PERSONA4 THE LOVELIVE 〜番長と歌の女神達〜 作:ぺるクマ!
短い文章ですが、楽しんで頂けたら幸いです。
本編が一つの山場を越えた此度、時は夏休みのとある日まで遡る。
「ロシアンマリーゲームしよう!」
それは天城屋旅館で勉強会している中、穂乃果の一声から始まった。
「ロシアンマリーゲーム?」
「何それ?」
「ああ、それって」
ロシアンマリー・ゲームとは……
人数分のグラスに入ったトマトジュースと一つだけタバスコ入りの激辛を用意。それを皆で一気飲みし、誰がタバスコ入りのハズレを引いたか当てる。当てられた者は指定された罰ゲームを遂行するという王様ゲームに似たようなゲームである。罰ゲームは予め各々が紙に書いてシャッフルし、トマトジュースを飲む前に司会進行が一枚引いて決めるというシンプルなものだ。
「やろうよ! 偶には息抜きも必要だよ!」
「息抜きって……」
「そもそもロシアンマリーゲームやろうって言いだしたのって、凛から借りたその漫画見て思い立ったことでしょ?」
絵里の指摘に穂乃果はギクリとした。実際絵里に隠れて読んだ漫画にロシアンマリーゲームのことが書いてあったので、まんまその通りなのだ。やっぱりダメかと落胆する穂乃果だったが、思わぬ助け船が出た。
「良いんじゃねえの、絵里ちゃん。ちょうどいい頃合い出し、試しにやってみるのも」
「ちょっと陽介くん。悠も何か言ってよ」
「俺も陽介に賛成だ。みんな疲れて来てるし、一回か二回くらいやっても良いんじゃないか?」
我らがリーダーのお許しが出たことによって、消極的だったメンバーもやろうやろうと雰囲気を作り出す。これに観念したのか、絵里はやれやれと言うように白旗を上げた。
「ということで完二っ!! とっととジュースを用意してこーい!!」
「はあっ? 何で俺が?」
「つべこべ言わずにもってこーい! あとタバスコも忘れないでよね~!」
りせに言いつけられて、わざわざジュネスまでトマトジュースとタバスコを買いに行かされた完二。かくして、ここに特捜隊&μ‘s総員によるロシアンマリーゲームが開始された。
「ロシアンマリーゲえええええむ!!」
「「「「Yeahhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhh!」」」
司会進行役の千枝のコールに参加者は一層盛り上がる。ちなみに辛いものが苦手なことや前回の王様ゲームに懲りて司会進行に回りたいという理由で千枝と直斗は参加していない。
「まず最初の罰ゲームは、これだああ!!」
千枝が勢いよく箱から一枚の紙を引く。そこに書かれてあった罰ゲームは以下の通りだった。
【悠くんにキス】
「「「無効っ!!」」」
「ええ~! なんでえっ?」
開示された途端に総員から無効宣言され、これを書いた本人であろう希はふくれっ面でむくれた。
「だ・か・ら! 名指しはダメって言ってるでしょ!!」
「しかも思いっきり自分の欲望さらけ出してるし」
「絶対そんなことさせないんだからねっ!」
「ちぇっ……」
厳しく絵里に諫められてむくれる希。あざとくも可愛らしいその姿に思わず優しくしたくなるが、側にいた妹がそれを許さなかった。改めて罰ゲームを引き直す千枝。次に引き当てた罰ゲームは……
【右隣の人との甘い思い出を1つ語る】
「「「「うっ……!」」」」
何とも精神的にくる罰ゲームだった。しかし、大丈夫。自分が手に持つトマトジュースがハズレでなければいいのだ。そう思って、参加者たちは勢いよくジュースを飲み干した。結果……
「うぐっ……! 辛っ!!」
「あっ、真姫ちゃんだ」
「真姫だな」
当たったのは真姫だった。そして、真姫の右隣は悠だ。
「……ということで、私は……悠さんにとっても……感謝してる……。ご飯作ってくれたし……」
「「「ほうほうっ!」」」
「ううう……」
罰ゲームである悠との甘い思い出、もとい夏休み前に悠が自分の家に泊まりに来たことを語り終えた真姫は大好物のトマトのように顔が真っ赤になっていた。
「いや~、普段ツンツンしてる真姫ちゃんにもそんなデレデレになるほどの思い出とは……」
「聞いてるこっちもキュンキュン来ちゃったよ……」
「センパイって本当に罪作りな人だよねぇ」
「えっ? どういうこと?」
りせがツーンとした表情でそう言うも、悠は何のことか分からないのかキョトンとしている。
「も、もうっ! イミワカンナイ!!」
真姫は恥ずかしさのあまりに部屋から出て行ってしまった。
西木野真姫、リタイア
恥ずかしさのあまりに部屋から逃走。
「続いて、第二回せ──ん! 次の罰ゲームは、これだああっ!!」
恥ずかしさで部屋から出て行った真姫を放置して次のゲームが進められた。そして、次なる罰ゲームは
【服を1枚脱ぐ】
何ともキツイ罰ゲームだった。これがまだ冬だったら良かったものの、今の季節は夏。一同が着ているものはほとんど薄着であり、女子に至っては一枚脱いだだけで下着などが見えてしまう。だが、先ほどと同じだ。当たらなければいいのだ。覚悟を決めて手に持つグラスを一気に飲み干す。そして、
「ぐほっ……!」
「陽介だな」
「陽介くんね」
やはり当たったのは不運に定評のある陽介だった。女子たちはホッと胸を撫で下ろす中、そこは仕方ないと陽介は素直に受け入れ、Tシャツを脱いだ。まあこれくらいは全然大丈夫だ。全裸になるわけでもあるまいし、ここにいるのは大半女子なのだ。こんな罰ゲームを書く人間なんてクマくらいしかいないだろう。そう思っていたが、ここから陽介の運の悪さが炸裂する。
【服を一枚脱ぐ】→陽介
【服を二枚脱ぐ】→陽介
【服を一枚脱ぐ】→陽介
【服を一枚脱ぐ】→陽介
「いやいや、おかしいだろっ!? 何で脱衣系がこんなに続くんだよ! それに口ん中辛えし……てか、誰だ! こんな罰ゲーム書いたやつ!!」
と、脱衣系の罰ゲームが異常に続き、これらを引き当てたのは全て陽介だった。靴下も衣類の一つだと脱衣ゲームにありがちな裏技を使用したものの、全て無駄になってパンツ一丁という極めて屈辱的な姿になっていた。被害者である陽介の悲痛な叫びと同時に複数の女子たちが目線を逸らす。
「お前らかよ!? てか、この系の罰ゲームって普通男子サイドが書くやつだろ!」
「だ、だって……」
「悠さんのシックスパックが見たくて……」
「だから、自分がリスクを負ってでも」
どうやら悠の鍛えられた筋肉をみたいがために、彼女たちは脱衣系の罰ゲームを書いたようだった。
「必死すぎだろっ!? てか、俺もうそろそろ全裸なんだけど、そこについてなんかねえのかよ!?」
「あ~ないない。花村の身体って特に普通だし」
「悠くんみたいに鍛えてないしなぁ」
「全然興味ないです」
「ぐほっ!? ……だが、次に脱ぐのはテメ―らの方だ!! 俺と同じ辱めを味わえ!!」
パンツ一丁になった男にそう言われてもカッコ悪さしか感じないが、もはや恥もプライドも捨て去った陽介は迷いがない。傷を負った獣は凶暴だと言うが、果たして次のゲームの結果は……
【衣服を全部脱ぐ】→陽介
「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
結果は言わずもがなとだけ言っておこう。
花村陽介、リタイア
恥辱の極みで部屋から逃走。下着一枚だったため、後に通報される。
こうして、地獄のロシアンマリーゲームは続いていった。
【ゲーム終了まで水着になる】→完二
「い、一応……持ってたものを着てみたっす……」
「「「「きゃあああああああああああっ!」」」」」
別室で水着に着替えてきた完二が登場した途端、乙女たちの悲鳴が部屋中に響き渡った。
「ちょっ!? 完二くん、何でブーメランパンツなのさっ!?」
「こ、これしかなかったので……」
「変態っ!!」
「ハレンチです!!」
「露出狂!!」
グサグサと突き刺さる言葉の投げナイフ。それを女子全員から喰らった完二はメンタルに深い傷を負ってしまった。
巽完二リタイア
容赦ない誹謗中傷により部屋から離脱。同じく後に通報される。
【可愛い声で“お帰りなさいご主人様”と言う】→絵里
「い、嫌よっ! 何でそんなこと言わないといけないのよ!」
これまた恥ずかしい罰ゲームに当たってしまったので、全力で嫌がる絵里。だが、そんなことを周りが認める訳はない。
「エリチ~、ここまで真姫ちゃんや陽介くん、完二くんも恥を晒してきたんに、自分だけ逃れようなんてズルいと思わん?」
「うっ……」
「それとも? 本当のエリチって、そんなにズルい子やったんかな~?」
「うううっ……」
「大丈夫、レコーダーは用意してある」
「全然大丈夫じゃない……」
結局希たちの圧に押されて罰を執行することとなった絵里。もうやるしか道がないと諦め、しっかりと罰ゲームを遂行した。
「お、お帰りなさいませ☆ご主人様♡」
「「「…………………………」」」
決め顔を作ってまで言い切った後、皆の唖然とする反応を見た絵里にもうゲームに参加できるほどの精神力が残っていなかった。
絢瀬絵里 リタイア
あまりの恥ずかしさに部屋を離脱。後にレコーダーを奪い取って破壊する。
【向かいの人に全力の愛の告白をする】→悠
「「「「「!!っ……」」」」」
この罰ゲームが掲示された途端、少なからず和気あいあいとしていた雰囲気が殺伐と化した。一体誰が悠の向かいなのかと確認すると……
「わ、私っ!? ですか」
運よく?その場所に座っていたのは、海未だった。発覚した途端、周囲の女子からそこを代われと言わんばかりに殺気が海未に集中するが、当人は驚きと恥ずかしさのあまりにパニックになって気づかない。
そうこうしているうちに、表情を作った悠が海未の傍に近づいて顔を合わせた。
「海未、俺はお前のことを愛してる。一生かけて守っていくつもりだから……ずっと俺の傍に居てくれ」
「…………」
「………………」
「…………………………」
訪れる静寂。【言霊遣い】級の伝達力の影響か、当人だけでなく周囲にいた人間までもその言葉に心を打たれて見入ってしまう。そして、
「……………………(チーン)」
正面からプロポーズの言葉を受け取ったのは海未はまるで夢のような瞬間を味わったように目を点にして呆然とする。次第に顔を紅潮させていき、ついには昇天するように気絶してしまった。
「海未ちゃん……? 海未ちゃあああああんっ!?」
「ダメです! 意識が戻りませんっ!!」
余程悠のプロポーズが衝撃だったのか、千枝と直斗が何度呼びかけたり揺すったりしても意識が戻らない。だが、被害はこれだけでは済まなかった。
「た、大変クマっ!? センセイのプロポーズで、ノゾチャンもハナちゃんもりせちゃんも失神してしまったクマ~!?」
「「なんだとっ!?」」
同じく海未のように昇天してしまう者が続出。ただし、海未のように幸福によるものではなくショックによるものだ。証拠に昇天した表情が絶望に染まっている。
「おいおいおい、何で悠のプロポーズの言葉でこんなに犠牲者がでるんだよ……!」
「いや、俺に聞かれても。というか陽介、いつの間に」
「って、早く何とかしなきゃ! 救急車!!」
千枝と雪子、直斗を除く女性陣リタイア
救急車を呼ぶほどの大騒ぎになり天城屋旅館から怒られる。
こうして唐突に始まったロシアンマリーゲームは予想外の形で幕を閉じた。
ーfinー
活動報告にて新章のアンケート実施中!まだまだコメントを受け付けていますので、良かったらどうぞよろしくお願いします。