PERSONA4 THE LOVELIVE 〜番長と歌の女神達〜   作:ぺるクマ!

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閲覧ありがとうございます。ぺるクマ!です。

毎度投稿が遅くなってになってしまい申し訳ございません。気づけばダンまちⅢは終わってしまった……アステリオスとベルくんの最終決戦は凄かった。ダンメモと合わせてみたら奥が深い。

さて、今回は”Love & Comedy”シリーズの凛回です。サブタイには【ハイキュー‼】の『Ah Yeah!! 』 を入れさせてもらいました。このシリーズはここで一旦区切って、新年からは一気にシリアスに行こうと思ってます。

改めて、感想を書いて下さった方・高評価をつけて下さった方・誤字脱字報告をして下さった方・新たにお気に入り登録して下さった方々、本当にありがとうございます!

今年は例年に比べて色々あった年でした。来年は新社会人なのでもっと更新が遅くなると思いますが、これからもこの作品を読んで頂けたら幸いです。来年もこの作品をよろしくお願いします。

それでは、本編をどうぞ!


#104「Love & Comedy ~ Ah Yeah!! ~.」

♫~♫♩~♩~♫~♫♩~♩~

 

 

 

 

…………美しいピアノのメロディーが聞こえてくる。

 

 

 

 

 聞き慣れたそのメロディーで目を覚ますと、床も天井も全てが群青色に染め上げられた空間にいた。もう昨年から出入りしているこの落ち着く感じは……

 

 

「ようこそ、ベルベットルームへ。本日、我が主と姉様は留守にしております」

 

 

 目の前には美しい銀髪の女性が座っている。名は【エリザベス】。今年のGWに稲羽市で起こったP-1Grand Prix事件で奇妙な縁で世話になった女性だ。マーガレットの妹であり、彼女にも今回の事件を追う中で度々世話になっている。

 

「ふふふ、昨今お仲間の美少女たちとデート三昧だった故か、多少お疲れのご様子。そんな貴方様を労うため、私からとっておきのプレゼントを差し上げます。いつでも、好きなように使って下さいまし」

 

 愉快そうに笑みを浮かべながら渡されたのは一枚の紙きれだった。紙には手書きで“何でも願いを叶える券(一回有効)”と書いてある。まさかおばあちゃんへの肩たたき券みたいなものを今日日見るとは思わなかった。だが、今のところどう使って良いか分からないので利用はよく考えてからにしよう。

 

「それはそれとして……話は変わりますが、貴方様が追いかけている災難がいよいよ近づいているようでございます。姉様からお聞きしましたが、鳴上様が昨年追い続けていた犯人は予想外な手口で事件を起こしていたとのこと。今回の犯人もまた、貴方様の予想を超える手口を使っているやもしれませぬ。決して気を緩めなきよう、努々心の片隅に置いておいてくださいまし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────久しぶりの戦闘だった。

 

 

ーカッ!ー

「ペルソナっ!」

 

 

 召喚する際のカードを砕く感覚。更に

 

 

「チェンジっ!」

 

 

 刃が襲う。

 このペルソナで受け止めても構わなかったが、念のために物理耐性のあるペルソナにチェンジ。この新たなアルカナのカードを顕現するチェンジ感覚。

 そして、受け止めた後に自ら攻撃。更に、相手の攻撃を紙一重で躱す。だが、カウンターを喰らってペルソナにダメージ。フェードバックで自分にもそのダメージが入る。これらの感覚全てが久しぶりだった。

 何故このようなことになったのか分からない。元を辿れば自分のせいなのだ。目の前で自分に襲い掛かる敵はこちらの話を聞いてはくれないだろう。出来れば傷つけたくない。だから、

 

 

 

「頼むから落ち着いてくれ、凛っ!」

 

「にゃあああああああああああああああああああっ!!」

 

 

 

 今は下着姿でペルソナ【タレイア】と共に襲い掛かる凛を何とかしなくては……! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~数日前~

 

 

「…………」

「…………」

「静かね」

「ああ、静かだ」

「それにしても、ここ最近雨ばっかよね。ここに雨男でもいるんじゃない?」

「俺を見て言うんじゃない」

 

 部室の窓から重々しくうごめく黒雲と勢いよく降り続ける豪雨を眺めながらいつもとは違う部室の閑散とした雰囲気に悠たちは思わず溜息をついた。それを差し引いても、いつも騒がしいはずの部室がこんなにも静かなんて、どこか違和感を覚えてそわそわしてしまう。原因はおそらく……

 

「穂乃果ちゃんたちが修学旅行いったからやない?」

「そうかもね」

「あの騒がしいのが1人いなくなったくらいでこんなに静かになるなんてね」

 

 今この部室に穂乃果と海未、ことりとラビリスの姿はない。音ノ木坂学院2年組は修学旅行シーズンを迎えていた。今年の行先は常夏の楽園と言われる沖縄。段々寒くなってきているこの時期に沖縄は比較的に温暖な気候だ。ちょうどいい時期に修学旅行に行ったといえるだろう。

 

「良いなあ。ウチらの時は北海道やったよね?」

「そうね。あっちはあっちで楽しかったわ。函館とか旭山動物園とか」

「まっ、定番っちゃ定番だったわね」

 

 絵里に希、にこは昨年の修学旅行の思い出を思い出したのか、懐かしそうな様子で語っている。とても良い思い出だったのか、表情が明るい。それに対して、

 

「悠は修学旅行どこだったの?」

「俺は陽介たちと辰巳ポートアイランドだ」

「「「えっ!?」」」

「何故かその時の担任が選んだホテルが……ラブホテルを改装したホテルで……」

「はああっ!?」

「そして、2日目にりせの御用達だっていうBARに行って……そこだけ何故か記憶がない」

「「ええええええええええええっ!?」」

 

 行先も行先だが、そこで起こったホテルや出来事の内容に仰天してしまった。証拠にホテルに泊まった時の写真も見せてもらったので、本当に起こったことなのだろう。どこか部屋の仕様と雰囲気、更に写真に写っている陽介と完二、クマの様子がいかがわしくて目を背けたくなったが。

 修学旅行もそうだが、林間学校や海水浴などこの男の昨年の思い出はなぜ奇想天外なものが多いのか。ちなみに、このことを聞いて悠にもっと楽しい修学旅行を体験させたいと思った雛乃が何とか悠を今回の修学旅行に行かせようとしたらしいが、教員たちに全力で止められました。

 

「そう言えば、ことりだけじゃなくて理事長も引率で行ってるんでしょ? 一人で大丈夫なの?」

「まあ、一人暮らしは今に始まったことじゃないしな。久しぶりの時間を楽しむよ。何にせよ……ファッションショーまで頑張らなきゃいけないし」

「そうね。せっかくの桐条さんのお誘いだもの。期待を裏切ることはできないわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~更に数日前~

 

「えっ? ファッションショーですか?」

「ああ。実は今度桐条グループの傘下にあるグループがファッションショーを開くことになってな」

 

 穂乃果たちが修学旅行に出かける数日前、音ノ木坂学院のアイドル研究部の部室にシャドウワーカーの美鶴がお忍びで尋ねてきたのだ。こんな話を電話ではなく、直接自分たちに話しに来る辺り、それほどそのファッションショーが重要なイベントだという事が窺える。

 

「君たちで良ければ、このイベントにゲストとして参加して貰えないだろうか?」

「えっ?」

「ラブライブの予選を勝ち抜いたとはいえ、本選ではもっと知名度を上げる必要があるだろう。今回こそラブライブの頂点を目指すというのなら、このイベントはその足掛かりになるはずだ。既に先方にはこのことを伝えて、是非ともお願いしたいとの返答を貰ってる。あとは君たち次第だが、どうだろうか?」

 

「「「「やります!」」」」

 

 美鶴の提案に悠たちは即決した。彼女の言う通り、地区大会本選を通り抜けるためには今よりもっと認知度を上げる必要があるし、何より応援してくれる学校は勿論地域や近所の人たちの想いに応えるのは当然だ。

 何より、あの美鶴が自分たちの状況を調べた上で提案してくれたことが嬉しかった。

 

「ありがとうございます、美鶴さん!」

「なに、私の方こそラビリスのことで世話になっているしな。君たちが良くしてくれてるお陰で楽しい学園生活を送れていると、そこの本人からも聞いている」

「み、美鶴さん!」

 

 悠たちにさえ言っていなかったことを美鶴に言われて傍に控えていたラビリスは慌てて美鶴の口を塞ぎにかかった。

 

 

 で、ラブライブ本選突破の足掛かりとして桐条グループが主催するファッションショーでライブをすることになった穂乃果たちは2年生組が修学旅行に出かける前に大方のフォーメーションと振り付け、衣装を作成した。

 今回は“結婚式”をテーマにしたものなので、花嫁衣装と新郎のタキシードをモチーフにした衣装が作られた。作成者であることりは勢い余って将来のためにと悠の分まで作ろうとして皆に止められたのは別の話。

 

 

 閑話休題

 

 

「今穂乃果たちは修学旅行だし、最悪私たちだけでも美鶴さんのファッションショーでライブできるようにしなくちゃ」

「ああ、今回も全力でやろう」

 

 絵里と悠の一声にだらけ切った雰囲気が一瞬で切り替わった。予定では桐条グループ主催のファッションショーは修学旅行が終わって数日後。2年生組はいないとしても色んな場合を想定して事を進めなければ。

 

「そうやね。穂乃果ちゃんは今頃沖縄で野生のちんすこうを追いかけて、今回のこと忘れてそうやしな」

「野生のちんすこう?」

「なにそれ?」

「さあ?」

 

 希のとんちんかんな言葉に引き締まった雰囲気が一気に緩んでしまったが、それはそれ。ともかく、残ったメンバーたちは来るファッションショーのライブに向けて準備を着々と進めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う~ん……」

 

 

 時は過ぎて数日後の放課後、μ‘sは新たなる悩みを抱えていた。

 なんと、十中八九当たらないと予想されていた天気予報が的中して台風が沖縄に直撃してしまったのだ。こうなったら飛行機も飛ばないので穂乃果たちの帰りが予定より遅くなることが確定。日程的に今度のファッションショーのライブは2年生組無しでのライブということになる。

 一応想定されていたとはいえ、ここまで現実になるとは思わなかった。

 

(凛、大丈夫か?)

 

 更に、今回気掛かりだったのは凛のことだった。

 

 穂乃果たちがファッションショーに出られないと確定した今、穂乃果の代わりを務める代理のリーダーが必要になる。それで、悠と絵里、沖縄にいる穂乃果の3人で話し合った結果、今後を見据えて1年生の凛がリーダーに就任する運びとなった。

 だが、当の本人はリーダーになることに悲観的で自分より真姫の方が良いと何度も駄々をこねた。真姫は別にリーダーはやりたくないし、自分も凛の方が良いと後押し。結果、皆に押し切られる形で凛は代理のリーダーに就任したわけなのだが……

 

(リーダーだからって、気負う必要はないんだけどな)

 

「あっ、悠さんだ。悠さーん、あれ?」

「こっちの声が聞こえてないにゃ」

 

 いきなりリーダーを任されたこともあってか、凛は以前よりも消極的になってしまった。おそらく普段から悠と穂乃果の姿を見ているせいか、リーダーは全て完璧な存在であらねばならず、自分のような半端者が務めていい訳はないと思っているのだろう。

 リーダーが一番優れていなければならないといけないなんて思われているが、そんなことはない。去年の特別捜査隊の時もそうだ。ペルソナを複数所持できるワイルドの力を除けば自分が陽介たちより秀でていることなんて、たかが知れていた。

 凛にだってあるはずだ。本人は自覚していないようだが、夏休みにかなみんキッチンのスペシャルライブに行った時だって、凛にリーダーの素質があるのかと思わせるほどの何かを自分は見た。

 

(それに……)

 

「う~ん、凄い考え込んでるにゃ」

「どうしよう……そろそろ時間なのに」

「仕方ないからこのまま向こうで着替えましょ。悠さんだから、覗きはしないでしょ」

 

 凛がリーダーに消極的な理由がもう一つ。おそらく凛は自分は可愛くないからそもそもスクールアイドルとしてのリーダーに向いていないと思い込んでいる節がある。

 これは以前凛のシャドウと対峙した際に聞いた話だが、小学生の時に男子からスカートを穿いている姿を見て女らしくないと言われたらしい。その一言がショックでスカートを穿くのを止め、自分は他の女の子に比べて可愛くないと思い込んでしまった。

 

(でも……)

 

「じゃあ凛ちゃん、先に行ってるね」

「あんまり遅くなるんじゃないわよ」

「分かったにゃ~」

 

 自分の影と向き合ってからはそんな認識は薄れていったらしいが、この時期になってまたそのことが気になり始めたようだ。証拠に花陽の今回の花嫁衣装風のドレスを試着していた姿を見て羨ましがっていたし、鏡の自分の制服姿を見て表情を曇らせていたのも見受けられた。

 そんなことないはずだと言えば簡単だが、凛を励ますのには一歩足りない気がする。さて、どうすれば凛に伝わるのだろうか。

 

「…………あっ」

 

 一つ手を思いついた。突拍子に思いついたものだが、善は急げ。忘れる前に、悠は携帯を手にした。

 

 

 

 

 

 

 

 とりあえず、一つ手は打っておいたし、これ以上考えても不毛なのでそろそろ帰宅しよう。今日の献立は何にしようかと考えながら、悠は隣の更衣室の扉を開けた。

 

「えっ?」

「あっ……」

 

 しかし、何と誰もいないと思っていた更衣室に着替え途中であったと思われる凛がいた。更にまずいことに、今現在の凛は下着姿だった。

 

「にゃ……にゃにゃにゃ」

「お、落ち着け凛! これは……その……」

「へ、変態にゃああああああっ!!」

「ま、待て! うおっ!?」

 

 羞恥が限界突破したのか、顔を真っ赤にして傍に何故か置いてあった箒を振り回しながら突進してきた。何とか紙一重に躱した悠だが、そのせいで部室のテーブルに置いてあった小物類が飛び上がって部室が大参事になってしまった。

 

「にゃあああああああああああっ!!」

 

 だが、羞恥で我を忘れた凛の追撃は止まらない。再び箒を悠に向けて振り回したせいで、にこが大事にしてきたアイドルのポスターやグッズに飛び火して壊れそうになる。何とか持ち前の器用さで床に落ちることは防がれたが、もし落としたらにこの雷が落ちるところだった。

 

「や、ヤバい……!」

 

 まるでリミッターが外れた歩くバーサーカーのように悠を追いかけ回す。何とか逃げ切ろうと悠は部室を飛び出そうとしたが、寸で踏みとどまった。ここで部室から飛び出したら凛はおそらく下着のまま自分を追いかけてくるだろう。そうなったら何もかもおわってしまう気がする。社会的な意味で。ならば……

 

「凛、すまん!!」

「にゃっ!?」

 

 暴れる凛の隙をついて猫だまし。そして怯んだところを狙って何とか抑え込んだ。これなら

 

「あっ」

 

 と思われたが、位置取りを間違えてしまった悠。凛を抑え込もうとした先には最近全く使ってなかった液晶テレビが。

 

 

 

 

 

 

 

 

「や、やばい……! テレビの世界に来てしまった……」

 

 眼鏡も無しにテレビの世界に飛び込んでしまった。しかも、凛は下着姿。どんなえろげーだよと思った。だが、念のためにと懐にいつも眼鏡をしまってあるので問題ない。眼鏡をかけて改めて周囲を確認すると、いつもの場所に自分たちは来ていた。ここならば、シャドウは出現しないので問題ないが、それ以上の問題は……

 

「何するにゃああああ!!」

「あっ」

 

 下着姿のままの凛がこの状況に冷静でいられるのかが問題だ。

 

「ここって……テレビの世界…………そういうことかにゃ……!」

「あ、あの……凛さん?」

「お前が、凛たちが追っていた犯人かにゃああああああ!!」

「えっ?」

「ここであったが百年目にゃ! 悠さんたちはいないけど、凛だけでも戦って足止めするにゃ!!」

「だから、俺は」

 

 

ーカッ!ー

「ペルソにゃああああああっ!!」

 

 

 以上の顛末から現在に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ……何とかしないと」

 

 凛を傷つけないように何とか防戦に持ち込んでいるが、このままではこっちがやられる。何とかしなければと思ったその時だった。

 

 

 

「何やってんの?」

 

 

 

 イザナギとタレイアの剣戟が終盤を迎えようとした刹那、背筋が凍るような声色が辺りに響き渡る。瞬時に戦闘を止めた凛と悠は恐る恐ると声がした方を振り返ってみると、見えた光景に絶句した。

 

「え、絵里……それに、みんな」

「悠さん? これはどういうこと?」

「凛ちゃんを下着姿のままテレビの世界につれてきて……あまつさえ、ペルソナで戦ってるなんて」

「戦闘不能にしたところを美味しくいただこうっていう魂胆かいな?」

「ち、違う! ええっと……これは」

 

「皆、やりなさい」

 

 弁明する間もなく、悠のイザナギに業火と豪雪の鉄槌、疾風の刃が同時に襲い掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「悠、貴方ねぇ……何でいつもいつも余計な誤解を招くようなことをのかしら?」

「いや、俺は凛を何とかしようと」

「言い訳無用。もし部室に入ってきたのが私たちじゃなかったら、それこそ終わってたわよ」

「はい……」

 

 その後、凛の着替えを覗いたことなどを追及されてこっぴどく叱られた。あまつさえ、落ち着けさせようとしたのが裏目に出て、下着姿のままテレビの世界へ行ってしまって、そのままバトルになるとは何事かともしこたま怒られた。

 凛の方は絵里たちの後に駆け付けた花陽と真姫がケアをしてくれているが、去り際に2人からゴミを見るような目で睨まれたのは結構堪えた。

 

「全く悠くんはいつからそんなはしたない主人公になったんかなあ。大方リーダーについて悩んでる凛ちゃんのことを考えとったんやろうけど、今のは逆効果やで」

「面目ない……」

 

 本当に反省しかない。何で最近こういう目に遭うことが多いのかとも思ったが、今回は完全に自分が悪い。このことをことりなんかに知られたら一体どうなることか……

 

「で、これからどうするの?」

「……何とかする」

「ふ~ん、その様子やと既に手は打ってあるって感じやね」

「まあ……な」

 

 結局ここで決まる話ではないし、悠には何か打つ手があるようなので、今日はここでお開きとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 だが、災難は続いた。

 

「なあなあ、良いだろう?」

「や、やめて下さい!」

「何なのよ、アンタたち!」

「やめるにゃ! 嫌がってるにゃ!」

「ああ? お前には興味ねえからあっち行ってろよ。しっし」

「にゃあ!?」

 

 いつもの帰り道を通っていると、先に帰っていた1年生組が他校の男子生徒にナンパされているのを見かけた。

 

「凛ちゃんに興味ないって……どういうことですか?」

「ええっ? だって、こいつに久しぶりに会ったけど、相変わらず女らしくないなって思って」

「なっ!?」

「相変わらず男っぽいし、その制服のスカートだって全然似合ってないじゃん」

「うっ」

 

 辛辣な言葉に小学生の時のトラウマが蘇ったのか、凛は何も言い返せず下を向いてしまった。状況から察するに、おそらくあの少年たちは凛の小学生時の同級生で、偶々通りかかった花陽と真姫をナンパしようとしたのだろう。これはマズイ状況だ。

 

「り、凛ちゃん……」

「さあさあ、そんな男女は放っておいて、俺たちと一緒に」

 

 

「お前ら、いい加減にしろ」

 

 

 気づけば、悠は凛たちを庇うように前に出ていた。大事な後輩を軽薄にナンパした挙句、更に凛の自信を更に折るような暴言まで吐かれては黙っていられない。

 

「悠さん!」

「あ、アンタは……」

「ば、番長だ。音ノ木坂の番長だ……!」

「お、音ノ木坂の番長ってあれか? μ‘sのマネージャーで、メンバーに出を出したら血祭りに上げられるって噂の……」

「やべえよ……これはやばいって……!」

 

 悠が乱入したその時、少年たちは何故か怯え始めた。何だか変な噂が流れているようだが、そんなことはどうでもいい。

 

「お前ら、3人に手を出そうとしてたな」

「い、いや……俺は別に手を出そうとした訳じゃ。ただ……かよちんと真姫ちゃんとお近づきになりたくて……」

「それもそうだが、凛にも何か酷いこと言ってたな?」

「「いいっ!?」」

 

 取り繕うとするが、大方の話はすべて聞いていた悠の凄みの前に思わず足が震えてしまった。凛を傷つけた挙句に花陽と真姫に手を出そうとしたからには悠の怒りは当然だ。しかし、

 

「いやいや、アンタだってそうだろ。こんな男女みたいなやつじゃなくて、そこのかよちんとか真姫ちゃんみたいな女の方が良いって」

 

 意地を貫きたいのか、ここぞとばかりにまくし立ててきた。まだ懲りてないのか、そんなまくし立てる元気があるとは呆れたものだ。その言葉を受けて、凛の顔が更に沈んでしまっている。これ以上は許せない。

 

「お前ら、一つ良いことを教えてやる」

 

 そう言うと、悠は背後に隠れる凛を強引に抱き寄せ、見せつけるように凛の頭をポンポンと撫でた。

 

 

 

「普段の凛も可愛いが、こうするともっと可愛いぞ」

 

 

 

「「「「「えっ!?」」」」」

 

 

「にゃっ!? にゃにゃにゃにゃにゃにゃ~~~~!!!」

 

 瞬間、その場にいた悠を除く全員の時が止まった。凛に関しては強引に抱き寄せられた挙句、悠に優しく頭を撫でられるというメンバーからしたら超羨ましいことをされて、何で自分がという気持ちと直に感じる悠の体温と優しい手つきに心地よいと感じる自分の訳が分からない感情に頭が沸騰しそうになる。

 だが、当人の頭の中がそうなっているのに対して、他の者たちは混乱していた。

 

「た、確かに……可愛い……じゃなくてアンタ、何でこんなことを」

「俺のカワイイ凛が傷つけられたんだから、黙っていられないしな」

「なあっ!?」

「そそそそれは……もしかして、こいつと付き合ってる……とか?」

 

()()()()()()()()()

 

 

 

―!!―

 

 

 

 再び雷が落ちた。確証はないが、あの余裕がある笑みといい風格と言い、更には抱き寄せられて照れている凛がとても可愛い。そう思ってしまった男たちは途轍もない敗北感を覚えてしまった。そして確信する。この男と自分たちでは、圧倒的に格が違うと。

 

「おい」

「「は、はい!?」」

「他の奴にも伝えろ。もし今後凛に同じことを言って傷つけたら、俺が容赦しないとな」

「「は、はいいいいいいいいいいっ!!」」

 

 珍しく怒気を含んだ悠の気迫にすっかり委縮してしまった二人組は逃げるようにその場から走り去っていった。去り際に番長こえええと聞こえたのは幻聴だということにしておこう。

 

「はあ……今後はこういう輩に注意しないとな。あれ? 凛?」

「にゃあ…………」

 

 見てみると、抱き寄せていた凛は今までにないほど顔を赤面させてフリーズしていた。同様に背後にいた花陽と真姫は絶望したように顔面蒼白で立ち尽くしている。

 

「あっ」

 

 やってしまった。奇策を打ったとはいえ、今思えば誤解を与えかねない発言をしてしまった。

 これはまずいと思った時は遅かった。

 

 

「ゆうく~ん♪」

 

 

 後ろから背筋が凍るような声がする。恐る恐る振り開けると、笑顔だが目がちっとも笑っていない絵里と希、にこの3人が仁王立ちしていた。

 

「や、やあ……奇遇だな……」

「ええ、本当に。貴方のいう手って、そういういやらしいことだったの?」

「い、いや……絶対そんなことは……」

「これは詳しく聞く必要がありそうね」

「悠くん、今日はウチの家にエリチとお泊りやね」

 

 死刑宣告が下された。本日2度目の絶望を味わった悠は思わず膝をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にゃあ~……大変ったにゃ」

 

 いつもより遅い時間に帰宅して、親と少し会話した後、一息ついた凛は自室で溜息をついていた。あの一悶着の後、悠は絵里と希に引きずられてどこかに連れて行かれた。少し気の毒だと思うが、あれは完全に悠の対応が悪かったので自業自得だとしか言いようがない。何より、花陽と真姫がショックを受けていたので自分としては少し許せなかった。

 でも、

 

 

『俺のカワイイ凛が傷つけられたんだから、黙っていられないしな』

 

 

「ううう……悠さんのあの言葉、頭から離れないにゃあ……」

 

 ふと、先ほど悠に言われた言葉を思い出す。何故か顔も赤いし、身体も熱い。今まで悠に頭を撫でられたりすることはあったが、今日みたいにこんなにドキドキするようなことはなかった。一体どうしてしまったのだろう。

 そして、身体の熱が冷めたと思うと、凛は目の前のクローゼットを開けて、その中にしまってあったワンピースを手に取った。

 

「こんな可愛い服を着たら、悠さん……どう思うかな?」

 

 自分は可愛くないと言われて、それ以降そうだと思い込んでいた自分。普段だったらまた自分に可愛いイメージなんて似合わないと思っていたのだが、今日悠に可愛いと言われて、どこか嬉しいと思った自分がいた。

 この可愛い服を着たら、もっと可愛いと思ってくれるだろうか。そうであったのなら自分ももっと嬉しい。だが、

 

 

「凛は……かよちんと真姫ちゃんに比べて……」

 

 

 口ではそう呟いてしまったが、本音は違う。もしこの気持ちがそうであるならば、自分は親友の2人に横恋慕してしまうことになる。それだけは絶対にダメだ。

 明日はファッションショー当日なのに、何を思ってるんだろう。不相応にも考えてしまった自分に自己嫌悪を感じながら、凛は再び枕に顔をうずめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ファッションショー当日~

 

「わあ……」

「まさに圧巻ね」

「絆フェスとは違う緊張感があるよ」

 

 ついにファッションショーの日がやってきた。流石は桐条グループの傘下企業とあって、会場はとても大きく普段のライブより多くの観客が押し寄せていた。ファッションショーは元より、あの話題のスクールアイドル【μ‘s】のライブもあることも話題を呼んだらしい。

 観客の多さを裏手から覗いて多少たじろいでしまうが、絆フェスのキラーパスに比べればどうということはない。

 そう思いながら、今回自分たちを使ってくれた主催者やスタッフたちに挨拶して周り、用意して貰った控室でライブの準備を進めた。

 

「おっはようにゃ~♪」

 

 そして、準備を着々と進めている最中、今回のターゲットである凛が控室に入ってきた。ここからが本番だ。

 事前に今回のことは他の皆には伝えてあるので、凛が入ってきたタイミングで花陽にアイコンタクトで合図を送って作戦を開始した。

 

「凛ちゃん、おはよう。私達も衣装に着替えようか」

「あ、うん、そうだね!」

「はい、凛ちゃんの衣装はこっちだよ!」

「うん! …………え、嘘……?」

 

 凛の目が見開いた。何故なら、本来凛の衣装はタキシードだったはずなのに、そこにあったのは花陽たちが着る花嫁衣装だったからだ。

 

「えっ? これって……どういうことにゃ?」

「私も凛ちゃんと同じ衣装だよ。というか、凛ちゃんのタキシード衣装はうっかり持ってき忘れてたんだ」

「へあっ!? じゃあ、何で凛がこっちなのかにゃ。そもそもあるにしても、ことりちゃんもいないのに、こっちの衣装がもう一着だなんて……」

 

 突然の事態に凛は困惑した。当然だが衣装忘れたなんてスクールアイドルとしてはあってはならないことだ。そんな重大な事態なのに何故皆は慌ててないのだろうか。何故自分の衣装はタキシードではなく花陽たちと同じ花嫁衣装でなくてはならないのだろうか。

 

「実は、これは()()()()()()()()()()()()()()()

「へあっ?」

 

 すると、悠はいつの間にか持っていたリモコンのスイッチを押すと、控室に設置されていた白いスクリーンに光が灯った。

 

『おおい、悠! 元気にやってっか!』

『すっげえ! 本当に鳴上くんたちが映ってる』

『わあ、お兄ちゃんだ! それに、μ’sのお姉ちゃんたちもいる』

 

「えっ? よ、陽介さんに千枝さん! それに、菜々子ちゃんに、みんなも!?」

 

 スクリーンに映ったのはなんと稲羽にいる特別捜査隊の仲間たちと菜々子だった。

 実は悠が事前に美鶴に頼んで、この控室と稲羽のジュネスを繋げてほしいと頼んでいたのだ。陽介たちも穂乃果たち2年生組がいない中でのライブに臨む凛たちを是非とも応援したいと言っていたし、凛を励ますなら人数は多い方が良い。

 

『千枝、この鼻眼鏡絵里ちゃんたちにも見えてるかな?』

『やめんか! テレビだからって、そんな爪痕残さんでいいから!』

『これが、テクテクってやつっすか……都会は凄いっすね』

『カンジ~、全然違うクマよ。こういうのは、はいびじょんって言うんだクマ~』

「完二くん、クマくん、どっちも違うわよ」

 

 うん、いつもの陽介たちだ。画面越しでもいつも通りのゴタゴタを繰り広げる稲羽の仲間たちを微笑ましく思った。それに、相変わらず菜々子は可愛い。

 

「いやいや、突然のことで戸惑ったけど……何で陽介たちが?」

『何でって、そりゃ絵里ちゃんたちを応援するために決まってんだろ』

『あたしたち仲間なのに、離れ離れで直接応援出来ないのって何だが歯がゆいって話を鳴上くんにしててさ』

『それでね、今回鳴上くんが桐条さんに頼んでこうやってテレビ中継でジュネスと繋いでもらったの』

『菜々子もクマさんたちといっしょにおうえんしにきたよ。菜々子もμ’sが大好きだから』

 

 

 菜々子の”だいすき”に絵里たちは思わず感動してしまった。この場にいる全員すでにナナコンにかかっているのだろう。

 

 

「それはそうと……か、完二くんがこのドレス作ったの!?」

『う、うす。一昨日に凛のために作ってくれってセンパイから電話で頼まれて……元のレシピや凛のサイズとかはことりに聞いたんで良かったんスけど、どうも初めて作るもんは難しくて……二日もかかちまったっス』

「こ、これを2日でって……」

「この人、自分が凄いことやってのけたって気づいてないのかしら?」

 

 よく見ると、全然寝ていなかったのか完二の目の下の隈が画面越しでも酷いように見える。本人は平気そうにしているが、実際は修羅場だったのだろうというのが伺えた。

 

「で、でも、凛が着るくらいなら、皆同じ衣装の方が凛なんて可愛くないし…………」

 

 だが、それでも凛は簡単に首を縦に振ろうとはしなかった。

 

 

「そんなことない!!」

 

 

 だが、今度こそ花陽が普段見せない表情と大声で凛の言葉を否定した。

 

「凛ちゃんは可愛いよ! 私が抱きしめたいって思うくらいに!」

「かよちん……」

 

 目に涙を溜めた親友を前に、星空の目も潤んでいた。まるでずっと張り続けていた壁を鋭い弾丸が打ち砕いたように。そして、その花陽の魂の叫びを皮切りに傍に居た真姫たちも激励の言葉をかける。

 

 

「凛、あなたは本当に魅力的な女の子よ」

「褒められて照れてる時とか、ウチも抱きしめたくなるよ」

「アンタの1番可愛い姿を見せつけてやりなさいよ」

「凛、もっと可愛いあなたを見せてちょうだい」

 

『そうだぜ。凛ちゃんはもっと自信もって良いと思うぜ。花陽ちゃんたちに負けないくらい可愛いんだから、勿体ないって』

『あたしだって、凛ちゃんは可愛いって思ってるよ。凛ちゃんが可愛くないって言ったやつはあたしが全員蹴飛ばしてやるんだから!』

『そうだよ。私もキチンとミディアムに焼いてあげるから』

『焼くな!? 雪子、表現が最近おかしくない?』

『先輩らの言う通りだぜ、凛。男か女かなんて関係ねえ。お前のか、か……可愛さを全力でぶちかましてきやがれ!!』

『リンちゃーん! 頑張るクマ~! クマもナナちゃんも応援してるクマよ~~!』

 

『りんお姉ちゃんはすっごく可愛いよ。菜々子も、りんお姉ちゃんみたいに可愛くなりたーい』

 

 目の前にいるμ‘sの仲間たち、そしてスクリーンに映る特別捜査隊の仲間たちの励ましの言葉が凛の感情を揺さぶった。

 初めてだった。こんなにも多くの人から、可愛い・魅力的だと言われて嬉しかった。

 

「凛、俺も同じだ。凛はとても可愛くて、皆に負けないくらい魅力的な女の子だと思ってる。凛もμ‘sメンバーなんだ。μ’sは誰一人として欠けてたら、その魅力を発揮できないくらいな」

 

「悠さん……」

 

「だから、今日は存分に凛の魅力を見せつけてこい。期待してるぞ」

 

 悠の言葉に皆が強く頷いた。それは皆の想いを一つにまとめた言霊のようだった。故に、凛は心を再び揺さぶられ、目に大きな雫が溢れてくる。

 

 

「みんな…………ありがとう!」

 

 

 溢れる涙を止めようとする凛を花陽は強く抱きしめた。それは

 凛は背中を押されて力強く頷くと、花陽から完二特製の花嫁衣装を受け取って、いつものように気合いを入れた。

 

 

 

「よ~し。それじゃあ、いっくにゃー!!」

 

 

 

 その日、魅力的な花嫁衣装とタキシードに身を包んだ乙女たちのパフォーマンスは会場にいた観客全員を魅了した。中でも特に観客たちの目を引いたのは、今回センターを務めていた猫のように可愛い花嫁衣装の少女だったという。

 

 

 

 

 

 

 

「ええっ!? 陽介さんたちとファッションショーの時にテレビ中継したの! ズルいよ~、穂乃果たちが沖縄で足止め喰らってる最中にそんな楽しいことしてたなんて~! 穂乃果たちもしたかった~~~!」

「突っ込むところはそこですか……しかし、よくそんなことができましたね。流石は桐条グループと言ったところでしょうか」

「菜々子ちゃんと会ってたなんてズルい……それにお兄ちゃん、凛ちゃんを強引に抱き寄せて頭撫でたりしてたんだ……今すぐお話聞かないと」

「ことりちゃん、どうどう」

 

 ファッションショーから翌日、ようやっと沖縄から東京に帰ってきた2年生組が事の顛末を聞いて、羨ましがったり嫉妬したりとして大忙しだ。

 あのファッションショーは結果的に大盛況だった。本職のモデルにも負けない可憐で魅力的な容姿に美しいドレスとタキシード衣装に身を包んだスクールアイドルたちのライブは多くの観客を魅了した。主催者も彼女たちを呼んで良かった、もしまたファッションショーをやることがあれば是非もう一度やってほしいと喜びを露わにしていたらしい。

 

 さて、変化したことがあるとすれば……

 

 

「凛ちゃん、練習着にスカート履くようになったね」

「確かに。以前は全然似合わないからと避けていたはずですが」

「前に凛ちゃんのシャドウが言ってたこと、克服できたのかな?」

「そうやね」

 

 

 凛はあの日を境に凛は積極的にスカートを履くようになった。でも、それはもう一つ要因はあるのだろう。

 

「絶対悠さんが凛ちゃんに何かしたよね?」

「ええ、凛の悠さんを見た時の表情を見れば分かります」

 

 スカートのことの他に凛の悠を見る表情が変わった。以前は尊敬や親愛と言ったものだったのが、まるで愛しい人をみるような、言い換えれば自分たちと同じ恋する乙女のようなものになっているのだ。

 その様子を見て、ラビリス以外の3人は複雑そうな表情を作るが、そのお陰で凛が成長の一歩を踏み出せたのならそれでも良いかと、やれやれと言わんばかりに溜息を吐いた。

 

 

 

「かよちん・真姫ちゃん、ありがとう。凛のために」

「別にいいわよ。仲間なんだし」

「それにしても、凛ちゃんのスカート姿可愛いね」

「えへへ、ありがとう」

 

 今まで制服以外でスカートを履くのに抵抗があったのが、あのファッションショーで背中を押されてからはそんなものはなくなっていた。それもこれも本当にこんな自分を可愛いと励ましてくれた特捜隊&μ‘sの皆のお陰だ。

 それに、

 

「あのね、かよちん・真姫ちゃん。凛ね、2人に一応言っておきたいことがあるんだ」

「えっ? 何々」

「どうしたのよ、改まって」

 

 思い切って親友の2人には打ち明けよう。もしかしたら勘違いかもしれないし、2人にはとても不都合なことかもしれない。でも、それでも今までの自分と決別するために。そして、2人に本当の意味で並び立つために、今この場でこの胸にある想いを解き放とう。

 

 

 

「凛ね、2人と同じくらい、悠さんの事……大好きにゃ!」

 

 

「「えっ?」」

 

 

 




<???>


「ハァ…ハァ………本当にしつこい…!」
「あの探偵…何で私たちの秘密のルートを使えるのよ…! おかしいじゃない…」


 星が瞬く薄暗い夜、電灯の明かりが一つ輝く路地裏の隅っこにて彼女たちは恨み節を吐いていた。

「とうとう…決行の時ね……」
「ええ、時期的にもう修学旅行が終わった後だもの。あいつらの気が緩んでる隙に……」
「その前に、あの探偵を何とかするしかないわね」

 小さい会議を終えた途端、タイミングを見計らうかのようにコツコツと足音が聞こえてくる。おそらくあの探偵が近づいてきたのだろう。ああ、恨めしいと彼女たちは思った。

 恨めしい…恨めしい……あの日から、何もかも恨めしい。自分たちに己の理想を押し付け、あの事件に巻き込んだあいつ。そして、あの事件のことを公表せず何もしなかったあの学校。そして、自分たちを差し置いて世間の脚光を浴びるあいつら。


恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい


 だから、今こそ復讐を果たそう。誰のものでもない、誰にも邪魔されたくない。自分たちの復讐を。

 そして、近づいてくる足音の主に向け、彼女たちは引き金を引いた。



 彼女たちのその日は近い…。


To be continuded Next year.

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