PERSONA4 THE LOVELIVE 〜番長と歌の女神達〜 作:ぺるクマ!
前回の後書きに予告を書きましたが、今回の話に乗っていないセリフがあります。こういう詐欺がこれからもあると思いますが、ご容赦下さい。
また、前回に比べて今回は前回に比べて長めです。自分はあまり文才が無いので文章構造が変になってるところが多々あると思いますが、それでも読者の皆様に楽しんでもらえれば幸いです。
そして、前回言い忘れてましたが、音乃木坂の理事長は悠と親戚という関係にしてます。なので、ことりが菜々子ポジになっていますがご勘弁を。ちなみに理事長ですが公式のプロフィールが無かったので、勝手に名前や年齢を設定しています。
前置きが長くなりましたが最後に、お気に入りに登録して下さった読者の皆様に感謝を申し上げます。これからも頑張っていきますので、よろしくお願いします。
それでは本編をどうぞ。
今起きていることを簡単に説明しよう。
とある神社へ続く長い階段の中腹で、赤いジャージを着て左側の髪の一部を黄色のリボンで結んでいるセミロングヘアの少女とブレザーの制服を着たアッシュグレイの髪の少年がいる。そして、
「ハムッ、ハムッ。ん〜このサンドイッチ美味しい〜!」
少女は満悦な笑みでサンドイッチを咀嚼し、
「……ハァ」
少年はため息をついていた。
話を聞くと、少女は朝早くからこの階段で走り込みをしていたらしい。しかし限界まで自分を追い込んだらしく朝早くからというのもあって、空腹になって倒れたということだそうだ。事情を知った悠はすぐさま自分の弁当として作ったサンドイッチを少女に差し出して今に至る。
悠はため息を吐いたが、それは少女に対する呆れではない。大事に至らなくてよかったという意味でのため息である。自分の弁当で少女が元気になるのなら安いものだと悠は思った。
しかし、限界まで自分を追い込んでまでこの階段を走り込むとは大したものだ。おまけにこの食べっぷり。悠はその姿を見て、特別捜査隊のメンバーである里中千枝を思い出した。彼女もよく河原で限界までトレーニングをしては中華屋で肉丼をかきこんでいたのだから。
「ん?お兄さんどうしたの?」
悠の視線に気づいたのか少女が話しかけてきた。
「いや。良い食べっぷりだなと思って。」
「へ?……ああ、お兄さんがくれたサンドイッチが美味しすぎてね。」
「自信作だ。」
「ウソ!お兄さんが作ったの!」
「ああ。」
「これ、本当に美味しいよ!毎日食べたいくらい。」
「喜んでもらえてなりよりだ。」
「あっ。でもまた食べ過ぎちゃうな……私いつも太るよって海末ちゃんに言われるし……」
どうやらこの少女は食いしん坊のようで、友達に食べ過ぎを指摘されているらしい。さっきから表情がコロコロ変わるので面白いなと悠は思った。
「よく食べることは良いことだ。」
「本当!?」
「ああ。よく食べるのは健康な証拠だ。だから気にするな。」
「えへへ〜。ありがとう!」
そう言ってまたハイペースで少女はサンドイッチを食べ始めた。そろそろ止めて貰わないと自分の分がなくなるのだが、と悠は思った。
「ところで、お兄さんその制服って音乃木坂の?」
少女は悠が来ているブレザーの制服に見てそう尋ねる。
「ああ。今日転校してきた。」
「そうなんだー!私も音乃木坂なの!」
「そうなのか?」
「うん!私2年生の高坂穂乃果って言うんだ!よろしく!」
「3年生の鳴上悠だ。よろしく。」
「あっ。先輩なんだ……その」
どうやら悠が年上だと気づき、さっきまでフランクに話してたことが気に障ったのではないかと思ったらしい。しかし、そんなことは悠は気にしない。
「敬語じゃなくていいぞ。さっきのフランクな話し方の方が俺は好きだ。」
「へ?……うん!そうする!」
穂乃果はその顔に相応しい天真爛漫な笑顔を向けてそう言った。その笑顔は悠には八十稲羽に居る愛しの菜々子と重なって見えた。
「そういえばさ、鳴上先輩って音乃木坂が廃校になるって知ってる?」
悠のサンドイッチを食べながら、穂乃果はそう問いかけてきた。
「え?廃校?」
「うん。昨日学校に行ったら張り紙が出されてた。共学化したのにまだ入学希望者が減ってるからって。」
さっきの天真爛漫な笑顔がウソのように穂乃果の表情が暗くなる。
「……そうなのか。知らなかった。」
最近少子化などの影響で学校が廃校になったというニュースはよく耳にする。八十稲羽で通っていた八十神高校にはそんな話はなかったが、まさか自分がこれから通う学校がそんな危機に陥っていたとは思わなかった。もしかすると、理事長の叔母が今日自分を早く呼び出した理由がそのことに関することかもしれない。
「私、音乃木坂が廃校になるなんて嫌。」
「なんで?」
「だって私、音乃木坂学院が好きだもん。それに………あの学校は私のお母さんやおばあちゃんも通ってたんだ。」
「歴史のある学校なんだな。」
「そうなの……昨日お母さんの卒業アルバム見てね……写真の中に写ってたお母さん達がみんな楽しそうだったの。それを見たら、そんな人たちの思い出が詰まった学校がなくなっちゃうなんて思ったら……」
なるほどと悠は思った。自分も去年通った八十神高校や八十稲羽の商店街やジュネスが無くなると聞いたら同じ気持ちになるだろう。穂乃果と違って1年しか過ごしてないが、あの場所には陽介たちや街のみんなと過ごした楽しい思い出がたくさん詰まっているのだから。
「確かにそれは悲しいな。」
「だよね!鳴上先輩もそう思うよね!」
「もちろんだ」
「なんとかしたいと思ってるけど……私じゃ何も出来ないし………どうしたら良いのか分からなくて……」
穂乃果の表情がさらに暗くなる。
自分にはどうしようもない廃校という大きな問題。一生徒の自分には何もすることが出来ないのは穂乃果も分かっている。分かっているからこそ何も出来ない自分が悔しいのだ。
「大丈夫だ。」
「え?」
悠は穂乃果の目を真っ直ぐ見てこう言った。
「生徒だからやれることだってある。まだ諦めることはないだろ?」
「う、うん。」
「それに、高坂なら出来るさ。」
「へ?」
「今初めて会った俺が言うのもおかしいかもしれないけど、高坂のその学校を心から想う気持ちは本物だ。それさえあれば高坂なら何でも出来る。俺はそう思うぞ。」
悠は何故こんなことを言ったのかは分からなかった。確証はないが、何故か悠はこの目の前の少女から何かを感じ取ったのだ。まるで絶望を希望に変えるような何かを。
穂乃果は悠にそう言われて驚いた顔をしていたが、次第に元の笑顔に戻っていった。
「…えへへ。嬉しいな、そう言って貰えると。………ハァ、何だか元気が出ちゃった。鳴上先輩って不思議な人。」
「よく言われる。」
「そうなんだ。ん?……ああああ!!」
突然穂乃果は自分の腕時計を見て飛び上がった。
「もうこんな時間。早く家帰らないとお母さんと海末ちゃんにに怒られるー!鳴上先輩ごちそうさまー!」
穂乃果はそう言うと凄いスピードで階段を駆け下りていった。
「面白い女の子だったな。」
悠は穂乃果の後ろ姿をみてそう呟いた。ふと横を見ると、そこに空っぽになった弁当箱があった。『雨の日のスペシャル肉丼』を完食して以来、胃袋が予想以上に大きくなったのでサンドイッチは結構多めに作ったのだが、どうやら全部穂乃果の胃に入ったようだ。
「お昼……どうしよう……」
悠は本日のお昼のことを考えながら弁当箱を回収するのであった。ふと後ろから視線を感じたが気にしないことにした。
それから数十分後、悠はやっと音乃木坂学院に到着した。登校途中に穂乃果と遭遇して時間を食ってしまったが、まだ生徒はあまり来てなかったので問題はなさそうだ。
(さて、叔母さんの部屋はどこだったかな?)
校内に入り叔母のいる理事長室を探していると
「そこの貴方、何をしているのかしら?」
不意に声を掛けられた。振り返るとそこに、クールさを保った金髪ポニーテールのスタイルの良い外国人系の少女が居た。これはちょうど良い。悠は金髪少女に理事長室の場所を聞くことにした。
「Hello」
何故か英語で。
「は?」
「My name is Yu Narukami.Where is」
「ちょっと!私日本語話せるから!英語じゃなくていいから。」
「え?」
「えって……….何よ、その顔は」
「いや、外国人かなと思ったから。」
「違うわよ!私は日本人よ。おばあちゃんがロシア人だけど。」
「なるほど。クォーターか。」
「というかわざとよね貴方。さっき私が日本語話してたの聞いたわよね。」
金髪少女はジト目で悠を睨みつける。
「バレたか。」
「バレたかじゃないわよ!」
「ごめん。」
「絶対謝ってないわよねその顔。」
「そうか?」
「いたずら成功って感じの顔してるわよ。」
「いたずらが成功したからな。」
「腹立つわね!貴方」
こうして見知らぬ金髪少女と無意味な茶番劇をしていると、
「探しましたよ悠くん。」
と、後ろから上品な雰囲気を纏った女性がやってきた。
「あっ、叔母さん。」
「もう来るのが遅いからどうしたのかと思って理事長室から出ちゃったわよ。」
「すみません。」
この女性こそがこの音乃木坂学院の理事長であり悠の叔母である『南雛乃』である。
歳は初老を超えていると聞いたが、それに反して容姿はまだ20代と言っていいほどの美貌とプロポーションを保っている。確か1人娘がいると言っていたが、そのことを疑ってしまうぐらい若々しい。
「あ、あの。理事長……彼は?」
先ほど悠と茶番劇を繰り広げた金髪少女がそう尋ねる。
「あら、ごめんなさい。彼は私の甥で今日からここに通う転校生よ。」
「あ、なるほど。確かに今日転校生がくると言ってましたね。」
「そういえば、絢瀬さんこそどうしてこんな時間に?」
「あ!……それはその…」
急に『絢瀬』と呼ばれた少女は押し黙った。何か後ろめたいことでもあるのだろうか?
「大方生徒会の仕事だろうけど、無理しちゃだめよ。」
「……はい……では失礼します。」
絢瀬は叔母の言葉に頷くとその場を去っていった。
「叔母さん、彼女は?」
「彼女はこの学校の生徒会長よ。いい子なんだけど、無理しがちな所があるから心配なのよね。」
「そうなんですか。」
それにしても何か気になると悠は思った。悠は今の絢瀬という少女から既視感のようなものを感じたのだ。
「それより、早く行きましょう。貴方を待っていたんだから。」
「分かりました。」
悠はあの生徒会長のことが気になったが、まずは雛乃と話すことを最優先した。
「改めて……久しぶりね、悠くん。」
「お久しぶりです。叔母さん。」
所変わって理事長室。悠は理事長室の客用ソファに座り、雛乃に挨拶した。
「去年は大変だったわね。兄さんと義姉さんの都合で八十稲羽に転校だなんて。八十稲羽って結構田舎だから退屈だったんじゃないの?」
「そんなこと無いです。確かに何も無い田舎でしたけど、俺はそこで色んなものを得ましたから。」
「あら?……ごめんなさい。」
「叔母さんが謝ることはないです。あくまで俺にとってはですから。」
「……ふふ。悠くん変わったわね。」
「そうですか?」
「そうよ。悠くん、高校1年までいつも寂しそうな顔してたのに今はとても生き生きしてるわよ。向こうで良い友達が出来たのね。」
「はい。いつか叔母さんにも紹介したいです。」
「そう。そういえば、ことりが会いたがっていたわよ。」
「え?……ことり?」
「私の可愛い1人娘のことよ。覚えてない?」
「……覚えてますけど。」
実際、母方の叔父で八十稲羽に住んでいる『堂島家』とは違って、こちらの『南家』とはそれなりの交流はあった。確かことりは自分の1個下の女の子で、菜々子と同じく自分をお兄ちゃんと呼んで懐いていたことは覚えている。しかし、両親の仕事の都合による転勤のせいで中々会えていなかったのだが。
「まぁ、会ったらまた昔みたいに仲良くしてあげてね。」
「分かりました。」
「早速だけど本題に入るわね、悠くん。」
雛乃はさっきまでの優しい雰囲気ではなく、学校の理事長に相応しい凛とした雰囲気に変わった。
「悠くんは知らないかもしれないけど、実はこの学校」
「廃校……ですか?」
「えっ!」
悠が知っていたのは想定外らしく、雛乃は面を食らった顔をした。
「何で知ってるの?」
「今朝、神社の階段前で会った女の子に聞いたんです。その子はここの生徒でした」
「そうだったの……そう、この学校は廃校になるの。入学希望者が減少していく一方だから。3年生の悠くんにはもう関係ないかもしれないけど」
雛乃は悲しそうな表情になった。
「それはもう決定事項なんですか?」
「ええ。入学希望者があまりにもね」
「じゃあ、今年入学希望者が増えれば廃校は無くなるんですよね」
「え?」
悠の発言にまたしても雛乃は面を食らった。
「さっき会った女の子が言ってました。この学校が廃校になるのは嫌だって。だから、自分もできることなら何かしたいって」
「………」
「そんな子が居るなら、大人が諦めてはいけないと思いませんか?」
「………」
「その子だけじゃなくて、何人かの生徒がそう思っているかもしれません。だから、まだ諦めるのは早いと思います」
「………」
「俺も3年生ですが、できる限り廃校を阻止するのに協力しますよ。俺も母校が廃校になるのは嫌ですから」
悠は八十稲羽で鍛えた『言霊使い』の伝達力で、そう雛乃に言った。黙って悠の言葉に耳を傾けていた雛乃は不意に大人っぽい笑みを浮かべた。
「ふふ、悠くんやっぱり変わったわね」
「え?」
「本当は別のことを伝えようと思ったんだけど……悠くん」
「はい」
雛乃は改めて悠を見てこう言った。
「出来れば貴方は受験生だから、学業の方に専念して欲しいんだけど」
「…ですよね」
「でも」
「でも?」
「もし廃校阻止のために動いてくれる子達が貴方の目の前に現れたら、その子達の手助けをしてくれるかしら?」
「え?」
「お願いできるかしら。」
雛乃は真っ直ぐな目で悠を見据えた。そんな目でお願いされたら断れないじゃないかと悠は思った。
「……分かりました。任せて下さい」
「そう。ありがとうね、悠くん」
悠の返事を聞くと、雛乃は美しい笑みを浮かべた。その笑みを見て、思わずドキッとしてしまった。
「それじゃあそろそろ職員室に案内するわ。貴方の所属するクラスや担任の先生を紹介しなくちゃならないから。時間取っちゃってごめんなさいね、悠くん」
「いえ、大丈夫です。久しぶりに叔母さんとお話しできて良かったです」
「ふふ、嬉しいこと言ってくれるわね」
そんな会話を交わして、2人は理事長室を出ようとする。すると、
「!!っ。」
突然悠に目眩が生じた。突然のことに悠はその場に座り込んでしまう。
「悠くん!どうかしたの!」
悠の異常に気付いたのか、雛乃は悠に近づき声をかける。
(この目眩、前にも………!!)
『我は…汝………汝は……我……』
頭の中でそんな声が聞こえると同時に目眩が収まった。
「ハァ…ハァ…今のは……」
「悠くん!大丈夫!!」
「は、はい。大丈夫です。すみません、昨日眠れなくて……」
「そうなの?……保健室に行く?無理しなくても」
「大丈夫です。」
「そう……。でも、気をつけてね。無理だけはダメよ。」
「分かりました。」
そう言って、2人は理事長室から出て行った。雛乃には寝不足と誤魔化したが、悠は内心驚きでいっぱいだった。あの目眩は去年も経験したものだ。それにあの声は
(あれは……ペルソナ?……なぜ?)
新たな疑問を抱えながら、悠は雛乃と職員室を目指すのであった。
ーto be continuded
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「こんにちは、鳴上悠です。」
「本当に災難やったなぁ。」
「洗いざらい吐いてもらうわよ!」
「スクールアイドル?」
「ハイカラだな」
「これだ……これだよ!」
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