PERSONA4 THE LOVELIVE 〜番長と歌の女神達〜 作:ぺるクマ!
前回は息抜きとして番外編を投稿しましたが、本編だと思ってびっくりした方がいましたら、すみませんでした。先日やっと部活の一週間合宿から帰ってきました。滅茶苦茶疲れましたし、外で思いっきり活動したので日に焼けました。しばらくは家で休みたい気分です……
ここでお知らせ。この間章は出来れば10月までには終わらせたいと思っています。なので、希と絵里の話を待っている方々、もう少しお待ちください。また、今回の話は色々盛り過ぎて今までより文字数が多くなっています。というのも、先日公開されたプリズマ☆シロウを見に行ったら、これぞ主人公と言った士郎くんの姿に感化されて、カッコいい悠を書きたいと思ってしまったのが原因なのですが………
新たにお気に入り登録して下さった方・感想を書いてくれた方々、ありがとうございます!読者の皆様の感想や意見が自分の励みになってます。
最近低迷気味ですが、これからも皆さんが楽しめる作品を目指して精進して行きますので、応援よろしくお願いします。
それでは、本編をどうぞ!
悠と穂乃果が体育館へ向かったのを見送った陽介は地べたに寝ころんで空を仰いでいた。自分は悠に敗れて、ここら一帯から出られないようになっている。情けないが自分はここまでだろう。だが、不思議と陽介の心に後悔や絶望といった感情はなかった。
「…相棒なら……悠ならやれるだろうよ」
陽介は空を見てニヤリと笑ってそう言った。自分で言うのもなんだが、悠は絶対にどんなことがあっても挫けない。去年自分の想い人の命を奪った連続殺人事件を追った際も、相棒は何事にも惑わされず自分たちを引っ張って事件を解決へと導いたのだ。そんな悠なら、この奇妙な事件も東京で穂乃果たちと追っている事件を解決できる筈だ。その時……
「あ~あ!つまんねえの!てめえらのナカヨシコヨシの戦いはよぉ!!」
突如、どこからか誰かの声が聞こえてきた。聞き覚えのない少年の声だったので、陽介はギョッとする。思わず辺りを見渡すが誰もいない。どこかに隠れているのだろう。陽介は思わず身構えるが、相手は姿を見せずに陽介を罵った。
「アイボーアイボーってうるせえんだよ!一人の時は弱虫毛虫のクセによ~。群れてる時だけはしゃぎやがって、犬かっての!」
陽介は相手の言葉に腹を立てた。言われたことは心当たりがあるので否定はしないが、姿を見せずに悪口を言われるのはすごく腹立たしい。
「どこにいやがる……出てきやがれ!この臆病者!!」
「ここだよ…犬が」
すると、空からまた自分たちを囲っていた四つの柱が出現し、陽介の周りにリングが出来上がった。これに陽介は驚愕する。これはさっき悠と戦った後に消えたのではなかったのか?すると、
「お前らがナカヨシコヨシみたいな戦いをしたから、欠片が全然集まんなかったぜ……ったく動くのは
瞬間、陽介の目の前に見たこともない少年が出現した。赤髪に顔にバツ印の刀傷、腰には二刀の日本刀と八十神高校の学ランを結んである。どこからどう見ても八十神高校では見かけない外見だった。
「な、何者だ?お前………」
少年は陽介の問いに返答することはなかった。代わりに雰囲気を変えて、腰に差している二刀の刀を抜刀して陽介に向けた。
「さあ、僕たちのために……あの子のために戦え」
悠と穂乃果はひたすら体育館へと走った。あの生徒会を名乗る少女を止めるためでもあるが、あそこで仲間の誰かが戦っているのであれば、自分たちが止めなければならないからだ。見たところ、この八十神高校は悠が去年通っていたものと同じだったので、体育館への道順は覚えていた。穂乃果と急いで走っていると、悠はふと自分の身体に違和感を覚えた。
「鳴上先輩?どうしたの?」
「いや……さっきの傷が」
先ほどの決闘で陽介に与えられたダメージが無かったかのようになっている。リャナンシーの回復魔法で痛みを緩和したとはいえ、それは考えられないことだった。悠はもしやと思って
そう思っているうちに、2人は体育館の入り口に到着した。悠と穂乃果は互いに頷いて中へと足を踏み入れた。そこには…
「これはっ!」
体育館の中には異様な光景が広がっていた。端々に大量の椅子が積み上げられており、それらは天井まで届きそうなくらい巨大なオブジェと化している。そのせいか、ここはまるで廃墟化した建物のような雰囲気を出していた。ここはテレビの世界だが、去年この体育館でバスケ部の友人【一条康】と共にバスケに励んでいた思い出が汚されたかのように感じて、悠は少し怒りを感じていた。
「あ、あれって!?」
穂乃果が何かを見つけたように、体育館の中心を指さした。そこには二つの人影があった。一つは扇を持って澄ました表情をしている雪子、もう一方は傷ついて床に倒れている八十神高校の制服を着た海未がそこに居た。
「「天城!(海未ちゃん)!」」
悠と穂乃果は心配になって駆け寄ろうとしたその時、あの忌々しい声が2人の足を止めた。
『ムホホ~、センセイのご到着クマ~。恐れ多くもクマから逃げた小娘と優雅にデート中クマか?急いで来たっぽいけど残念!もうここでの決闘は終わってしまったクマ~~。んで、勝者は当たり前と言ったら当たり前のユキチャンだクマよ~~。まぁ、覚醒して一月のヒヨッコがユキチャンに勝てるわけないクマよね〜』
「っお前!」
悠はクマの言葉に思わず噛みついてしまった。戦いに間に合わなかったことにもだが、大事な後輩である海未を嘲笑されてので腹が立つ。
『おう~、悔しそうな顔クマね~。そうそう、その表情がたまらんクマ~』
クマ?は戦いを止められなくて悔やむ悠を面白いものを見たかのように嘲笑った。普段のクマからは考えられないほどの表情だ。
「ふざけないでよ!!友達が傷ついて苦しんでるのを見て何が楽しいの!?」
穂乃果も親友をバカにされて悔しかったのか、モニター上のクマ?に突っかった。それを見たクマ?は更に邪悪な笑みを浮かべてこう返す。
『ほほう……おバカな小娘には知らんかも知らんけど、人の不幸は蜜の味っていうクマよ~?クマはそれが大好物なんだクマ〜。小娘も大人になれば分かるクマよ〜』
それを聞いた穂乃果は更に悔しそうな顔をする。今すぐ殴りに行きたいのにそれが1番出来なくてもどかしくなっているようだ。そんな穂乃果を悠が優しく諭した。
「高坂、あいつの言葉を真に受けるな」
「でもっ!」
「今は天城と園田を気にするべきだ」
悠の言葉で穂乃果は少し落ち着きを取り戻したようだ。2人は急いで倒れている海未の元へと駆け寄った。
「園田、大丈夫か?」
「海未ちゃん!大丈夫?」
「う…ううう………鳴上先輩……穂乃果………私は…」
辛うじてだが、何とか意識があるようだ。雪子に一緒に手当てしてもらおうと彼女の方へ目を向けると、雪子は慌てずもせずに耳を疑うようなことを言ってきた。
「鳴上くん?何慌ててるの?別段痛くしなかったから、大丈夫なはずなんだけど?」
悠たちの様子を見て放った雪子の言葉に悠は驚きを隠せなかった。重症というほどではないが、どこからどう見ても海未は重体である。傷ついている人はほっとけない性分の雪子からとは思えない発言だった。
「ちょっ!雪子さん!何言ってるの!?海未ちゃんどう見ても大丈夫じゃないじゃん!!」
「???」
穂乃果の焦った声を聞いても雪子は訳が分からないと言わんばかりに首を傾げている。もしやと思い、悠は雪子にこう話しかけた。
「それより天城、俺たちをこんな大会に巻き込んだあのクマ?の居場所が分かった。そこに菜々子とことりが居るらしい」
「え?そんな…………」
雪子は菜々子がここに居るとは思わなかったようで、少し焦った顔になった。どうやら先ほどの陽介とは違って、菜々子やことりのことを心配してくれているようなので大丈夫かと思ったが、それは間違いだった。
「ああ。俺は今からあのクマの居る放送室に乗り込んでくる。だから、天城は高坂と園田の保護を頼む!天城が2人といてくれれば安心」
「……そんなの嫌よ。だって、その子たち、鳴上くんの後輩でしょ?私は全然関係ないもの………」
「!!」
悠の言葉を遮ってそう言った雪子に穂乃果は動揺してしまった。まだ出会って一日しか経ってないが、自分たちに見せてくれた優しい心を持つ雪子から発せられた言葉とは思えなかったからだ。
「ゆ、雪子さん?……雪子さんだよね!私たちにあんなに優しくしてくれた」
しかし、雪子は穂乃果の言うことが分からないらしく、目を伏せてこんなことを言ってきた。
「え?……何て言ったらいいか分からないけど…どうしても鳴上くんが我侭だなって思って……」
「「えっ?」」
「いつも知らない人とか…自分に関係のある人とかを助けたりするのは、とても偉いと思うんだけど……あなたの自己満足に付き合って、危ない目に遭う私たちのことはどう思ってるんだろうなって思って……」
慣れ親しんだ雪子に投げかけられた静かで辛辣な言葉。穂乃果をそれを聞いて、嘘だと言わんばかりに困惑している。
「鳴上先輩は我侭ですか………確かにそうかもしれませんね」
「え?」
今度は穂乃果に介抱されている海未が悠に向かってこう言った。
「先輩はいつもいつも……穂乃果と一緒に自分の思い付きで人を引っ掻き回して…………どうして貴方はそう簡単に人を巻き込めるんですか?それに付き合わさせる私たちの気持ちも考えてくださいよ…………」
「ちょっ!海未ちゃん!!」
穂乃果は海未が優に投げかけられた言葉に動揺した。しかし、悠は雪子と海未の言葉に何の動揺もしなかった。何故なら2人とも陽介の時と同様に惑わされているからだ。2人の言葉は一見正論に聞こえるが、暗にこう言っているのだ。
【自分に関係のない人は傷ついても構わない】と。
命の重さを蔑ろにするようなことをこの2人は絶対に言わない。自分よりも他人に重視を置く2人の言葉とは思えなかった。
「あ、アンタら!グランプリは中止って言ったやろ!!」
すると、体育館に姿が見えなかったポニーテールの少女がやってきた。悠は彼女の姿を見るとぎょっとし、またあらぬ疑いをかけられると思っていると、
『何ねえ、この犬っコロは!!せっかく良い泥沼シーンが見られるっちゅうのに!カンケーない犬はご退場願うクマ!』
突然頭上のモニターからクマ?が映し出されて、少女に向かってそう言った。すると、少女はモニターのクマ?に向かって言った。
「関係なく無い!ウチはこの学校の生徒会長や!!ウチはこのグランプリは絶対認めへん」
少女の言葉に悠は驚きを隠せなかった。この少女が八十神高校の生徒会長?全くもって知らなかった。だが、彼女の今の言葉を聞いて、悠はどこか納得した。先ほどは突然の出会いであまり分からなかったが、彼女に音乃木坂学院生徒会長である絵里に似た雰囲気を感じたし、その言葉にはそう並みならぬ使命感を感じた。しかし、クマ?はその会長の言葉が鬱陶しく聞こえたのか、迷惑そうな顔をする。
『ハァ〜、キャンキャンとうるさい犬っころクマねぇ。お犬は隅っこでおとなしくしんしゃい!はい、お座り〜』
全く自分の言葉に取り合わないクマ?を見て、会長は思わず顔を歪めた。余程相手にされなかったのが気に気に食わなかったのだろう。このままでは暴走してしまいそうなので、悠は彼女とクマ?の間に割って出た。
「どうした?女性に優しいクマにしては、随分な仕打ちじゃないか?」
自分の知っているクマ?は無類の女好きなので、女性にこんなひどい言葉は掛けない。綺麗な女性を見かけたら、すぐにナンパを仕掛けるクマはどこに行ったのだろうか。
『フンッ!枯らっきしの
「嘘つき?」
まるで彼女を知っているかのような口ぶりだった。思わずそれについて質問しようかと思ったが、やめておいた。今まで通りこちらの質問はあまり受け付けないようだし、何よりあちらが本当のことを言うのかどうかも怪しいものだ。それはそれとして、今はやることがある。
「な、鳴上先輩!!」
「アンタ!」
悠は雪子と対峙して日本刀を抜刀した。その悠の姿に穂乃果と生徒会長は驚き、慌てて止めようとしたが、もう遅い。既に悠と雪子が戦うことはこの体育館に入った時点で決められていたのだ。あのクマ?の思惑通りになっているのは癪に障るが、一先ずこの負の連鎖を断ち切るためには決着をつけるしかない。悠が日本刀を構えると、頭上もモニターにあの煽りせちーが映った。
『きゃはっ!さっすが悠先輩!目的のためなら、女の子が相手でも容赦なし?ホンット、筋金入りのシスコン野郎だね!その調子でガンガン進んじゃえ!じゃあ、いっくよ~!リングイーン!』
刹那、悠と雪子の周りに頭上から4つの柱が降ってきて、2人を囲むように地面に突き刺さって一つのリングが完成した。先ほどの陽介との戦いと同じことが起こったことに驚いたが、悠は平常心を保って日本刀を握り直した。たとえ今言葉が通じなくても、戦うことになっても……自分たちは分かりあえる。信じるんだ。己と仲間を。
「生徒会長……すまないが、今は耐えてくれ。これが終わったら、全て話す」
生徒会長は何か言いたげだったが、悠の言葉を聞いて押し黙った。今はこの戦いを見守ることしかないだろうと思ったのだろう。そして雪子の方を見ると、彼女は好戦的な笑みを浮かべて扇を構えていた。穂乃果たちを守ることには抵抗したのに、悠と戦うことに異論無しと言うことは完全に惑わされているようである。ならば、この戦いを以てその幻覚を解いてやる。
「おいで!【スメオオミカミ】!!」
雪子は悠がペルソナを召喚する前に扇でタロットカードを砕いて、ペルソナを召喚した。黄金に光り輝く美しい姿をした雪子のペルソナ【スメノオオミカミ】。あんなペルソナを持つ雪子が変わってるはずがない。しかし、あの超覚醒しているペルソナで【イザナギ】だけでは勝てないだろう。ここで悠は切り札を一つ切ることを決心した。
「悪いが天城、加減は無しだ」
悠は掌にタロットカードを発現させる。しかし、そのイラストは【愚者】ではなく【魔術師】のカードだった。
「えっ?」
「【ジャックランタン】!!」
another view(絵里)
「それにしても、鳴上くんはこの学校の友達に慕われとったなぁ」
「そうね……」
わたしと希は八十神高校の校舎を歩きながら先ほど出会った人たちとの会話を思い出していた。先ほど知り合ったのは、バスケ部の【一条康】くんとサッカー部の【長瀬大輔】くん、そして吹奏楽部の【松永綾音】さん。希がさっき『自分は鳴上くんの彼女』という嘘を3人に吹き込んだから、その誤解を解くのに苦労したわ。希はとても不満そうだったけど、全く気にしない。そんなこともあって、お知り合いになった。そして、一息ついて3人に東京での鳴上くんはどうなのかと聞かれたので、私と希は分かる範囲で音乃木坂での鳴上くんの様子を彼らに伝えた。
「へぇ~、鳴上先輩は東京でスクールアイドルのマネージャーをしているんですか」
「なんつうか、あっちでも結構人から好かれてるって、鳴上らしいって言っちゃらしいな」
「ああ、鳴上はそういうやつだからな」
話を聞いてみると、3人とも鳴上くんに悩みを解決してもらったらしい。一条くんはお家の事とバスケのことで、長瀬くんは女の子のことで、松永さんは自身のことで相談に乗ってもらったらしい。3人とも、悩みが解決したのは鳴上くんのお陰って言ったし、随分と鳴上くんを慕っているようだった。彼らの他にも鳴上くんに相談に乗って悩みを解決したという人はいるらしい。その時、希が心底彼らを羨ましそうな目で見ていたけど、どうしたのかしら?
そのこと以外にも彼らからは色々な話を聞いた。試験ではずっと学年トップを維持し続けたことや体育祭では陸上部を押しのけて最下位から一位になったこと、夏休みに数多くのバイトをこなしたこと、鮫川の伝説のヌシを釣り上げたこと、文化祭で女装大会に出場したことなど………えっ?女装?
一条くんがその時の姿を写メで撮っていたらしいので、見せてもらったけど……何というかはまりすぎて思わず笑ってしまったわ。希が欲しいからと言って、一条くんにその写メを貰っていたけど………その後、一条君たちは部活の休憩時間が終わったらしく、その場で別れた。
そうして八十神高校の校内を歩きながら彼らの話を思い出していると、不意に私は鳴上くんが羨ましいと心底思った。彼は私と違って一条くんたちだけじゃなくて、天城屋旅館の雪子さんや他の稲羽の人たちからもすごく慕われていた。私が以前彼のことを嫌いと言ってしまったのは、単純に私には持っていないものを持っている彼に嫉妬していたからなんだろう。そういえば……
『絢瀬が俺を好きになってくれるよう頑張らないとな』
ううっ、思い出すだけで胸がドキドキするわ。あれは私の嫌いという認識を改めさせようとして言ったことだろうと思うんだけど……あんな笑顔で言われたら私……
「あれ?アンタ達、ここの生徒じゃないよね?どこから来たの?」
しばらく校舎の中を見学していると、今度はある女子生徒に声を掛けられた。容姿は今時の女子高生を絵に描いたような感じだった。こういうタイプの人は正直苦手だけど、私はしどろもどろになりながらも彼女の質問に答えた。
「えっと…私たちは東京から」
「東京?へえ、都会から来たんだ。都会ってことは、鳴上の知り合いとか?」
今、鳴上って言った?じゃあこの人も鳴上くんの知り合いなの!そう思っていると、隣の希がしめたと言った顔をして一歩前に出た。まさか……
「初めまして。ウチはその鳴上くんの彼女や。よろしゅうな」
やっぱりィ!何で希は鳴上くんの友人と分かった途端にそんなこと言うのよ!私は焦って彼女に違うと言おうとしたが、彼女の口から発せられた言葉に私は思考が停止することになった。
「はあぁぁぁぁ!?アンタがあいつの彼女!?あれだけハーレムを広げておいて、こんな彼女が居るとか……鳴上のやつ、どういうことよ!!」
「「はっ?」」
ハーレム?今この人ハーレムって言った?ハーレムってあのハーレムのことよね……もしかして鳴上くん……この時、私の心の中に自分でも分からない感情が芽生えていた。言葉では表しきれない複雑な気持ち……
「なぁ?ハーレムってどういうことか教えてくれへんかいな?」
「えっ?」
希は目のハイライトを消して、彼女からその言葉を聞いた途端にずいっと彼女に近づいてそう尋ねた。私も希に倣ってずいっと彼女に詰め寄って、その鳴上くんのハーレムについて問いただす。彼女は困惑していたけど、どうしても聞いておかなければならないだろう。そのハーレムとやらについて…
another view(絵里)out
「くっ……何で……」
雪子はあまりの出来事に困惑していた。聞いていた話とは全く違っていたからだ。悠は東京で何者かに力を封じられて、去年自分たちを何度も助けたチェンジや合体が出来なくなっており、今所持しているペルソナは【イザナギ】だけのはすだ。しかし、今自分を苦戦させているのは別のペルソナなのだ。魔術師のタロットカードの【ジャックランタン】。体型はとても小さいのに、スメオオミカミの周りをちょこまかと纏わりつき、自身の炎をランプに吸収する。それがとても鬱陶しかった。
『ちょっと、先輩!チェンジが出来るって聞いてないんだけど!!先輩がチェンジ出来たら、そんなのチートじゃん!チートよチート!チーターよ!!』
煽りせちーはそんなことを言ってくるが彼は気にしなかった。何か妙に危険な発言をした気がするが自分も気にしない。ともかく、悠がチェンジを可能にしているなら、それはりせの言う通りチートに等しい。今すぐにでもスメオオミカミと相性の良いペルソナを召喚してもおかしくない。その結末を避けるためにも、雪子は早期決着を決断した。そのために雪子は手始めに…
「ふっ!」
自身の武器である扇を悠に投げつけた。悠は雪子の行動に驚き、咄嗟に日本刀で扇をはじき返す。扇は惜しくも弾かれてしまったが、それでいい。
「今よ!スメオオミカミ!!」
悠が扇を投げつけられてあっけに取られた瞬間を狙って、雪子はジャックランタンに物理攻撃を仕掛けた。案の定、悠は反応するのが遅れてしまい、ジャックランタンを回避させることが出来ずにスメオオミカミの攻撃が直撃してしまった。
「ぐっ……」
ダメージのフィードバックが来た悠は思わず体に手を当ててしまう。顔の歪み具合からして相当なダメージを受けたようだ。それを勝機と見た雪子は攻撃の手を緩めることなく、ひたすらスメオオミカミでジャックランタンを殴りつける。
『おおっ!雪子先輩の機転で面白い展開になってきたぞ~!そのままやっちゃえー!女の敵であるシスコン番長をやっつけろ~!』
スメオオミカミがジャックランタンを蹂躙している姿を見て煽りせちーは更に煽ってくる。悠はダメージを受けながらも戦況を把握する。肉弾戦でジャックランタンでは不利と判断して、悠はペルソナをチェンジすることを決断した。
「ちぇ、チェンジ!」
スメオオミカミの攻撃の隙を見て、悠はペルソナを【ジャックランタン】から【イザナギ】にチェンジする。ここで一気に懐に入って一撃を決めようとしたその時、
「花と散れ!スメオオミカミ!!」
雪子はタイミングを見計らったようにそう言うと、スメノオオミカミは両手を光り輝かせて、イザナギが立っている場所の中心に蓮の花を彷彿とさせる魔方陣を展開させた。刹那
「ぐあああああっ!」
魔方陣から大火焔が出現し、イザナギを襲った。当然避けきれることもなくイザナギは大ダメージを受けてしまい、それは悠にフィードバックする。先ほどの陽介戦とは比べ物にならないダメージに悠は倒れそうになりながらも、日本刀で身体を支えながらも意識を失わぬよう踏ん張った。何とか踏ん張って意識を保ちながら、悠は己の愚かさを呪った。完全に読まれていた。まさかチェンジする瞬間を狙って大技を繰り出してくるとは思わなかった。もう虫の息であるイザナギと悠の姿を見た雪子はクスっと笑いながらこう言った。
「焼き具合はどうだった?鳴上くん。トドメはウェルダンで行くよ」
雪子のさらっと言った言葉にその場が凍り付いた。アレは本気ではなかったのか。あまりの容赦の無さは流石雪子と言ったところかと悠は思った。そして雪子はトドメを刺そうを扇を構えなおす。
「雪子さん、止めて!鳴上先輩が死んじゃうよ!止めて!!」
「そ、その子の言う通りや!アンタ、その人は友達なんやろ!!」
リングの外で穂乃果と生徒会長が雪子にそう懸命に訴えるが、雪子は耳を貸さずに悠を見据えたままだった。
「深紅に染まれ!スメオオミカミ!!」
そして雪子は無慈悲にもそう言って、スメオオミカミに倒れそうなイザナギの周りに先ほどと同じ魔方陣を展開させた。
「いや……いやああああああ!鳴上せんぱーい!!」
穂乃果の悲痛な叫びと同時に、蓮の花の魔方陣から大火焔がイザナギを襲った。
another view(悠)
ああ、負ける。俺は朦朧とする意識の中そう思った。身体は言うことを聞かないし、意識を保てるだけで精一杯。どう見ても詰みだった。チェンジを使えば勝てると思っていた自分を愚かだと思う。相手はあの聡明な頭脳をもつ天城だ。こっちがチェンジを使えると分かれば、その裏をかくこと位してくると分かっていたのに……俺はここで負けるのか。菜々子やことりを……救うことが……
「いや……いやああああああ!鳴上せんぱーい!!」
諦めそうになったその時、俺の頭に高坂の悲痛な叫びが聞こえた。その声を聞いた途端、ある光景が頭に浮かんだ。それは何時ぞや音乃木坂学院の屋上での練習風景。辛いながらもダンスのステップを懸命に練習することりや園田たちの姿。そして、みんなを励ますかのように太陽のような笑顔を浮かべる高坂の姿だった。
ー負けられない
高坂の笑顔を思い出した瞬間、俺はそう思った。そうだ、俺にはまだ負けられない!やるべきことがある!菜々子やことりだけじゃなくて、この世界に囚われた仲間たちを……目の前でクマ?に惑わされている天城や園田を助けるためにも!俺は負けられない!!
俺は遠くなりそうな意識の中、無我夢中に何かを掴むように手を強く握った。
another view(悠)out
パリンッ!
「「「えっ?」」」
スメオオミカミの大火焔がイザナギを襲うとした瞬間、突然辺りが眩い光に包まれて雪子たちは思わず目を瞑った。そして、目を開けてみるとそこには……蓮の花の形をした氷のオブジェが出来上がっていた。
「な……どういうこと………」
雪子は目の前で起きたことが信じられなかった。今のは自分の中でも最大級の攻撃だったのに、それ以前に悠はもう虫の息で立ち上がる気力なんてなかったはずなのに……一体何が……
「天城、チェックメイトだ」
不意に耳にそんな声が聞こえたので驚いて見てみると、目の前にボロボロになりながらも真っすぐな目で日本刀をこちらに向けて立っている悠の姿。そして、己のスメオオミカミに触れている悠のペルソナ、イザナギとは違う片手に金の卵を抱えて薄紅色のマントに身を包んだ【ハリティー】という【女教皇】のペルソナの姿があった。
「あっ」
それに気づいた時にはもう遅かった。ハリティーが触れていったところから徐々にスメオオミカミが凍り付いて行く。フィードバックにより凍り付いていく感覚が雪子にも伝わってくる。そして、悠がもう片方の手で指をパチンと鳴らした瞬間、凍った部分が爆発してスメオオミカミはダメージを受けて倒れた。雪子もフィードバックによって倒れてしまい、モニターの煽りせちーのテンカウントに間に合って立ち上がることはなかった。
『K.O.!!この勝負、またまた悠先輩の大逆転勝利ーーー!!』
煽りせちーが悠の勝利宣言をしたところで、悠は一息ついた。そして【ハリティー】の回復魔法を使って体力を戻そうとすると、思わず力が抜けて倒れそうになった。しかし、倒れる直前に悠の元に駆け付けた穂乃果が悠を抱きしめて支えてくれた。
「高…坂?」
「ひっく……なる…かみせん……ぱい………」
穂乃果の顔を伺うと、顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。その顔を見ると、悠は申し訳ない気持ちになった。以前音乃木坂で死にかけて、ことりにこのように泣きつかれて心配をかけた時と似ていたので、また自分は女の子を泣かせてしまったのかと思う。しかし、今回は穂乃果が居なかったら自分は負けていただろう。悠は穂乃果にありがとうと感謝の気持ちを伝えて、あやすように穂乃果の頭を優しく撫でた。すると、
『プププ、良いクマねぇ~この感じ!普段スカした薄っぺらな仲間たちが、本性を晒してボッコボコに殴り合う!これぞP-1グランプリの醍醐味クマ~~!』
頭上からあのクマ?の悪意に満ちた陽気な声が聞こえてきた。折角良い雰囲気になったのに、ここぞとばかりに台無しにするのはどこかの白黒熊に似ている。クマ?の発言を聞いた穂乃果は顔を上げて憎々し気にクマ?を睨みつけていたが、悠は何とも思わなかった。仲間同士で戦うことには抵抗感があるが、それ以外に皆を救う方法がない以上とっくに割り切っている。しかし、それに我慢ならなかったらしい穂乃果が抗議しようとした瞬間、意外な人物が声を上げた。
「あ……アンタ!こんなことして何が楽しいん!?この人たちは友達なんやろ!?」
それは先ほど、穂乃果たちと一緒に悠たちの戦いを見ていた生徒会長だった。その姿を見て悠は意外に思った。てっきり〈なぜこの騒ぎに巻き込むのか?〉と言うのではないかと思っていたが、そうではなく〈何故友達同士で戦わせるのか?〉と言っているのだ。出会ったばかりなのに、彼女は悠たちの痛みに共感してくれているのだ。悠はそれを見て、何だが照れ臭くも嬉しさで胸がいっぱいになった。だが、こちらとて言われっぱなしでは終われない。ある程度の回復が終わったと同時に悠は立ち上がり、会長の前に立ってモニターのクマ?と対峙した。
「クマ……残念だが、お前の思い通りにはならないぞ」
『何ねセンセイ?そんなボロボロな恰好で』
「これくらいで俺たちがバラバラになると思ったか?互いを憎みあうとでも思ったか?残念ながら、それが既にお前の誤算だ。俺は仲間を信じてる。決してお前に惑わされたりはしない!」
『ムム…なんちゅうおバカなことを言ってるクマ!センセイのクセに脳がお花畑クマね。大体それはセンセイの』
バアアアアンッ!
クマ?がそう言い終わる前に、悠は再びイザナギを召喚して大剣をモニターに向けさせた。これには穂乃果のみならず、モニターのクマ?やその場にいる全員が仰天した。クマ?がそれに対して文句を言おうとすると、
「忠告しておくぞ」
その声は普段の悠から想像できないほど冷たく、その裏には激しい怒りを感じさせるものだった。
「お前が本当のクマなら、どんなことをしてでも俺たちが助けてやる。
『くっ…………この野郎…』
クマ?はそんな恨み節を吐き捨ててモニターから消えていった。あの表情を見て、やはりあれは本物のクマじゃないと確信した。きっと何者かがクマに化けて、本人に罪を着せようとしているのだ。少し気を緩めて振り返ると、そこには先ほどの悠の姿を見て、腰を抜かしている穂乃果と海未、そして何とか立っているが明らかに恐怖している生徒会長といつの間にか目を覚ましていた雪子の姿があった。
「な…鳴上先輩……怖い………」
「……腰が」
「アンタ……ヤクザちゃうよね?」
「うん…裏社会のボスみたいな感じだった」
ひどい言われようだった。普段怒らない人ほど怖いものはないと言うが、先ほどの悠の怒りは穂乃果たちには恐怖を感じるほど怖かったらしい。少しやり過ぎたかと思いつつ、悠は腰が抜けた穂乃果と海未を起こして、雪子に話しかけた。
「天城、大丈夫か?」
「うん、平気。少し様子はおかしかったけど、鳴上くんが何かを解決しようとしてることは目で分かったから。それより、鳴上くんの方こそ大丈夫?痛くなかった?」
「痛かったというより、死ぬかと思った……もう二度と天城とは戦いたくないな」
雪子が少し暗くなったが、悠に優しく微笑んでくれたのでこれで確信が持てた。やはりあのクマ?がある方法を使って喋らせていたのだ。念のためだが、一応確認してみる。
「天城には、俺が天城のことを悪く言ってるように聞こえたんじゃないか?」
「え……うん。そうだけど……」
雪子の暗い表情をを見て、悠はやれやれと首を横に振った。あのクマ?は自分に何を言わせたのだろうか?でも、重要なのは言われた内容じゃない。悠はそんな雪子に気にするなと声を掛けようとしたが…
「鳴上くんが…私のことを……生物兵器製造機って言ってた……」
「え?……」
「わ、私だって!ちゃんとお料理を勉強してるんだよ。でも…去年のことがあるからって…生物兵器はひどいよ……」
「…………」
何と言うか的を得ている気がする。確かに去年味わった物体Xは生物兵器と言っても過言ではない破壊力を持っている。何時ぞやか雪子たちの料理を使ってシャドウを撃破したことがあったような気がするのだが……すると、
「……ううっ…鳴上先輩にあんなことを……ムッツリって言われるなんて………私…もう生きていけません」
「海未ちゃん!!って鳴上先輩!海未ちゃんになんて言ったの!?」
海未も何を言われたのかは知らないが、何か変なことを言われたらしい。頭を抱えるほどのことを言われたのだろうか。
「アンタら何者なん?……」
そんな状況の中、置いてきぼりにされていた生徒会長が話しかけてきた。おそらく先ほどのペルソナを使役する姿を見て、そう思ったのだろう。とりあえず、良い機会なので穂乃果と海未に今の状況を、そして生徒会長には自分たちのことやこの世界のことを一から説明することにした。
ここが自分たちが去年何度も訪れたテレビの世界であること。
心の力であるペルソナのこと
立ち入った人の心によって、景色が変わるということ。
そして、今その世界があのクマ?によって好き放題されていること
「そ、そうだったんですね……アレはあのクマさんが………許せません…次会ったら八つ裂きにしてやります……」
穂乃果と海未は今の状況に納得したようだが、海未からはあのクマ?に対する憎悪を感じた。仮にあのクマ?が操られているだけの本物であったならば、クマの生存確率は五分五分だろう。
(クマ、合掌)
一方、生徒会長の方は訝しげに話を聞いていたが、ペルソナを目のあたりにしたせいか、一応納得はしたらしい。
「そうか…だから君たちがテレビの中って言ってたんやね。正直信じられへんけど……」
「ああ、もしかしたらこの学校は、君の心の風景が現実になった場所っていう可能性もある」
「ウチが…この学校を?」
生徒会長はこの学校が自分の心の風景を映した場所であるとは信じられないようだ。当然と言えば当然の反応である。
「それはそうだよね……あれ?でも何でだろう?いつもなら被害者のシャドウが出てきて……」
雪子はこの世界に来てから誰かのシャドウを見ていないことに疑問を持った。今までの事例から言って、被害者がこのテレビの世界に入ると被害者の心の風景が映し出されると共に、自身の抑圧された感情が具現化したシャドウが出てくるのが常だった。
「もしかすると、あのクマがこの子のシャドウかもしれない」
「「「え?」」」
悠の発言に雪子たちは驚いた顔をした。
「先ほどやり取りで、僅かだがあのクマは俺の偽者という単語に動揺していた。あれが偽者なら、俺たちの知ってるクマ以外の誰かが、あのクマに化けていることになる」
「そういうことですか。つまり、この場所が会長さんの心の風景ということは、ここには必ず会長さんのシャドウが居なければならない、ということですね」
海未の言う通りである。今まで数ある人のシャドウを見たことがあるが、どれもこれもペルソナでしか対抗できない尋常ではない程の力を持っていた。今回の相手は、陽介や雪子、海未にやったように相手の目や耳を遠距離で錯覚させる能力を持っている。そんな力を以てすれば、自分の姿を偽ることだってできるはずだ。クマに化けて、この大会を主催することだって不可能ではない。問題はそれが、赤の他人にも化けられるということである。となれば、いつ誰に化けて自分たちの目の前に現れてもおかしくない。
「か、会長さん?どうしたの?顔色が悪いよ?」
見ると、悠と雪子の話を聞いた生徒会長はすっかり顔色を失っていた。シャドウがどうこうというのはピンと来てないようだが、この騒ぎは自分が引き起こしてしまったと思い込んでいるようだ。そんな気にすることはないと言おうとすると…
「ウチ…今から放送室に乗り込んでくる」
「「「え?」」」
「あのクマって言うのがこの騒ぎの元凶やんな?それがウチから出てきたもんやって言うなら……ウチが責任取らんと……生徒会長として放っておけん!」
「待ってくれ。ペルソナを持ってないのに、あそこに乗り込むなんて無謀過ぎる。ここは俺たちに任せて、高坂たちと元の世界に…」
会長の意見に反論する悠。悠の言う通り、この騒ぎの黒幕がシャドウだとしたら、生身の人間が相手をするのは危険すぎる。そのシャドウが会長本人のものだとしたら、更にまずいことになる。自身の影と向き合うということがどれだけ辛いものかを自分たちはよく知っている。だが、会長は澄ました顔でこう返した。
「帰れって言うん?なら出口は何処やの?そこまでどうやって行くん?」
「それは……」
悠は生徒会長の目を見て言葉に詰まってしまった。それは自分と同じ覚悟を決めた眼差し。その中に責任感と使命感を秘めた決して退かない目だ。この目をしているということは、今の自分が何を言っても無駄だと悠は思った。
「決して無謀やないよ。アンタらみたいに強くはないかもしれんけど、ウチはこう見えて喧嘩には自信あるんよ」
「…ダメだ。そんなことで行かせる訳には」
それでもここに残るのは危険すぎると悠は諭す。それにイラっと来たのか、会長はキッと悠を睨みつけてこう言い放った。
「危険やってことは分かっとると。でも……人に迷惑かけて、友達同士を戦わせて、一人で先に逃げるなんて、
「!!っ」
生徒会長はそう言い捨てると悠の言葉を待たずに体育館を出てしまった。悠は追おうとはせずその場に立ち尽くしてしまった。あの生徒会長の言葉にどこか聞き覚えがあったからだ。遠い昔に同じようなことを言われて怒られたことがある気がする。
「な、鳴上先輩!追おう!!出ないとあの人が危ないよ!」
呆然としている悠に穂乃果はそう叱責して、手を引っ張ってあの生徒会長を追おうとした。突然のことに悠はついて行けず焦った顔をすると、
「お願い!行ってあげて!!今は鳴上くんが頼りだから!」
「先輩!穂乃果と一緒に行って下さい!」
悠はその雪子と海未の言葉にハッとなった。そうだ、自分たち【特捜隊】は被害者を放っておくことなんてできるはずはない。それに2人は先ほどとは違って、ここに残されることは気にせず、出会ったばかりの生徒会長を追えと言っている。
「ああ、行ってくる」
「うん、信じてるから」
「いってらっしゃい。鳴上先輩、穂乃果」
雪子と海未は悠の行ってきますに笑顔でそう返した。2人の心からの信頼を感じ取った悠は穂乃果に引っ張られながらも生徒会長の後を追うことにした。まだ離れてから少ししか経ってないのですぐに追いつくだろう。必ず追いついて見せる!そう心に決めて、2人は校舎中へと入っていった。
ーto be continuded
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「なんで鳴上先輩は仲間を信じられるの?」
「私たちも…あんな風に」
「アンタ誰や!?」
「ど、どうしてあなたがここに……」
「やぁ、久しぶりだね〜。悠くん」
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