PERSONA4 THE LOVELIVE 〜番長と歌の女神達〜 作:ぺるクマ!
更新がいつも以上に遅くなってしまい申し訳ございませんでした。
言い訳になってしまいますが、仕事が忙しくなったり、資格試験の勉強に追われたり、人間関係が上手くいかなかったり…と現実で色々あったので、中々執筆の時間が取れませんでした。
何か前回と同じような言い訳ですみません。
改めて、高評価を付けて下さった方々・新たにお気に入り登録して下さった方々、本当にありがとうございました!
今後ともこの作品をよろしくお願いいたします。
今回は花陽回です。タイトルの曲名は【古見さんはコミュ障です】の【シンデレラ】をチョイスしました。
それでは、本編をどうぞ!
……雨が降っている。
瞼を開くと、記憶にない場所に自分は立っていた。ここはどこだろうと辺りを見回してみる。
だが、その数秒後には信じ難い光景が広がっていた。
自分の前で横たわる仲間たち。
穂乃果・海未・ことり・花陽・凛・真姫・にこ・絵里・希。
更には、陽介・千枝・雪子・完二・りせ・クマ・直斗、更にはラビリスまで。
どうしたのろうと思い近づくと、足がすくんでしまった。
----仲間たちの身体は赤い血に染まっていた。
その姿を見た途端、血の気が引いた。確かめるまでもなく、穂乃果たちは死んでいた。
「……っ、そんな……」
突き付けられた事実に身体ががくがく震えた。それと同時に押し寄せてくる負の感情。
後悔・自責・悲哀。
耐え切れなくなったのか、膝をついてしまった。
『目を逸らすな』
背後から項垂れる自分を非難するような声が聞こえた。
『君が選択を間違えたからこうなったんだ。だから、目を逸らすな』
そして、
「はっ! はあ……はあ……」
バッと起き上がると、眩しい電光灯の光が目に入った。そこはいつものアイドル研究部の部室。先ほど見た雨の降る光景も血まみれの仲間たちもいない。
どうやらうたた寝をして夢を見ていたらしい。
「悠さん、大丈夫?」
気が付くと、赤いジャージに身を包んだオレンジ色髪の少女がひょっこりと視界に現れた。
「穂乃果……」
「もう、どうしたのよ。うたた寝なんて、悠らしくないわよ」
「お兄ちゃん、疲れてる? 何か飲む?」
そして、絵里やことりと次々と夢で死んでいたメンバーたちの顔が現れる。
生きている。あれは夢であったと分かっていても、生きている。
情けない話、それだけでも嬉しく思ってしまった。これ以上は涙を見せてしまうかもしれないため、悠は慌てて顔を逸らした。
「ゆ、悠くん? どうしたん?」
「ああ、すまない。ところで、何の話をしてたんだっけ?」
「あなたねえ……」
うっすらと思い出してきたが、何かの会議をしていた気がする。
まだ寝ぼけているのかと絵里はやれやれと頭を振った。
「音ノ木坂の神隠しについて考えてたの」
「えっ?」
その言葉にドキリとした。
音ノ木坂の神隠し。今自分たちが追っている事件の元になったとされる噂話であり、先ほどの夢での出来事が現実になるかもしれない事件。
「どうして、それを?」
「ラブライブも大事だけど、やっぱり次にアクションが起こるのは本選の日かもしれないから、犯人の目星くらいはつけておこうって思って」
「犯人像でも分かったら、桐条さんや直斗くんとも連帯して対策できるかもしれんしな」
なるほどと思うと同時に、そうだったと失念した。
これまでP-1Grand Prixや学園祭、絆フェスなどの事件に遭遇しては解決したが、未だこの一連の黒幕は捕まえていないどころか目星もついていない。
それに今度犯人がアクションを起こすとしたら12月に行われるラブライブの本選だ。少しでも手掛かりになるものでも掴めれば犯人を割り出せるかもしれないし、あわよくば美鶴たちと連携して、事を起こす前に捕まえられるかもしれない。
それに、あの学園祭の時の悲劇は二度とごめんだ。
「……分かった。早速考えよう」
「さっきから皆で考えてるわよ」
絵里にため息を吐かれてしまったが、まずは改めて情報を整理する。
前述のとおり、音ノ木坂の神隠しとは2年前より学校内で広まった奇妙な噂のこと。
この噂が稲羽市でも起こった連続殺人事件のように、穂乃果たちの身に起こった失踪事件に関与しているのは間違いない。
だが、稲羽とは決定的に違うのはこの噂にははっきりとした内容がないことだ。新聞部の天野部長の調べでは、“神隠しに遭う”・“運命の人に出会える”など色々と錯綜しているらしい。
そこで問題なのは、このようなあやふやな噂で事件を起こすことに対して、“誰が”・“何のために”このようなことを起こしたのかということだ。
「これまで得た手掛かりと言えば……」
そう言って、部室のホワイトボードに海未がこれまでに得た手掛かりを書き記した。
・P-1Grand Prixの首謀者“ヒノカグツチ”を唆したこと
・絆フェスの真犯人“ミクラタナノ”に音ノ木坂学院のテレビの世界を作らせたこと
・“私たちの傍にいる”ということ
共通点としてはあの超常的な存在たちを掌で操れるということだが、そんな人物が自分たちの周りにいただろうか。
頭をひねらせていると、何か思いついた凛がこんなことを言い出した。
「……もしかしてだけど、
凛の不用意な発言に、場が凍った。
「凛ちゃんっ!?」
「アンタねっ!」
「い、いや……その……ふと思って……」
「言っていいことと悪いことがあるでしょ!?」
「ましてや悠さんとことりの前でそんなこと言う!?」
「ううう……」
凛はしどろもどろに弁明するが、まずいことを言ってしまったと自覚したのか、縮こまってしまった。
だが、凛の言うことも分からないでもない。現に絵里も考えたくなかったが、その可能性はあると踏んでいた。聞けば、稲羽の連続殺人事件の黒幕も悠たち特捜隊の身近にいた人物だった。
自分たちに最も近くいる人物と言えば他でもない理事長。GWや学園祭、絆フェスの際も自分たちに積極的に関わっていたし、言うなれば自分たちの動きを把握して事件を起こすことは可能である。だが、
「それはない」
と、凛の失言を怒ることもなく悲観することもなく、悠は淡々と一蹴した。
「確かに凛が考えている通り、叔母さんは俺たちの一番近くにいる。それなら俺たちの行動を把握して犯行を起こすことは可能だ。現に、最初の穂乃果たちの事件でタイミングよく表れたのは、他でもない叔母さんだからな」
「悠……」
「でも……こんなことをしても叔母さんに何も良いことはない」
その言葉に一同はハッと息をのんだ。
確かにその通りだ。自分たちに一番近い位置にいる点には合致しているとはいえ、雛乃はこの学校の理事長だ。自分の学校を、卒業生でもある思い出の場所を廃校にする理由はない。ましてや、自分の大切な娘や甥っ子を利用するような外道のような人物ではないことは明らかだ。
「……そうね。それなら理事長の線はないわね」
「じゃあ、他に誰がいるかなあ?」
改めて、議題は振り出しに戻ってしまった。
「うーん、考えても分からないことは仕方ないわね。さっ、練習にいくわよ」
「ええええっ!? もうちょっと考えようよ。何か分かるかもしれないじゃん」
「貴方ね、それを口実に練習をさぼろうとしてるの、分かってるのよ」
「な、なななんのことでしょう?」
「あははは……」
散々頭を捻ったが結局は何も分からず、煮詰まっただけで練習に戻ることになった。
「…………」
「悠くん、大丈夫?」
「……希か。ああ、大丈夫だ」
皆が屋上に行った後、静かになった部室でぼうっとしていると、希が声をかけてきた。中々来ない自分を心配して迎えに来てくれたようだ。すると、
「……無理はせんでええよ」
「えっ?」
いつの間にか視線を近距離まで合わせてきたと思うと、希はそっと悠の手を包み込んだ。
「手、震えてる」
その言葉にドキリとした。気付かなかった、あるいは気づかないようにしていたのか、本当に自分の手が小刻みに震えていたのを希の手の感触から感じ取った。どうやらまだ先ほど見た夢のことや雛乃が犯人と疑ってしまったことを引きずっているらしい。
「……ごめん」
「ええんよ。悠くんはいっつも無理ばっかりしよるし……たまには、甘えていいんよ」
「……甘えて?」
「そう。例えば、こう」
「「はい、そこまで」」
希が笑顔でハグしようとした瞬間、背後からガシッと肩を掴む手が2つ。それは目がちっとも笑っていない絵里とことりだった。
「いつまでも屋上に来ないと思ってたら……」
「ちょっとお話しようか?」
「あはは……せやね」
乾いた笑みを見たが最後、希は2人に外へと引っ張られていった。ああなったら怖い。
残された悠は少し希の言葉が気になっていた。
「甘える、か。俺は、誰かに甘えたことなんて……あっ」
あるにはあった。
あれは去年の冬。生田目をテレビに落としそうになった日のことだ。あの時に、自分でも整理しきれなかった感情を陽介に受け止めてもらった。今思うと少し気恥ずかしい思い出だが、相棒との絆を確かに感じた大事な出来事でもある。
「……あんなこと、誰にも言えないよな」
あれは自分と相棒の秘密にしておこう。そう思いながら、悠は練習をしに屋上へと向かった。
その夜……
『あなたの、テレビに、時価ネットたなか~♪ み・ん・な・の欲の友♪』
「……甘え方が分かりません。何か良い手はありませんか?」
「何言ってんだい、アンタは」
練習後、希の言葉が引っかかっていた悠はアドバイスを受けるためにネコさんの店に来ていた。案の定、営業中だったためネコさんにはしかめっ面をされてしまったが。
「いや、希に甘えていいと言われて……具体的な甘え方が分からないというか……」
「はあ、全く。じゃあ試しにこれ飲んでみるかい?」
最近同じようなことが立て続けに起こっている故のストレスが溜まっているのか、投げやり気味にネコさんはカウンターに液体の入った小瓶を置いた。
「なんですか、それ?」
「ああ、常連のおっさんからもらったんだけどさ。なんか子供に若返るっていういかにも怪しい薬さ。そのおっさん、高校の教師で生徒を実験台にして試したら成功したんだと。飲んでみる?」
「結構です」
そんな怪しい薬を試す度胸はない。そんな度胸があるのは怪盗の後輩だけで十分だ。
それに、どうせ飲んで子供になったら怖い園長先生に服を借りに行ったり、材料が足りないからとその中年の高校教師に昆布を買いに行かされるのだろう。
「だよねえ。でも、他の方法となると……あっ、そうだ。ナルやん、アンタ今週末ひま?」
「多少時間は」
「実はさ、知り合いが学童保育の仕事やってんだけど、2人ほど空きが出ちまったらしくてね」
「はあ……」
「ナルやん、稲羽にいたときに学童保育のバイトやってたんだろ? 良かったら手伝ってくれないかい?」
確かに昨年の夏休みに学童保育のバイトはやったことは事実だが、何でネコさんはこのことを知っているのだろうか。
「もちろん給料も出るらしいし、園児に触れ合えたら、ナルやんが悩んでる甘え方が分かるかもしれないだろ?」
「…………」
そう言われては行くしかないだろう。受験なのにという言葉は今更だが、この問題を引きずると後々面倒なことになりそうなので、早めに解決した方がいいだろう。
「……別に良いですけど」
決してくれた悠にネコさんは喜びの手を叩いた。
「りょうかい。あとさ、もう一人誰か紹介してくんない? μ‘sの子とかで適任者はいるだろ」
「適任者?」
「例えば、母性があって優しくて、子供の扱いが上手そうなさ」
「…………」
一瞬、その条件に希が頭に浮かんだが却下した。何となく、このことは希と解決すべきではないと思ったからだ。
だが、希以外でこの条件に合うメンバーというと……
「………………あっ」
心当たりが一人いた。
「花陽。今週末、空いてるか?」
『えっ!? あ、空いてますけど……』
「良かった。じゃあ、当日ネコさんの店に集合で」
『は、はいっ!』
思いついたのは花陽だった。早速電話してみると、速攻OKだったので安心した。
「バッチリです」
「今の、どっか誤解を生んでそうだけど、大丈夫かい?」
「ええ、もちろん」
傍から今の通話を聞いていたネコさんはデジャヴを感じていた。
一方……
「やっ、やったあああああああああああああああああああっ!!」
通話を終えた後、花陽は突然降ってきた幸運にテンションが爆上がりした。そして、その衝動を抑えきれずにシャドウボクシングを始める始末。
鳴上悠が、あの憧れの人が自分をデートに誘ってくれたのだ。その事実に喜ばない人はいないだろう。
それに、花陽には他のメンバーにはない自負があった。それは
“μ‘sメンバーの中で一番最初にデートに誘われたという事実”
もちろん、それは悠にとって穂乃果たちのファーストライブに来てくれたお礼という意味合いでのことだし、謝罪ややむを得ない理由で他のメンバーとのデートイベントはあった。だが、そんなことはどうでもいい。重要なのは悠が一番最初に自発的に自分をデートに誘ったという事実。その一点こそが、他のメンバーにはない強み。それが、花陽を突き動かしていた。
「うふふ、今週末は何着ていこうかな~♪」
沸きあがる鼓動とチャンスに心を躍らせながら、花陽は自室のクローゼットに手を掛けた。
と、思っていた。
当日
「はあ……」
そして案の定、花陽は気落ちしていた。
デートかと思いきや、まさかの学童保育のバイトのお誘いだった。せっかく気合の入った私服を着てきたというのに、ジャージに着替えさせられたので空回りした気分だ。
「花陽、どうしたんだ?」
「……知りません」
この状況の原因たる悠は呑気にそう聞いてきたので、花陽の機嫌は悪くなっていく。どうしたのだろうと花陽の不機嫌さに慌てる悠に、やっぱりと嘆息するネコさん。
本日のバイト、雲行きが怪しくなってきた。
To be continuded.
今話を最後まで読んで下さり、ありがとうございます。いかがだったでしょうか?
最近仕事も忙しいのですが、一方で悪質な商法に引っかかって危ないところだったという苦い出来事が……。皆さんも気をつけて下さい。頭で違和感を感じたら、速攻で逃げるように!!
そんなことが起こっても、【SPY×Family】や【かぐや様は告らせたい~ウルトラロマンティック~】のアニメや、篠原健太先生のウィッチウィッチの最新刊を糧に気分を上げて頑張ってきました。やっぱり面白いですからね。
松岡さんと小松さん、福島さんによるボイスコミックもとてもよかったです。このメンバーでアニメ化してほしい。
次回もなるべく早く更新したいと思いますので、それまでお待ちください。