己の闇に打ち勝ち、困難に立ち向かうための人格の鎧ペルソナ"ポリュムニア"を手に入れた。
「え?」
これには悠は驚いた。普通ペルソナはシャドウつまり自分の本音と向き合うことで手に入る。それは1人につき1体だ。しかし、今のように2つに分かれて悠に入ってくることは今までなかった。どうなってるんだ?と思っていると、
「海未ちゃん!」
穂乃果がペルソナを手に入れた海未に抱きついた。
「穂乃果………ごめんなさい」
「うん!…こっちこそごめん!」
「そして……ありがとう…大好きです」
「……私も………」
「穂乃果ちゃん……海未ちゃん……良かったよ〜!」
穂乃果・海未・ことりの仲良し3人組は荒れ果てた校庭の真ん中で各々の思いをぶつけて、泣きながら抱き合った。
ー3人の絆が深まったのを感じる
端から眺めている悠にはその光景は微笑ましく感じた。いくつか謎が残ったが今はそれで良いと悠は思った。
ある程度時間が経って、悠は3人に言った。
「3人とも、帰ろう」
ーto be continuded
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「悠くん?何をしているの?」
「作戦会議だよ!」
「返して」
「断る」
「認められないわ!」
「異議あり!!」
「あの子たち面白いなぁ」
「何でも1人で背負うことはないだろう?」
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