PERSONA4 THE LOVELIVE 〜番長と歌の女神達〜 作:ぺるクマ!
先日、やっと自動車免許(MT)を取ることが出来ました。まだ慣れないところはありますが、徐々に練習を積んでいこうかなと思います。ちゃんと交通ルールは守って。
さあ、この間章もついに終盤へ。あと4,5話くらいで終わる予定なので、早く希・絵里編が読みたい方々、もう少し待ってください。
そして、新たにお気に入り登録して下さった方、感想を書いてくれた方、アドバイスやご意見をくださった方々、ありがとうございます!読者の皆様の感想や意見が自分の励みになってます。
皆さまが面白いと感じてくれる作品を目指して精進して行きますので、これからも応援よろしくお願いします。
ついにニセクマの正体が明らかに!?それでは、本編をどうぞ!
another view(??)
ウチはこの学校の生徒会長。今年の春の選挙でみんなに選ばれた。だと言うのに……何なんこの記憶は……
『お前は特別な敵と戦うために造られた兵器だ』
『目標は同型機体全てとの戦闘。そして破壊』
この人たちは誰や?研究員?それに何言うてはるん?ウチは人間や……それに、何やのこの光景は……散らばる機械の残骸?みんな…人間のような顔をしてる……それを壊してるんは………
ウチっ?
ちゃうっ!!こんな過去…こんな記憶……全部嘘やっ!
助けて……助けて……誰か助けてっ!!
another view(??)out
<放送室>
悠と穂乃果はこの事件の元凶であろうニセクマと対峙している。辺りを見渡すと、ニセクマの傍に気を失っているりせの姿が見受けられた。エリザベスと戦う前での通信のこともあって、何かされてないか心配だったが、外傷は見当たらないので一先ず安心した。しかし、おかしなことに同じく放送室に囚われているであろうことりや菜々子の姿はなかった。
「おい、菜々子とことりは何処だ?そして、りせに何をした?」
普段の悠からは考えられない冷たい声色でそう問いただしたが、ニセクマは全く動じずに陽気な笑い声を上げて答えた。
「ぷぷぷ……どこを見とるとね、センセイ?センセイの大事な大事なナナちゃんとコトリちゃんはそこクマよ~」
ニセクマはふとりせが居るのとは反対方向に手を向ける。不審に思ってそこを見ると…
「「お兄ちゃん……」」
「「菜々子(ことりちゃん)っ!!」」
そこには菜々子と音ノ木坂学院の制服を着ていることりのの姿があった。囚われたと分かってずっと探していた自分の家族がそこにいた。今すぐにでも駆け寄りたい衝動に駆られて一歩前に出た瞬間、悠は奇妙なことに気づく。いつの間にか菜々子とことりの隣にいた
「これって……ミスディレクション?ってヤツなのかな?凛ちゃんから借りた漫画にのってた…」
「それは違うだろ……」
それ以上は色々と面倒なことになりそうなので、今はよしておこう。
「「お兄ちゃん……………」」
ニセクマが姿を消したことに気を取られていた悠に、菜々子とことりから弱々しい声がかかる。悠に助けを求めるようにこちらを見つめる2人は見るからに衰弱して、今にも倒れてしまいそうだった。あのニセクマが急に姿を消したのは気掛かりであるが、今は菜々子とことりの保護が最優先だ。悠は焦る気持ちを抑えきれずに2人に手を伸ばそうとすると、
「鳴上くんっ!ダメっ!!そこから離れて!!」
悠たちに遅れて放送室に入ってきた風花が緊迫した声で悠にそう言った。風花の警告に悠は思わず足を止めてしまう。何を言ってるんだ?早く菜々子とことりを保護しなければならないのに。そう思ったが、改めてことりの方を見ると違和感を感じた。何故ことりは持ってきてもない音ノ木坂学院の制服を着ているのか?まさか……
「ダメっ!!」
まずいと思った瞬間、風花と穂乃果が何か言い始める前に、聞き覚えのある声と同時に横から衝撃が走った。誰かに押し倒されるように転がった悠。転がると、近くで鈍い金属音がしたので何事かと思ってみると、ついさっきまで悠が居た場所には数本の剣が突き刺さっていた。もしもさっきまでそこにいたら、今頃悠は串刺しになっていただろう。それに、いつの間にか弱々しくなっていた菜々子やことりもいなくなっていた。そして、その悠を救ってくれたのは……
「
つい先ほどまで、菜々子と悠に助けを求めていたはずのことりだった。それに思わず驚いてしまったが、よくよく見ればこのことりは音ノ木坂学院の制服ではなく八十神高校の制服に身を包んでいた。ことりは顔を上げて悠が無事だったことに安心すると、笑顔を浮かべた。
「良かった…お兄ちゃん………うっ…」
無理をしていたのか途端に眠るように倒れてしまった。その様子に傍から見ていた穂乃果と風花は驚愕する。
「ことりちゃんっ!?さっきまでそこにいたのに……まさかっ」
「穂乃果ちゃん、落ち着いて。あの子は本物だよ。さっきあなたたちの前に現れたのは偽者だから」
「えっ?」
悠にもたれかかって眠ることりを見て、風花はそう断言する。穂乃果は未だに混乱していたが、まさしく風花の言う通りだと悠は思った。流石はサポート系のペルソナを所持していることもあって、あの菜々子とことりが偽者だということは看破していたようだ。この抱き着く感覚や胸辺りにくる柔らかい感触は間違いなく本物のことりだった。こういう事態に不謹慎だが、八高セーラーのことりも中々可愛いと思ってしまった。
しかし、今思えば、迂闊だったと自分を責めざる負えない。相手は自分たちの感覚を操ることができる。今までの戦いで陽介や海未たちにやったように。そんなことは分かっていたはずなのに、衰弱している菜々子やことりを目のあたりにして、すっかり心が乱れてしまっただろう。去年事件に菜々子が巻き込まれたことがまだトラウマになっているようなので、我ながら情けない。
『チッ!あ~あ、もう少しでセンセイをオダブツにできたのに……小娘が邪魔しおって……』
穂乃果と風花にりせの無事も確認してもらった同時に、不意にニセクマの声が聞こえてきた。振り返ると、そこにニセクマの姿があった。ただ、先ほどとは違って、雰囲気が風花と決闘させられそうになった時に見せた狂気に染まっているものになっている。悠はその姿を目にしたと同時に、日本刀を抜刀する。ちょうどニセクマと穂乃果たちの間に入っている状態なので、これなら穂乃果たちを守り切れる。そう思ったとき、悠の後ろにある放送室のドアが開いた。
「なっ……どういう状況なん……」
「か、会長っ!?」
入室してきたのは、先ほどまで姿を晦ましていた生徒会長だった。あの時と違って随分と落ち着きが戻っていたが、ものすごく顔色が悪い。それに、彼女は目の前で展開されている状況と悠とニセクマとの間にあるただならぬ雰囲気にただただ困惑して言葉が出なくなっていた。それに構わず悠は冷たい声でニセクマに問いただした。
「お前は一体何者だ?」
「フン…ふっふっふっふっふ…………」
悠がそう詰問した途端、ニセクマが不気味な声で薄く笑い、周りに異様な雰囲気に包まれた。何事かと思っていると、ニセクマは禍々しいオーラに包まれて、着ぐるみの中から黒い泥のような何かが溢れてきた。それはやがて一つに集まり何かの姿に変えていく。気づけば放送室の雰囲気は変わっていた。どこにでもあるような広いスタジオのような放送室の感じはそこにはなく、空間が禍々しいものを感じる赤い色に染まり、ふと横を見ると、作りかけの人形のようなものが多数ぶら下がっていた。そんな異色な雰囲気と共に、さっきまでニセクマが居た場所には、代わりのものが立っていた。それは……
「我は影……真なる我………」
大きな斧を軽々と手に持って、こちらに不気味な笑みを浮かべてる生徒会長と同じ顔…目を鈍い金色に怪しく光らせているシャドウだった。
「会長と同じ顔っ!ってことは、やっぱり」
「ああっ、あのニセクマは会長のシャドウだったんだ」
やはり推測通り、あのニセクマはこの生徒会長のシャドウだった。その証拠に鈍い金色の瞳以外の見た目は会長そのものである。ただ違うところがある。目にいくのはその体。あれは人間のようだが、四肢の所々に金属部品が露出している。衣装かと考えたが、肉骨格まで露わになった関節はいくつもある。まるで、ロボットのようだった。
「ウチと…同じ顔………それにロボットっ?」
会長はあのニセクマが自分と同じ姿になったこと、そしてその姿が何故かロボットのようであったことに困惑している。すると、
「ふふふ……あなたの望み通りにしてやったわよ。みんなお互いがおかしくなった幻を見て殴り合った。私はあなたの心の影、ロボットなのはあなたよ」
会長のシャドウ……呼び方を変えてシャドウ会長はそう困惑する会長が可笑しかったのか薄気味悪く笑いながら話かけた。それを聞いた会長は頭を抱えて全力で否定する。
「ウチの望み?な…何を言うとるんっ!?それに、ウチは人間やっ!!ロボットなんかやないっ!!ロボットなのはアンタやろっ!!」
「ふふふ……まだそんなこと言ってるの?ちょっとそこのお姉さん、この"私"に本当のことを教えてあげたら?」
シャドウ会長は会長の反応を見てクスクスと笑うと、この状況に追いつけなくなっている風花にそう言った。突然そう言われた風花は仰天する。
「わ、私っ?」
「だってあなた、"
「!!っ」
シャドウ会長にそう言われた風花は何か痛いところを突かれたように顔を歪めて黙りこんでしまう。その表情は図星を突かれたようにも見える。
「山岸さん、どういうことですか?」
悠は風花にどういうことなのかとそう問いただす。会長の正体を風花が知っているということも引っかかるが、それ以上に引っかかったのは"桐条"という言葉。"桐条"とはまさに、悠が直斗の協力を得て調査している企業だからだ。まだ穂乃果たちには言ってないが、特捜隊の仲間である直斗の調査で"桐条"が音ノ木坂学院の事件と関りがある可能性が浮上しているのだ。しかし、風花は悠の問いに黙り込んだままだった。
「風花さん?」
「……ごめんなさい……私もどう言ったらいいのか………」
穂乃果の声に反応したが、知っているは知っているがどう言ったらいいのか分からないようだ。そんな風花の態度にしびれを切らしたのかシャドウ会長はウザったそうに吐き捨てた。
「ハア……だったら、私が代わりに答えてあげる。この"私"の正体をねっ!」
「えっ!!」
風花は自分の真名を告げようするシャドウ会長を止めようとしたが、シャドウはそんな風花の言葉を無視して高らかに真名を告げた。
「"私"の名は【ラビリス】っ!シャドウを殲滅するために"桐条"のクソ野郎どもに造られた対シャドウ兵器よっ!」
「い……いや………いやああああああああああああっ!!」
シャドウ会長が高らかに自身の正体を明かすと同時に、会長がおかしくなったように悲痛の叫び声を上げた。
「会長さんっ!!」
「お前っ!一体何を…………………えっ!?」
悠と穂乃果がシャドウ会長に何をしたのかと問い詰めようとした瞬間、会長の周りを白い煙が包み、会長の身体を覆っていった。そして、白い霧が晴れたと同時に会長の姿は変わっていた。それは、人間の姿ではなく、シャドウと同じ全身に金属部品が剥き出しになっているロボットの姿だった。それには悠たちもだが、会長本人も驚いていた。
「うそ……ウチ………人間じゃなかったん……?」
自分の目に映る機械仕掛けの腕や身体を見て、真っ青になっている会長。正直信じられないが、シャドウと同じ姿をしているということはこれが会長の本当の姿なのだろう。そして、その正体はシャドウが言った"桐条"が作り出した対シャドウ兵器【ラビリス】。"桐条"と言えばと、悠はふとあることを思い出した。それは、音ノ木坂でにこを救出する前の直斗との会話だった。
~にこ救出前~
「桐条グループに企業内偵?」
『ええ……警察、それも公安直々の依頼です。しばらくは先輩と連絡が取れなくなりそうです』
時を遡ること一週間前、音ノ木坂のテレビに落とされたにこを救出する前に直斗からそんな連絡があった。この音ノ木坂の失踪事件に桐条グループが関わってるかもしてないという情報を入手して以来、直斗にその桐条グループを調査してもらっていた。しかし、直斗も色々調査をしてくれたらしいが、あまり有力な情報を掴めなかった。そんな折に警察からの依頼で企業内偵という本格的な調査することになったというので、これは手がかりを掴めるビッグチャンスだ。連絡が取れなくなる前に、直斗はこれまでの調査報告をするためにこうして悠に電話を掛けたということだ。
「そもそも、何で公安が直斗にそんな依頼をしたんだ?それなら公安が直々にやればいい話だろうに」
『ええ。最初は僕もそう思ったのですが、どうやらこれは
「えっ?」
直斗の話によれば、元々桐条グループは警察からシャドウ絡みのことで非合法な研究や非人道的実験などの活動をしているのではないかと目を付けられていたらしい。それが顕著になったのは、12年前に辰巳ポートアイランドで発生した爆発事件だということ。公式では建設工事中のガスの管理ミスが原因とされているが、実際は当時桐条グループが密かに行っていたシャドウを人為的に利用するための実験が暴走したことによるものらしい。
「…まさか、その時に現実の町にシャドウが溢れ出たというのか?」
『公安はそう考えていますが、確証を得られていません。何しろ、シャドウやペルソナなんてオカルトみたいな話を当時の警察が鵜吞みにしなかったものですから。しかし、もしこれが事実だとしたら……』
「……俺が高坂たちと追っている事件は、"桐条"が撒き散らしたシャドウが引き起こしたものかもしれないということか……」
公安の調べによると、実際3年前に同じ辰巳ポートアイランドで発生した"集団無気力症事件"も12年前に町に溢れ出たとされるシャドウが引き起こしたものだったらしい。要するに、公安は"桐条"がその事件を含めて裏で非合法な活動をしているのではないかと睨んでいるそうだ。ただ、何か特殊な事情により、そう易々と尻尾を掴むことが出来ない。そこで代々警察からの信頼が厚く、そしてシャドウやペルソナに理解のある直斗にその尻尾を掴んでほしいということだ。
静かに直斗の話を聞いた悠だが、思わず溜息をついてしまった。何というか段々話のスケールが大きくなっている気がする。稲羽の連続殺人事件も"テレビの世界"という不可思議なものが絡んでいたので大概だったが、今回はそのテレビの世界に"桐条"というシャドウを研究していたとされる巨大組織まで絡んでいるかもしれないからだ。
『ええ………僕はこれから桐条グループに潜入して調査を進めますが、先輩も気を付けてください』
「ああ、ありがとう。直斗の気をつけてな」
そんな会話を終えて直斗との会話は終了した。
この八十稲羽に帰ってきてから、マヨナカテレビが再び映ったり、音ノ木坂で出会った風花と再会したり、マーガレットの妹のエリザベスに遭遇したりと驚くべきことは数々あったが、一番の驚きはこれだろう。まさか自分と直人が密かに追っていた"桐条"に関係するものとこんなところで遭遇するとは。改めて会長…ラビリスを見る。最近人間に近いロボットが造られたなどといったニュースをよく見かけるが、これはその先を行き過ぎているのではなかろうか?体はロボットなのに、まるで心のある人間そのものがそこにいるような感じだ。凛が見たら興奮しそうだなと思いつつ、シャドウの方へ視線を向ける。すると、ラビリスのシャドウはニヤリと笑って喜々と語りだした。
「ふふ……思い出した?それが"私"の本当の姿よ。それに、そこのダンマリのお姉さんだって知ってるでしょ?"私"は"桐条"にペルソナを扱える兵器として造り出されて、同胞同士で戦わされた。研究のためだとか都合の良いこと言って、"私"たちに命令して互いを破壊させ合ったのよ。友達と呼べた子までもね」
シャドウラビリスが語ったことに悠たちは息を呑んだ。語られたことの重さにも対してもだが、それを語っているシャドウラビリスの言葉の裏に狂気とも言える怒りを感じた。このシャドウが語ったことに嘘は無いようなので、残念ながら"桐条"がシャドウの研究のために非人道的な実験を行っていたことは事実のようである。すると、シャドウラビリスは蹲るラビリスに近づいて語りかけた。
「同胞と何度も何度も戦わされて辛かったよね?悲しかったよね?だけど、この気持ちを分かってくれる人なんていなかった。普通に学校に通ってる連中を、自分と同じ目に遭わせたい。それがあなたの望みでしょ?だから『学校』で『格闘大会』ってわけよね?」
「仲間同士でガチで争わせて、この自分の苦しみを分からせたかった。結構苦労したのよ?この感覚を誤認させる力でそれぞれに違う幻覚を見せたり、わざわざ姿を変えていがみ合うように煽ったりね」
つまり、このシャドウラビリスは自身の能力を持って自分たちに幻覚を見せて戦いを煽っていたのだ。あの実況の煽りせちーもりせ本人ではなくこのシャドウが自分たちに見せていた幻だったのだろう。
「けど、無駄だった……せっかく仲間同士の醜い戦いが見られると思ってたのに……そこの鳴上くんたちは全然憎みあわなかった…………それどころか更に仲良くなってね……ガッカリしたでしょ?自分の苦しみを分かってもらえなかったんだから」
シャドウラビリスは悠と穂乃果を見てつまらなさそうにそう吐き捨てると、蹲っているラビリスに顔を近づけて詰め寄った。
「そうっ!"私"は
シャドウの辛辣な言葉に会長…ラビリスは苦しそうに身体を震わせている。それでも、必死にラビリスはそれは嘘だと言葉を振り絞った。
「ちゃう……ちゃう……こんなの…ちゃう………ウチはみんなに選ばれた生徒会長で……」
「みんなっ?そのみんなはどこにいるの?ここには見当たらないわねぇ……だって、みんな"私"の手で壊しちゃったもの………」
シャドウラビリスはラビリスの言葉に、スタジオに吊るされている人形たちを見てそう返す。まさか、話の流れからして、あれはラビリスがその研究所とやらで壊してきた同胞を表しているのか。そう思うと、背筋が寒くなっていくのを感じる。一体"桐条"はラビリスにどのようなことを強いてきたのだろう。すると、シャドウラビリスは次はこちらを見て、不気味な笑みを浮かべた。
「そのみんなにはこの子たちも含まれるよね?」
シャドウラビリスはそう言った瞬間、放送室の大モニターに光が灯る。そこに映し出されたのは……
「「「なっ…………!?」」」
3人はモニターに映っているものを見て驚愕した。何故ならそこに映っていたのは、磔にされて苦しそうな表情を浮かべている
「陽介っ!里中っ!それに天城や完二、クマ、直斗」
「う…海未ちゃんに、凛ちゃん?花陽ちゃんや真姫ちゃん……にこ先輩……」
「そんな……桐条さん……真田さん…………アイギスまで」
映っているのは先ほど戦った陽介や雪子、千枝だけではなく完二や直斗にクマと言った特捜隊のメンバーに、東京から一緒に来た穂乃果とことり以外の【μ‘s】のメンバー、そして風花の仲間を思わしき女性と男性だった。風花は仲間が磔にされていることにトラウマがあるのか、体が小刻みに震えている。
「おい、みんなをどうするつもりだ?もうお前の企みは終わったはずだろ」
「そうだよっ!何でこんなことするのっ!?こんなこと……意味がないじゃん!!」
仲間が磔にされてキレかけている悠と、同様にこんなことしても意味ないと叫ぶ穂乃果。しかし、シャドウラビリスは2人の反応を見てニヤリと笑い、狂気に満ちた笑顔でとんでもないことを言い出した。
「意味がない?……そんなことないわ。だってもう同胞と戦わされる苦しみを分かってもらえなかったんなら……あなた達には
そんなシャドウラビリスの言葉に悠と穂乃果は絶句してしまう。それはもう自分たちの想像を超えた狂気という言葉では表せない"人間への憎しみ"を感じる。
「だって、これはそこの"私"が望んでることなのよ。仕方ないじゃない?」
シャドウラビリスは何も詫びれることなく肩をすくめてそう言うと、ずっと頭を抱えて黙っていたラビリスが反論するように大声を上げた。
「ち…ちゃうっ!ウチやないっ!ウチはそんなことを望んでない!!何もしてないっ!壊したのはアンタやっ!!鳴上くんと穂乃果ちゃんの友達を傷つけたんはアンタやっ!!ウチやないウチやないウチやないウチやないっ!!」
シャドウの言葉に惑わされて、ラビリスは必死に否定の言葉を並べていく。その目は事実を受け入れたくない恐怖心で焦点があっていなかった。この何度も見てきたデジャヴを感じる状況はまずいと悠は直感する。
「鳴上先輩、まずいよ!かいちょ…じゃなかった、ラビリスさんがこのままじゃ」
会長の様子を見た穂乃果が切羽詰まった声で悠にそう言う。穂乃果も今までのことを思い出したのか悠と考えが同じだったようだ。そうだ、この状況ではいつあの禁句を言ってもおかしくない。
「な、何がまずいの?」
しかし、風花はこの世界のことを知らないので、何がまずいのかと2人に尋ねる。状況が状況だが、悠は平静を装った声で風花に説明した。
「このテレビの世界で出現したシャドウはその人物の心の中にある認めたくない感情が具現化したもの。もし、それを否定したら、シャドウは暴走して本人に成り代わろうと襲ってくるんです」
「えっ!?」
悠の説明を聞いて、早くラビリスがあの禁句を言おうとするのを止めようとするが、それは遅かった。
「アンタなんか…………ウチやないっ!!!」
ラビリスはとうとう耐え切れなくなって禁句を叫んでしまった。
「ふふ……ふふふふ……あははははははははははっ!!これで自由っ!!私はこれで自由よっ!!あははははははははははははははっ!!」
禁句を聞いたシャドウラビリスは今まで以上に高笑いしながら、赤黒いオーラに包まれていく。何度も見てきた光景だが、このラビリスのものは今までとは比べ物にならないくらい恐怖を悠は感じていた。陽介たち特捜隊や海未たちμ‘sたちの時とは違う、怨念に近い概念。そのオーラが消えていった瞬間、背後に守護者のような牛の怪物を顕現したシャドウラビリスは手に持つ斧を振りかぶってラビリスに襲い掛かる。ラビリスは己の影を否定したことにより、気絶してしまい動けない。
「させないっ!!」
間一髪のところで、悠がタロットカードを砕いて召喚したイザナギが2人の間に割って入り、シャドウラビリスの攻撃を受け止める。
「ちっ!?このっ」
瞬間、イザナギはシャドウラビリスを力で押し飛ばし、放送室の奥まで追いやった。それを狙って、悠は気を失っているラビリスを抱えて、風花と穂乃果の元へ運んだ。
「山岸さん、会長…ラビリスと高坂たちをお願いします」
「えっ?う、うんっ!」
「それと…後で話は聞かせてもらいますからね」
「……分かった。気を付けてね。【ユノ】!!」
風花は悠の言葉に圧倒されたが、すぐさまユノを召喚し、穂乃果と倒れているりせとことり、ラビリスを保護した。これで心置きなく戦える。そう思った
「何?この私を倒そうっていうの?たかがペルソナを使えるだけの人間風情が私に勝てるはずないじゃない」
恨みに満ちた声色でそう言うシャドウラビリスに臆することなく、悠は真っすぐな瞳でこう返した。
「……俺は言ったはずだぞ。俺たちの絆を踏みにじったり、後輩を巻き込んだ報いを受けてもらうと」
「ぷぷぷ……あはははははははっ!あなたも大概よね。仲間?絆?そんなものを口にするあなたを見るだけで反吐がでるのよっ!やってしまえっ!!【アステリオス】っ!!」
刹那、【アステリオス】と呼ばれた牛の怪物は雄叫びを上げて悠に襲い掛かった。その一振りを受けるのはまずいと判断した悠は間一髪その拳を躱した。だが、その瞬間に衝撃波が発生して悠は後方に吹き飛ばされる。それをイザナギが受け止めてくれたので、大事には至らなかったが、改めてあのシャドウラビリスが顕現したアステリオスの恐ろしさを再確認した。
「どうっ!これでも引かないつもりっ!?本当は怖くて逃げたいんでしょ!?そんな今日会ったばっかりの赤の他人…いえ、ガラクタなんて見捨てたいんじゃないのっ!?」
「…………………………」
悠の様子を見たシャドウラビリスは高らかに悠を嘲笑う。しかし、悠はそんなシャドウラビリスを気にすることなく、地面に降り立ち、静かに日本刀を構えなおしてシャドウラビリスを睨み返した。
「確かに俺は何も知らない。"桐条"がラビリスにどんな酷いことを強いてきたのか、どんな辛い思いをしてきたのか。だが、どんなことであれラビリスはこの世界に落とされた被害者だ。俺たち特捜隊は被害者を見捨てることは絶対にしないっ!」
千枝に言われたことを思い出す。どんなことがあっても、ラビリスは助けなくてはならない。そのために自分たちはこの世界に飛び込んできたのだ。悠の決意を聞いた途端、シャドウラビリスは苦虫を食い潰したような表情になり禍々しいオーラを増幅させた。今の悠の言葉は彼女の神経を逆撫でさせたようだ。
「本当……ムカつくわね………もういいっ!ひと思いに殺してやるっ!!」
シャドウラビリスは悠の言葉を聞いて怒り狂うと、再び手に持った機械仕掛けの斧を振りかぶって悠に襲い掛かった。
「全く………得体の知れないロボットまで助けようとするなんて、相変わらず君は酔狂だね」
放送室とは別の薄暗い教室。男はモニターで悠とシャドウラビリスの戦いを視聴していた。その男の背後には磔にされている数名の少年少女がいる。男の手には一丁の拳銃が握られている。男…足立透はふと背後をチラッと見ると、再びモニターに向かってこう言った。
「でも、速攻で決着を着けなきゃ時間がないかもよ?君たちに死なれたら、僕が困るんだからね。悠くん」
ーto be continuded
Next Chapter
「諦めない」
「鳴上先輩っ!」
「これで終わりだっ!」
「みんな…力を貸してくれ」
Next #32「Break out of...①」