PERSONA4 THE LOVELIVE 〜番長と歌の女神達〜   作:ぺるクマ!

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どうも、ぺるクマ!です。

皆さんはGWはどのように過ごしましたか?私は山奥の山荘に引きこもって山を満喫してました。しかし、引きこもっていたとしても課題やら何やらで色々とありましたが……

またこの少しの間、自分の至らなさが次々と見つかり、直々修正を加えました。修正といっても細かいことや重大な修正があったりで、色々とご迷惑をおかけしました。これからもこういうことが多々あると思いますが、よろしくお願いします。


改めて、新たにお気に入り登録して下さった方・感想を書いてくれた方・評価をつけてくれた方々、ありがとうございます!読者の皆様の感想や評価、そしてご意見が自分の励みになってます。皆さんの応援のおかげでお気に入りが500件を超えを達成し、5/2の日刊ランキングで23位にランクインできました!

まだまだ拙い作品ですが、これからも皆さんが楽しめる作品を目指して精進して行きます。完結まで結構時間がかかりそうですが、長くお付き合いいただければ幸いです。

それでは、本編をどうぞ!


#15 「Now I know」

<クラブ【まきぱな】 真姫の部屋>

 

 

『あはははは、どうしたの?受けてばっかりじゃない』

 

「くっ」

 

 

 悠はイザナギで真姫のシャドウによるメス攻撃を受けてばかりであった。しかし、これは本調子じゃないからではない。相手からの攻撃を受けて付け入る隙を探しているのだ。とはいっても、それは持久戦になる。これ以上長引かせる訳にはいかないので、悠はこちらから仕掛けることにした。

 

 

「イザナギ!」

 

 悠がそう言うと、イザナギは真姫の影に得意の落雷をお見舞いした。

 

「!!」

 

 真姫の影は落雷を辛うじて避けたがそれでいい。

 

「今だ!イザナギ!!」

 

 この隙を待っていたと言わんばかりに悠はイザナギに高速で突進させる。落雷はフェイクで最初からこの物理攻撃に賭けていたのだ。しかし…

 

「な!」

 

 あと少しというところでイザナギが突然動かなくなった。これは…

 

「しまった!!」

 

 相手が蜘蛛という点から想定するべきだった。イザナギの動きを止めているのは蜘蛛の巣だ。

 

 

『あはははは!!引っかかったわね、私の蜘蛛の巣に』

 

 

 真姫の影は見事に引っかかったのがおかしいのか高笑いした。悠は自分の迂闊さを呪った。場酔いのせいもあるが、自分がそんなミスをしたことが許せない。すると、真姫の影は蜘蛛の巣にかかったイザナギの元へ素早く移動する。

 

『さぁ、これで終わりよ!』

 

 そして近距離から攻撃を加えようとした。普通のペルソナ使いならこの時点でアウトだろうが、生憎悠は普通のペルソナ使いではない。

 

 

「チェンジ!」

 

 

 悠は攻撃される前にイザナギをタロットカードに戻した。

 

『!!』

 

 攻撃を加えようとした獲物がいなくなったことに真姫の影は驚愕する。そして真姫の影の前に浮かんでいるのは【恋愛】のタロットカード……

 

 

「【リャナンシー】!!」

 

 

 カードを砕き現れたのは知恵の輪を持つ妖艶な妖精【リャナンシー】。召喚されてすぐにリャナンシーは真姫の影に白い息を吹きかけた。

 

『きゃあああ!』

 

 当然のように真姫の影は混乱し、自分の張った蜘蛛の巣から転げ落ちた。この隙にと再びペルソナをイザナギにチェンジして追撃を加えようとした刹那…

 

 

『甘いわ』

 

 

 真姫の影が今度は口から炎を放射してきた。

 

「なっ!……チェンジ!!」

 

 慌ててリャナンシーをイザナギではなく、炎を吸収する【魔術師】のアルカナの【ジャックランタン】にチェンジした。なんとかギリギリでチェンジしたためダメージを受けることはなかった。しかし…

 

 

 

『そうよ…最初からこうすれば良かったんだわ!』

 

 

 

 真姫の影が己の蜘蛛の巣に戻ってそう呟くと辺り一面が炎に包まれた。

 

 

「きゃあ!」

 

「あ、熱い!」

 

「高坂!西木野!俺から離れるな!!」

 

 

 悠は穂乃果と真姫を自分の元へ引き寄せ、ジャックランタンで炎を吸収する。しかし、自分たちの周りは炎に包まれており、逃げ場なんてものはどこにもなかった。

 

 

『さあ、ここで火達磨になっておしまい!』

 

 

 そこから相手は容赦しなかった。今度は炎の攻撃を連続で行ってきたのだ。それはジャックランタンでなんとか吸収するのだが、これではいつまで経ってもこちらから攻撃を加えられない。

 

 

(なんとか…ならないのか…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<クラブ【まきぱな】 VIPルーム>

 

 悠が真姫のシャドウに苦戦を強いられている中、こちらも戦況は芳しくなかった。

 

 

「にゃー!」

 

 

 凛のペルソナが花陽の影に攻撃を加える。

 

 

 中世の騎士がかぶっていたようなオレンジの兜から覗かせる真っすぐな瞳

 レモン色の薄手の戦闘服

 右手には長剣

 

 

 

 これぞ凛が覚醒させたペルソナ【タレイア】である。

 

 先ほどから長剣による物理攻撃を加えているが、相手が紙一重にかわしてくるのだ。

 

「当たんないにゃー!」

 

 それもそのはず。相手の動きが速いというのもあるが、凛は海未とは違って初召喚でいきなりシャドウ戦に挑んでいるのでペルソナの操作に慣れていない。

 

 

『しつこいわよ』

 

 

 

 花陽の影がいい加減に焦れてきたかタレイアに攻撃しようとする。その瞬間…

 

 

「ポリュムニア!!」

 

 

 海未のペルソナ【ポリュムニア】が死角から花陽の影に遠距離攻撃を放った。

 

 

『ぐあ!』

 

 

 意識がタレイアに向いていたため、花陽の影はモロにポリュムニアの攻撃を食らってしまい、体勢を崩してしまう。

 

 

「星空さん!今です!!」

 

「了解にゃ!」

 

 相手が怯んでいる隙に、凛はタレイアを花陽の影の懐に突入させた。

 

 

「これでも食らえー!」

 

 

 タレイアは電気を纏った長剣を花陽の影に突き刺した。

 

 

『きゃあああああああ!』

 

 

 効果は抜群。花陽の影は電撃が弱点のようで、凛の攻撃を食らうとその場にひれ伏した。このチャンスは逃さない。

 

 

「チャンスです!総攻撃行きますよ!星空さん!!」

 

「了解にゃ!ちなみに星空さんじゃなくて、凛!!」

 

「今はどうでもいいでしょ!!」

 

 

 2人はすぐさまそう攻撃を開始する。海未は近距離からの特大攻撃を、凛は再度電撃攻撃を繰り出そうとした。その時…

 

 

『ま…負けてたまるかー!』

 

 

 突然花陽の影が立ち上がり、翼を広げて突風を発生させた。

 

 

「な!きゃああああ!」

 

「にゃああああああ!!」

 

 

 急接近していたポリュムニアとタレイアは近距離から突風攻撃を受けてしまい、奥に吹き飛ばされてしまった。海未と凛もフィードバックにより同様に吹き飛ばされてしまう。

 

「海未ちゃん!凛ちゃん!!」

 

「凛…ちゃん」

 

 ことりと花陽の声も虚しく海未と凛は壁に激突してしまう。

 

「くぅぅ……」

 

「ほ、星空さん!?しっかりしてください!!」

 

 海未はなんとか意識を保てたが、凛は気絶寸前であった。おそらくタレイアは疾風属性が弱点なのだろう。

 

 

 

『私の…邪魔をしないで。これ以上やるなら…死ぬだけじゃ済まないよ?』

 

 

 とても低い声で花陽のシャドウはそう告げた。その声を聞いただけで海未は心がくじけそうだった。

 

 

(一体どうすればいいのでしょう……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<クラブ【まきぱな】 真姫の部屋>

 

 炎が飛び交う中で真姫は今自分が置かれている状況が呑み込めなかった。そもそも、偶々テレビを見つめたのが始まりだった。突然眠気に襲われ、気づけば知らないところに居て、自分の影だという者に自分の胸の内を聞かれたくなかった悠に暴露された。更に、今そいつが化け物に成り代わって、自分を殺そうとしている。

 

 

「もう嫌だ…」

 

 

 

「に、西木野さん!どうしたの!?」

 

 真姫の呟きに穂乃果は過剰に反応した。

 

 

「もう嫌よ!何でこんな目に遭わなきゃいけないの!突然訳わかんないところに連れていかれて、訳わかんないこと言われて、襲われて……もうたくさんよ…」

 

 

 真姫は今の状況が呑み込めず自暴自棄になったようだ。真姫の悲痛な叫びに影は同調する。

 

 

『そうよね…だから私は不幸なのよ。友達も居ない、家族にも愛されない、やれるのは勉強だけ……そんな生活なんて…もう真っ平!!って思ったでしょ?だからアンタは生きても仕方ないのよ』

 

 

 その影の言葉は真姫の胸に重くのしかかった。まさしく影の言う通りだと思ったのだ。その言葉の重圧に負けそうになり、死にたいと思ったその時……

 

 

 

 

 

 

「それは違うぞ!」

 

 

 

 

 

 

 悠がその言い分を否定するかのように叫び、真姫に衝撃が走った。まるで弾丸でガラスを打ち砕かれたような感覚だった。ふと真姫は悠の方に視線を向ける。悠は変わらず真姫の影と対峙していたが、その背中は真姫には大きく見えた。

 

 

「お前は思い違いをしている。お前はちゃんと家族に愛されているぞ」

 

 

「え?」

 

 悠の言葉は真姫だけでなく影にも影響を及ぼした。

 

 

『う…嘘よ!デタラメを言うな!!』

 

 

 真姫の影は全力で否定するかのように、更に炎の攻撃を激しくした。しかし、それでも悠はくじけずに続ける。

 

 

「デタラメじゃない!西木野のお母さんはちゃんと西木野のことを心配していたんだ。西木野には勉強だけじゃなくて好きなこともさせたいって」

 

 

『黙れ!!』

 

 

 さらに攻撃を激しくする真姫のシャドウ。

 

 

『貴方に…貴方に何が分かるっていうのよ!!』

 

 

 もうジャックランタンが吸収できる量を遥かに超えており、受け流すしかなくなってきた。炎が更に悠たちの周辺に広がる。

 

「ぐっ!」

 

 受け流した炎が悠の顔をかすめ、肉が焦げるような音がした。

 

「鳴上先輩!!」

 

 穂乃果が心配の声を上げたが、悠はその姿勢を崩さず立ち向かい続けた。

 

 

「鳴上さん……」

 

 

 真姫は未だに悠の背中を見つめていた。どんなに攻撃されても動じることのないその背中は真姫にとって頼もしく見える。しかし、それ故分からなかった。

 

 

「鳴上さん…何で?…私を助けるの?…何で……」

 

 

 自分が傷ついても素っ気ない態度を取ってきた真姫を何故助けるのか?それに対しても悠は笑みを浮かべてこう言った。

 

 

 

「可愛い後輩が苦しんでるのを、先輩の俺がほっとける訳ないだろ?」

 

 

 

「ヴェエ!」

 

 

 今度は違う意味で真姫に衝撃が走った。

 

 

「いいいいいつから私は鳴上さんの後輩になったのよ!しかも…か…可愛いって…」

 

 

「元からだろ?」

 

「年齢的にそうだよね?」

 

 

 火が飛び交う状況でも天然をかます悠と穂乃果。ある意味すごいと言えるだろう。

 

「うっ…い…イミワカンナイ!!」

 

 

 

「それに…あいつは西木野が不幸と言っていたが、俺は違うと思うぞ」

 

 

 

「え?」

 

 

 

「本当に不幸だったら、俺たちは助けに来てないだろ?誰かが助けに来てくれている時点で、西木野は不幸じゃない」

 

 

 

「!!」

 

 その言葉を聞いた途端、涙が溢れてきた。

 

「に、西木野さん?大丈夫?」

 

 穂乃果が真姫のことを心配するが、真姫は大丈夫と言ってるように首を縦に振った。

 

 

「私………」

 

 すると、真姫は静かに語りだした。

 

 

「ずっと…寂しかった……友達も居なかったし……いつも一人だったし…でも、貴女に屋上に連れていかれて…鳴上さんに演奏をもう一回聞きたいって言われた時…嬉しかったの……」

 

 

「西木野さん…」

 

 真姫の独白を聞き、穂乃果は意外な彼女の一面を見た気がした。

 

 

「だから……貴女たちのライブを見に行ったとき…羨ましいと思ったと同時に……私もあの中に入りたいって思った…」

 

 

「え!?西木野さん、私たちのライブ見に来てくれたの!?」

 

 まさかあのライブにもう一人客が居たのかと穂乃果は驚いて反応した。

 

 

「あ……う…うん……途中からだったけど……」

 

 

 穂乃果は真姫からそう聞くと、歓喜余って震える真姫の手を強く握った。

 

 

「え?」

 

 

「ありがとう西木野さん!私たちのライブを見てくれて!!」

 

 

 真妃はその言葉に驚いた。この状況で何を言っているのだろうと思った。そして…

 

 

「それに西木野さんは一人じゃないよ!!だって、今は私や鳴上先輩が居るから!!鳴上先輩の言う通り、西木野さんは不幸じゃない!」

 

 

 穂乃果がそう言った瞬間、真姫は心のつっかえが取れたように感じた。穂乃果の真っすぐな言葉に何か感じたのだろう。その言葉を聞いた時、真姫はもう一度穂乃果の顔と今身を挺して自分たちを守ってくれている悠の背中をを見た。

 

 

(本当に不思議な人たち……でも…何でだろう…この人たちと居ると…暖かい……私…この人達に出会えてよかった)

 

 

 そして真姫は涙をふき取り、己の影を見つめた。

 

 

 

「アンタは…私…今までずっと抑え込んでた…もう一人の私…なんだよね……」

 

 

 

 真姫がそう呟いたとき、真姫の影に変化が起こった。

 

 

『う…あ……ああああ!』

 

 

 真姫の影が突然苦しみだし、姿にノイズが入り始めたのだ。

 

(これは…)

 

 悠は同じ光景を八十稲羽で見たことがある。例え影が暴走したとしてもそれを受け入れようとすれば、影の姿にノイズが入り力が弱まるのだ。

 

 

『い…今更…私を受け入れるっていうの……そんな…そんなこと…あああああああ!!』

 

 

 しかし、真姫の影は負けじと炎の攻撃を更に激しくした。

 

「ぐっ!」

 

「鳴上先輩!!」

 

「鳴上さん!!」

 

 もうジャックランタンで抑えきれる量を超えている。辺りはもう火の海でこれ以上やられたら本当にチェックメイトになってしまう。

 

 

 

(このままじゃ……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お客様…』

 

 ふとマーガレットの声が聞こえた。もしかして…

 

 

『お客様が手に入れたあの宝玉のチカラにより、貴方のペルソナに変化が起きようとしています。そのアルカナは【女教皇】と【剛殻】。さぁ、解き放ちなさい。あの子たちとの絆で生まれた…貴方の新たな力を』

 

 

ー新たな…力……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!チェンジ!」

 

 悠はすぐさまジャックランタンをタロットカードに戻した。そのアルカナは【女教皇】…

 

「ふっ!!」

 

 悠はすぐさま拳をつくり、カードを砕いた。次の瞬間…

 

 

 

『なっ!!』

 

 

 

 

 真姫の影が放った炎が一瞬で凍り付き、砕けて氷の欠片となった。それだけでなく火の海になっていた周りの炎も凍り付き、氷のオブジェと化した。

 

 

『な…なんなのよ!これは一体…』

 

 

 真姫の影はありえない光景を見て動揺した。そして、砕けた氷の欠片の奥からそれを行った張本人の姿が現れた。

 

 

 

 

「【ハリティー】」

 

 

 

 

 それは悠が新たに召喚したペルソナであった。現れたのは両手に金の卵を抱え、薄紅色のマントに身を包んだ鬼子母神と呼ばれた女神【ハリティー】。

 

「また新しいペルソナだ!!しかも強そう!!」

 

 穂乃果は新たなペルソナが現れたことに歓喜の声を上げた。彼女の言う通り【ハリティー】は今まで現れたペルソナとは全く違う雰囲気を持っている。

 

 

「やれ!」

 

 

 悠がそう叫ぶと、ハリティーは大きくうでを振りかぶり、手のひらを真姫の影に向けた。次の瞬間…

 

 

『な…何よこれ!!』

 

 

 ハリティーの魔法により、真姫の影が足からどんどん凍り付いていった。やがてそれは全身を覆っていく。

 

 

 

『い…いや……いやああああああああ!』

 

 

 

 真姫の影がそう叫んだと同時に全身が凍り付き、ハリティーがフッと息を吐いた瞬間砕けていった。

 

 

 バリンッ!!

 

 

 その氷の欠片は宙を舞い、ダイヤモンドダストのように光り輝いたので、先ほどの殺伐とした雰囲気が無かったかのような美しい風景を生み出していた。

 

「綺麗…」

 

 穂乃果はその光景に感嘆の声を上げたが、真姫はその光景に見惚れ声が出なかった。その光景はまるで今まで己を縛っていた鎖が解き放たれたような雰囲気だったからだ。

 

「西木野」

 

 そんな感覚に浸っていると悠がこちらに話しかけてきた。

 

「さぁ、行ってこい」

 

 悠が指で示したその先には、宙に浮かぶ怪物の姿ではない真姫のシャドウが居た。真姫は意を決して己の影の方へ向かい、しっかりと見つめてこう告げた。

 

 

「アンタは……私…」

 

 

 真姫がそういうと影は頷き、光に包まれ姿を変えた。それは今までと同じように赤色のドレスに身を包んだ女神であった。

 

 

 

『我は汝…汝は我……我が名は【メルポメネー】。汝…世界を救いし者と共に…人々に光を』

 

 

 

 そして女神は再び光を放って二つに分かれ、一方は真姫へ、もう一方は悠の中へと入っていった。

 

 

 

>真姫は己の闇に打ち勝ち、困難に立ち向かうための人格の鎧ペルソナ`メルポメネー`を手に入れた。

 

 

 

 

 真姫がペルソナを手に入れた瞬間、疲れたせいか地面に倒れそうになる。

 

 

「西木野さん!!」

 

 

 倒れそうになった真姫を穂乃果が急いで支えた。ペルソナを手に入れたことにより顔が相当疲れているように見えるが、それにも関わらず本人はすっきりしたような表情を浮かべていた。

 

「あ…先輩…」

 

 

 

「ううん、私のことは穂乃果でいいよ」

 

 

「じゃあ、穂乃果先輩…鳴上さん…ありがとう」

 

 真姫は疲れていながらも悠と穂乃果に向けて笑顔で微笑んだ。その笑顔を見ただけで悠と穂乃果は自然と笑顔になった気がした。

 

 

 

>真姫の感謝の気持ちが伝わってくる

 

 

 

「さて、ここから出て園田たちを探しに行くか」

 

 一段落したところで、悠がそう提案する。しかし、先ほどの激しい戦闘のせいか辺りはひどく荒れており出口などというものはどこにもなかった。

 

 

「鳴上先輩…どうしよう。出口が見当たらないよ…」

 

 

 穂乃果がそういうと、悠は一瞬考え込んだ。するとニヤリと笑ってこう言った。

 

「大丈夫だ」

 

「へ?」

 

 

 

「無いなら、自分で作れば良いからな」

 

 

 

「「は?」」

 

 

 穂乃果と真姫は何を言っているのか分からなかった。そして悠は再び手の平にタロットカードを発現させる。そのイラストは【剛毅】…

 

 

「ペルソナ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<クラブ【まきぱな】 VIPルーム>

 

「私は…どうすればいいの……」

 

 花陽も真姫と同じく今の状況を呑み込めなかった。自分の影という者が怪物に変身し、友達や憧れの先輩たちを傷つけている。自分に何かできないのかと思ってしまう。すると…

 

 

『何よ…簡単なことじゃない』

 

 

 そう思っていると、花陽のシャドウが花陽に話しかけてきた。

 

『おとなしく私に殺されればいいの。それでみんな救われるわ』

 

 花陽は己の影に言われて考えた。

 

(私が…死ねば……みんな助かる……それなら)

 

 そう思った花陽は、自ら死にに行こうとゆらりと己の影の方へ向かおうとした。

 

「花陽ちゃん!!ダメ!!」

 

 そんな花陽をことりが必死に止めようとする。その時

 

 

 

「そうです!小泉さんは死んではダメです!!」

 

 

 

 海未はまた花陽とことりの前に立ち、素早くポリュムニアで花陽の影を攻撃した。

 

『ぐッ!し…しつこいわね!まだ叩き足りないのかしら?』

 

 花陽のシャドウはポリュムニアに向けて再び突風攻撃を仕掛けようとする。

 

 

「こっちにゃ!!」

 

 

 今度は気絶寸前だった凛がタレイアに死角から花陽の影に攻撃させた。

 

『あああああ!こ…この!』

 

 花陽の影は焦れったくなったのか直接タレイアに攻撃しようとする。しかし、凛も大分ペルソナの操作に慣れてきたのか攻撃を紙一重にかわし始めた。

 

「まだ負けないにゃ!!」

 

 凛はそう言っているが大分息が上がっている。今は良くても時間が長引けば、攻撃があたるだろう。

 

 

「り…凛ちゃん、何で?…何でそこまでするの?…私が殺されれば…」

 

 

 花陽がそう言った時だった。

 

 

 

 

 

「ふざけないで!!!!」

 

 

 

 

 

 花陽は親友の今までに聞いたことのない大声に驚いた。その親友の言葉に本気の怒りを感じたからだ。

 

 

「かよちんはやりたいことがあるんでしょう!!それをしないまま死ぬだなんて…絶対にダメ!!」

 

 

 親友の叱咤の声に花陽はハッとなった。

 

「私の…やりたいこと……」

 

 

「スクールアイドルだよね?」

 

 と、ことりが花陽に優しく話しかけた。

 

 

「!!……私は…」

 

「花陽ちゃん……貴女は」

 

 

「もう放っておいてください!!」

 

 

 

 ことりが何か言いかけたとき、花陽は大声でそれを遮った。

 

「何で……何で先輩たちは私を助けるんですか!!私のことなんてほっとけばいいのに!!」

 

 その花陽の疑問には海未が答えた。

 

 

「鳴上先輩が…助けてくれたからです」

 

 

「え?」

 

 

「私も先日小泉さんと同じ状況に遭いました。殺されそうになりましたが、それを救ってくれたのは鳴上先輩です。だから、今度は私が貴方を助ける番です!」

 

 

 その海未の言葉で花陽の頭の中にある青年の顔が浮かんだ。

 

(鳴上先輩…)

 

 初めて会った時から不思議な人だった。最初から変なところを見せてしまったけど、気にせずに優しく接してくれて、白米も奢ってもらった。恥ずかしかった食いしん坊なところも認めてもらった。

 

 

(ああ…そうか。そうだったんだ)

 

 

 花陽が己の何かに気づいたその時…

 

 

 

「にゃあああ!」

 

 

 

 とうとう限界がきたのか花陽の影の攻撃がタレイアに直撃した。

 

「ほし…凛!!」

 

 

『アンタも終わりよ』

 

 

 花陽の影はすかさず翼をポリュムニアに向けて鋭い羽を飛ばしてきた。それはポリュムニアの腕と足に突き刺さった。

 

 

「あああああ!」

 

 

 フィードバックで痛みが伝わってきたのか海未は顔を歪めその場にへたり込んでしまう。

 

 

「海未ちゃん!!」

 

 

 

『さあ…これで終わりよ……死になさい!!』

 

 

 

 花陽の影は今まで以上に翼を広げ、最大級の攻撃を放とうとした。痛みで何もできない海未たちはこの時、死を覚悟した。しかし、次の瞬間…

 

 

 

 

 

 バアアアアアン!!

 

 

 

 

『きゃああああ!』

 

 

 

 突然花陽の影の近くの壁が爆発し、花陽の影は吹き飛ばされた。相当威力が強かったのかしばらく動けそうになかった。死を覚悟していた一同はそのことに呆然としてしまう。一体何が起きたのだろうか。すると

 

 

「【ジークフリード】」

 

 

 爆発した壁の穴から悠がそう言って姿を現した。その悠の傍らには、古代ローマのコロシアムの戦士を彷彿とさせる赤い戦士服に太い大剣を片手で持っている大男【ジークフリード】が居た。壁を破壊したのもおそらくこのジークフリードだろう。

 

「すごーい!やっぱり鳴上先輩のペルソナは最強だね」

 

「もう…滅茶苦茶だわ……」

 

 そして、悠の後ろからは元気いっぱいの穂乃果と疲れ切っている真姫も現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん!!」

 

 ことりは兄の登場が嬉しいのか歓喜の声を上げた。

 

 

「押忍!待たせたな」

 

「お~す!」

 

「お…おす…」

 

 離れ離れになった悠と穂乃果が登場したことに驚いたが、一番驚いたのはその二人の傍に探していた真姫が居たことだった。

 

「に、西木野さん!!ということはまさか…」

 

 

「嗚呼、無事に西木野を救出した」

 

 

 悠はさらっとそう言ったので、海未は驚愕するしかなかった。

 

「な…鳴上先輩……流石です……というか今の爆発は何なんですか!?」

 

「この【ジークフリード】の力で壁を破壊した」

 

「……………」

 

 そんな会話をしていると。吹き飛ばされた花陽の影が起き上がってきた。

 

 

 

『よ…よくも…やってくれたわね……全員まとめて…吹き飛べ!!』

 

 

 

 花陽の影は余程頭にきたのかつばさを広げ、突風攻撃を仕掛けてきた。

 

「またにゃ!」

 

「な、鳴上先輩!突風の攻撃が来ます!伏せてください!!」

 

 凛と海未が焦った口調でそう言うが、悠は逆に落ち着いていた。

 

 

「風か……なら……【ハリティー】!」

 

 

 悠はペルソナをジークフリードからハリティーにチェンジし、突風に身を踊らせた。すると…

 

 

『何!』

 

 

 ハリティーは何事もないように平然と花陽の影の風を悠たちに来ないように受け流していた。このハリティーには疾風に耐性があるためあまりダメージを受けない。そして…

 

 

「こいつを倒すには俺だけじゃ無理だ。だから…回復するぞ。ハリティー!」

 

 

 悠の言葉に応じハリティーが上に手を向けると、優しい光が海未と凛を包んだ。

 

「こ…これは……すごいです!痛みが消えていきます!!」

 

「にゃー!元気が出たにゃ!!テンションが上がるにゃー!!」

 

 ハリティーの回復魔法により、海未と凛はすっかり元気になったようだ。

 

 

「さぁ、ここからが本番だ。行け!園田!!」

 

 

 

「ハイ!…降らせ!ポリュムニア!!」

 

 

 

 海未はポリュムニアに上空に弓を放させた。すると、突然雨のように花陽の影の頭上に多数の矢が降ってきた。

 

 

『きゃああああ!!…この……今度こそ』

 

 

 しかし、攻撃はまだ続いた。

 

 

「チェンジ!…イザナギ!!」

 

 

 次は悠がペルソナをイザナギにチェンジして落雷を放った。

 

 

『ああああああ!……ううう』

 

 

 弱点である落雷を受けたことにより花陽の影は弱々しくなっている気がする。

 

 

「今だ!!凛!!」

 

 

「行くにゃ!!タレイア!!」

 

 

 凛のタレイアが花陽の影に突進する。

 

 

 

『あ…あああ…や…やめ』

 

 

 

 

「行っけえええええええ!!」

 

 

 

 

 タレイアは凛の叫び声と共に、電気を纏った長剣で花陽の影に斬撃を与えた。もちろんイザナギの落雷を受けた花陽の影に凛の攻撃を防ぐ術はなかった。

 

 

『ああああああああああああああ!!』

 

 

 凛の決死の一撃により花陽の影は消滅した。そして役目を終えたペルソナたちもタロットカードに戻り、各々の召喚者の元へ帰っていった。

 

 

 

 

 

 

「ハア……疲れたにゃ~」

 

 渾身の一撃を放った凛はその場に尻もちをついた。顔からして相当疲れているように見える。

 

 

「凛ちゃん!!」

 

 

 花陽は身を挺して自分を守ってくれた凛に駆け寄り、勢いよく抱き着いた。

 

「かよちん?」

 

 

「ありがとう!凛ちゃん……私のために…」

 

 

 花陽は泣きながら凛に感謝の気持ちを伝えた。それに対して凛はこう返した。

 

 

「うん…だって、私たちは友達じゃん…友達が友達を助けるのは当たり前だよ」

 

「うん…うん……」

 

「それに…かよちん、ほら」

 

 凛は花陽にある場所を指で示した。そこには先ほど倒された花陽のシャドウが元の姿に戻って佇んでいた。一瞬怖くなって目を背けたが、やがて意を決して己の影の方へ歩いて行った。

 

 

「私…自分に自信がなかった……だから…本当にやりたいことから目を背けてたんだよね。でも、もう大丈夫だよ……例え自分がどうであっても…これから…自分に正直に生きていくから」

 

 そして、花陽はしっかりと自分の影を見て言った。

 

 

「貴女は……私…」

 

 

 花陽がそういうと影は頷き、光に包まれ姿を変えた。それは緑色のドレスに身を包んだ女神であった。

 

 

 

 

『我は汝…汝は我……我が名は【クレイオー】。汝…世界を救いし者と共に…人々に光を』

 

 

 

 

 そして女神は再び光を放って二つに分かれ、一方は花陽へ、もう一方は悠の中へと入っていった。

 

 

 

>花陽は己の闇に打ち勝ち、困難に立ち向かうための人格の鎧ペルソナ‘クレイオー‘を手に入れた。

 

 

 

「これは……」

 

「それが小泉のペルソナだ」

 

 花陽の行動を見守っていた悠が花陽にそう説明した。

 

「ペルソナ……あっ」

 

 花陽はそう呟くとペルソナを手に入れたことによる負荷が出たのか倒れそうになる。しかし、それを軽々と悠が受け止めた。

 

「な…鳴上先輩…」

 

 花陽を優しく受け止めた悠は、笑顔で花陽にこう言った。

 

 

 

「頑張ったな」

 

 

 

 花陽はその笑顔を見た途端、顔が真っ赤になった。すると…

 

 

「あの!…鳴上先輩!!」

 

「ん?」

 

 

「き…聞いてほしいことが…あるんですけど……」

 

 

 すると悠は花陽の頭をポンと置いた。

 

「へ?」

 

 

「今はここから帰ることが優先だ。明日きちんと聞くからな」

 

 

「は…はい」

 

 

 花陽は顔を真っ赤にしたままそう呟いた。

 

 

「さあ、皆で帰ろう」

 

 

 

 その後、来た道を通りなんとか現実に帰還した一行であった。その道中……

 

 

 

 

「お兄ちゃん…他の女の子に優しすぎ…」

 

「え?」

 

「後でお説教だね……」

 

 先ほどの花陽とのやり取りにことりは嫉妬していた。その後、悠がどうなったのかはご想像にお任せしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~翌日~

 

 

<昼休み 音乃木坂学院 屋上>

 

「ハムッ!…うう~ん!やっぱり鳴上先輩のサンドウィッチは美味しい!!」

 

「それは良かった」

 

「穂乃果、食べ過ぎないように気を付けてくださいよ」

 

「お兄ちゃん!ことりが食べさせてあげるよ。はい、あ~ん♪」

 

 

 時は経ち翌日。悠たちはいつも通り屋上で悠の料理で昼食を堪能していた。唯一違うところといえば、ことりの悠に対するスキンシップがまた大胆になったということだけだろう。

 

 

 テレビの世界から無事に帰還した後、悠たちは真姫と花陽を家まで送っていった。真姫や花陽もあの世界で起きたことについては未だに信じられなかったらしく説明を求められたが、それは翌日ということにしてもらった。

 

 

「そろそろ来るか…」

 

「え?誰が?」

 

 

 

 ガチャッ

 

 

 

 穂乃果とそう言った時、屋上のドアが開く音がした。そして現れたのは件の三人の少女であった。

 

 

「こ…こんにちは…」

 

「あー!花陽ちゃんに西木野さん!それに凛ちゃんまで!」

 

「穂乃果!行儀が悪いですよ!」

 

 サンドウィッチを食べながら指をさす穂乃果を海未が注意する。

 

 

 

「あの世界のことについて聞きに来たんだろ?じゃあ」

 

 

「ま、待ってください!!」

 

 

 悠が説明しようとしたとき、花陽が大声でそれを止めた。

 

「その前に…私のお願いを聞いてくれますか?」

 

「お願い?」

 

 

 そう言うと花陽は一歩前に出て、オドオドしながらも目をしっかり見開いて悠たちに向かってこう言った。

 

「わ、私…1年生の小泉花陽と言います」

 

「いや、知ってるから」

 

「ハゥ!……」

 

 少し緊張したせいで悠にツッコまれたが、それでも花陽は続けた。

 

 

「私…背も小さくて、声も小さくて、得意なことは何もありません…」

 

 

「花陽ちゃん?」

 

 そして花陽はしっかりと目を見開いて悠たちに言った。

 

 

「でも…アイドルに対する思いは誰にも負けません!!私は昨日自分の影と向き合ってそれに気づきました……だから…お願いです!!私を…【μ’s】のメンバーにしてください!!」

 

 

 そう言うと花陽は大きく頭を下げた。

 

 

「だってさ…高坂」

 

 

「え?」

 

 

 花陽が頭を上げた瞬間、目に飛び込んできたのは、笑顔で自分に手を差し伸べる穂乃果の姿だった。

 

 

 

「もちろん!!歓迎するよ!!花陽ちゃん!!」

 

 

 

 花陽は穂乃果の言葉を聞くと、涙を浮かべて穂乃果の手を握った。

 

 

 

「鳴上さん」

 

 

 今度は真姫が一歩前に出て宣言した。

 

 

「私も【μ’s】のメンバーになってもいいですか?」

 

「西木野?」

 

「私…あのもう一人の自分が言ってた通り自分って不幸だと思ってました。でも…昨日家に帰ってママとパパに会ったら…怒ったりはせず…私が帰ってきたことを心から泣いて…喜んでました…」

 

「それは良かったな」

 

 悠がそう言うと、真姫は顔を朱色に染めながらもこう続けた。

 

「鳴上さんが言ってた通り、私はちゃんと家族に愛されてるし…友達も居るし…全然不幸じゃなかった」

 

 そして、真姫は悠をしっかりと見つめ己の決意を言葉にした。

 

「それに…私、自分がやりたいことに気づいたんです。多分それは…鳴上さんや穂乃果先輩たちと一緒にスクールアイドルをすることだったと思うんです。だから…私も…メンバーに入れてください!!」

 

 真姫も花陽と同様に頭を下げた。もちろん、その問いに対する悠の答えは穂乃果と同じである。

 

 

「嗚呼、勿論だ。よろしくな、西木野」

 

 

 悠は笑顔で手を差し伸べそう返した。

 

 

「な…鳴上さん」

 

 

 真姫は悠がそう言ってくれたことを嬉しく感じ、悠のその手を握ろうとすると

 

 

「うん♪よろしくね、西木野さん♪」

 

 

 そうはさせまいと、ことりが横から割って入ってきた。

 

 

「なっ!!ちょっと!!」

 

 良い雰囲気だったのを邪魔されたので、真姫は少し顔をしかめた。すると

 

 

「お兄ちゃんは渡さないから……」

 

 

 と、低い声で真姫の耳元にそう呟いた。

 

 

「ヴエェエエエエ!イ…イミワカンナイ!!」

 

 

「???」

 

 ことりに言われたことに、真姫は顔を真っ赤にしながら過剰に反応した。それがどういうことなのか天然男には分かるはずがない。

 

 

「それで…凛はどうするんですか?」

 

「え?」

 

「私たちはまだまだメンバーを募集してますよ?」

 

 と、今度は海未が凛に向けて手を差し伸べた。

 

 

「凛も…凛も入るにゃ!かよちんや穂乃果先輩、鳴上先輩たちと一緒にスクールアイドルをやりたいにゃ!」

 

 

 凛も最初から入る気満々だったらしく、嬉しそうに海未の手を握った。

 

「フフフ、メンバーが一気に増えましたね。鳴上先輩」

 

「嗚呼」

 

 そして、悠は新たにメンバーになった花陽・真姫・凛に向かってこう言った。

 

 

「改めて3人とも、これから色々あると思うがよろしくな」

 

 

 

「「「はい!よろしくお願いします!!」」」

 

 

「よろしくね!!花陽ちゃん!西木野さん!凛ちゃん!」

 

「よろしくお願いします」

 

「よろしく♪」

 

 

 こうして悠たちの【μ’s】に新たな仲間が加わった。彼女たちもペルソナを手に入れているし、各々の個性も素晴らしいものを持っているので、今後のスクールアイドルの活動やテレビの世界の探索でも大きな戦力となるだろう。一息ついたところで悠がニヤリと笑って口を開いた。

 

 

「よし!じゃあ、今日はアレだな」

 

「アレだね!」

 

 穂乃果も悠と同じくニヤリと笑った。当の三人は何のことか分からない。

 

「あ…あの……アレってなんですか?」

 

 花陽が意を決してアレの正体について聞く。

 

 

 

「勿論、今日は鳴上先輩の家で花陽ちゃんたちの歓迎会だよ!!」

 

 

 

 

「「「え?」」」

 

 いきなり歓迎会と言われ3人は呆然としてしまった。

 

 

「え…ええええええ!!なななな鳴上先輩の家でですか!!」

 

「わ~い!楽しみだにゃ~!!」

 

 

 花陽は悠の家でやるということに驚き、凛は余程楽しみなのかすごく喜んでいた。

 

 

「な…鳴上さん、いいんですか?こんな大勢で鳴上さんの家に…」

 

 

 真姫がおずおずと悠に質問した。

 

「気にするな。今日はうちの両親は出張で居ないから」

 

「そういう問題じゃないんですけど」

 

「ところで、今日はみんなのリクエストに応えることにするが、何が良い?」

 

 悠がみんなのリクエストを聞こうと、すでにメモの準備をしている。顔からしてやる気満々だった。

 

 

「急にそんなこと言われても…」

 

「私も…でも鳴上さんが作るものなら何でも」

 

 

 海未と真姫は遠慮がちだったが、残りのメンバーはそうではなかった。

 

 

「穂乃果はパンが良い!!」

 

「凛はラーメンだにゃ〜!!」

 

「お兄ちゃんのコロッケ!!」

 

「わ、私は白米が良いです!」

 

 

 穂乃果と凛、ことりに花陽は遠慮しないで自分のリクエストを言っていった。

 

「遠慮なさすぎでしょ!!何ですか!そのバリエーションの多さは!!」

 

「大丈夫だ。問題ない」

 

「鳴上さん……大丈夫かしら……倒れたりしないわよね…」

 

 

 その日の放課後、穂乃果たちは悠の料理を楽しみにしながらダンスレッスンに臨んだ。そして…

 

 

 

 

 

 

<放課後 鳴上宅>

 

 鳴上宅では悠の数々の手料理が振舞われ、穂乃果たちがそれを絶賛する声が響き渡っていた。

 

「おお~!このサンドウィッチ美味しい!お昼のとは違った味がするよ!!」

 

「こ…この茶巾寿司……今まで食べたものの中で一番美味しいです」

 

「お兄ちゃんと作ったコロッケ最高!」

 

「は~白米がこんなに…幸せです!!」

 

「にゃー!このざるラーメン、タレが効いてて美味しいにゃ!」

 

「このトマトのリゾット…美味しすぎ……」

 

 

 彼女たちのリアクションを見て、悠は作り甲斐があったと心の中で喜んだ。その後、花陽たちはテレビの世界の説明を受けて新たに決意を固めたり、今後の予定を話し合ったりと騒がしい歓迎会となったが、悠たちは終始とても楽しそうであった。

 

 

 

 

 こうしてまた一つの事件が終幕し、【μ’s】に新たなメンバーが加わった。悠と彼女たちの物語はこれからも続くのであった。

 

 

 

ーto be continuded




Next Chapter

「図書館に行こう」

「あ!鳴上さん!!」

「私はやってません!!」

「この人だ…」

「何で?」

「白鐘直斗の助手の者ですが?」


「ハラショー!!」


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