PERSONA4 THE LOVELIVE 〜番長と歌の女神達〜   作:ぺるクマ!

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お久しぶりです。ぺるクマ!です。

更新がいつも以上に遅くなってしまい申し訳ございませんでした。
言い訳になってしまいますが、仕事が年度末になるにつれて忙しくなったり、資格試験の勉強に追われたり、人間関係が上手くいかなかったり…と現実で色々あったので、中々執筆の時間が取れませんでした。

改めて、高評価を付けて下さった方々・新たにお気に入り登録して下さった方々、本当にありがとうございました!

今年最初の投稿となりますが、今後ともこの作品をよろしくお願いいたします。

今更ながらタイトルが長くなるので書きませんでしたが、今話の裏タイトルは【Love & Comedy ~Seize The Day~.】です。誰がテーマかは話を読んで頂けたら分かると思います。

それでは、本編をどうぞ! 


#117「To the training camp again 2/2.」

 昨夜の地獄から夜が明けた。

 クリスマスによく来る別荘で新曲のための合宿。初日は散々な結果に終わった私たちだが……

 

「へえ、まつぼっくりっすかあ」

「ああ、乾燥したまつぼっくりは着火剤になるらしいからな。特にこう開いているのが良いとビッグボスが言ってたぞ」

「どっちのっすか……」

「どっちって、あっちのビッグボスだろ?」

「あっちって、どっちっすか……」

「……あとは、火を起こすときは空気の入れ方が重要で……」

 

 2日目は何故か、山でゆったりとキャンプをしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昨日の騒ぎが明けて、翌日。悠のマーラ様召喚に加えて王様ゲーム騒ぎも相まって全然合宿らしいことができなかった特捜隊&μ‘s。ここはみんなで一つの作品を作ろうという穂乃果の提案によって、作曲・作詞・衣装の3つのチームに分かれて、インスピレーションを掴もうと考えたのだ。

 そこで、真姫・海未・ことりの明確な担当を担っている3人を除くメンバーは公平なくじ引きの結果が以下の通りのチームに分かれたのだ。

 

 真姫T:悠・完二・直斗・絵里・にこ

 海未T:凛・希・陽介・クマ・千枝

 ことりT:穂乃果・花陽・雪子・りせ・ラビリス

 

 偶然にもμ‘s組はいつもの別部隊に分かれていた。

 悠が同じチームに入っていないことに海未・ことりチームのμ‘s組はぐすぐすと泣いていたが、公平なくじの結果なので是非もない。

 

 

 

 

「はあ、森の中でゆったりキャンプ……最高ねっ!」

「小さい頃に冬のキャンプは多少経験あるけど、こういう静かな森の中でっていうのも中々」

「ええ。でも、ほとんどのことをあのお二人に任せっきりになってしまったのは心苦しいですけど……」

「……確かに」

 

 真姫の【BiBi】組の女性陣は焚火の前でキャンプ談に花を咲かている悠と完二を苦笑いしながら見つめた。

 最近キャンプがテーマのアニメを見て勉強したらしい悠が完二を助手にテキパキとテントを設営し、焚火も短い時間で起こしてくれた。それゆえに、こうして女性陣はゆったりとした時間を満喫できていた。

 

 

 

 

 

 

 

 一方、海未のチーム【lily White】は……

 

「ひい……ひいい……」

「はあ……はあ……つ、疲れたにゃあ」

「ほらほら、早くしないといい景色が見られませんよ」

「てか、何で俺らは山登らされてるんだよっ!?」

 

 何故か近くの山で登山させられていた。

【lily White】組で作曲のインスピレーションを得るためにどうすればよいのかと話し合ったところ、海未の発案で登山しようということになったのだ。登山と言っても軽く登れる安易な山かと思いきや、かなり険しい山だった。お陰で今、陽介や凛たちはヘロヘロだ。

 

「クマ~……もう、へとへとクマ~……」

「全く情けないなあ。こんな山でへばっちゃうんだから」

「はあ……それはお前らが体力バカだからなあっ!?」

「ああんっ?」

 

 へばる陽介たちとは反対に千枝は海未と同族故かあっけらかんとしていた。情けないと言うが、普段から修行と称して馬鹿みたいな鍛え方をしているあっちと平凡なこっちとでは決定的な違いとあるというのに、あっちには全く自覚がない。

 

「貴方たち、一体何しに来たんですか?」

「「作曲しにきたんだよっ!?」」

 

 きょとんとする海未にツッコミながら、陽介はこの場にいない相棒を恨んだ。公平なくじの結果だが、これでは完全にハズレじゃないか。

 

「あかん、ウチも限界や……最後に、悠くんと……結婚、したかったなあ……」

「おおいっ! 死ぬなあ、希ちゃああんっ! 君なら絶対悠と結婚できるからあっ!」

「……ほんま?」

「ああ。あいつ、最近妙に希ちゃんのこと気になるって言ってたし。やっぱし幼馴染だから誰よりも脈が……」

「「「……はあっ?」」」

「ひいっ!?」

 

 結果……

 体力バカたちによる登山により、脱落者多数。加えて、不用意な発言をしてしまった青年がボコボコにされ、HP残り1の状態で帰還したことが確認された。

 

 

 

 

 

 一方、ことりチーム【Printemps】は……

 

「ちょちょちょっ!? 雪子さん、そんな入れ方しちゃダメだって」

「えっ? でも、強い方が良いと思って」

「だから、小麦粉と強力粉にそんな違いはないからあっ!!」

 

 山荘で衣装のアイデアを練っていた【Printemps】組がいる別荘では大惨事が巻き起ころうとしていた。

 ことりが当てた宝くじのお金で今までにない衣装のアイデアをひねり出そうとしたが、成果は芳しくない。だから、同じチームになった雪子がお菓子を作るととんでもないことを言い出したのだ。

 夏休みのミミックッキーの惨劇がフラッシュバックした穂乃果たちは何とか思い留まらせようとしたが、私も成長したから大丈夫と一点張りで言うことを聞いてくれなかった。

 

「それに、お菓子にこんなもの入れなくていいです!! 何で生の魚を入れようとしてるんですかっ!?」

「えっ、でもお魚クッキーってお魚を材料にしたクッキーじゃないの?」

「全然違うよっ! こんなこと家でしたら、お母さん激おこだよっ!?」

「もう、雪子先輩ったらだめだよ。入れるんだったら、この山椒とかデスソースとか」

「りせちゃんも黙っててっ!!」

 

 大丈夫と言ってたにも関わらず、雪子の調理法は熾烈滅裂だった。小麦粉の代わりに強力粉を入れようとしたり、お魚クッキーを作るからと刺身を混ぜようとしたり、挙句には風味が出るからとウォッカを入れようとしたり……更に、りせも余計なことをしようとしたせいで、しっちゃかめっちゃかだった。

 

 

 結果……

 この後起こる悲惨な事態を前に、穂乃果たちはこの場にストッパーの男子陣や絵里がいないことを後悔した。

 

 

 

 

 

 

 

 そんな悲惨な他チームとは違い、本当にチーム【BiBi】は平和だった。

 悠の主導の元、手早くテントを設営し、焚火も万全。お陰でこうして焚火を前にゆったりと読書ができる。問題児もおらず、各々が和やかに焚火を見つめたり楽しく談笑している光景が微笑ましい。

 なるほど、こうして焚火を前に読書をするというのは趣があって普段と違った雰囲気を楽しめる。あの山梨のソロキャンガールの気持ちが今なら分かる。これなら良いインスピレーションが湧いてくるかもしれない。

 ああ、こういうのが良いと真姫は思った。同じことを絵里とにこ、直斗も思っているのか、和やかに焚火とそれの番をする悠と完二を見守っていた。

 

「さて、そろそろご飯の準備に炭火をするか」

「おっ、いいっすねえ。って、何すか? その賽銭箱みたいなの」

「賽銭箱じゃなくて、コンパクト焚火グリルだ。真姫の別荘にいくつかあったから使わせてもらおうと思って」

 

 すると、そろそろ食事時かと思ったのか、悠と完二はキャンプ飯の準備を始めた。どうやら別荘で眠っていたあの賽銭箱のような焼き物を使用するらしい。

 

(キャンプご飯……私も、やってみたいかも)

 

 準備を進める男子たちを見て、真姫は密かにそう思った。でも、普段の料理はともかくキャンプ飯というのは手間暇がかかり、難しいイメージがある。普段から料理慣れしている悠たちはともかく、いつも出島さんたちの料理に甘えている自分なんて……

 

「良かったら、みんなもやってみないか?」

「「えっ?」」

 

 そんな心情を察してくれたように、悠は自分たちにそう声を掛けてくれた。

 

 

 

 

「「「うまああああああああああああっ!?」」」

 

 数十分後、閑静な森林に少女たちの歓喜の声が響き渡った。やはりと言うべきか、自分たちの手で作ったキャンプ飯は叫んでしまうほど美味しかった。

 今食しているのは“季節野菜のアヒージョ”。あらかじめ別荘で悠と完二が切っておいた野菜とニンニクを油で炒め、海老やホタテなどの海産類を絡めて完成。真姫たちは別の料理を担当していたのだが、これはこれで傑作的に美味だった。

 ちなみにアヒージョとはスペイン語で【小さなニンニク】、具体的には【刻んだニンニク】を表わす言葉である。某アニメで某ほらふき少女が言っていた“ジョ”はスペイン語で叫ぶという意味であるということは事実ではありません。

 

「うおっ……これうんまいすね。アヒージョなんて洒落たもん作れるなんて、さすが先輩っす」

「悠は本当に料理が上手ね。前から気になってたけど、どこで学んだの?」

「ほとんど独学だ。まあ両親と彼女を喜ばせたいっていう気持ちが強かったからな」

「「「か、彼女っ!?」」」

 

 聞き捨てならない発言に真姫・にこ・絵里の3人は身を乗り上げる。

 

「嘘だぞ」

「「「……ほっ」」」

「なんで綾瀬先輩ら、ほっとしてるんすか?」

 

 

Purrrrrrrrrrrrrrrr! Purrrrrrrrrrrrrrrr! 

 

 

「おっ、ホイル焼きもそろそろ良さそうだ」

 

 携帯のタイマーが鳴り響いたということは、先ほどコンパクト焚火グリルで準備していたホイル焼きもできたようだ。

 

「ほら、真姫たちが作った野菜のホイル焼きだぞ」

「「「おおおっ!?」」」

 

 こちらは真姫たち女性陣に作ってもらった野菜のホイル焼き。

 近くの水場でよく洗ったさつまいもやトマトなどの野菜をアルミホイルで包んで焼くだけ。各々の食材で適応時間が違うので、タイマーなどで時間を確認。焼きあがったところで、塩コショウで多少味付けしたら、完成。

 まず初めに出来上がったトマトの丸ごとホイル焼きは見た目から食欲をそそる出来だった。というか、今回作ったホイル焼きのほとんどは真姫の要望もあって7割方トマトだった。元々作曲担当の真姫のためのキャンプなので当然の流れだったが、ここまでトマトのホイル焼きが並ぶと違った意味で圧巻だった。

 

「でも、何で野菜な訳? 真姫の別荘ならいいお肉もあったはずなのに」

「ああ、肉もいいけど、こういう寒い時期は加熱した夏野菜を食べると身体があったまるからいいかなって」

「??」

 

 説明しよう。

 トマトをはじめとした夏野菜には水分と利尿効果のあるカリウムが豊富に含まれているため、尿と共に身体の内側から熱を排出する。つまり身体を冷やすことになる。故に夏に食べるには最適だが、冬に食べるのは好ましくない。

 しかし、これらは加熱すると性質が反転し、身体を温める食材に早変わりするのだ。キャンプでホイル焼きに挑戦する際は、是非ともやってみよう! 

 

「へえ(もぐもぐ)、私トマト大好きなのに(もぐもぐ)、それは知らなかったわ(もっきゅもっきゅ)」

「「「………………」」」

 

 悠が説明している間、大好物に目のない真姫は焼きあがったトマトを食べつくしてしまった。普段物静かで目立ったことをしない真姫にしては奇想天外な行動だった。

 

「?? ……あっ」

「真姫、アンタ……」

「トマトを全部食いつくやがった……」

「ははは、また作り直すか」

「~~~~~~~~~!?」

 

 真姫の顔がトマトのように真っ赤になったところで、ホイル焼きは作り直しになった。

 

 

 

 

 

 

 そんな感じで森の中で各々ゆったりとした時間を過ごして、あっという間に夕暮れになった。

 

「さて、そろそろ……って、みんないない」

「えっ?」

 

 そろそろ帰り支度をしようとしたとき、いつの間にか自分と真姫以外のメンバーがいなくなっていた。一体とこに行ったのだろうと思っていると、テントの携帯から着信音が鳴った。

 

『出島さんから急いで戻ってほしいって連絡が入ったから、私たちで見てくるわ』

「んっ?」

『それと、キャンプで出たごみとかは私たちで回収したから、あとは2人でのんびりしてらっしゃい』

「………………」

「………………」

 

「「どういうこと……?」」

 

 突然置かれた状況に2人は唖然とするしかなかった。

 

 

 

 

 

 

「あ、絢瀬先輩……これでよかったんすか?」

「良くないわよ」

「確かに……一体何があるか分かりませんからね」

 

 一方、悠と真姫を置いてきた絵里たちはゴミ袋やキャンプチェアなどを担ぎながらそんな会話をしながら歩いていた。

 実は悠と真姫以外のチームメンバーは事前に出島さんから買収されていたのだ。真姫と悠が2人っきりになれる時間をつくってほしい。そうすれば報酬を支払うと。最初はそんな胡散臭い話などと断固拒否したが、前払いとして本当に各々に相応の報酬を用意されたので、乗るしかなかった。

 

「大丈夫じゃない? だってあの真姫よ。そう簡単に悠に手を出すわけナイナイ」

「そうっすかねえ」

「あっ、真姫の別荘が見えたわよ」

 

 だが、彼女たちは知らなかった。別荘に帰れば、噓から出た実の事態になっているとは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「…………」」

 

 いつの間にか二人っきりになってしまい、何を話せばよいのか分からない。ただただ静寂が続く一方であった。

 

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

 

 流石にきまずくなってきた。悠は焚火で沸かしてくれたお湯でコーヒーを作ってくれたが、会話がないとただただ気まずい。このままでは何もないままで終わってしまうと思った真姫は、思考する。この時、真姫の脳は時間を圧縮してフル回転し、この気まずい状況を脱するための術をあらゆる視点から検討した。

 そして、ある話題を思いついた。

 

「…………悠さん、ちょっと相談があるんですけど……」

「どうしたんだ?」

「私……今度お母さんに内緒で原付の免許取ろうかなって思って……」

「えっ?」

 

 思いつきとしては悪くなかった。現に、原付と聞いて悠の目が興味を示していた。

 しかし、このことは思い付きで考えたわけではない。悠たちが原付の免許を持って、色んなところを旅したと聞いてから、少なからず自分も免許を取りたいと思っていたのだ。

 それに、想像してみる悠と一緒にツーリング。先導で悠が方向を指示してくれて、それについていく。立ち寄ったお店やレストランや温泉でまったりしながら、感情を共有する。

 

「良いと思うぞ。俺は賛成だ」

「本当っ!?」

「ああ。最近は乗れてないけど、原付で海沿いを走るのはかなりいい」

 

 悠も真姫の免許取得には賛成だった。

 陽介たちの他に原付仲間ができるのは大歓迎だ。できれば真姫だけでなく、穂乃果たちもと言いたいところだが、そんなことを言えば絵里や雛乃に怒られてしまうだろうが。

 

「あっ、悠さんは去年雪子さんたちと原付で海に行ったんだっけ?」

「そうだな。完二は自転車でクマはローラースケートだったけど……」

「ふふっ、何よそれ」

 

 そんなこと絶対ありえないだろうと真姫は思ったが、実際に起こったことだ。今年の夏は原付で出かける機会がなかったからだと思うが、いつかみせてやりたい。

 しかし、こんなやりとりでも真姫にとってはこのシチュエーションが好ましかった。

 好きな人と焚火を囲んで2人っきり。他愛のない話で盛り上がってドキドキが止まらない。これに喜ばない人はいないだろう。

 

「それにしても、真姫もよく笑うようになったな」

「えっ?」

「最初会った頃は仏頂面で笑うことも少なかったから。あの頃に比べるとよく笑うようになったし、自分の意見もきちんと持てるようになって、俺は嬉しいぞ」

「そ、そう……」

 

 そして、不意打ちによるべた褒め。何というか、自分をそんな風に思っててくれていたことに思わず鼓動が高鳴ってしまった。

 

(もしかしたら……今、言えるかも……!)

 

 この奇跡的な状況。逃すべきではない。

 ここで決めてやる。例え結果がダメでも、少しでも悠に異性として意識してもらうために! 

 

「悠さん、私は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「悠さああああああああああああああああああああんっ! 助けてええええええええええええっ!?」

 

「きゃあっ!?」

「うおっ!?」

 

 良い雰囲気の最中、切羽詰まった声が森林に木霊した。その声にびっくりした真姫が思わず悠に飛びついてしまい、真姫が悠に覆いかぶさる形でバランスを崩してしまった。そして……

 

 

(チュッ)

ー!!ー

 

 今、唇付近にやわらかいものが当たった気がした。決して口ではないが、口であったような。

 気づけば目の前に顔を先ほどより真っ赤にした真姫がおり、一体何が起こったのだろうかと思ったが、それどころではない。恐る恐ると振り返ってみると、文字通り全速力で走ってきたらしい穂乃果が息を切らして呼吸を整えている最中だった。これ幸いと穂乃果が見ていない隙をついて2人は距離を取った。

 

「ゆ、悠さん……?  真姫ちゃん……? どうしたの?」

「……何でもないぞ。ところで穂乃果、どうしたんだ?」

「そ、そうだった!? 雪子さんが料理して、真姫ちゃんの家が大惨事になっちゃったよ~~っ!!」

「「えっ?」」

 

 

 

 

「「こ、これは……」」

 

 急いで戻ってみると、ログハウス内はカオスと化していた。何か変な匂いが立ち込めているし、リビングではここで作業していたであろうことりチームと登山から帰ってきたらしい海未チームの面々が白目を剥いて倒れていた。どこか鼻に入るとまずい予感がしたので、ハンカチで鼻と口を覆う。恐る恐るこの恐るべき事態の発生源であろうキッチンへ足を運ぶ。すると、案の定張本人であろう雪子が鍋の周りでオロオロとしていた。

 

「……天城」

「な、鳴上くん!? それに、真姫ちゃんに穂乃果ちゃん……ち、違うのっ! これには訳があって……ちゃんとレシピ通りに作ったんだけど、物足りなくてちょっとアレンジを加えちゃっただけで……」

「「「…………」」」

「こんな……ことに……なるなんて……」

 

 雪子はそれ以上言葉が出なかった。自分を見つめる悠たちの目が今までに見たことないほど、ハイライトが消えていたからだ。

 

 

 その後、雪子は本格的に料理をちゃんとできるまで実家の天城屋旅館を含む全ての台所を出禁になった。

 説教されている最中、何故か普段より真姫の当たりが強かったのは気のせいだっただろうかと雪子は思った。

 

 

 

 結局、今回の合宿は一部を除いて、ただただバカ騒ぎしてトラブルに巻き込まれただけで終わってしまった。

 

 

 

「………………」

「真姫ちゃんどうしたの?」

「へあっ!? な、なによ……」

「いや、真姫ちゃんさっきからずっと口元覆ってるから、何かあったのかなって思って」

 

 合宿が終わって早々、帰りの電車の中で真姫は頻りに口元を覆っていた。それを隣の席の花陽に見られてしまったので、思わず慌ててしまう。

 というのも、あの時……悠に覆いかぶさってしまった際、自分の唇に当たったのは具体的にどこだったのか覚えてないのだ。果たしてあれはセーフだったかアウトだったか、もしくは間を取ってセウトだったのか。

 

「~~~~~~~~~~!?」

 

 気になってはあの時のことを思い出す度に、顔が真っ赤になってしまう。そんな真姫の様子に何かを察した花陽はある男に妬みの視線を送ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日談……

 

「それで、僕に対する報酬というのは?」

 

 合宿が終わって数日後、直斗は東京のとある場所で出島に呼び出されていた。何でも、先日の件の報酬を支払いたいということらしいが、こんな場所に呼び出して一体どういうことだろうか。

 

「貴方たちが追っている事件の有益情報と申しておきましょう」

「……どういうことでしょうか?」

 

 内容が内容だけに、一気に警戒感が増した。一体目の前の女性はどこまで知っているのだろうか。元同業者という経歴だけに、直斗は思わずにらみつけるように相手を見つめる。

 

「実は、貴方が病院に運ばれた際、診察を担当した奥様が疑問に思うことがあるとのことだったので……」

「…………」

「白鐘様に使われた薬物は殺傷性こそないものの、普通では手に入らないものでした。あの件の犯人はお嬢様と同世代の女子高生ということでしたが、普通ではない手段で薬物を入手したとしか思えません」

「……もしかして、その薬の出所を突き止めたと?」

「はい、スプーキー……私の知り合いにその道のスペシャリストがおりましたので、その中心人物の名を突き止めました。その方がこちらです」

 

 そう言って、出島さんは懐から一枚の写真を取り出した。スプーキーという聞いたことがある事件を彷彿させるワードに引っかかりを覚えるが、今はそのことは気にせず直斗はその写真を目視した。

 

「こ、この方は……!?」

「そうです。この方は鳴上様と貴女、更には()()()()()μ()()()()()()()()()()()()()()()()です」

 

 そう、出島の言う通り、その人物はμ‘sどころか自分にもゆかりのある人物だった。まさかの人物に直斗は意図せず表情を崩してしまった。

 

「そんな……まさか……」

「間違いありません。キチンと裏も取ってあります」

「……こんなこと……あの人たちには酷すぎる。ましてや…………」

 

 突き付けられた事実に直斗はそう呟く気力しか残されていなかった。

 

 

 やがて訪れる決戦の時。それを前に、直斗はいち早く自分たちが追う黒幕の正体を知った。それが、悠や穂乃果たちにどのような影響を与えるのか、まだ彼女は知る由もなかった。

 

 

To be continuded.




今話を最後まで読んで下さり、ありがとうございます。いかがだったでしょうか?

年度末は本当に忙しかったですが、4月から色々と楽しみがあるのでそれを目標に頑張ってました。
何が楽しみかというと、【SPY×Family】や【かぐや様は告らせたい~ウルトラロマンティック~】のアニメだったり、8月に発売予定の【ソウルハッカーズ2】などです。
自分が好きな作品がどうアニメで表現されるのか楽しみですし(かぐや様では特に”四条眞妃”の話とか…)、ソウルハッカーズ2の内容が気になりすぎます。
ですが、個人的に葛葉ライドウのリメイクとかやってほしいなあと思っていたり…

次回もなるべく早く更新したいと思いますので、それまでお待ちください。
それでは皆様、良いお年を!

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