PERSONA4 THE LOVELIVE 〜番長と歌の女神達〜   作:ぺるクマ!

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今回も前回より長くなって、1万字近くまで書いてしまいました。
長いですが最後まで読んでくれたら幸いです。

これは戯言ですが、作業中に『ペルソナ4 ダンシングオールナイト』のOPである『dance!』を聞いていたら、「これこの小説のOPに良いんじゃないか!」と思いました。

最後に、新たにお気に入りに登録してくださったり感想を書いてくれた読者の皆様ありがとうございました。皆さんの応援のお陰で、この作品が『ルーキー日間』の43位にランクイン出来ました!こんな拙い作品ですが、これからもお付き合いしていただければ嬉しいです。

それでは本編をどうぞ!


#03「I come to here」

 

 〈悠の自室〉

『んで、どうだったよ?転校初日の調子は?』

 

 あの後、にこや穂乃果とはUTX学園で別れて家に帰った。夕飯を終えたと同時に八十稲羽にいる相棒と呼ぶべき親友の花村陽介から電話がかかってきた。悠のことが心配だったのだろう。良い友を持ったものだと悠は思った。

 

「嗚呼、色々あった」

 

 悠は陽介に今日あったことを全て話した。

 

 

 

『はあ!お前、早速リア充ライフを送ってんじゃねぇか!』

 

「え?そうか?」

 

『そうだって!お前に自覚はないかもしれないけどよ。知らない女の子から弁当もらったり、秋葉原にデートしに行ったりって。羨ましすぎんだろ!』

 

「確かに」

 

『おまけにA-RISEのライブ見に行ったんだろ?良いことづくめじゃねぇか。ハァ、俺も行きてんだけどさ。行こうにも東京なんて遠いし、クマ吉のせいでバイト大変だし。畜生!俺ってば、何やってんだよ!このままでいいのかよ!ウオオオー』

 

 悠にとっては普通の1日でも、陽介にとっては夢のようなシチュエーションだったようであまりの羨ましさと日頃の鬱憤が爆発したせいか雄叫びを上げた。

 

「暑いのか?」

 

『ちげーよ!苦しんでんだよ!てか、このやりとり去年の夏もやらなかったか?』

 

「そうだったか?」

 

『…まぁいいや。それよりお前、どうすんだよ?そのスクールアイドルをやろうって件のこと』

 

 陽介は穂乃果にスクールアイドルをやらないかと言われた件について聞く。あの後、穂乃果は悠の返事を聞かずに一目散にどこかに去って行ったのが。ついでに言うと、それを聞いたにこが穂乃果の後ろ姿を憎々しげに睨みつけていた気がした。

 

 

「女装には自信があるから大丈夫だ」

『大丈夫じゃねえよ!それ一番やっちゃいけねぇやつだろうが!』

 

 悠の衝撃の発言に陽介は激しくツッコんだ。

 

「冗談だ」

 

『だと思ったよ。でも、悠の言うことは冗談に聞こえないからな。女装してアイドルやることなんてやりかねん』

 

「失敬な」

 

 いや、陽介の言い分は正しい。八十神高校の文化祭で女子陣に無理やり女装大会に参加されられた時、陽介や後輩の完二は断固拒否したが、悠は一番乗り気だったのだから。

 

「まぁ流石にアイドルはやれないが、協力はしようと思ってる」

 

『それがベターだろうよ。てか良いのか?お前受験生だろ?』

 

「そういう陽介もだろ?」

 

『うっ!そうだった……まあそれはそれとして、悠が元気そうで良かったわ。一応みんなにも悠は元気だったって言っとくぜ』

 

「よろしく頼む」

 

『了解。それじゃあ、俺これからやることあるから。また何かあったら連絡しろよ』

 

「勿論だ。それじゃあな、相棒」

 

『嗚呼、またな相棒』

 

 

 久しぶりに陽介と話したので、悠はとても良い気分になった。

 

(陽介は相変わらずだったな……里中や天城や完二、りせやクマ、直斗はどうしてるかな?……菜々子も)

 

 自室のベッドで寝っ転がりながら八十稲羽の仲間たちの事を考えていると、急に睡魔が襲ってきた。今日は色んなことがあって疲れたので少し寝ようと思い、悠は瞼を閉じて眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〈????〉

 目を開けるとそこは自室ではなかった。感覚からして夢であることは間違いないが、妙に現実感がある。ここはどこなのか?と悠は周りを確認する。

 分かったことはただ一つ。何もない。ただ、悠がそこにいるだけの空間であった。

 

(ベルベットルームって訳でもなさそうだな。すると、ここは一体?)

 

 悠が冷静に思考していると、突然異変が起こった。

 

「うっ!!」

 

 激しい頭痛が悠を襲った。あまりの痛さに悠はその場に座り込んだ。すると、また突然黒い霧のようなものが悠を包み込んだ。

 

 

「うわああああ!」

 

 

 まるで高圧電流に襲われたような激痛が走り、悠は耐えきれず激しく絶叫しのたうち回った。

 やがて黒い霧は晴れていくと同時に、悠はうつ伏せに倒れこんだ。相当な激痛のせいで悠の意識は朦朧としていた。

 

 

 

「やあ、悪いね」

 

 どこからか声が聞こえてきた。

 

「あれ?大丈夫?少し手荒かったかな?」

 

(どう…い…う……こと…だ……)

 

「ほう、あんなことをされても意識がまだあるのは大したものだ。流石イザナミを黙らせたことはある」

 

(!!……こ…いつ…)

 

「正直悪かったと思ってはいるが、今君にスパッと真実を知られては俺が困るんでね。君の培ってきた力は封印させてもらったよ」

 

(な….んだ……と…)

 

 言われているとあの黒い霧に蝕まれてから、体の何かがすっぽり抜けた気がする。

 

「まぁいい。力を封じられた君がどんな物語を作るのか傍観するのもまた一興か。楽しみにしてるよ」

 

(ま……ま…て………)

 

 何者かの声が聞こえなくなったと同時に、悠の意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〈悠の部屋〉

 目が覚めると、今度はちゃんと自室にいた。しかし、先程の悪夢のせいか体がだるい。時計を見ると、もうすぐ午前0時であった。どうやら長い居眠りをしてしまったらしい。ふと、午前0時というワードからあのことを思い出した。

 

 

『マヨナカテレビ』

 

 

 去年八十稲羽で流れていた『雨の夜の午前0時に点いていないテレビで自分の顔を見つめると、別の人間が映る』という噂。この噂はある怪異の一端であり、その時八十稲羽で発生していた連続殺人事件のカギとなっていた。

 あの事件はもう解決したし、今日は雨の日ではないから今更何も映るわけないだろうと思いつつ、悠はダルい身体を起こしてテレビを見つめる。すると、時計がちょうど午前0時を指したその時

 

 

 テレビが映った。

 

 

「なっ!」

 

 この画面に映る映像の感じはまさしく去年何度も観たマヨナカテレビと同じであった。それだけでなく、テレビに映っているのは仲が良さそうな3人の少女でだった。影で顔はよく見えないが、髪型は左から長いストレート、セミロングヘア、サイドポニーの少女である。

 まさか!と思い、テレビに右手を突っ込んでみると………

 

 

 右手が入った。

 

 

 悠は驚き、慌ててテレビから右手を引っこ抜いた。あまりの出来事に体が固まったそのとき、

 

 

『我は汝……汝は我……』

 

 

 理事長室で聞こえたあの声が頭に響いてきた。

 

 

『汝……新たな扉は開かれたり……』

 

 

 

 声はそれだけ言うと頭から消えてなくなり、テレビの映像も消えていた。悠は終始冷や汗をかいたが、同時に確信した。

 

 また何か事件が起きると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〈翌朝 音乃木坂学院〉

 昨日の疲労が溜まったせいか、悠はいつもより遅く起きたためギリギリの登校となった。クラスのみんなは悠の顔色が悪かったので気にかけてくれたが、悠は『大丈夫』と押し通した。

 

 悠は授業中も昨日のマヨナカテレビ(?)のことについて考えていた。もしもあれが本当にマヨナカテレビなら間違いなく事件が起こる。それにテレビに映った3人の少女は誰なのか?ストレートヘアの少女は分からないが、セミロングヘアの少女は確証はないが穂乃果に見えた。サイドポニーの少女は分からなかったが、何故か悠はその少女に心当たりがあるような気がした。

 

(………もしかすると)

 

「鳴上、この問題を解いてみろ」

「……え?…は、はい!」

 

 思考の海に身を任せていると、それが目に入ったのか教師に指名されてしまった。しかし、元々悠は頭はいい方なのですぐに答えられた。後からみると相当難易度の高い問題だったので、悠のクラス内での株はまた上がったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 〈昼休み〉

「鳴上くん今日こそ一緒にお弁当食べない?」

「いや、鳴上俺たちと」

 今日こそはと、クラスのみんなが悠をお昼に誘おうとすると

 

 

「鳴上くーん!探したで」

 

 

 突然教室に他クラスの生徒が入ってきた。その人物はあろうことか、昨日悠に弁当を上げた不思議少女『東條希』であった。

 

「え?」

 

「来ちゃった♪ほな、早く行こ。私待っとんたんやで。」

 

 希は悠の腕を引っ張り教室を出ようとする。

 

「ちょっと!東條さん!どういうこと?」

「東條さんって鳴上くんとどういう関係なの?」

 

 お昼の誘いを邪魔されたクラスの女子は希に食ってかかる。

 

「いや、それは」

 

 悠がただの知り合い?だと説明しようとすると、希は不敵に笑ってこう言った。

 

 

 

「私、鳴上くんの彼女やで♪」

 

 

 

 

「「「ハアアアアア!!」」」

 

 余りの衝撃的な情報にクラス全員が絶叫した。

 

「なっ!ちょっととう」

 

「いや〜高1の時から付き合ってたんやけど、鳴上くんが去年転校しちゃったから疎遠になってたんやけどな。でも、今年帰ってきてまた復縁したんや♪」

 

 悠のことはお構いなしに希は捏造情報を発信していく。

 

「いや、だから」

「さ、行こ。鳴上くん、私すんごい楽しみにしてたんやから♪」

 

 希はクラスに爆弾を投げ込んだあと、悠の腕を引っ張ってどこかに行ってしまった。

 

 このことによりクラスの女子はまるで福○ロスならぬ鳴上ロスのような状態に陥り、男子は血の涙を流し『鳴上悠に裁きの鉄槌を!』というスローガンを掲げたのであった。

 

 

 

 

 

 another view

 

 私は今穂乃果ちゃんと海末ちゃんと一緒に3年生の教室に向かっている。ことの発端は今朝のことだった。

 穂乃果ちゃんが私たちに廃校を阻止するにはスクールアイドルになるしかないって言って私たちにもやらないか?と誘ったのだ。私は別にやっても良かったんだけど海末ちゃんが

 

「私は絶対にやりません!」

 

 と頑なに嫌がっていた。まぁ海末ちゃんはあんまりそういうの苦手だってことは知ってたんだけど。それでも諦めない穂乃果ちゃんはこう言ったのだ。

 

「じゃあ、鳴上先輩に会いにいこうよ!絶対気が変わるから!」

 

 鳴上先輩?……もしかして…

 そう思い、私は穂乃果ちゃんに聞いた。

 

「ねぇ穂乃果ちゃん」

 

「ん?どうしたの?ことりちゃん?」

 

「その鳴上先輩って……おに……転校生の人のこと?」

 

「え?……うん、そうだけど」

 

 やっぱり!お兄ちゃんのことだった。

 頭にハテナマークを浮かべてた2人には説明した。そのお兄ちゃんもとい鳴上先輩は私の従兄弟であることを。説明した時、穂乃果ちゃんがスッゴく驚いていたけど。

 とりあえず、昼休みに3人でお兄ちゃんのもとを訪れることにしたのだ。海末ちゃんはしぶしぶだったけど。

 

 お兄ちゃん……

 小さい時よく遊んでもらったな。私、兄弟とか居なかったからお兄ちゃんがほんとうの『お兄ちゃん』のようだったんだ。でも、叔父さんと叔母さんの仕事の都合でよくお兄ちゃんが転校したから今まで中々会えなかったんだ。

 私が音乃木坂学院に来たのも、お母さんが理事長なのと親友である穂乃果ちゃんと海末ちゃんがいたのもあるけど、やっぱりお兄ちゃんがいるっていう理由が大きかった。でも、お兄ちゃんは私が入学したと同時に八十稲羽ってところに転校しちゃったけど……八十稲羽って確か去年奇妙な連続殺人事件があったってニュースであってたけど、お兄ちゃん大丈夫だったのかな?……

 

 そう考えているうちに、お兄ちゃんがいるという3年C組に着いた。ついに会えるんだね、お兄ちゃん。覚えてるかな?

 私たちは意を決して教室のドアを開けた。すると、そこには……

 

 

「鳴上くーん!」

「何でなのさー!」

「こんなのないよー!」

「鳴上は俺たちの敵だー!」

「今こそ鳴上に裁きの鉄槌をー!!」

 

 

 お兄ちゃんの名前を叫びながら涙を流しご飯をかきこむ女子の先輩と、カルト宗教団体のような儀式を行っている男の先輩が入り乱れるカオスな空間が広がっていた。

 

 another view out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〈屋上〉

「ハァ」

「ホントゴメンな、鳴上くん」

「すまないと思ってるんだったらもっとマシな嘘をついてくれ」

 

 クラスに爆弾を投下した2人は屋上で昼飯を食べていた。悠はもう頭のキャパシティを超えているので、もはやどうでも良いと思っている。八十稲羽でもバスケ部のマネージャーである海老原に彼氏のふりを強要させられたことがあったが、これはあれよりタチが悪い。

 

 

「それはそうと鳴上くん、昨日の私の弁当どうやった?自信作やったんやけど」

 

 早速希は悠に昨日の弁当の感想を聞いた。何故かソワソワしながら。

 やはりそれかと悠は思い、

 

「美味しかった。また作って欲しいくらいだったよ」

 

 と、当たり障りのない感想を述べた。後半に誤解を含む表現があるのは気のせいだろうか?

 

 

「ホンマ!嬉しい〜♪なら、また作ってきて良い?」

「また弁当を無くした時になら」

「うん!分かった!」

 

 さっきとはうって変わって、希は少女らしい眩しい笑顔を見せた。その笑顔を見て、悠はこの少女にどこかであったような気がした。

 

 

 それはともかく、悠は希に聞きたいことがあった。

 

「東條、2つ聞きたいことがあるんだけど良いか?」

 

「ん?かまへんよ。あとウチのことは希でええよ♪」

 

「とりあえず1つ目。何で昨日俺が矢澤と会うことを知っていたんだ?」

 

 名前呼びのことはスルーしつつ、1個目の質問をした。

 

「あ!にこっちに会えたんや。良かったわ〜、占いがはずれんで」

 

「占い?」

 

「そ、ウチ占いが趣味なんや」

 

 と、希はポケットからタロットカードを取り出した。

 

「!!………タロットか」

 

「ん?どうしたん?鳴上くん」

 

「いや、何でも……それで俺が矢澤に会うことが分かったっていうのか?」

 

「そう!ウチこう見えても占いには自信あるんよ。すごいやろ?」

 

「嗚呼、すごいと思う」

 

 つくづく自分はタロットに縁があるなと思った。もしかすると希はベルベットルームの住人か?と思ったが、それはないと思った。去年出会ったベルベットルームの住人は皆独特の雰囲気を持っていたが、希にはそれが感じられないのだ。ただ単に隠しているのかもしれないが。

 悠が次にと2つ目の質問をしようとした時、

 

 

 

「あ、そうそう。鳴上くん知ってる?【音乃木坂の神隠し】のこと」

 

 希がそんな話題を振ってきた。

 

 

 

「え?神隠し?」

 

「うん。私が聞いた話やと『午前0時頃に何も写ってないテレビの画面を見つめると、次の日に行方が分からなくなる』って内容だったんやけど」

 

「!!」

 

 悠は驚いた。それはまんまマヨナカテレビに似たような内容だったからだ。

 

「それを確かめようとした生徒がおったらしいんやけど、本当に行方不明になったんやって」

 

「………」

 

「ホントかどうか分からんけど、ウチらの音乃木坂が廃校になったんはこの噂のせいでもあるんちゃうかって話が出るくらい信じられてるらしいで……って鳴上くん?どうしたん?顔色悪いで」

 

「いや」

 

 こんな偶然があるのか?悠は冷や汗をかきながら昨日のことを思い出す。

 

(『真実』……『テレビに映った少女達』…ペルソナ……神隠し………間違いない!)

 

 悠は確信した。八十稲羽で起こったことがまた起ころうとしていることを。

 昨日テレビに映った3人の少女のうちの1人は心当たりがあるので、その人物に今すぐ警告しに行こうと悠は立ち上がった。

 

「すまない東條、ちょっと用事が」

 

「鳴上くん?どうしたん?……そんなにウチといるのがイヤ?」

 

 東條は上目遣いで悠を見つめる。これには流石の悠もたじろいだ。

 

「いや、そういう訳じゃ……」

「まぁそう言っても、もう昼休み終わりやし」

「え?」

 

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 

 

「ほな鳴上くん、ウチに付き合うてくれてありがとうな。また一緒にお昼食べよう♪」

 

 希は大人っぽい笑みを浮かべその場を去っていった。どうやら、いっぱい食わされたようだ。まだ希に聞きたいことは色々あったが、とりあえずあの人物を訪ねるのは放課後にしようと思い悠は教室へ戻った。

 

 

 

 余談だが、悠が教室に戻るとさっきの爆弾の余波が残っているのか突然男子が襲ってきたり女子が涙目で希との関係を問い詰めてきたので、悠は『言霊遣い』級の伝達力を最大限に駆使して説得したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〈放課後〉

 HRが終わると、悠は穂乃果を探しに教室を出て行った。しかし、2年生の教室をしらみ潰しに探しても穂乃果は居なかった。近くにいた生徒に情報収集をすると『体育館に行った』という情報が手に入ったので、情報をくれた生徒に礼を行って体育館を目指した。

 途中、誰かが自分を付けている気配がしたが気にしないことにした。

 

 

 

 〈体育館付近〉

 体育館付近に到着した悠は辺りを捜索した。すると、

 

 

「ラブアローシュート!!」

 

 

 ……………何か声がしたが気にしない

 

 

 

「ラブアローシュート!!」

 

 

 

 ……………気になる。

 悠は我慢できず声がした方へ向かう。するとそこには、

 

 

「みんな〜ありがと〜!」

 

 

 誰もいない壁に手を振っている弓道着姿の長い髪のストレートの少女がいた。

 

「…………(そっとしておこう)」

 

「〜〜〜♪…あ!」

 

 悠の存在に気づいたのか、少女は顔を真っ赤にして迫ってきた。

 

 

「み、見ましたね……」

「…………」

「見ましたね!貴方!」

「見ちゃった」

「そうですか…見ちゃいましたか……」

「録画すれば良かった」

「!!っ、なにを言ってるんですか!」

 

 悠のトンデモ発言に少女は声を荒げてしまった。そんなことは気にせず、悠はその少女をまじまじと見た。

 

「なっ、なんですか!私に何か?」

 

 悠はこの少女の奇行?にも驚いたが、もっと驚くべきものは彼女の髪型が長いストレートだということだった。

 

(まさか……テレビに映ってたストレートの子って)

 

 

 

「お、お兄ちゃん!!」

 

 後ろから大きな声が聞こえた。懐かしい声だと思い振り返ってみる。そこにいたのは

 

「こ、ことり?どうしたんですか?」

 

 今にも泣きそうな顔をしているサイドポニーの髪型をしている悠の従兄弟『南ことり』であった。

 

 

「ことり……なのか?」

「うん!……会いたかったよ!お兄ちゃん!!」

 

 悠がそう問いかけると同時に、ことりは歓喜余って悠の元へ駆け寄り抱きついた。

 

 

「なっ!は、ハレンチなー!」

 

 

 その光景を見て、弓道着少女は顔を真っ赤にしてそう叫んだが。

 

 

「久しぶりだな。元気だったか?」

「うん!……ことり…ずっと会いたかった…なのに……」

「大丈夫だ。俺はここにいるぞ」

 

 と、悠は泣きじゃくることりの頭を優しく撫でる。八十稲羽でも菜々子とはこういうやり取りもあったので、慣れてはいた。

 それにしても大きくなったなと悠は思った。小さい時とは違って、顔もスタイルも魅力的なものに成長していた。もはや叔母の理事長を少し若くした感じである。それに、サイドポニーか………菜々子も高校生になったら、この位成長するのか?と思っていると

 

「あ、あの!」

「ん?」

 

 すっかりこの状況に置いてきぼりされかけた弓道着少女が話しかけてきた。

 

「あ、貴方が…ことりの従兄弟さんである…」

 

「嗚呼、今年転校してきた鳴上悠だ。よろしくな」

 

 悠はことりをあやしながらそう答えた。

 

「……申し遅れました。私、ことりの友人である『園田海未』と申します。先ほどはお見苦しいものをお見せしてしまいました。」

 

 と、海未は礼儀正しく気品のある挨拶をした。先程の奇行?とのこのギャップは、八十稲羽にいる天城に似ていると悠は思った。

 

「そんなことないぞ。こっちも悪かった」

「いえ、そんな。殿方にあんなところを見られるなんて……私」

「やっぱり録画」

「絶対にやめてください!!」

 

 ことりをあやしながら海未とコントのようなやり取りをして数十分後。悠は2人に話をした。

 

 

 

「私たちが誘拐されるかもしれない?」

 

「本当なの?お兄ちゃん」

 

「嗚呼、信じてくれるか?」

 

 長い髪のストレートとサイドポニーもとい海未とことりに、誘拐されるかもしれないとそう警告した。流石にマヨナカテレビのことは伏せておいたが。

 

「……正直信じられませんが、ご警告ありがとうございます。最近そんなことに関するニュースが多いですから」

 

「そうか」

 

「安心してください。今日はとりあえず、ことりと穂乃果と3人で帰りますから。もしそんな輩が現れたら私が撃退しますので」

 

「そ、そうか……」

 

 綺麗な顔をして物騒なことをいう海未。ますます天城に似ていると悠は思った。

 

「そういえば高坂を見なかったか?彼女にも一応言っときたいことがあるんだが」

 

「……さっきそこの裏にいる所を見ましたよ」

 

「そうか、ありがとう」

 

「いえ。それでは私は部活に戻りますので。ことり、後で穂乃果と一緒に弓道場に来てくださいね」

 

「うん、分かった」

 

「それでは失礼します」

 

 そう言うと、海未は部活に戻っていった。

 

「お兄ちゃん、ことりも一緒に穂乃果ちゃんのところに行っていい?」

 

 ことりは上目遣いでそう尋ねた。久しぶりに会えた喜びのせいか、ことりは悠と一緒に行動したいようだ。それに対する悠の答えはもちろん決まっている。

 

「もちろんだ。久しぶりだしな」

「うん!ありがとう!」

 

 悠はすっかりご機嫌になったことりと一緒に海未が教えた場所へ向かった。

 

 

 

 

「あれ?穂乃果ちゃんいないよ」

 

 海未が教えた場所に着いたが、ことりの言う通りそこに穂乃果は居なかった。

 

「もう帰っちゃったのかな?」

「いや、まだ鞄が置いてある。どこかに行ったんじゃないか?」

 

 悠の言う通り、壁際に穂乃果のと思われる通学鞄があった。

 

「本当だ」

 

「ちょうどいいからここで待ってよう。そのうち高坂も来るかもしれない」

 

「うん……あっ、それならことり荷物取ってくるね。教室に置きっぱなしだから」

 

 ことりはHRが終わってから真っ先に悠を探しに行ったため、教室に鞄をほったらかしにしてたらしい。

 

「そうか。気をつけてな」

「うん!じゃあまたあとでね!お兄ちゃん」

 

 ことりは悠に笑顔を向けて、自分の教室へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〈1時間後〉

 おかしい。もう1時間が経過しているのに、穂乃果だけじゃなくことりも帰ってこない。心配になったので、悠は2人を探しに行った。すると、

 

「園田さん、どこ行ったんだろ?」

「流石に無断で早退って訳ないよね」

 

 弓道部員らしき女の子たちを見かけた。ちょっと気になったので話を聞きに行った。

 悠が彼女たちから聞いたのは

 

 

『園田海未は休憩時間から1時間姿を見せていない』

 

 

 というものであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 another view

 

 気づけば私は知らない場所に居た。さっきまで体育館の裏でダンスの練習をしてたはずなのに。何か突然眠たくなっちゃって寝てしまった。起きたらこんなところにいるなんて。

 それにここ、何か霧が濃くて前が見え辛いよ。

 

「すみません!誰かいますか!」

 

 不意に声が聞こえてきた。私はそれに向かって

 

「ここにいますよー!」

 

 と、大きな声で返した。すると

 

「その声、もしかして穂乃果ですか!」

 

 この声はまさか……

 

「海未ちゃん!何で!」

「それはこちらのセリフです!何で穂乃果がここにいるのですか!」

 

 目の前の霧の向こうから現れたのは、私の親友の1人の海未ちゃんだった。

 

「う〜ん、分かんないよぅ!気づいたらここにいたもん!」

 

「あ、貴方もですか!私も気づいたらここに」

 

 

「お、お兄ちゃん!どこ〜!」

 

 海未ちゃんとそんな話をしていると、また別の声が聞こえてきた。この声は……

 

「こ、ことりちゃん!」

「ことり!!」

「あ!穂乃果ちゃん!海未ちゃん!」

 

 今度はことりちゃんが現れた。どうなってるの?

 

「こ、怖かったよぅ。お兄ちゃんと別れたあと急に眠くなって……気づいたら……」

「ことりちゃんも!」

「ど、どうなってるのですか。」

 

 あまりのことに私たちは混乱した。すると目の前の霧が薄くなって、何か建物が見えた。その建物は……

 

「え?ここって、もしかして」

 

「私たちの……音乃木坂…?」

 

 そう、私たちが通っている音乃木坂学院だった。しかし、いつもと何か雰囲気が違うような……

 

「あ!………ほ、穂乃果ちゃん、海未ちゃん!これみて!」

 

 ことりちゃんが慌てた様子で校門を指をさしていた。私たちはすぐに校門を見た。すると、そこにはこんな張り紙が貼ってあった。

 

 

 

 

 

『廃校』

 

 

 

 

 

 この時、私たちは震えが止まらなかった。

 

「ねぇ……海未ちゃん…ことりちゃん……ここって」

「そう…です…ね……」

「ここって……………まさか」

 

 そう、私たちの今目の前にあるのは信じられないけど

 

 

 

 廃校になった音乃木坂学院だった。

 

 

 

 

 to be continuded

 

 

 

 




Next Chapter
「ここは……本当に?」

「バ、バケモノ!!」

「だ…だれ?」

『何言ってんのよ?私は貴方よ』

「ちがう!貴方なんか!貴方なんか!」




「大丈夫。俺が来た」




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